Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム、ボードゲーム

「RISE OF TOTALITARIANISM」(4Dados)を対戦する

1920年代から30年代はじめにかけてのドイツ・イタリアを中心とした欧州の政治情勢を社会民主主義:Social Democracy」、「共産主義:Communism」、「全体主義:Totalitarianism」の3つの政治勢力の争いとして構成した「RISE OF TOTALITARIANISM」(4Dados)を3人対戦しました。ゲーム原題を直訳すれば、「全体主義の勃興」とでもいうのでしょうか。出版元の「4Dados」社は、スペインの会社です。

 

 

 

ゲームの概要

ゲームの対象とゲームの中で目指すゴール

第一次世界大戦後の欧州、中でもドイツとイタリアが主な舞台となります。他にも小国として東欧諸国、バルカン半島イベリア半島の国々も活動の対象となります。
ゲームは第一次世界大戦終結を受けた1919年にはじまり、ナチス党がドイツの政権を獲得した1933年までを対象としています。全期間をカバーするキャンペーンゲームは全8ターンです(さらに1ターン=3ラウンドから構成されている)。

プレイヤーは冒頭に書いた3つの勢力を扱います。各勢力には史実上の政治家・活動家がリーダーとしてユニット化されています
プレイヤーはドイツ・イタリア国内において、合法から非合法の政治活動をアクションとして行い社会階層・クラス毎に分けられた国内世論を誘導し支持をとりつけていきます。定期的に実施される国会議員選挙(ドイツについては加えて大統領選挙)において勝利し、政権を取ることにより大きなポイントを稼ぐことができます

プレイヤーが実施できるアクションには、経済状況を改善する、社会改革を行うといった政治家らしいものから、宣伝を行う・扇動するといったプロパガンダ活動、社会を不安定化させる、暴動を起こすといったアナーキーなものまであります。

登場するリーダーはそれぞれ得意とする活動種類があり、アクションに参画させることでボーナス効果を得ることができます。

1920年代を中心に発生した様々な国内外の事件・危機は様々なタイプかつ影響範囲が異なるイベントカードとして扱われます
ドイツについてはベルサイユ条約により戦勝国に対する重い賠償金支払を課せられており、経済情勢や政治・外交の結果として状況が変わります。支払が滞ることでフランスによる「ルール進駐」が発生するかもしれませんし、国内世論も左右します。経済情勢も細かく設定されており、最悪のランクに陥ると国家経済が破綻します。
周辺の中小諸国に対しても政治活動を実施することができ、中小国について政治形態について影響を与えることができます。

 

かなり情報量が多いマップ。カラーリングもあってかなり”うるさい”印象を受ける。
体系的にわかりやすく配置するよりもマップの中にありとあらゆる情報をいれこんでしまえとばかりに、様々な要素が配置されているため、どこに何が書いてあって、何を表現しているか、慣れるまで何度も探し回ることになる。ルールブックやプレイエイドには記述はなく、マップ上だけで説明されている事項や説明が不十分な事項があったりと理解するのに、カードを含めていったりきたりする必要があり、ゲームの混乱の元凶のひとつとなっていた。

ゲームの主な舞台となるのは、マップ左上にあるドイツと、右側にあるイタリアだが、周辺諸国もバラバラに記載してあってこれも直感的とは言えず、わかりづらい。
中央にある山形のグラフ(拡大図は次の写真)は、ドイツ・イタリア国内における各社会階層・クラスの政治的な支持状況を表しており、混然としたマップ内でも最重要の情報となる。

 

プレイヤーが扱う勢力(政党)と中小政党と選挙

プレイヤーは両国における、社会民主主義共産主義全体主義をそれぞれ標榜する政党を操っているということになるのでしょう。両国には3勢力以外にも中道的な政策を掲げた中小政党も存在し、ゲーム内において協力や提携関係を結ぶこともあります。

数年に1回、選挙が行われます。ドイツにおいては大統領選挙と国会議員選挙、イタリアにおいては国会議員選挙です。
両国の各社会階層・クラスによる支持状況によって大統領の選出から、国会における議席専有状況が変わってきます。第1党になることによりドイツ・イタリアにおいて首相を輩出させることができます。得票状況によっては自勢力だけで優勢状況を獲得しえずに思想が近い中道の小政党と組むことにより連立政権を組むことになるかもしれません。

 

