Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「7 Ages」(Australian Design Group)を対戦する【2戦目】

人類6000年の歴史をたどり興亡を繰り広げる幾多の文明を操りながら栄光ポイントを競う、マルチプレイヤーゲーム「7 Ages」を対戦しました。

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ゲーム紹介は以前の記事を参照ください。


5人プレイの場合、ひとりが操ることができる文明の数は3個になります。ただしいきなり3個を配置できるわけではなく、手元のカードの中から勃興できる条件にあった文明を興すことができるのです。それぞれの文明に定められた時代の他、条件が揃わなければ興すことはできません。
また最初のプレイヤーが出した文明の時代がゲームとしてのスタート時点になるのですが、順当に中東メソポタミアに「シュメール」(時代1)が勃興しました。これにより後のプレイヤーは時代1の文明を興すことができるようになります。

続けざまにヨーロッパ中央部分に「ケルト人/ガリア人」、「周」と登場していきます。
最初に配られるカードの内容によって大きく左右される場面です。

 

アッシリアの誤算

第1ターンの最後の手番だった我が手に時代1で興せる文明は「アッシリア」だけでした。アッシリアは通常であれば時代2に勃興する文明なのですが、「シュメール」が興っている場合は時代1で出現可能となります。出現箇所は「シュメール」が位置するメソポタミアに隣接するアッシリアエリアです。

アッシリアの特徴として他の文明が時代が第2レベルに至らないと生産できないチャリオット(古代の戦闘用馬車)を時代1から生産することができます。さらにエリートマーカーがつくため戦闘力修正も行われるという軍事に優れた文明として性格づけられています。
隣接する「シュメール」はまだ歩兵しか装備できないのです。ここにチャリオットをぶつけることができれば有利です。ただし彼らには要塞(防御戦闘時に有利)があり、さらに戦術家能力(戦闘解決のカードをやり直すことができる)を持った英雄サルゴンがいました。

多少の修正はあっても戦闘力で優勢なのでいけるかと思ったのですが、シュメールに粘られてしまい侵攻したアッシリアの軍団は全滅したのでした。

 

 

バビロニアの出オチ

つづく2ターン目、引いた文明カードは「バビロニア」。時代も1ということで登場可能です。ところが登場エリアはメソポタミア。「シュメール」と同じ場所です。初期配置で登場する英雄ハンムラビは戦術家能力を持っています。この点は「シュメール」に対抗できます。ただ前ターンの「アッシリア」のような軍事的なアドバンテージはありません。「シュメール」には要塞もあります。
バビロニア」による「シュメール」への挑戦は敗北に終わり、バビロニアは全ての軍隊ユニットを失うと同時に滅亡しました。

アッシリア」「バビロニア」を退けた「シュメール」ですが、領土の拡張には走らず、貿易を「アッシリア」に求めます。
貿易修正は「シュメール」+1なのに対し、「アッシリア」は-1。貿易国家対軍事国家ということで圧倒的に不利です。

貿易ルール

貿易はドローしたカードに記載した数値を比べて、貿易修正後の数値の大小で勝敗を決めます。勝者側は文明度を進めることができますが、敗者側には特にペナルティはりません。
文明度は基本、各文明とも毎ターン1ずつ自動的に進めることができるのですが、各時代に暗黒時代と呼ばれる数マスがあり、ここに位置している文明は自動進化はなくなり、代わりに貿易によって文明を進めていく必要があります。
まさに文明の進化には他の文明との交わり(貿易)が必要ということなのです。
文明によっては、オーストラリア亜大陸南北アメリカのように勃興する文明そのものが少ないエリアがあります。こうしたエリアは他勢力と競合することが少ないため勢力範囲を広げ放題なのですが、一方で貿易相手がいないため文明が暗黒時代の段階に達すると進める術がなかなか難しかったりします。

この後も「シュメール」は領土拡張には走らず「アッシリア」相手の貿易で文明度を進めていきます。「シュメール」の勝利ポイントの獲得条件が領土を広げることによらないための選択なのです。

「シュメール」はアッシリア相手に貿易を多用することで文明度を上げ、あっさりと時代1の暗黒時代エリアを突破し、時代2へ突入させます。

 

■  中華を巡る文明の興亡

時代2、中国大陸では「周」が勢力圏を拡大している中、「フン族」が勃興します。中華の北方に広がる草原地帯で勃興した「フン族」はシベリア地方に進出するのと同時に中華にも侵入します。
フン族は勃興するとすぐに移動戦闘を行うことができ「周」の勢力圏を襲撃します。また他文明が興した都市を占拠すると、都市を破壊し、さらには都市のレベル分、負けたほうの文明度を下げるという強烈なルールを持っています。他にも文明度を下げることでボーナス得点が得られるなどお特別ルールを持っています

「周」はその後、じょじょに勢力を失い、最後は「文明の廃棄」により姿を消しました。

異民族である「フン族」に中華を取られたままではということで中国奥地西安に起こったのが「秦」でした。「秦」は登場時に要塞を配置できます。おそらく「函谷関」を想定したものなのかなと思いますが、他にも英雄として始皇帝、孫氏が登場します。

「秦」と「フン族」は最初友好的に共存することを考えますが、中国エリアはエリア分けの関係上、中原にあたるエリアをとらなければ治めにくい構成になっているのです。「秦」は「フン族」の兵力が広範囲に散らばり希薄になっている中、中原を襲います。

 

■ 欧州情勢

欧州を最初に支配したのは黒い森エリアに勃興した「ケルト人/ガリア人」でした。時代2に至り、北アフリカに「カルタゴ」が興ます。「カルタゴ」は他文明に比べ安価に建造できる船を大量に建造し、瞬く間に地中海の海洋エリアを支配下においていきます。

マケドニア」もまた時代2で勃興できる文明で、しかも勃興時に2回移動できるため瞬間的に領土を広げることができます。もちろん登場する英雄はアレキサンダーです。
マケドニア」は生産した軍隊を持って、バルカン半島からトルコのエリアを支配下に置きます。隣接する東欧の各エリアは「ケルト人/ガリア人」が勢力下に置いているため、このまま北上し「ケルト人/ガリア人」の柔らかい腹背に攻め上りたいところです。「マケドニア」の勝利ポイントはヨーロッパのエリアを占拠することによって得るのではなく、アジアのエリアを占拠することによって得るとされているのです。そう、アレクサンダーが東征したようにアジアに侵攻しなければポイントを得られないのです。

欧州情勢での次の注目は「ローマ帝国」の登場です。強大な軍事力、英雄カエサルを擁した文明です。
ところが意外にも「ローマ帝国」は「カルタゴ」を操るプレイヤーが興します。これではポエニ戦争は起きそうにありません。「ローマ帝国」はその勢力圏を南欧から広げ、「ケルト人/ガリア人」の退潮が顕著になっていきます。

 

■ そのほかのエリア

あまり関わりがなかったエリアの状況を簡単に紹介します。

インド地方は今回ひとつしか文明が起きず、そのタイミングもやや遅かったこともあり、ひとりで勢力圏を広げていくことになりました。インド亜大陸が統一されたあたりでゲームが終わったのですが、もう少し続いていた場合は中東方面や中華方面からの勢力との争いが発生したかもしれません。

日本は時代2から興すことができるのですが、その後の将来にわたって日本以外に日本列島に興る文明はありません、貿易相手として中国大陸側の勢力を相手tにしないといけないなど、前回担当した印象として扱いにくい印象があります。
今回、手練の日本プレイヤーは海洋エリアを次々と勢力圏に置くことで、海洋エリアの支配数でポイントを稼ぎました。なるほどそういう扱いをする文明なのだと。

南北アメリカは欧州ほど多数の文明が興るわけではないのですが、それでも北米・中米・南米とそれぞれで文明が起き、勢力圏を拡大していきます。他の文明が少ないということで貿易を行いにくいため文明度を上げにくいということはありますが、競争相手が少ない分、勢力は広げやすいようです。

 

ゲームの最終局面の少し前の状況。今回時間切れで終了。「シュメール」+「アメリカ大陸のなんか」チームが「シュメール」による着実なポイント稼ぎにより先行しました。

 

感想戦

様々な文明が次々と興り滅亡していくのが本ゲームの醍醐味です。
プレイヤーは複数の文明を操るいわば神様の役割ですので、伸びがない、ポイントを稼げないと判断したところで見切りをつけたほうがよさそうです。

今回冒頭から軍事行動を起こした挙げ句に失敗するということになりその後も低迷しました。ひとえに担当した文明の中での見切り・損切ができなかったのが原因ですね。例えば「マケドニア」は欧州の文明なのですが、ポイントを稼ぐためにはアジアに勢力を広げる必要があります。「マケドニア」から勢力を広げる方向には「アッシリア」が邪魔をした格好になっており、どちらかを諦める必要がありました。英雄アレクサンダーの存在もあり、中途半端な扱いになってしまいました。
各文明によってポイントを稼ぐことができる条件が異なるため、文明に応じポイントを稼ぐように文明の、見切り・損切り含めた取捨選択が必要ということでしょう。

何年後になるかわかりませんが、次回への教訓としたいと思います。

 

今回の結果:

アッシリア

登場直後に隣接する「シュメール」を圧倒しようとするが失敗。後は地道に領土を広げる施策に変更。「シュメール」が領土拡張に走らなかったこともありその後は順調に勢力圏を伸ばすが、決め手に欠いたまま進行。

バビロニア

「シュメール」と同じ地域に勃興しそのまま戦争状態にはいるが、敗北しそのまま滅亡。

マケドニア

スタート時の2回移動などスタートダッシュを決めたいところだが、ポイントを稼ぐアジア方面への侵攻が停滞。ひとつにアッシリアが進路を邪魔した状態になった。また建造物を建造することも行なったがいまひとつ。アレクサンダーも十分使いこなさないうちに逝去した。

「周」を下した「フン族」との衝突が本格化する中で活動中。

 

 

(終わり)

 

「RISE OF TOTALITARIANISM」(4Dados)を対戦する

1920年代から30年代はじめにかけてのドイツ・イタリアを中心とした欧州の政治情勢を社会民主主義:Social Democracy」、「共産主義:Communism」、「全体主義:Totalitarianism」の3つの政治勢力の争いとして構成した「RISE OF TOTALITARIANISM」(4Dados)を3人対戦しました。ゲーム原題を直訳すれば、「全体主義の勃興」とでもいうのでしょうか。出版元の「4Dados」社は、スペインの会社です。

 

 

 

ゲームの概要

ゲームの対象とゲームの中で目指すゴール

第一次世界大戦後の欧州、中でもドイツとイタリアが主な舞台となります。他にも小国として東欧諸国、バルカン半島イベリア半島の国々も活動の対象となります。
ゲームは第一次世界大戦終結を受けた1919年にはじまり、ナチス党がドイツの政権を獲得した1933年までを対象としています。全期間をカバーするキャンペーンゲームは全8ターンです(さらに1ターン=3ラウンドから構成されている)。

プレイヤーは冒頭に書いた3つの勢力を扱います。各勢力には史実上の政治家・活動家がリーダーとしてユニット化されています
プレイヤーはドイツ・イタリア国内において、合法から非合法の政治活動をアクションとして行い社会階層・クラス毎に分けられた国内世論を誘導し支持をとりつけていきます。定期的に実施される国会議員選挙(ドイツについては加えて大統領選挙)において勝利し、政権を取ることにより大きなポイントを稼ぐことができます

