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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム

「BAPTISM BY FIRE」(MMP)を試す(1)基本システム 【再編集・修正版】

2020年6月千葉会にてMMP社「BAPTISM BY FIRE*1」を対戦しました。副題にカセリーヌ峠の戦いとあるように、1943年2月から3月にかけての北アフリカ戦線の終盤戦にあたるチュニジアを舞台にしたゲームになります。

このゲームはBattalion Combat Seriesと謳われているシリーズの2作目にあたります。1ヘックス=1キロ(縮尺のスケールはゲームによって異なる)、1ユニット=大隊規模と、同じくMMP社がシリーズ化しているOCS(Operation Combat Series)よりも1レベル細かいスケールになっていると言われています。*2

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今回のゲーム、対戦の約束をかなり早い時期にしていた事から、ルールブックを眺め始めたのも早かったのですが、ルールがわかりづらく、なかなか読み進められないでいました。
というのも、用語や概念が新しいのは良いのですが、ルールブックを読む中では、それぞれのルールがどのようにつながっているのかがわかりづらく、体系だって理解することがなかなかできなかったのです。用語集なども用意はされているのですが、記述が断片的なため、結局のところはルール本編のあちこちと用語集とそれぞれに読み込んでいく必要がありました。*3

BGGに投稿されていた1ターン分のプレイ紹介記事、さらにはプレイにあたってインストを受けようやく全体像が系統だって理解できた印象です。まぁ新機軸のシステムを取り入れたゲームでは仕方ないのかもしれませんが、今回ほど読んでいて腹落ち感がなかったルールブックは珍しいですね。
こうした事情もあるため、AARに先立ち、自分の備忘も兼ねてルールの整理をしたいと思います。

 

ポイント1. 基本単位は「フォーメーション」

登場するユニットは大隊単位ですが、ゲーム内では、複数のユニットからなる「フォーメーション」というグループ単位に、活動を行うことになります。
フォーメーション毎に、司令部ユニットと、補給機能や組織を抽象化して表した補給段列ユニット(Combat Trains)を持っています。

フォーメーションはシナリオ/ゲームによって固定ですので自由に組み換えや編成ができる訳ではありません。
ひとつの師団は複数のフォーメーションで構成されている場合もあれば、師団全体で1フォーメーションになっている場合もあります。ドイツ軍やアメリカ軍の場合はフォーメーションは戦闘団単位(「BAPTISM BY FIRE」ではドイツの場合はKampfgruppe、アメリカ軍はCombat Command)になっています。*4

例えば、ドイツ軍の第21装甲師団は次の2つのフォーメーション、”Scht KG”と”Stnkoff KG"から構成されています。

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2つのフォーメーションのそれぞれ左端のユニットが司令部ユニット、指揮範囲と支援砲撃力の数値が記載されています。2番目の車台に車輪がついたような白抜きの絵が書いてあるユニットは補給段列のユニットです。戦闘部隊のユニットの数値・記号は複雑なので次回紹介します。

ポイント2. 活性化フェイズの構造

各ターンの中心は「活性化フェイズ」という実際にユニットが移動・戦闘するフェイズになります。
活性化フェイズでは各プレイヤーは交互にフォーメーションを1個ずつ活性化させ、移動や戦闘を行うことになります。両軍の全てのフォーメーションが活動を行うとターンは終了します。
活性化フェイズの先手・後手はフェーズの開始時にダイスを振って、大きな目が出た側が選ぶことができます。*5

活性化フェイズにおける各フォーメーションの処理手順を単純化すると次のようになります。

Ⅰ.第1活性化(必ず実施できる)

  1.  準備(回復の宣言等)
  2.  SNAFU判定
  3.  アクション(移動/戦闘等)
  4.  疲労判定
  5.  第2活性化の判定

Ⅱ.第2活性化(第2活性化の判定に成功した場合、実施できる)