ドイツ・イタリアの政治情勢を表現する三角形の図。山の頂上に「ファシズム全体主義)」、左下に「社会民主主義」、右下に「共産主義」と記されている。上にいくつもおかれたマーカーはドイツとイタリアの社会階層を表したマーカーで、それぞれのマーカーの位置が彼らの政治的な支持状況を表している。アクションの結果としてこの位置は変わっていく。

選挙はこのマーカーの位置から支持政党が決められ、各階層に設定された人口値から得票数値が計算される。
プレイヤーが扱う3勢力の他、中道の中小政党として、中段左側から「自由主義:LIBERALS」「キリスト教主義:CHRISTIANS」「国粋主義:NATIONALISTS」「社会主義:SOCIALISTS」とならんでいる。これら政治信条を持った人々にとっても、選挙の状況次第ではプレイヤーが扱う3勢力と連立政権を構成する可能性がある。

 

政権をとったもの勝ち、ただリスクもある

政権をとった勢力は経済政策、社会改革を行う、法律を作るといった政策を実施するにあたって他勢力に比べ有利になります。他にも、(対抗勢力のリーダーユニットを)逮捕する、(逮捕されているリーダーユニットを恩赦などによって)釈放するなども優位に実施できるでしょう。

一方で混迷する自国経済を改善していく必要に迫られます。ドイツ・イタリアの経済状況は細かく8段階で設定されています。単に良い悪いではなく、景気が上向きなのか下向きなのかといった傾向まで設定されています。

 

 

細かく設定された社会階層

ドイツ・イタリアの社会階層として、「役人」「企業家」「富農/地主」「中間層」「労働者」「農民(小作農)」「婦人」と7つのクラスが設定されています。

ドイツ・イタリアの国内マップは、6~7個のエリア(Region)と4個の都市部に分けられており、それぞれのエリアや都市によって各階層の居住状況が異なって設定されています(都市部と工業地帯、または農村部とでは異なる)。さらに各階層における、政治勢力への好悪によってなびきやすいクラスとなびきにくいクラスが設定されています。
例えば、「全体主義」は「企業家」クラスには好かれていませんが、「労働者」「農民」クラスには好意的に見られています。「共産主義」も似た傾向があり、「労働者」「農民」クラスには好意的に見られていますが、「起業家」「富農」クラスには嫌われています(まぁ、当然ですね)。

「労働者」「農民」クラスは人口が多いのですが、金回りはよくなく支持されても政治資金の獲得にはつながりません。「資本家」「富農」クラスに支持されると政治資金にプラス効果があります。

7つ目のクラスとして登場する「婦人」クラスについては女性参政権が成立してはじめて政党支持のマップ上に登場します*1

 

ドイツ地図部分と、ドイツの国会の議席状況を表したパート(右側の四角の部分)。
3勢力はドイツマップの、どのエリアまたは都市でアクションを実施したかによって、影響を与えることができる階層・クラスが異なってくる。農村地帯と工業地帯に違い、また後述する「LOW」アクション(政策を実施する等)は首都でなければ実施できない等。

 

政治活動を表すアクション

政治活動を表すアクションとして7種類のアクションが設定されています。プレイヤーは、各ラウンドにおいて複数のアクションを実施できます。アクションを単体で実施することも可能ですが、リーダーユニットを配置することや資金を投入することにより成功率が高まりますので、実際はリーダーユニットの数や資金量が同時に実施することができるアクション数が影響しそうです*2
また他プレイヤーが実施するアクションを妨害するというアクションも可能です。おそらくゲームが進むにつれ、焦点となるアクションに対しては他プレイヤーからの妨害等を考慮していく必要がでてくるということなのでしょう。

  • プロパガンダ:宣伝・扇動活動により直接民衆の支持を動かす
  • UNREST(不安定化活動):デモなど政権への反対運動を行う(社会の不安定化)
  • PUTSCH(暴動):政権打倒の暴動を起こす(社会の不安定化)
  • 逮捕:対抗勢力のリーダーを取り除く
  • SQUADS(襲撃):対抗勢力のリーダーを(非合法に)取り除く
  • 釈放:逮捕されたリーダーを釈放する
  • LOW(法):大統領・首相を含む国会議員が実施できる行為。例えば「法律」を設定する*3経済の改善等の施策の実施