プレイヤーが実施できるアクションには、経済状況を改善する、社会改革を行うといった政治家らしいものから、宣伝を行う・扇動するといったプロパガンダ活動、社会を不安定化させる、暴動を起こすといったアナーキーなものまであります。

登場するリーダーはそれぞれ得意とする活動種類があり、アクションに参画させることでボーナス効果を得ることができます。

1920年代を中心に発生した様々な国内外の事件・危機は様々なタイプかつ影響範囲が異なるイベントカードとして扱われます
ドイツについてはベルサイユ条約により戦勝国に対する重い賠償金支払を課せられており、経済情勢や政治・外交の結果として状況が変わります。支払が滞ることでフランスによる「ルール進駐」が発生するかもしれませんし、国内世論も左右します。経済情勢も細かく設定されており、最悪のランクに陥ると国家経済が破綻します。
周辺の中小諸国に対しても政治活動を実施することができ、中小国について政治形態について影響を与えることができます。

 

かなり情報量が多いマップ。カラーリングもあってかなり”うるさい”印象を受ける。
体系的にわかりやすく配置するよりもマップの中にありとあらゆる情報をいれこんでしまえとばかりに、様々な要素が配置されているため、どこに何が書いてあって、何を表現しているか、慣れるまで何度も探し回ることになる。ルールブックやプレイエイドには記述はなく、マップ上だけで説明されている事項や説明が不十分な事項があったりと理解するのに、カードを含めていったりきたりする必要があり、ゲームの混乱の元凶のひとつとなっていた。

ゲームの主な舞台となるのは、マップ左上にあるドイツと、右側にあるイタリアだが、周辺諸国もバラバラに記載してあってこれも直感的とは言えず、わかりづらい。
中央にある山形のグラフ(拡大図は次の写真)は、ドイツ・イタリア国内における各社会階層・クラスの政治的な支持状況を表しており、混然としたマップ内でも最重要の情報となる。

 

プレイヤーが扱う勢力(政党)と中小政党と選挙

プレイヤーは両国における、社会民主主義共産主義全体主義をそれぞれ標榜する政党を操っているということになるのでしょう。両国には3勢力以外にも中道的な政策を掲げた中小政党も存在し、ゲーム内において協力や提携関係を結ぶこともあります。

数年に1回、選挙が行われます。ドイツにおいては大統領選挙と国会議員選挙、イタリアにおいては国会議員選挙です。
両国の各社会階層・クラスによる支持状況によって大統領の選出から、国会における議席専有状況が変わってきます。第1党になることによりドイツ・イタリアにおいて首相を輩出させることができます。得票状況によっては自勢力だけで優勢状況を獲得しえずに思想が近い中道の小政党と組むことにより連立政権を組むことになるかもしれません。

 

ドイツ・イタリアの政治情勢を表現する三角形の図。山の頂上に「ファシズム全体主義)」、左下に「社会民主主義」、右下に「共産主義」と記されている。上にいくつもおかれたマーカーはドイツとイタリアの社会階層を表したマーカーで、それぞれのマーカーの位置が彼らの政治的な支持状況を表している。アクションの結果としてこの位置は変わっていく。

選挙はこのマーカーの位置から支持政党が決められ、各階層に設定された人口値から得票数値が計算される。
プレイヤーが扱う3勢力の他、中道の中小政党として、中段左側から「自由主義:LIBERALS」「キリスト教主義:CHRISTIANS」「国粋主義:NATIONALISTS」「社会主義:SOCIALISTS」とならんでいる。これら政治信条を持った人々にとっても、選挙の状況次第ではプレイヤーが扱う3勢力と連立政権を構成する可能性がある。

 

政権をとったもの勝ち、ただリスクもある

政権をとった勢力は経済政策、社会改革を行う、法律を作るといった政策を実施するにあたって他勢力に比べ有利になります。他にも、(対抗勢力のリーダーユニットを)逮捕する、(逮捕されているリーダーユニットを恩赦などによって)釈放するなども優位に実施できるでしょう。

一方で混迷する自国経済を改善していく必要に迫られます。ドイツ・イタリアの経済状況は細かく8段階で設定されています。単に良い悪いではなく、景気が上向きなのか下向きなのかといった傾向まで設定されています。

 

 

細かく設定された社会階層

ドイツ・イタリアの社会階層として、「役人」「企業家」「富農/地主」「中間層」「労働者」「農民(小作農)」「婦人」と7つのクラスが設定されています。

ドイツ・イタリアの国内マップは、6~7個のエリア(Region)と4個の都市部に分けられており、それぞれのエリアや都市によって各階層の居住状況が異なって設定されています(都市部と工業地帯、または農村部とでは異なる)。さらに各階層における、政治勢力への好悪によってなびきやすいクラスとなびきにくいクラスが設定されています。
例えば、「全体主義」は「企業家」クラスには好かれていませんが、「労働者」「農民」クラスには好意的に見られています。「共産主義」も似た傾向があり、「労働者」「農民」クラスには好意的に見られていますが、「起業家」「富農」クラスには嫌われています(まぁ、当然ですね)。

「労働者」「農民」クラスは人口が多いのですが、金回りはよくなく支持されても政治資金の獲得にはつながりません。「資本家」「富農」クラスに支持されると政治資金にプラス効果があります。

7つ目のクラスとして登場する「婦人」クラスについては女性参政権が成立してはじめて政党支持のマップ上に登場します*1

 

ドイツ地図部分と、ドイツの国会の議席状況を表したパート(右側の四角の部分)。
3勢力はドイツマップの、どのエリアまたは都市でアクションを実施したかによって、影響を与えることができる階層・クラスが異なってくる。農村地帯と工業地帯に違い、また後述する「LOW」アクション(政策を実施する等)は首都でなければ実施できない等。

 

政治活動を表すアクション

政治活動を表すアクションとして7種類のアクションが設定されています。プレイヤーは、各ラウンドにおいて複数のアクションを実施できます。アクションを単体で実施することも可能ですが、リーダーユニットを配置することや資金を投入することにより成功率が高まりますので、実際はリーダーユニットの数や資金量が同時に実施することができるアクション数が影響しそうです*2
また他プレイヤーが実施するアクションを妨害するというアクションも可能です。おそらくゲームが進むにつれ、焦点となるアクションに対しては他プレイヤーからの妨害等を考慮していく必要がでてくるということなのでしょう。

  • プロパガンダ:宣伝・扇動活動により直接民衆の支持を動かす
  • UNREST(不安定化活動):デモなど政権への反対運動を行う(社会の不安定化)
  • PUTSCH(暴動):政権打倒の暴動を起こす(社会の不安定化)
  • 逮捕:対抗勢力のリーダーを取り除く
  • SQUADS(襲撃):対抗勢力のリーダーを(非合法に)取り除く
  • 釈放:逮捕されたリーダーを釈放する
  • LOW(法):大統領・首相を含む国会議員が実施できる行為。例えば「法律」を設定する*3経済の改善等の施策の実施

暴力的なアクションもあるのですが、”合法的に”という観点で言うと特に怖いのは「法律」を作るという点でしょう。
設定できる法律はイベントカードに依存するのですが、政権を取った上で例えば日本で言うところの「治安維持法」のような法律を施行することで、反対勢力を一斉に非合法化するというのは常道でしょう。

 

注:本記事を書くにあたって直訳して記述しているため、ルールブックや各種エイドをじっくりと読み解いた場合は内容が異なることがある。例えば、UNRESTとPUTSCHが厳密にはどう異なってくるのかなど整理されていないまま書いている。ご了承いただきたい。

 

多士済々のリーダーユニット

プレイヤー勢力、または中道の小勢力含め政治信条によって色分けされた複数のリーダーユニットが登場します。リーダーユニットはそのまま選挙で勝つことにより、大統領・首相・国会議員として活動させることも可能ですし、また各ラウンドのアクションを行う際に、リーダーユニット毎に設定されたスキルに従い、効果修正を行うことができます。

なおリーダーには初期状態で自陣営に参画しているものから、在野状態で各ラウンドのアクションの中でスカウトしてくることもあります(例えば、ゲッペルスは初期段階では在野状態)。

 

今回担当した「共産主義」陣営に初期配置(1919年)時に配られるリーダーユニット。左のローザ・ルクセンブルクは教科書あたりでも登場した覚えがある(不確か)。隣のリープクネヒトと共に第一次世界大戦中から共産主義を標榜したスパルタクス団として活動を行った。二人とも1919年1月、ワイマール政権に反対したスパルタクス団蜂起で死亡している・・。なおスパルタクス団はその後、ドイツ共産党に変遷していく。
ルクセンブルクは「UNREST」、リープクネヒトは「LOW」のアクションに対して修正値を与えられている。

右側はイタリア共産党創立時からの活動家のグラムシムッソリーニ政権に反対して国外に亡命したり、戻っては不逮捕特権を狙って下院議員になったりするも結局は逮捕され、獄中で健康を害し、釈放された直後に病死(1937年)。

 

ファシズム陣営の面々。写真にははいっていないが、他にゲーリングがいる。
他陣営に比べてひとりひとりのスキルの修正値が大きい印象。また他2勢力は「LOW」スキル、いわゆる政治家が多いのに対し、ファシズム陣営は「プロパガンダ」やアナーキー系のスキルをもったリーダーが強い印象。ヒトラームッソリーニにはマイクのアイコンがあるとおり演説の名手であることを表す。ゲッペルスのユニットにあるアイコンはラジオ放送で効果があるということ。3人ともスキルとしては「プロパガンダ」。さらには修正値がかなり大きく、それだけ多くの民衆の支持を左右することができる。
レームは突撃隊を率いた事で有名な人物。確認はしていないが、「SQUADS:襲撃」あたりのスキルが設定されているのではないかと思う。

 

ゲームスタート時の在野のリーダー諸氏。政治信条により色分けされているが、政治信条が自勢力と異なるリーダーをスカウトすることができるかは未確認。

 

ゲームの状況

第1ターンは1919年。このターンだけは通常の3ラウンドではなく2ラウンドで構成。第1ターン終了時にドイツでは大統領選挙、イタリアでは国会選挙が予定されています。
初期状態では両国とも「社会民主勢力」が政権を担っていますが、イタリア国会では共産勢力が国会のかなりの割合まで議席を有しています。

初期状態で「社会民主」が資金量豊富で他2勢力を圧倒しています。「共産主義」はもちろん、「全体主義」はさらにまだ弱小であったということでしょう。

ヒトラーは最初から「全体主義」陣営に参画しているのですが、強制的に発効している特別イベントにより「我が闘争」の上梓までは、その驚異的なプロパガンダ能力を封じられており、他の凡百のリーダーと同レベルのスキル値になっています。どうすれば「我が闘争」が上梓されるかはよくわかっていないのですが、イベントカードがあるのではないかということで進行*4

ドローしたイベントカードを晒すのですが、どうすれば発効するのかがよくわからず、これまたルールブックからプレイエイドから、GeeKことBGGのサイトのフォーラムを探すことになります。

もうひとつ問題になったのが中小国に対する工作活動の実施です。特に東欧諸国にある「ソ連ボックス」、バルカン半島エリアにある「トルコボックス」の扱いも納得がいく理解レベルには至りませんでした。