  1.  準備(回復の宣言等)
  2.  SNAFU判定
  3.  アクション(移動/戦闘等)
  4.  疲労判定

 太字表示した「SNAFU判定」「疲労判定」「活性化判定」の3つの判定処理がこのゲームシステムを特徴づける処理です。

SNAFU判定

  • 活性化されたフォーメーションが実行できる活動規模の判定
  • 判定結果:成功 / 半減 / 失敗
      「成功」・・攻撃目標(OBJマーカー)を2ヶ所指定可能、
            全移動力を利用可
      「半減」・・攻撃目標(OBJマーカー)を1ヶ所指定可能、
            移動力は1/2に限定
      「失敗」・・一切の活動不能*6
  • 判定値は国・部隊の質による差はなく同一
  • ただし以下の修正がある
    部隊の充足状況(疲労レベル)、補給線が良好な場合プラス修正
    疲労レベル、補給段列、補給線の状況、他部隊との混在状況等によりマイナス修正
    各ゲームによる特別修正
  • 特に疲労レベル、補給線の状況はマイナス方向に大きく影響する

 

疲労判定

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  • 戦闘行為を実施したフォーメーションが実施
      実施した戦闘行為の種類によって判定に用いる値が異なる。
      移動だけで戦闘を行っていない場合は疲労度の増加はない
  • 判定結果:疲労度1増加 / 増加なし
  • 判定値は国・部隊の質による差はなく同一、修正値なし

疲労度は各フォーメーション毎に定められたパラメーターで、「完全充足」状態から、疲労度0~4の計6段階で表示されます。
疲労度は「SNAFU判定」の修正値となりますので、可能な活動規模に大きく影響してきます。攻撃目標の数や移動力が半分になる、または最悪の場合、活動ができなくなるというのは致命的です。

疲労度」の回復手段としては2種類の方法があります。いずれも疲労度1を回復することができます。

  • 「準備」の段階で回復を宣言する
    その「活性化」の間、そのフォーメーションは他の活動は行うことができなくなります。
  • 「SNAFU判定」で「失敗」した場合、「回復転換(Failure Flip)」を宣言する
    通常「SNAFU判定」に失敗した場合、何ら活動を行うことはできなくなるが、代わりに回復を行うことを宣言することができる。ただし「第1活性化」でのみ実施可能。また「回復転換」を実施した際には、「第2活性化の判定」は実施不可となる

 

活性化判定 

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  • 第2活性化における活動可否を判定する
  • 判定結果:第2活性化による活動可能 / 活動不可
  • 判定値(Actiavation Roll)は司令部ユニット上に記載(国・部隊の質により差)
      「完全充足」状態のフォーメーションはプラス修正(成功しやすくなる)

ドイツ軍のような優秀な部隊は「第2活性化」まで成功する確率は高い(特に攻勢初期)のですが、活動を行うだけ「疲労度」が増加する懸念があるため、疲労度が行動の制約になってきます。
疲労度を減少させる術はありますが、「活性化」の行動を1回分全て休まなければならないため実施要否・タイミングの考慮が必要です。ターン数が限られるシナリオであれば回復させずに突っ走ることができなくもないと思いますが、キャンペーンゲームの場合は疲労度回復のタイミングや部隊のローテーションなどに考慮が発生するでしょう。
 

ポイント3. 補給

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BCSにおける補給線

【部隊ユニット】ー(連絡線:Safe Path)-【HQユニット】

【HQユニット】-【補給段列ユニット:Combat Train】ー【補給源】

「HQユニット」と「補給源」間のルートを「主要補給ルート:MSR」と呼ぶ

BCSでは「補給段列(Combat Trains)」というユニットが各フォーメーションに配置されています。補給源とそのフォーメーションの司令部ユニットとの間に「主要補給ルート(MSR)」を設定され、「補給段列ユニット」は同ルート上の適正なヘックスにいる必要があります。