暴力的なアクションもあるのですが、”合法的に”という観点で言うと特に怖いのは「法律」を作るという点でしょう。
設定できる法律はイベントカードに依存するのですが、政権を取った上で例えば日本で言うところの「治安維持法」のような法律を施行することで、反対勢力を一斉に非合法化するというのは常道でしょう。

 

注:本記事を書くにあたって直訳して記述しているため、ルールブックや各種エイドをじっくりと読み解いた場合は内容が異なることがある。例えば、UNRESTとPUTSCHが厳密にはどう異なってくるのかなど整理されていないまま書いている。ご了承いただきたい。

 

多士済々のリーダーユニット

プレイヤー勢力、または中道の小勢力含め政治信条によって色分けされた複数のリーダーユニットが登場します。リーダーユニットはそのまま選挙で勝つことにより、大統領・首相・国会議員として活動させることも可能ですし、また各ラウンドのアクションを行う際に、リーダーユニット毎に設定されたスキルに従い、効果修正を行うことができます。

なおリーダーには初期状態で自陣営に参画しているものから、在野状態で各ラウンドのアクションの中でスカウトしてくることもあります(例えば、ゲッペルスは初期段階では在野状態)。

 

今回担当した「共産主義」陣営に初期配置(1919年)時に配られるリーダーユニット。左のローザ・ルクセンブルクは教科書あたりでも登場した覚えがある(不確か)。隣のリープクネヒトと共に第一次世界大戦中から共産主義を標榜したスパルタクス団として活動を行った。二人とも1919年1月、ワイマール政権に反対したスパルタクス団蜂起で死亡している・・。なおスパルタクス団はその後、ドイツ共産党に変遷していく。
ルクセンブルクは「UNREST」、リープクネヒトは「LOW」のアクションに対して修正値を与えられている。

右側はイタリア共産党創立時からの活動家のグラムシムッソリーニ政権に反対して国外に亡命したり、戻っては不逮捕特権を狙って下院議員になったりするも結局は逮捕され、獄中で健康を害し、釈放された直後に病死(1937年)。

 

ファシズム陣営の面々。写真にははいっていないが、他にゲーリングがいる。
他陣営に比べてひとりひとりのスキルの修正値が大きい印象。また他2勢力は「LOW」スキル、いわゆる政治家が多いのに対し、ファシズム陣営は「プロパガンダ」やアナーキー系のスキルをもったリーダーが強い印象。ヒトラームッソリーニにはマイクのアイコンがあるとおり演説の名手であることを表す。ゲッペルスのユニットにあるアイコンはラジオ放送で効果があるということ。3人ともスキルとしては「プロパガンダ」。さらには修正値がかなり大きく、それだけ多くの民衆の支持を左右することができる。
レームは突撃隊を率いた事で有名な人物。確認はしていないが、「SQUADS:襲撃」あたりのスキルが設定されているのではないかと思う。

 

ゲームスタート時の在野のリーダー諸氏。政治信条により色分けされているが、政治信条が自勢力と異なるリーダーをスカウトすることができるかは未確認。

 

ゲームの状況

第1ターンは1919年。このターンだけは通常の3ラウンドではなく2ラウンドで構成。第1ターン終了時にドイツでは大統領選挙、イタリアでは国会選挙が予定されています。
初期状態では両国とも「社会民主勢力」が政権を担っていますが、イタリア国会では共産勢力が国会のかなりの割合まで議席を有しています。

初期状態で「社会民主」が資金量豊富で他2勢力を圧倒しています。「共産主義」はもちろん、「全体主義」はさらにまだ弱小であったということでしょう。

ヒトラーは最初から「全体主義」陣営に参画しているのですが、強制的に発効している特別イベントにより「我が闘争」の上梓までは、その驚異的なプロパガンダ能力を封じられており、他の凡百のリーダーと同レベルのスキル値になっています。どうすれば「我が闘争」が上梓されるかはよくわかっていないのですが、イベントカードがあるのではないかということで進行*4

ドローしたイベントカードを晒すのですが、どうすれば発効するのかがよくわからず、これまたルールブックからプレイエイドから、GeeKことBGGのサイトのフォーラムを探すことになります。

もうひとつ問題になったのが中小国に対する工作活動の実施です。特に東欧諸国にある「ソ連ボックス」、バルカン半島エリアにある「トルコボックス」の扱いも納得がいく理解レベルには至りませんでした。