いくつかのアクションがこなされ、政治支持状況を表す山形の図面の中でいくつかのマーカーが移動されたり、また引っ張り合いがされます。
共産主義」については、ドイツについてもイタリアについても嫌悪が薄い「労働者」と「農民」クラスを引っ張り込みます。「社会民主主義」と中小政党の離間を行います。ただこの時期、資金量が小さいため実施できることは限界があります。
「労働者」「農民」は政治献金能力もないため、資金の追加も望めません。

ようやく2ラウンドの操作が終わり、ターンの手続きの最後に「選挙」が実施されます。

 

「選挙」の判定手順がまた煩雑です。
各階層の支持状況を表すマーカーの位置から、各勢力(中小政党も含む)の得票状況が計算されます。その後、国会選挙においては全体に占める得票状況の割合から、議席の確保が判定されるのです。

結果、ドイツ大統領選挙において人口値が大きい、「労働者」「農民」階級の支持を得た「共産主義」が勝利を収め、同陣営から大統領を輩出することになります。大統領はすぐさまドイツ国会の解散を行ったため、国会選挙が行われるのですが、こちらも「共産主義」が第一党となるのですが、圧倒的優勢には至らなかったため、「社会主義」政党との連立政権となり、第一党から首相を出すことになります。
イタリアの国会選挙でも同様の結果となり、「共産主義」政党が第一党、「社会主義」政党との連立政権を打ち立てることとなったのです。
ただ次のターンからは政権与党として、経済状況をはじめとする政策を実施してく必要があります。場合よればその不調や失敗を他勢力から攻撃されることも十分予想できます・・。

と、ここまで第1ターンの処理で5時間を要し、精魂尽き、誰も第2ターンへの進行を言わなかったため、終了となりました。

 

感想戦

デザイナーはヒトラームッソリーニが合法的に政権を取ったのかをシミュレーションしたかったのだろうと思われます。逆に、社会民主主義がなぜ支持を失ったのか。ファシズムと同様にドイツやイタリアの労働者や農民階級において一定の支持を得ていたはずの共産主義がなぜにメジャーメントになりえなかったのかを描きたかったのではないかと考えます。

これらを描き出すにあたってただ政権をとったとられたとか、世論を味方につけたとか、イベントカードで強制的にイベントを起こしてゲーム内に波乱を起こしてそれらをどう収めるのかといった過程を表層的にゲームに描くのではなく、当時の国内社会の構造を地理や、社会構造的な側面までゲームシステムに落とし込んでいき、複数の要素を配置することでその結果として世論がどのように動くのかを再現する、という意図を感じました。いわゆる社会構造のシミュレーション環境をゲームシステムとして構築して、そこに状況をセットすることで複数の因子がどのように作用しあうのかを実験したというのでしょうか。当然、経済情勢・周辺国家の状況、さらには戦勝国として大国の状況などもそこに直接・間接にどう影響するのかまでを含めて。
それはある意味成功しているとも言えるのですが、ゲームとしては非常にわかりづらくなってしまったのも事実です。骨格となるシステムはしっかりしているように見えるのですが、様々な要素を詰め込んだ結果が、マップレイアウトに端的に現れている、”ちらかり具合”のように感じました。

ゲームとして見た場合、ルールブックとプレイエイドとマップ上の説明、またはカードの記載事項などなどが整理されてなく、それぞれがどのように作用するのか、何が有利で何がダメなのかといったことが非常にわかりづらくなっています。
ディベロップの段階でもっとこれらが整理されているとスムーズにプレイにはいることができるし、またひとつのターンに5時間も要したりはしなかったと考えます(ルールブックには1ターンのプレイ時間は1時間と明記してあります)。

シチューエーションを借りてきただけでテーマがフレーバーで終わっているボードゲームが少なくない中、ゲームシステムをきちんと構築して、そこに状況を落とし込むことで作動させるという骨があるデザインがなされたこころざし高いゲームだと思われますので、何かしら改善の上、再戦ができればよいかなと思います。ただ今はそれだけの気力は溜まっていないです。

 

 

(終わり)

 

 

 

*1:こうした細かい趣向が随所に施されており、感心するのと同時に煩雑さ増す要因になっています

*2:こうしたゲームシステム上のコツはまだよく解明できていない

*3:ここでいう「法律」はイベントカードとして配られたカードを指す。

*4:これも推測ですが、「我が闘争」上梓後はヒトラープロパガンダ能力にどう対抗していくのかが他2勢力の課題となっていくのではないかと考えられます。

「SMOLENSK」(MMP)を対戦する(1/2)

MMP社が発売している作戦級ゲーム「OCS」(OPERATIONAL COMBAT SERIES)の中の一作で、独ソ戦初期の中央軍集団における戦いを扱った表題ゲームを4人対戦しました。

 

 

このブログでもOCSのシリーズ作品は数回とりあげています。

「KOREA -Forgotten War-」 朝鮮戦争

「Blitzkrieg Legend」 1940年西部戦線における電撃戦

 

ユニット数が多くはない「KOREA」はまだしも「Blitzkrieg Legend」になるとひとりで一方の軍を担当するのはかなり辛くなります。人の管理範囲を超えるのです。OCSのデザイナ自身もこう言っています。

OCSのプレイには時間がかかります。ゲームのターンを進めていくには、あなたが考えるよりも長い時間を必要とするでしょう。・・OCSの比較的大きめのゲームをプレイするための最善の作は、多人数プレイを行うことです。
ープレイヤーズノートより抜粋ー

 

OCSの特徴

  OCSのルールは以前の記事で紹介しています。またネット上でも良質な紹介記事・プレイ記事が少なくないため参照してください。
今回のプレイにあたって再認識した点も含め改めてOCSの特徴を書くと、次のようになります。

 

  1. 補給ルールが独特
    補給ポイントを補給源から、鉄道・トラック・馬車・飛行機などを用いて前線近くまで運んでいく必要がある
  2. 補給ポイントは、移動(燃料を必要とする装甲ユニット・自動車化ユニットが対象)、戦闘(全部隊が対象。攻撃を行う際だけではなく、防御を行う場合も必要)、砲兵による砲撃の実施、出撃した航空部隊の整備を行った際などに消費される
  3. 弱ZOC、May Attack
    弱ZOCのゲームは少なくありませんが、OCSのZOCは弱ZOCの中でもさらに弱い。歩兵ユニットの場合は実質ZOCはなく、簡単に戦線に侵入される
  4. 自分のターン中に自ユニットを「予備(Reserve)」に指定することができる。予備(Reserve)をうまく使いこなすことはOCSの要所のひとつ。
  5. 各ユニットには練度や士気を表すAR(1~5)が設定されておりARの値についての彼我の差は戦闘解決時に大きく影響する
    OCSの戦闘解決では戦闘力比を求めて解決する前に、奇襲チェックを実施する。奇襲チェックでは攻撃側・防御側のユニットのAR値の差を修正値とすることから、今回のソ連軍とドイツ軍のようにあまりにもAR値の差があると、攻撃・防御とも、奇襲チェックが成功することで、戦闘力比が簡単にひっくり返る可能性がある。もちろんAR値が優位なドイツ軍には良い話ですが、ソ連軍にとっては都度都度の戦闘を行うかどうかの判断にあたって大きな問題となってくるだろう。

本ゲームでの両軍の概観

  ソ連軍は歩兵は師団単位、砲兵は旅団単位、戦車・騎兵などは連隊~師団単位。額面戦力は大きくても練度や士気が最低であることを表すAR=0というユニットやAR=1程度のユニットが少なくありません。特に戦車旅団は数が少ない上に大部分はARが低いです。おそらく装備だけ与えて前線につれてこられたような部隊でしょうか。歩兵師団もAR=1と2が半々くらい。対するドイツ軍のARが軒並み4や5といった数値であることから、ARの値の差により、こちらから攻撃を行なった際に、逆に防御側から奇襲を受け戦闘力の比率を簡単に逆転されてしまう懸念があります。攻撃に際にしてはARが高いユニットを混ぜて実施するなど対策が必要です。
さらに、ソ連軍ユニット全般に足が遅い。移動モードになることで多少は増えるのですが、機動力はないと言って良いでしょう。
師団数は膨大です。太平洋戦域の日本軍と比べると1つの作戦に投入される師団数が信じられないくらい多いです。民兵のユニットも多いです。わずかながらNKVDのユニット(ドイツ軍の武装親衛隊ユニットが黒色であるのと同様、ソ連軍のNKVDユニットは赤色です)も登場します。

  頼みは砲兵旅団。火力26というのはドイツ軍の砲兵ユニットにひけをとらないし、さらにはやたらと数があります。砲撃の解決には通常の戦闘と異なりARの値が関係ないため砲兵ユニットのARの値が低くてもマイナスの影響はない点も良いです。戦闘解決にARが関係ない砲撃は安心して実施できるのです。もちろん砲撃では、通常攻撃とは異なり、相手ユニットを完全に除去するまに至ることは難しいし、戦闘後前進などを行うことができる訳ではありません。ただ、攻撃準備にはいったような敵スタックを混乱させることにより攻撃の出鼻をくじく、という相手からするとイヤな攻撃を行うことができます。

  補給は全般に良好。前線部隊への補給の渡す元となる司令部ユニット、後方の補給源から司令部がある補給集積地まで補給物資を運ぶトラック・鉄道・馬車も数が多いです。毎ターンに支給される補給物資の量もドイツ軍よりも多いくらいで、補給について言えば、ドイツ軍よりも状況は良好です。

  航空ユニットはドイツ軍に比べると数は多くないし、機体の性能の絶対比較ではなく、当時の搭乗員の練度や士気も含めての性能なのだろうと思われますが、性能差もあります。制空権はまだまだドイツ軍が握っていると言ってよいでしょう。

 

  ドイツ軍ユニットは装甲師団の主力ユニットは大隊~連隊単位。歩兵師団は師団単位ですが、後述するとおり連隊レベルまで分割することが可能です。独ソ戦開戦から2ヶ月目とあってまだドイツ軍の部隊は精鋭状態です。部隊の練度や士気を表すAR値は、最低でも3で、ARの最大値である5や4のユニットが大部分です。
装甲ユニットや自動車化ユニットはソ連軍とのAR値の差が大きい事からも、移動フェイズの移動途中で追加の移動力を支払って実施することができる「オーバーラン」を多用することでソ連軍の前線を切り崩していくことになります。一線のスタックがオーバーランを行い、戦線に穴を開け、「予備(Reserve)」に指定されていたユニットが突破フェイズを使って突破するのです。

ただし装甲ユニット・自動車化ユニットは移動を行うには補給ポイントを消費します。戦闘においても同様です(戦闘にあたっては歩兵ユニットもポイントを消費する)。ドイツ軍はこのシナリオにおいて補給状態は、若干ソ連軍に劣ります。前線の進撃速度に後方の補給ネットワークが追いついていない状態とでもいうのでしょうか。

  ドイツ軍の標準的な歩兵師団です。ドイツ軍の歩兵師団は連隊単位に分割して展開することが認められています(ソ連軍の歩兵師団は分割不可能)。これにより広く前線に展開することも可能だし、また後方警備などにつかせることも可能です(ドイツ軍占領地の都市部にドイツ軍ユニットが存在しない場合、パルチザンが湧くことがあります)。

  OCSにおいて鉄道は補給ネットワークを設定するにあたって最重要といいって良い基本のルートなのですが、ソ連国内の鉄道の軌間はドイツのものと異なることから、ドイツ軍の前線後方では鉄道工兵が軌道幅の変換をせっせと行うことになります。

  制空権はドイツ軍が抑えています。戦闘機ユニットの性能を見ると、ドイツ軍の主力のBf109f型が「4」なのに対し、ソ連軍のMig3などの戦闘機は軒並み「2」です。バトル・オブ・ブリテンでは問題となったドイツ機の航続距離の短さも、ここでは問題にはならないようです。ユニットの能力値を見ると、短すぎる航続距離で問題があったBf109よりもソ連軍の戦闘機は軒並み航続距離が短いです。戦闘機以外にももちろんスツーカ(Ju87)もJu88、He111といった爆撃機も登場します。機種毎にユニット化されているため、いずれ両軍の航空機を眺めてみたいです。

 

ヒストリカルな情報

スモレンスクの戦いの流れを説明しようとしましたが、なかなかに複雑なのでいつものwikiを参照してください。

今回行なったシナリオ5「Early August」は、ゲームは8月8日に始まり9月半ばまでの全10ターン*1スモレンスクはシナリオがはじまる直前のタイミングで陥落しており、前線がスモレンスクを超えたところからはじまります。史実ではスモレンスク付近だけでも複数の戦闘が継続的に並行して発生していますが、中でもスモレンスク南東にあるエリニャを巡る攻防が9月にかけて行われ、いったんはソ連軍に奪還されます。

ゲームでは、8月19日のターンにドイツ軍はヒトラーの指示によりごっそりと兵力を抜かれてしまいます。抜かれた先はキエフ包囲や南方軍集団が征くウクライナ攻略です。
あわせてソ連軍側も同じタイミングで兵力を抜かれることになります。

勝利条件は指定された複数の町を、シナリオ終了時にいくつ確保できるかによります。


シナリオスタート時のソ連軍前線をユニットの配置をたどって赤線で書いています。マップは南北が逆なので注意。青字がドイツ占領の主な都市・町、赤字がソ連支配下の都市・町。読み方はいちおうグーグルマップとグーグル検索からとりましたが、原語がロシア語表示なので正確でないかもしれません。
マップ中央を東西にはしっている鉄道と道路が、かつてナポレオンも通ったモスクワ街道になります。
なおタイフーン作戦はこのゲームの期間(1941年9月まで)の後、10月に発動されます。

シナリオ開始時のモスクワ街道以北の北部戦線を中心の状況。上のVASAALマップではユニットがどれほど積み上がっているのかわかりづらいですが、実マップではユニットの密度がわかりやすいです。

 

(つづく)

 

 

 

 

 

第1特集が独ソ戦開戦から本ゲームで扱っているスモレンスクの戦い、キエフ包囲あたりまでを戦略レベルで取り上げています。

独ソ戦の本質を扱った入門書にして最良の書

 

 

*1:ちょっとここは怪しいの要確認です

SWORD OF ROME(GMT GAMES)を対戦する(2/2)

共和制ローマによるイタリア半島統一をテーマにしたマルチプレイヤーゲーム「SWORD OF ROME」を対戦しました。標準の4人プレイでは次の勢力が登場します。

 

今回、ガリアを担当。
ガリアは一貫した政策や方針というものを持ち得なかったということで、特別ルールにより、持ち札を次のターンまで持ち越せませないとされています。宵越しの銭は持たない的な発想のため、強力なカードが手元に回ってきたときには、そのターンのうちに使いたくなる性を負っています。他に勢力別のルールとしては、一度の活性化の際に移動することができる距離が、一定ではなく、ダイスにより決められます。他勢力よりも多く移動できることもあれば、少ししか移動できないこともあるということになります。

 

Sword of Rome - Front Box Cover - Second Deluxe Edition

 

 

 

 

序盤の展開

ゲームスタート時点の頃、北イタリアはガリア人が多く跋扈していました。史実ではガリア人はローマに乱入しローマは陥落寸前までいきます(前記事参照)。

ゲームでもガリアは北イタリアを拠点に、勢力圏を接するエルトリアの領土を略奪して回ります。さらにアクションカードにより優秀なリーダーユニットであるブレンヌスのドローに成功します。
ブレンヌスは活性化値が「1」と最低値のためどんなカードによっても活性化できる上、戦闘力についても他勢力含めて頭ひとつ抜けているレベルにあります。通常、優秀なリーダーは活性化のためにはより大きなカードを出す必要があったりするのですが、ブレンヌスは活性化しやすい上、強い、という他勢力もうらやむ能力をもったリーダーです。
ガリアについていえば、ブレンヌスを除く他のリーダーユニットは無名ユニットばかりで、標準かそれ以下の能力しか持っていません。、他勢力の討伐軍を前には逃げ帰ることが度々ですが、ブレンヌスにはその心配はありません。

略奪はガリア人だけが行うことができるアクションで、一定回数の略奪を行うことで勝利ポイントとすることができます。他の勢力が都市の占拠でしか得点できないに比べると、ほか勢力にはない得点方法を持ち合わせているというだけでも有利といえるでしょう。

今回ローマを担当したMさんからの助言では、ガリアは特徴を生かし略奪をくりかえすことで得点し、勢力圏を接するエルトリアとは、一定回数の略奪を認めることを条件にそれ以上の侵攻を行わないという同盟を結ぶべきだということでした。

 

ガリア人の跳梁跋扈に業を煮やしたエルトリア人は遠くアルプス以西のガリア人(遠ガリア人)を呼び寄せ、ガリア人勢力の勢力圏に侵入させます。
が、略奪中のエルトリア領から取って返したブレンヌスの軍勢は侵入してきた「遠ガリア人」の軍勢を一撃で屠り、追撃により第3ターンにはアルプスエリアに追い返してしまいます。

「遠ガリア人」はイベントカードで登場します。エルトリア人がこのカードを発動すると、アルプスあたりからノンプレイヤー勢力として「遠ガリア人」の軍勢がガリア人勢力のエリアに南下侵入してきます。カルタゴもそうですがノンプレイヤー勢力は撃退されるまで暴れ回るのです。

 

この頃、ギリシャ人はシチリア島の東側にあるギリシャの植民都市シラクサから、西側にあるカルタゴの都市マルサラに対して攻撃を仕掛けますが敗北しています。

ガリア人勢力がシチリア島まで影響を及ぼすことはないのですので、イベントカードの中には、ガリア人傭兵が各勢力に雇われていたことから、ガリア人の状況により他勢力の兵力が増減するイベントがあります。

ローマはローマのすぐ南側に、中立勢力であるヴォルスキ族が居住するアンティウムという都市と隣接した状態から始まるため、最初の彼らの仕事はこのアンティウムの平定です。

アンティウムの現代の名称は、シミュレーションゲームファンにはおなじみのアンツィオになります。

アンティウムを平定したローマはどことも戦争関係を起こさずにしばらく富国強兵に務めるのでした。

 

プレイ初期状態。青色ユニットがガリヤ族。その南側にいる黄土色のユニットがエルトリア人。真紅のユニットはローマ。周囲の道路が集中している地点がローマ。そのすぐ南側のオレンジ色のユニットがいる場所がアンティウムになる。
緑色がサムニウム。わかりにくいがシチリア島の半島側にある水色ユニットがギリシャとなる。今回、ノンプレイヤー勢力となっているが、茶色のカルタゴ

 

中盤の展開

ガリアは1枚のカードを入手します。
攻城戦で効果が高いカードです。ガリア人特別ルールにより、そのターン中に使わなければ捨て札となってしまいます。
ガリア人はリグリア海に面したエルトリア人の都市ピサを攻撃することを決めます。
ガリア人のフルスタック状態の軍団がピサを包囲したところで、カードの効果によりピサの忠誠心を下げることに成功、ピサは陥落します。
その後、ピサに対して略奪を行うこともできたのですが(都市の略奪は膨大な戦利品を得ることができる)、ガリア人はピサを占領することを選びます。

都市の占拠は他の勢とっては唯一といってよい得点源なのですが、ガリア人は同じ土俵に乗る必要はなかったのかもしれません。都市の占拠にこだわらず、ガリア人だけに許されている略奪により得手を重ねるという方法のほうがありました。

 

コルシカ島の対岸、ガリア人の青いユニットが並んだ南側の地点がピサの都市。ピサの占拠はエルトリア人の怒りを呼び起こし、一方で調子に乗ったガリア族の軍団はそのまま南下しローマ人の都市に突入することを画策した。
アドリア海側で北上している緑色のユニットはサムニウム人の軍団。ガリア人の跳梁跋扈に手を焼いたエルトリア人が、自軍の代わりに討伐を依頼したことにより移動してきたのだった。

 

ギリシャシチリア島にてカルタゴとの島の支配権を巡る戦いを続けています。

ギリシャとローマは一時は同盟関係にあったのですが、ローマは半島にあったギリシャの植民都市ネアポリスを占領します。
ローマ対ギリシャの対決となりそうな場面だったのですが、ローマはギリシャとの衝突を避け、ギリシャに対して一度奪ったネアポリスを返却しました。

この時点で獲得得点でトップを走るガリア人は突出しすぎていたため、ローマはガリア人の討伐を期したのです。滅亡寸前まで追い詰められたエルトリアを助ける、と。そのため一時的にギリシャとは事を荒立てないことにし、係争の地であったネアポリスを返却したということです。

ガリアが外交能力に長けていればここでギリシャと結んでローマに対する牽制を行うといった作戦も可能だったかもしれませんが、ガリアはまだそこまでプレイを見通せていた訳では全くありませんでした。

ガリアは、戦闘力に優れるブレンヌスの存在、フルスタック状態の軍団を頼み、ローマ軍団の集結前に先行して都市を襲います。戦闘結果が思わしくない中、ローマ軍団は「キャンペーン」というガリア人が使えない技を持ち出し、2個スタックによりガリア人軍団を攻撃したのです。

1エリアにスタックできる軍勢ユニット数は決まっているため、通常であればスタック制限いっぱいの軍隊ユニット同士の衝突となるはずです。ところがカードにより「キャンペーン」を発動すると、2個のスタックを操作することができ、戦闘解決において共同攻撃ができるようになります。つまりは2個スタックが同時に攻撃を行うことになります。
ガリア以外の3勢力はカードにより実施可能です。デッキの中のカード枚数から言うと、ローマが最も発動しやすい攻撃方法になります。

異なるルートで進行してきた2個スタックにより狭窄されたガリア人は、ブレンヌスがいかに勇猛であろうとも力負けしてしまいます。ガリア人の最強スタックは壊滅し、ブレンヌスは除去されてしまいます。

 

終盤の展開

ブレンヌスユニットはターンが変わると戻ってきますが、最大戦力を失ったガリアに往時の勢いはありません。一度で失った軍勢を再動員するだけの力はありません。

エルトリア/サムニウムはピサのカタキ!とばかりに戦力を失ったガリアを北に追い立てます。兵力が足りないガリアは北部イタリア地方に逃げ帰ります。
それでもガリアは、機動戦にてエルトリア/サムニウム軍を叩きますが、数が足りないため双方とも決定的な勝利を収めることができません。混沌状態の中、一度は叩き出していた「遠ガリア族」が再びアルプスから侵入してきます。