いくつかのアクションがこなされ、政治支持状況を表す山形の図面の中でいくつかのマーカーが移動されたり、また引っ張り合いがされます。
共産主義」については、ドイツについてもイタリアについても嫌悪が薄い「労働者」と「農民」クラスを引っ張り込みます。「社会民主主義」と中小政党の離間を行います。ただこの時期、資金量が小さいため実施できることは限界があります。
「労働者」「農民」は政治献金能力もないため、資金の追加も望めません。

ようやく2ラウンドの操作が終わり、ターンの手続きの最後に「選挙」が実施されます。

 

「選挙」の判定手順がまた煩雑です。
各階層の支持状況を表すマーカーの位置から、各勢力(中小政党も含む)の得票状況が計算されます。その後、国会選挙においては全体に占める得票状況の割合から、議席の確保が判定されるのです。

結果、ドイツ大統領選挙において人口値が大きい、「労働者」「農民」階級の支持を得た「共産主義」が勝利を収め、同陣営から大統領を輩出することになります。大統領はすぐさまドイツ国会の解散を行ったため、国会選挙が行われるのですが、こちらも「共産主義」が第一党となるのですが、圧倒的優勢には至らなかったため、「社会主義」政党との連立政権となり、第一党から首相を出すことになります。
イタリアの国会選挙でも同様の結果となり、「共産主義」政党が第一党、「社会主義」政党との連立政権を打ち立てることとなったのです。
ただ次のターンからは政権与党として、経済状況をはじめとする政策を実施してく必要があります。場合よればその不調や失敗を他勢力から攻撃されることも十分予想できます・・。

と、ここまで第1ターンの処理で5時間を要し、精魂尽き、誰も第2ターンへの進行を言わなかったため、終了となりました。

 

感想戦

デザイナーはヒトラームッソリーニが合法的に政権を取ったのかをシミュレーションしたかったのだろうと思われます。逆に、社会民主主義がなぜ支持を失ったのか。ファシズムと同様にドイツやイタリアの労働者や農民階級において一定の支持を得ていたはずの共産主義がなぜにメジャーメントになりえなかったのかを描きたかったのではないかと考えます。

これらを描き出すにあたってただ政権をとったとられたとか、世論を味方につけたとか、イベントカードで強制的にイベントを起こしてゲーム内に波乱を起こしてそれらをどう収めるのかといった過程を表層的にゲームに描くのではなく、当時の国内社会の構造を地理や、社会構造的な側面までゲームシステムに落とし込んでいき、複数の要素を配置することでその結果として世論がどのように動くのかを再現する、という意図を感じました。いわゆる社会構造のシミュレーション環境をゲームシステムとして構築して、そこに状況をセットすることで複数の因子がどのように作用しあうのかを実験したというのでしょうか。当然、経済情勢・周辺国家の状況、さらには戦勝国として大国の状況などもそこに直接・間接にどう影響するのかまでを含めて。
それはある意味成功しているとも言えるのですが、ゲームとしては非常にわかりづらくなってしまったのも事実です。骨格となるシステムはしっかりしているように見えるのですが、様々な要素を詰め込んだ結果が、マップレイアウトに端的に現れている、”ちらかり具合”のように感じました。

ゲームとして見た場合、ルールブックとプレイエイドとマップ上の説明、またはカードの記載事項などなどが整理されてなく、それぞれがどのように作用するのか、何が有利で何がダメなのかといったことが非常にわかりづらくなっています。
ディベロップの段階でもっとこれらが整理されているとスムーズにプレイにはいることができるし、またひとつのターンに5時間も要したりはしなかったと考えます(ルールブックには1ターンのプレイ時間は1時間と明記してあります)。

シチューエーションを借りてきただけでテーマがフレーバーで終わっているボードゲームが少なくない中、ゲームシステムをきちんと構築して、そこに状況を落とし込むことで作動させるという骨があるデザインがなされたこころざし高いゲームだと思われますので、何かしら改善の上、再戦ができればよいかなと思います。ただ今はそれだけの気力は溜まっていないです。

 

 

(終わり)

 

 

 

*1:こうした細かい趣向が随所に施されており、感心するのと同時に煩雑さ増す要因になっています

*2:こうしたゲームシステム上のコツはまだよく解明できていない

*3:ここでいう「法律」はイベントカードとして配られたカードを指す。

*4:これも推測ですが、「我が闘争」上梓後はヒトラープロパガンダ能力にどう対抗していくのかが他2勢力の課題となっていくのではないかと考えられます。