他の勢力に比べ平和の時代が長かったローマが着実に力を蓄えており、終盤、ガリア討伐で軍勢の主力を北イタリアに送り込んでいたエルトリア/サムニウムの横腹・後背に襲いかかります。ギリシャも負けじと中部イタリアで、サムニウムの領土をぶんどります。結果、ローマとギリシャが同点だったようですが、ルールによりギリシャが勝利しました。

 

最終盤近くの状況。ガリア族は北部の山地近くまで追い詰められ、往時の勢いは全くない。ゲームはローマとギリシャが拮抗して終了した。

 

感想戦

ガリアは他の勢力にはない、略奪によって得点できるという違いを生かした展開をはかるべきであったのは書いたとおり。他プレイヤーと同じ土俵で戦う必要はなかった。都市の確保にこだわる必要はありませんでした。

マルチプレイヤーゲームの常として突出した勢力は他勢力からの引き落としに一斉にあうため、突出するにあたってはもっと慎重に行うべきでした。特に本ゲームは各勢力の間に緩衝地帯が存在しないため、誰かが頭抜けるということは他のどれからの勢力が衰えていることであり、差が小さいうちに抜けた勢力を叩いておこう、となることは必至でした。もっとシビアにゲームをコントロールすべきだったということでしょう。

ガリアの思考として有力なカードを使用することを優先したことから、打手が速攻にはしりすぎた嫌いがあります。ピサ陥落からローマ軍からの敗北まで、予備兵力を十分もたないままで対応したことから、主力が壊滅した後はその回復ができないままずるずると終盤まで至ってしまいました。有利なカードであっても見逃す決断も必要でした。

いろいろ反省点が多いゲーム展開でしたが、面白いゲームでした。

(終わり)

 

「SPACECORP:2025-2300AD」(GMT)を対戦する(2/2)

宇宙開発・宇宙探索を行う企業の活動を扱った「SPACECORP:2025-2300AD」を対戦しました。

 

ゲームシステムなどの紹介は前の記事を参照ください。

 

マーケット・ガーデン作戦を扱った作戦戦術級の傑作ゲームとして「Hell's Highway」(VICTORY GAMES)があるのですが、同作のデザイナーであるバターフィールド氏が手掛けた一作が本作になります。

 

 

マーケット・ガーデン作戦のデザイナーがSF作品!、と思って調べてみると、SFものばかりか様々なジャンルのゲームをデザインしています。

 

Clear Cover of Freedom in the Galaxy

uncaptioned image

後者の作品は、月刊タクテクスに収録されていましたね。

前置きはほどほどにしてプレイを紹介します。

 

 

 

内惑星探索時代(2025AD~2149AD)

「移動」「探索」「建設」が基本アクションです。それぞれのカードをバランスよく持っているとスムーズに進行します。移動距離も短く、障害もあまりありません。

マップ上が一通り埋まった頃、紫カラーのプレイヤーの探索チームが次のステージにつながるマップの外縁にあたる小惑星帯に突入しました。
各ステージには次のステージにつながる外縁が用意されているのですが、外縁に1番手と2番手に到着した探索チームは次のステージにおいてより優位なポジションからスタートできるという、ポールポジション的ルールが用意されています。
マップ外縁に到達したチームはゲームから外れるため、あまり早いタイミングで離脱するのは得策ではありません。マップ上でこれ以上の得点が稼げそうにないと判断したときに、動くことになります。
今回も、外縁に探索チームが到達した前後で、6つの契約条項が達成され、次のステージに移行することになりました。

 

最初にプレイされるアステロイドベルト内の内惑星マップ。月、火星とその衛星、小惑星、彗星、ラグランジュポイントが探索の対象となる。
各社の探索チームは良くある木製のキューブで表されているが、宇宙船のミニチュアユニットなんか使うといいかなと思う。

 

外惑星探索時代(2150AD~2299AD)

ステロイドベルトを超えた外惑星にはいって最初の難関は、放射能対策になります。

小惑星帯を超えた外惑星に至ると、移動や建設のアクションにあたって耐放射能シールドを施す必要があります。移動カード、建設カードについて、シールド能力がついたものとシールド無しのカードが登場するのですが、外惑星で活動を行う際には、使用するカードの中に少なくとも1枚はシールド付きのものを入れておく必要があります。
理想を言えば、HQシートのスロット上に、シールド付き移動やシールド付き建設のカードがセットされていると言うこと無しです。

外惑星マップ。各惑星の衛星をまで美しく描かれたマップデザインは印象的。木製・土星天王星海王星については惑星本体側ではなく、その衛星が探索の対象となっている。

 

外惑星に至ると建設コストが大幅に増加します。建設資材を遠い遠い、太陽の光も十分届かないような惑星・衛星に運搬するコストを考慮すれば当然ですね。
マップ上では、狭い範囲にあらゆる惑星・衛星が描かれているのですが、実際は外惑星は非常に大きな軌道を回転していることから、そこに至る移動距離は長大です。
このため外惑星から外惑星に直接移動する際の必要移動力は、地球などの内惑星から同じ目的地に行くときの必要移動力より大きくなります。
あちこちに仕掛けられた細かいギミックに唸らされます。

 

外惑星探索の終盤。左下の小惑星帯から右上の冥王星付近まで一通り探索され何らかの基地が建設されています。
外惑星を超えて太陽系外の宇宙に進出した頃、6つの契約条項が充足され、いよいよ恒星間探索の時代にはいっていきます。


内惑星探索時代には遅々として進まなかった技術開発もこのステージでは果実を得るようになります。意識的に技術開発カードを優先して使っていくことでかなり成果を得ました。

  • 「COOPERATIVE EMPATHY: 協力・共感」他のプレイヤーの基地やスロットのカードの能力を借りることができる。その際、報酬は不要
  • 「RADIATION RESISTANT: 放射能防御」 移動や建設において常にシールド効果があるとみなす

カード能力の内容は、作品世界の中での技術革新によって能力値が増えるような内容ではなく、ゲーム進行を助けるような内容によってきている、チートっぽくなってくる印象です。

 

恒星系探索(2300AD~)

美しかった外惑星探索ステージのマップと異なり、惑星の姿は影を潜め、マップ上には各構成系の恒星が描かれています。

太陽系から各恒星系への距離は今まで見たこともないような数字が並んでいます。最も太陽系から近いアルファ・ケンタウリまででも必要移動力は20になります。

移動カードは従来のカードではほとんど太刀打ちできなくなり、早急に恒星間移動に対応できる、これまでの、移動力を加算させるのではなく、乗算させる倍率付き移動カードを入手する必要がでてきます(例えば、移動力5のカードと、移動力×2のカードがあれば、10移動力(5×2)で扱うことができるようになるのです。

またこのターンから従来の基地に加えて、コロニーを建設することができるようになります。コロニー建設には専用のポイント計算が用意され、充足されれば建設ができます。
厄介なのは、ゲーム終了時点で保有していたコロニーの数によって得られる勝利ポイントの配点が大きいのです。
クイズ番組の終盤に出てくるボーナス問題に対するアンバランスな配点のようなもので、それまでの問題での得点は何だったの?という印象に近いものがあります。

 

外惑星ステージのマップの美しさは何だったの、と思えるほど殺風景な恒星間探索ステージのマップ。楕円形で表されたそれぞれの恒星系に対し、接合点に当たるひし形の部分に記入された数字が相互の距離になる。
オレンジとか赤色の光点は恒星。連星や三重連星などもあって、それぞれボーナスがあったりする。

 

移動ひとつをとっても今までのステージでの数値とは規模が異なるため、最初は四苦八苦します。いち早く良いカードを手に入れ、技術カードでチート能力を身につけるのです。「探索」の結果、宇宙人との遭遇もあります。

 

恒星間探索ステージの最終盤。マップ上の主たるところが埋まっているが、一度どこかの恒星系の探索に入ると、相互に距離がありすぎて他の恒星系に転進するのが難しくなってくる。

 

マップ上の探索可能余地が少なくなる頃、このステージにおける契約条項が達成され、ゲームは終了します。

 

感想戦

半日程度で宇宙探索の黎明期からはるか彼方の恒星探索までをたどることができる

プレイ時間は3~4時間といったところでしょう。
展開はかなり早いです。この時間内で3種類のマップをクリアしていくのです。
ルールは容易で、ゲーム前のインストによりすぐにプレイできます。ゲーム全体の見通しも良いため、初めてでもとまどうところは少ないように思います。

ゲーム中、競争は生じますが探索ものの特徴と言うのか、プレイヤー同士でバチバチに戦闘やつぶしあい、足の引っ張り合いが起こる訳ではないです。2人対戦よりももう少し人数が多いほうが良いでしょう。

後半、特に第3ステージになると必要となる能力値がインフレ化します。対抗するには、もちろん強力なカードをドローするというのはありますが、技術を発展させて技術革新のカードを多く手に入れる方が近道のようです。
この技術革新カードが曲者で、もちろんSFらしい「ハイパードライブエンジン」などと命名されたカードもカードあるのですが、SFや宇宙探索フレーバーは能力名称だけで、実際に得られる能力は、ゲームの進行をゲームとして劇的にスピードアップするような類のカード、チートっぽい能力が少なくない印象を受けました。

インフレ化した必要能力を、カードによるチートな能力によりクリアするのです。
ゲームの展開はスピードアップしていくのですが、この頃になると宇宙探索というフレーバーは急速に薄まっていき、より強いカードを用いて、得点源となるアクションを実施していく・・。ステージを重ねる毎に、宇宙探索というテーマの印象は薄まっていき、障害克服の作業を行なっているような気分になりました。ゲーム時間を短くするためにチートっぽい能力のカードを多く与えたこともまたその原因になっているように思います

とはいえ半日程度で宇宙探索の時代を追うことができるゲーム性が高い製品というコンセプトの作品ということでしょう。

 

まっすぐ前を向き明るく楽観的なある種「古き良きSF作品」のような宇宙探検を扱う

本作をプレイし驚いたのが、プレイスタイルや登場するカードなどに、他プレイヤーを蹴落としたり、積極的に邪魔をするようなものが用意されていないこと。むしろ基地や能力値の貸し借りができるため、危ない時はお互い様的な雰囲気も生まれがちだったりします。

宇宙探索ということで、探索チームの遭難や諸トラブルなどをルール化しがちなところを、そうしたアクシデント、障害系のイベントがほぼないことも、少々驚きました。
もちろん本作は会社を扱っているのであって、宇宙の彼方で探索活動を行っている探索チームの事故や遭難といったことは、現地で対処ができるレベルの問題であるため、ゲーム内に取り込んでいないというだけなのかもしれません。ただこういした悪いイベントや状況を出すためのカードがあまり登場しないことにより、本作全体を、まっすぐ前を向き明るく楽観的な古き良きSF作品のような雰囲気に包まれているようでした。

 

プレイやルールに対する見通しの良し悪し

同じ探検ものの作品に「HEART OF DARKNESS(闇の奥)」がありますが、本ゲームとはいくつかの点で対極的なデザインになっていると感じました。
両作品ともプレイヤー同士がバチバチに戦闘を行なったりするシーンはほぼ無いか、少ないです。「闇の奥」のほうがソロプレイ感は強いですが、相手を蹴落としたりする場面は両作品とも限定的です。

大きな違いはゲーム展開やルールの見通しの良し悪し。

もちろん本作は見通しが良い、しかもとても良い部類の作品。はじめてでもわかりやすい。さらに複数のステージを用意し、かなり早い展開で、スキル・能力のインフレ化を急速にすすみ、プレイヤーも高揚感を感じるかもしれません。
ゲームっぽい処理やボーナスカードの存在というゲーム性を優先したため、終盤は宇宙探索フレーバーはかなり薄まる印象。

一方の「闇の奥」は、見通しの悪いルールとゲーム展開に、最後まで未知の暗黒大陸アフリカ探検を最後まで淡々とこなしていく印象です。さらには探検を続けていくうちに少しずつ健康を失いつつ、狂気をはらんでいく・・という裏ストーリーも進行します。

こうして比べてみると同じ探検ものとはいいつつも、かなり性格が異なる作品になっています。決してどちらが優れているという話ではなく、むしろ今回本作をプレイして、「闇の奥」のプレイ時に感じた、ゲーム展開やルールの見通しの悪さは雰囲気の持続のために効果が有るものだと、むしろそのために分かりづらさを残したのか、と思ってしまったほどでした。

 

 

(終わり)

 

 

 

 

「SPACECORP:2025-2300AD」(GMT)を対戦する(1/2)

 

宇宙開発・宇宙探索を行う企業の活動を扱った「SPACECORP:2025-2300AD」を対戦しました。プレイヤーは宇宙開発を行う企業をそれぞれ担当し、太陽系内惑星から外惑星、さらには恒星間探索へと展開します。惑星とその衛星、小惑星、時には彗星を探索し、基地や居住地を建設し、資源を探す。技術開発を行ない、さらに遠いところへと探索を続けていく・・。外惑星帯ではモノリスを発見し、別の恒星系で宇宙人とのコンタクトもありえるかもしれません・・。

ゲーム開始時点の2025年では探索チームは地球から出発し、月や火星に行くのがやっとという程度なのですが、ステージが進むと、使用するマップもカードデッキも全て一新され、より遠く広い宇宙を舞台にしていくことになります。

 

 

 

 

ルール紹介

基本はカードドリブン

プレイヤーはカードを用いアクションを実施します。基本的なアクションは、目的地までの「移動」、目的地における「探索」、その後、基地などの「建設」の3つになります。地球から月、地球から月軌道上のラグランジュポイント、地球から火星・・とそれぞれ距離が決まっており、目的地までの距離をカバーするだけの「移動」カードを使うことにより移動が可能となります。移動途中という状態は認められていないため、目的地までの距離を超える移動力がなければ出発することができません。

「探索」を行うとその目的地(惑星・衛星・彗星などなど)がどのようなところなのかをマーカーを引いて決定することになります。水・資源・生命体などが発見されるとそれぞれによりその目的地の利用目的が異なってきます。珍しい地形や景観は観光資源になります。荒涼とした何もない場所などなど様々なパターンが提供されています。

目的地の様子がわかるとその結果によって、建設することができる基地の性格が異なってきます。宇宙港・製造設備基地・生命研究所・観光施設・資源採取基地などなど、これもまた10種類近くのバリエーションがあり、それぞれについて建設可能条件と建設することで得られる効果が異なります。
探索チームの拠点として使用でき、マップ上での探索チームの再配置場所に指定でき、さらに出発地として使った場合に移動力のブーストができる「宇宙港」、技術開発を進めることができる「生命研究所」、後々登場するコロニー建設など汎用的に役にたつ「工場」、外惑星以降で深刻な問題となる放射能対策ができる「シールド研究所」などが人気の基地というところでしょうか。

アクションにはその他にも、建設した基地での生産活動、資源採集など実をとるためのものや、技術の進歩を図るものなど複数種類があります。

 

最初にプレイされるアステロイドベルト内の内惑星マップ。
小さなキューブが各社の探索チーム、丸いマーカーが基地を表す。
同心円の中心部に地球・月がありその周囲にラグランジュポイント(引力がないため、宇宙港の設置に最適)、さらに外に火星と複数の衛星、また小惑星や彗星が探索対象として扱われている。

 

アクションカードには1回限りの使い捨てのものと、自分のHQシート上のスロットにセットすることができるカードの2種類があります。スロットにセットしたカードの能力は、セットされている限り恒常的に使用することができます。単体でも発動させることもできるし、使用する手札のカードの能力にプラスさせて発動させることもできます。

各プレイヤーが持つ「HQ(司令部)」と呼ばれるシート。
上段に並んだカードがスロットにセットされた4枚のカードとなる。
自分の手番の際に、HQにセットされた分だけで使用できるし(例えば移動の場合は、2枚のMOVEカードの合計値である移動力5となる)、または手札にあるMOVEカードの能力を足した移動力を発揮することも可能(手札に移動力2のカードがあったとすると、2+5=7移動力となる)。

スロットにセットするカードはより能力が高いカードをドローすると、アップグレードしていくことが可能です。ゲームが進むに連れ、必要となる能力値はインフレ化していくのですが、乗り切るにはスロットのカード能力をアップグレードしていく必要があります。

 

本来は自分の手札やスロットの能力を使ってアクションを行うのですが、どうしても望むアクションが手元に揃わないということもあります。外縁に行けばいくほど、移動や探索、建設に要するコストが高くなるため、手持ちだけでは如何ともし難い状況に陥ることもあるのです*1

こうした事態の解決にあたっては、他のプレイヤーのHQシート上のスロットに配置されたカードの能力をそのまま使うことができます。使われたプレイヤーは報酬として、カードドローができます。

 

3つのステージ

ゲームはアステロイドベルトまでの内惑星探索時代、アステロイドベルト以遠の外惑星探索時代、更に太陽系を飛び出した恒星間探索時代の3つの時代に分けられています。
それぞれの時代には条件を満たすことで充足する契約条項が定められています。各時代に7種類の契約条項があるのですがこのうち6個を充足すると、次の時代に移行します。

例えば最初の時代では「3つのラグランジュポイントに基地をつくること」、「火星に最初の基地をつくること」といったものが並んでいます。各条項を最初に達成したプレイヤーにはボーナスが与えらるのですが、ゲームを通して、重要な得点源になります。条項をよく理解していないと重要な得点チャンスを失うことになりますので、ゲーム中、条項の内容は頻繁にチェックしていったほうがよいでしょう。

 

3つのステージそれぞれで達成する契約条項が記載されているシート。7つの条項のうち6つ達成すると次の時代へすすめることができるようになる。

 

時代を移行するとそれまでの状況は精算されます。マップもアクションカードも一新されるのです。

ゲームは各時代毎に行うシナリオプレイもできるようですが、3つの時代をぶっ通しで実施するキャンペーンゲームでも3時間強~4時間程度があれば完走できそうです。

 

技術開発を行い新技術を手に入れろ

カードの中には枚数は少ないのですが技術開発を行うというカードがあります。技術開発には「Adaptation(適用)」と「Breakthrough」の2種類があり、別々に進化していきます。
技術開発を行うポイントが3ポイント(だいたいアクションカード3枚分)貯まると、技術進化のカードをもらうことができるというものです。

技術進化によって取得できるカードは「移動」「探索」「建設」といった能力値をあげるようなものの一方(移動力など、加算だけではなく、乗算できるカードも登場する)、いかにもゲーム的な解決を行うカードも少なくありません(どちらかというとそういう色が強い印象)。

「他人のスロット上のカードを報酬無しに使うことができる」
「移動や建設にあたって常にシールド状態とみなすことができる」
「基地を建設する際に1個分の建設コストで2個の基地を同時に建設することができる」

 

序盤から中盤にかけては技術開発は遅々として進まないのだが、終盤になるとどんどん進んでいく。ジャンプドライブエンジンなどいかにもそれっぽいカードもあるのだが、殆どはプレイヤーにかなりの能力を与えることで、ゲームの進行をスムーズにさせたりスピードを早めてしまうようなカードが多い。中には技術進歩というよりは、チート技のようなものもあるなど、このあたりいかにもゲームっぽい仕様になっている。

 

(つづく)

 

 

 

 

まっすぐで、夢や希望、時として楽観主義的な明るい宇宙開発・宇宙探索が描かれた作品群です。

宇宙もののハードSFとして入門中の入門にして、最高傑作と言ってよい作品。これを読まずして何を読む?二転三転するストーリーは最後まで飽かせず、ラストの大団円で解決と思ったさらにその先に描かれるエピローグに呆然となりつつ、大感動、ボーダの涙にまみえること請け合い。
星野之宣によるコミカライズ作品があるが残念ながらこの大感動要素を損なってしまっているのでダメダメ作品になってしまった。何故にそこを外す!?
ここまでの作品なのに映像化の声を聞かないのは小説として完成度が高すぎるからなのではと思っています。

 

本ゲームのボックスアートを見て最初に思い出したのが本作。
映画はさんざんな出来なので無視してよいが、原作は傑作です(若干古臭いところはあるが)。木星の雲の中にダイブする探索船の描写とかめっちゃワクワクします。

 

「星を継ぐもの」のコミカライズはダメダメですが、星野之宣の名誉のために代表作をあげておきます。

 

古典的名作。表題作のラストシーンは、思い出しただけでも泣くことができるくらい。

 

原作はコミックですがアニメがさらに傑作。NHKで再放送中なのでぜひ。
海外の名だたるSF作品に決して引けを取らない作品です。

 

2000年以降の作品がほぼ登場していないのは、SF界の良い読者でなくなったからですが、良い作品があれば紹介してください。

 

 

*1:手札制限枚数上限に引っかかって新たなカードをドローできない。しかもこのゲームでは使わないカードを何もせずに捨てることができないため、役に立たないカードを一掃することはできなくなっています。

SWORD OF ROME(GMT GAMES)を対戦する(1/2)

ポエニ戦争よりも少し前の時代、共和制ローマによるイタリア半島統一をテーマにしたマルチプレイヤーゲーム「SWORD OF ROME」を対戦しました。
4人プレイの場合は次の4勢力が登場します。

  • ローマ
  • ギリシャギリシャ人植民都市群)
  • エルトリア/サムニウム
    (エルトリア人やサムニウム人の都市国家群を表しまとめて1プレイヤーが扱う)
  • ガリア(複数のガリア人部族)

5人プレイの場合は、カルタゴがプレイヤー勢力として登場するのですが、今回は4人プレイだったためカルタゴはイベントカードによって活動するノンプレイヤー勢力となります。

 

Sword of Rome - Front Box Cover - Second Deluxe Edition

 

時代背景

全6ターンのショートシナリオの場合、ゲームが扱う期間は386BCから310BC。全10ターンのシナリオの場合の最終年は272BCになります。

塩野七生の代表作である「ローマ人の物語」の巻数にあてはめると、ゲームが扱う期間は単行本第1巻「ローマは一日にして成らず」の後半、文庫版であれば第2巻に該当します。

ゲーム開始年の前年にあたる387BC、北イタリアから南下してきたガリア人の族長で、ゲームにもユニットとして登場するブレンヌスに率いられた軍勢によりローマは占領されています。

 

Le Brenn et sa part de butin /Paul Jamin(1893)
左の男がブレンヌスさん

 

ブレンヌスはローマに対する身代金として1000ポンド(327キロ)の金を要求するのですが、その計測方法をもめているうちに、ローマのマルクス・フリウス・カミルス*1の軍が現れローマから追い出されてしまいます。カミルスは「ローマは金ではなく、剣でお返しする」とガリア人に言い放ったそうです。

10ターン終了時の272BCには、ローマは南イタリア(マグナ・グラエキア)にあったギリシアの植民都市タレントゥムを陥落させ、イタリア半島の統一を成し遂げます。

つまりゲームは、ローマが一都市国家に過ぎなかった時代からイタリア半島を統一するまでを扱っているということができるでしょう。
ちなみにショートシナリオ終了年の310BC近くの312BCには最初のローマ街道であるアッピア街道の建設が始まっています。「ローマ人の物語」でも強調されていましたが、ローマ街道は通商路であるのと同時に半島支配のための軍用道路でもありました*2

アッピア街道

 

ゲームシステム

マップ

ガリア人が優勢であった北イタリアから、エルトリア人やローマ人、サムニウム人の都市国家が並んだイタリア中央部、ギリシャ人の植民都市があった南イタリアからシチリアが描かれています。北アフリカに本拠地を持つカルタゴシチリア島ギリシャ人と争っていました。

 

 

勝利条件

勝利ポイントの対象となる都市を占拠(または失陥)することで得失します。ガリア人だけは都市の占拠の他、他勢力が支配する地点や都市に対する略奪を一定回数重ねることによっても勝利ポイントを得ることができます。
ゲームのスタート時点ですでに中立状態の土地や都市はほとんどありませんので、プレイヤー4勢力間には緩衝地帯はありません。言ってみればゲームスタート時点からバチバチの状態から始まるのです。VPを得るには他勢力が確保しているポイント対象都市を奪っていかなければならないことになります。取った取られた、という世界です。このゲームがゼロサムゲームと言われる所以です。

ゲームの進行

1ターンはおおよそ11年~14年くらいの間隔になっています。ひとつのターンには5回のアクションフェイズが含まれます。アクションフェイズ以外で実施する活動としてはカードのドロー、同盟関係の締結や破棄、徴兵の実施があります。勝利ポイントは毎ターン精算されます。

各アクションフェイズで実施できるアクションは基本的にはカードを使うことによって発動されます。

カードに記載されたイベントや特別のアクションを発動させるか、カード上のアクションポイント(1~3の数値)を用いて、軍勢を率いるリーダーユニットを活性化させる、支配下都市国家における支持値をあげる、追加的な徴兵を行う、といったアクションを実施します。

ユニットと戦闘

リーダーユニットはそれぞれ戦闘値と活性化値の2つのパラメータをもっています。
戦闘値は名前の通り戦闘時のダイス修正値になり、活性化値はそのリーダを活性化する際に必要となるアクションカード上の活性化ポイントになります。素早く反応をすることができる(=活性化値が小さい)リーダーもいれば、なかなか動いてくれない(=活性化値が大きい)リーダーもいるのです。

軍隊ユニットはスタックしているリーダーユニットを活性化することで移動を行うことからも活性化値が小さい指揮官に率いられた軍隊ほど活発に活動させることができることになります。

戦闘は3D6によって決まるためその結果はかなり振り幅が大きいものになります。運次第では多少の兵力差は跳ね返される可能性があります。
ダイスの目は、彼我の戦力差、指揮官の能力差の他、場所が自勢力か、またインターセプトや戦闘回避といった状況によっても修正されます。

野戦の他、都市に対する攻城戦があります。

戦闘の結果、損失を被ると政治的な影響が現れます。支配下にある都市における支持値が低下するのです。各勢力は都市国家の連合体であったため、自勢力の旗色が悪くなると配下の都市国家の支持をうしなっていくということを表しています。

 

ゲームに登場する勢力

ローマ

いわずもがな主人公格。他の勢力がアクションカードを7枚まで保有することができるのに対し、ローマは8枚保有できます。カードが多いほど手数が増え、選択肢が増えることになるので有利といえるでしょう。

ローマの執政官は定期的に選挙で選ばれていたことを受け、毎ターン複数チットから選択しなおします。また一部、強力な独裁官ディクテーター)ユニットも登場します。

キャンペーン(一つのアクションフェイズに2つのスタックの軍隊を移動・戦闘させることができる)が可能であったり、海軍を保有できたりと恵まれています。

ギリシャギリシャ植民都市群)

この時代、南イタリアからシチリアにかけてギリシャ人が建設した植民市/植民都市が多く存在しました。ギリシャプレイヤーは特定の植民市というわけではなく、これらの独立したギリシャ人植民市を代表する形でプレイに参加します。

ローマのリーダーが市民からの選挙で選ばれる執政官であったのに対し、ギリシャに登場するリーダーは傭兵でした。彼らは雇用主に対し従順であるよりも、野心をもった豺狼のような存在であったことから、ギリシャにおいてはリーダーを保有し続けると自国の都市の支持値が落ちます。彼らが雇い主に対してどのような態度をとっていたのか想像できそうですね。

エルトリア/サムニウム

ローマの周辺に存在した種族の都市国家群を表します。エルトリアとサムニウムは別種族ですが、ローマの勢力圏の拡大に伴い同じような道筋をたどってローマの支配下に組み込まれたことからか、1人のプレイヤーが担当します。

エルトリアは鉱山を有していたことから富裕で、敵勢力の軍隊ユニットを買収することができます。ただし鉱山資源は有限であったことから、枯渇チェックがされます。

ガリア人

ガリア人プレイヤーはガリヤ人の統一的な国家を扱うのでも、ガリヤ人の中の特定の有力部族を扱う訳ではありません。当時、北イタリアに居住していたガリア人全般を扱うことになります。

ガリア人は長期的戦略を持っていなかったため、毎ターン終了時に手元に残ったカードはすべて捨てる必要があります(他の勢力は持ち越すことができる)。このためガリア人は良いカードであっても後に取っておくのではなく、そのターンのうちに使用しないと損、ということになりがちです。

ガリア人は気まぐれなのでリーダーと軍隊ユニットの移動力は、そのスタックを活性化させたカードの活性化値によって決まります。他の勢力よりも多く動くことができる場合もあるし、少なくしか動けない場合もあります。

ガリア人部隊は、他勢力下の都市以外の地点に対して「襲撃」を行うことで略奪することができます。ガリア人部隊が戦闘に勝利した場合、また都市を陥落させた場合も、略奪を行うことができます。略奪したポイントが一定以上貯まると勝利ポイントに変更できることから、他の勢力が都市の占拠でしか勝利ポイントを稼げないのと大きな違いになります。

他にも、カードによっては攻城戦を著しく有利に行うことができる内容のものがあるなど、各所で蛮人パワーが表現されています。

 

ご参考:私編 ローマ史

ゲームが対象としている時代のローマ史をまとめてみました。

BC390

ブレンヌスに率いられたセノネス族が、エトルリアへと侵入。ローマは軍を派遣したが、アッリアの戦いに敗北した。3年後、ブレンヌスはローマを包囲し略奪した。

BC367

リキニウス・セクスティウス法制定。
コンスルの一人を平民から出すこと、貴族の公有地占有の制限などを定め、貴族と平民の平等化をめざした。

BC359

エルトリアの都市、タルクィニイ、ファレリイ、カエレとローマとの間に断続的に戦争が発生(~BC351)

BC343

共和政ローマアペニン山脈に居住するサムニウム人部族との間で第1次サムニウム戦争(~BC341)勃発

BC340

共和政ローマとローマ近隣のラティウム人およびラティウム同盟の間で第2次ラティウム/ラテン戦争(~BC338)が勃発

BC326

第2次サムニウム戦争(~BC304)

BC318

クラウディウスの制定
元老院議員及びその子弟二大型船舶の保有を禁じた。元老院議員が公益により利益を得ることを事実上禁止し、元老院が私欲によって開戦を決定することを封じる狙いがあった。この法律の結果、元老院議員は投資の対象を土地へと変え、大勢の奴隷を使った広大な農園が多く誕生することになった

BC312

ローマにおいてアッピア街道の建設が始まる

BC302

トランサルピナのガリア人がアルプスを越えてイタリア半島に侵入、キサルピナのガリア人は自領を通過して南下するのを許し、またいくつかの部族はこれに加わった(エトルリア人の一部も加わっている)。
ローマ領で略奪を行って撤退したが、しかしその後ガリア人同士での戦いとなった。

BC298

第3次サムニテウス戦争(~BC290)ガリア人はサムニウム、エトルリア、ウンブリアと同盟し、ローマと戦った。

BC287

ホルテンシウス法の制定
プレブス民会(平民会)の決定が、元老院の承認を得なくてもローマの国法となることが定められた。これによって、パトリキプレブスの法的平等が実現された。

BC284

ガリア人により包囲されたアレティウムを包囲に対し、ローマ軍は解放に向かったがガリア軍に敗北した(アレティウムの戦い)。
その後北方へ遠征したローマはセノネス族に勝利してその領地から追い出し、植民地を建設した。

BC283

ボイイ族(ガリア人)はエトルリアと連合してローマへ侵攻したが、ローマ軍はウァディモ湖の戦いで勝利した。

イタリア北部のガリア人勢力を弱体化させることに成功したローマは、アドリア海にまで勢力を伸張することとなり、ガリア人との争いも一時的に沈静化。ローマはその矛先をしばらく南方へと向ける(対マグナ・グラエキア、第一次ポエニ戦争)。

※マグナ・グラエキアは、南イタリアからシチリアを指す

BC280

ピュロス戦争(~BC275)
ギリシャの植民市タレントゥムは、バルカン半島にあったエペイロス王ピュロスに支援を依頼し、ローマ・カルタゴを相手に戦争を行った。
ピュロスは戦象を用いるなどローマ軍に二度に渡って勝利するが(ヘラクレアの戦い、アスクルムの戦い)、海を超えての補給が難しく損害がかさんだ。275年のベネウェントゥムの戦いに敗北するとイタリア半島から撤退した。

BC272

ローマは、南イタリア(マグナ・グラエキア)にあったギリシアの植民市タレントゥムを陥落させ、イタリア半島の統一を成し遂げた。

BC264

第一次ポエニ戦争

BC227

ローマはシチリアを属州とする

BC218

第二次ポエニ戦争が始まる(~BC211)

 

(つづく)

 

 

 

 

*1:戦争にはやたらと強いのですが、色々と問題がある人だったので、この時期ローマから追放されていたようです。

*2:アッピア街道はローマを起点に建設されたローマ街道のひとつ。延伸を重ね最終的にはイタリア半島のかかとのあたりまで伸ばされている。

イタリアの作曲家レスピーギ交響詩「ローマの松」4曲目「アッピア街道の松」では、在りし日のローマ軍団の行軍の様子が音楽的に描写されている。曲の最初、遠くから聞こえる行軍が次第に近づき、曲の最高潮では舞台上のオーケストラとは別の楽団(バンダ)まで登場させた音響により勇壮な行軍の様子を描いた。
チャイコフスキーの序曲「1812年」がナポレオン(の敗北)を描いた曲とするのなら、「アッピア街道の松」はローマ軍団を描いた曲と言えるだろう。

アッピア街道の建設はイベントカードでも登場する。アッピア街道が建設されると、ローマの軍隊ユニットは素早い移動が可能となることを表したルールが適用されるようになる(他勢力からするとかなりやっかい)。

「銀河帝国の興亡」(国際通信社/エポック)を対戦する(2/2)

かつてのSF少年少女たちがこぞってワクワクしてしまう、80年代アニメ、映画、小説を元ネタとしている小道具・大道具・設定などが集められた”ごった煮”マルチゲーム「銀河帝国の興亡」プレイ紹介です。

前記事ではすっかりスルーしてしまっていましたが、アイザック・アシモフの同名小説「銀河帝国の興亡」と本作は直接関係は無いと思っていました。ただ考えてみると、銀河帝国衰退後に銀河中に勃興した星間国家の争いという設定そのものが、アシモフの小説のバックグラウンドと同じといえば同じですね。

 

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プレイ

初期配置

4人プレイです。
まず担当する星間国家を決めます。一部の「勝利条件カード」やイベントカードで特定の国家固有のものがあるなど、国家毎に若干の性格づけがあるようですが、大きな差ではありませんので、気にせずに当方は青色カウンターの「ジアール星系連合」を選びます。

他に次のような星間国家が登場しました。

  • 赤色: デリタス共和国連邦機構
  • 黄色: ガルディス王国
  • 緑色: ゴルゴン帝国

 

母星の位置も制約はありません。座っている座席から手近なところの星域をひとつ選びます。
前記事に書いた通り、ワープ航法の発展により移動距離の制約はないため、どこへでも好きな量の艦艇・艦隊を送り込むことができるのです。

複数の星域が集まって宙域となっているのですが、勝利条件などで宙域を意識した内容のものがあります。ただこれもスタート時でとやかくいうものではないでしょう。

各プレイヤーが母星として選んだ星域以外、つまり中立状態の星域には「生産値マーカー」が裏返しで配置されます。生産値マーカーには基本1~5の数値が記載されており、マップ上に印字された数値に足した数値がその星域の生産値となります。なお母星に選ばれた星域は自動的に生産値「10」として扱われます。

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初期配置状態。各国の勢力範囲はまだ母星のある星域のみに限定されている

 

初期配置として開発カードが5枚、生産ポイント40ポイント、さらに艦艇ユニットの中からランダムに9ユニットを受領します。この中から生産ポイントを使って好きな艦艇を建造するのです。建造しなかったユニットのうち3ユニットまでは手元にリザーブすることができます。
最初は探索メインになること、予算もないことから建造費用が安いDD(駆逐艦)やCL(巡洋艦)を建造します。

大事な事を書き忘れていました。「勝利条件カード」を引いて勝利条件を確認します。
「ジアール星系連合」の勝利条件は、「聖なる星がある宙域のすべての星域を支配すること」になりました。
中立星域に裏向きに配置された「生産値マーカー」の中に「聖なる星」を示すものがあるのです。スタート時点では「聖なる星」の位置はわかりません。まずは同星の探索からはじめなければならないということでしょう。

「聖なる星」が何を指すのか、これはやはり「地球」でしょうね。
幼い頃に旅立った生まれ故郷「地球」を探して銀河を放浪する「デュマレスト」が探す星にして、銀河系中に勢力を伸ばす宿敵サイクランがその存在を隠す惑星。
または「銀河英雄伝説」では、他の惑星国家連合から討滅され、かつての人類発祥の地という伝承が残る惑星として地球が登場し、狂信性を持った宗教団体地球教の聖地とされていたりします。

最初に配られる5枚の「開発カード」はうち4枚が「超兵器カード」で、1枚が「貿易カード」でした。「超兵器カード」の開発コストはかなり高く初期段階でおいそれと払えるレベルではありません。装備できる(ミサイル等の兵器は艦艇や要塞に搭載することになっているものがある)艦艇・要塞もないため見送りです。1枚ある「貿易カード」は捨てることが不可能なカードであるため発動させなければ、いつまでも手元に残り続けます。早めにいずれかの国家と同盟し、使うに越したことはありません。

 

開始

各ターンのプレイ順はチットによって決まります。

外交フェイズでさっそくゴルゴン帝国(緑)とデリタス連邦(赤)が同盟を締結。我がジアール連合(青)もデリタス連邦(赤)と同盟を締結、「貿易カード」を使い貿易関係を発効させます。

続いてイベントフェイズ。ダイスにより1d6により「1」の目が出るとイベントが発生、イベント表で内容を確定させるというものです。イベント表はバッドイベントが全体の2/3といったところでしょうか。イベントを発生したプレイヤーだけに影響するものばかりではなく、銀河全体に影響する、ランダムに星域を選択するというものもあります。

イベントのひとつ「超彗星の激突」ではランダムに1星域を選び、その星域に存在した艦隊は全滅する。ただしその艦隊が攻撃を行ってかなりの大損害を彗星に対して与えることができれば回避できる、というもの。「白色彗星」ですね!

他にも面白そうなタイトルで選ぶと、「宇宙海賊」「宇宙蛮族の大移動」「太古遺跡の発見」「皇帝死去」などなどあります。「宇宙蛮族」という言葉から感じる強烈な違和感!

移動はプロット式。行動計画フェイズに、移動したい先の国家か、それ以外(中立国)をマーカーで選びます。プロット式とはいいながらも行動は行きたい(=攻めたい?)先の国家のマーカーを選ぶだけなので簡単です。
このときに、使いたいカードもセットします。例えば開発をしたい「超兵器カード」は手札から、場に裏返してだして開発費用を支払うことで、以降使いたいときに使用コストを払うことで発動させることができるようになります。

実行フェイズで順番にプロットしたマーカーを表にして行動を行います。
最初のプロット先は「中立国」。まずは誰の支配下にもない星域に進出して領土確保です。
はじめていずれかの勢力が進出した「中立」星域では、「中立艦隊」の発生をチェックします。何も発生しなければそのまま支配下におくことができますが、発生すると戦闘に勝利しなけば支配できないことになります。「中立艦隊」の発生確率は星域に依って異なりますが、1/6~1/2となっています。
いざ中立艦隊が発生するとその発生する艦隊の規模を決める方法は無慈悲です。プレイヤーが建造できる艦艇ユニットをランダムに引くのと同じ方法で、中立艦隊はダイスで決められるランダムな枚数分登場します。大戦艦や巨大空母も当たり前のように中立艦隊側に登場することになるのです。建造費1桁台の艦艇を作るだけで精一杯の初期の艦隊でかなうはずもありません。
よって、最初の探索は全滅覚悟で小艦艇だけで行うべきでしょう。

 

「聖なる星」発見!

最初の数ターンは自分の母星がある宙域の探索、手近な中立星域へ探索艦隊を出し、何もなければそのまま支配下に置くという活動がメインになります。

「聖なる星」は意外にも早いタイミングで発見されました。同盟相手のデリタス連邦の母星がある宙域の一惑星だったのです。
「聖なる星がある宙域の星域をすべて支配すること」ということはデリタス連邦を滅ぼすことが必要になるのではないか・・。発見されたは良いものの、我がジアール連合にはかなり分が悪い状況です。

どことも同盟関係を結んでいないガルディス王国の一探索艦隊は「重力星雲」を発見しますが、小艦艇だけで編成された艦隊は星雲の強烈な重力場から脱出できずに全滅します。また別の探索艦隊は「惑星生命体」を発見し、アメーバ生命体を発生させ、こちらはアメーバ生命体に飲み込まれます(戦闘を行うことになる)。

デリタス連邦は、イベントで「好景気」を2回立て続けに出します。ボーナス収入が発生するというものですが、その規模が他のプレイヤーの数ターン分の規模とあって、いっきょに財政規模を拡大させました。その巨大な財政を用いて強烈な規模の艦隊が編成されたようです。
一方でジアール連合との「貿易」ではジアール連合側有利な条件の「貿易カード」により赤字を重ね、たまりかねたデリタス連邦はジアール連合との「同盟」関係を破棄し、貿易関係を絶ちます。

ジアール連合は、母星がある宙域の平定に乗り出したもののダイス運に恵まれず、4星域中、3星域で中立勢力を呼び出してしまうという状況に陥ります。いずれもそこそこの規模の艦隊を擁しているため、平定するだけでも大変です。「戦国大名」(サンセットゲーム/エポック)のように中立勢力を調略するということはできず、ただ攻め滅ぼす必要があるのです。

 

「超兵器」発動!

5ターン、6ターンと回を重ねるとどこの星間国家にも属していない中立星域はほとんどなくなります。いよいよ本格的衝突のタイミングです。

我がジアール連合はわずかに残る中立星域がある宙域に進出します。その宙域が中立状態で残っていた訳は、中立勢力が湧きやすい星域だったからです。中立勢力の発生チェック。失敗!、そこですかさず我がジアール連合ははじめて「超兵器」を発動させます。

「生体中枢コンピュータ『アンドロメダ』」!!
効果:自分が振ったダイスの目を自由に±1する

なによりも結果を見てから発動を宣言できる、という素晴らしい性能。銀河に誇るコンピュータの効果が、ダイスの目修正という点はおかしくもありますが、中立艦隊の発生は阻止されます。

 

浄化を!

終局は突然訪れました。
ゴルゴン帝国の艦隊が出動し、ある中立星域に対して「対星域戦闘」(艦隊戦後、敵対する星域に対して実施する対惑星戦)を実施、超兵器「ノバ弾」を発動させ、その星域の生産値を「0」にします。
その時点、他のプレイヤーはゴルゴン帝国の意図を把握していませんでした。
続くターン、ゴルゴン帝国は別の宙域でも同様の対惑星戦を実施し、その星域の生産値を「0」にした後、勝利条件の到達を宣言します。

ゴルゴン帝国の勝利条件は、「浄化せよ 2宙域のすべての星域の生産力を低下させ0の状態を保つこと」。生産力「0」の星域が多く存在する宙域を選び、2宙域で”浄化”させたということでした。

ちなみに、
ガルディス王国はある勢力を壊滅させる、というもの。デリタス連邦は、「聖なる星とその宙域を破壊せよ」というものでした。特にデリタス連邦について言えば、聖なる星と同じ宙域に母星があったため、同じ宙域のその他の星域の生産値を下げる(=自国の生産力を下げる)というジレンマを抱えた条件だったようです。

今回、結局のところ小規模な小競り合いや一方的な状況の艦隊戦は発生したものの、大規模艦隊同士の戦いは発生せずに終わりました。

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終了時の状況。
最後にノヴァ弾を発射してゲームを終了させたゴルゴン帝国の艦隊は、マップの「銀河帝国の興亡」というロゴの上あたりに遊弋しています。

 

感想戦

冒頭に書いた通り非常に楽しめました。
キャラゲームなどではないので元ネタを知らなくても十分に楽しめる点は言っておきます。ここまで書いてきたとおり元ネタ探しをするのも楽しいです。

コロニー落としっぽい超兵器もありますし(これについては元ネタはむしろレンズマンかも)、紹介した以外にもワクワクするアイテムやギミックやイベントが多数あります。「クローン皇帝」とか「私掠船団」とか「リングワールド」とか・・。ただ不思議と巨大ロボット系はリアルロボット含め、避けているところは面白いなと思います。

主に勝利条件についてですが組み合わせ上、どうなの?といった状況になる点はゲームとして壊れていると言えなくもありません。ただしゲームシステム自体に問題がある訳ではないので、そうした要素も含めて楽しむゲームということだと思います。

最後に、コンポーネントが素晴らしい点も触れておきたいです。

(終わり)