この補給段列ユニットとMSRのルートについて制約があります(例外や条件等がありますが細かい点は割愛)。

  • 補給段列は1級道路、2級道路上にしか存在できない。同ヘックスにない場合は・・
  • 補給段列ユニットと司令部ユニットの配置については最適距離(5~15ヘックス)がある

今回のゲームのマップではもともと2級道路までしか登場しません。2級道路以下の道路として未舗装道路がありますが、未舗装道路には補給段列ユニットは配置できず、またMSRが未舗装道路を通っている場合はSNAFU判定でマイナス修正になります。

補給段列ユニットの配置場所やMSRの設定の制約により、実際の地形以上に攻撃側も守備側も地理的な制約が加わることになります。

また司令部ユニットと補給段列ユニットの位置を決めることになる、最適距離はけっこう幅があるので大丈夫と思われがちですが進撃時や逆に防衛線が破られるタイミングなどでは簡単に距離が詰められたり、または離されてしまったりしますので、この補給段列ユニットについて、漫然と配置することはできません。

補給段列ユニットは敵ユニットに攻撃されるとすぐに除去・再配置されますが再配置時には「機能不全状態」となり、SNAFU判定でマイナスの影響が出ます。

 

追加:連絡線(Safe Path)

補給源から「補給段列ユニット」、さらに「HQユニット」までのつながり、また「補給段列ユニット」と「HQユニット」までの線を「主要補給ルート(MSR)」とすることは書いていますがさらに、「HQユニット」からフォーメーションに属する部隊ユニットまでの”線”を「連絡線(Safe Path)」と言います。

*7

ポイント4. フォーメーション間の相互関係

味方同士であっても指揮命令系統が異なる(=フォーメーションが異なる)組織間では融通性のある用兵が可能な訳ではなく、実際の運用、前線の活動にあたって支障が生じるということを表現するためにいくつかの概念が提示され、それぞれ補給やSNAFU判定などにペナルティが生じます。

Crossing the Stream *8

複数のフォーメーションにおいて、司令部ユニットや補給段列ユニットが存在するヘックス、または主要補給ルート(MSR)が使用するヘックスとして、同じヘックスを用いている状態。SNAFU判定にマイナス修正(活動に支障)が発生します。

想像するにそれぞれのフォーメーションの補給等の後方部隊が同じ場所や経路を共有することで補給物資の輸送や管理等に渋滞などの支障が生じている状態といったところでしょう。

混在フォーメーション(Mixed Formation)

あるフォーメーションのユニットが展開している地域に他のフォーメーションのユニットが入り込んでいる状態
フォーメーションが混在しているとし、SNAFU判定にマイナス修正が発生します。

通常は異なる指揮にある部隊間では担当地域を分け合っており、それらの部隊が混在して存在することは避ける。そのような状態が発生しているとすると、相互に調整が発生しており活動の内容や規模の制約になるだろう、といったところでしょうか。

調整(Coordination)

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上記の混在フォーメーションが一時的にでも発生した場合、または司令部ユニットが後退した場合には「調整」が発生したと見なされ、マーカーで表示します。
SNAFU判定にマイナス修正が発生します。

以上の3種類のペナルティを伴う概念は、ルールの目的については納得感があるものの判定/解釈や手順については注意が必要です。特に、「混在フォーメーション(Mixed Formation)」と「調整(Coordination)」については内容が被っているのと、判定タイミングと解除タイミングについてはプレイヤー間で十分認識の一致をさせたほうがよいと思われます。

この”被り”については、BGGのフォーラムにも質問・回答が掲示されています。
内容としては次の通り。

  1. 非活性状態のフォーメーションが活性化し、SNAFU判定を行う際に「混在フォーメーション」の状態である場合は、「調整」またはCoordinationマーカーによる”-1”修正と、「混在フォーメーション」による”-1”修正とが適用され合計”-2”の修正となる。
    適用後、そのフォーメーションに関するCoordinationマーカーは除去される。
  2. 「調整」の状態が発生した際にCoordinationマーカーは関係するフォーメーションに配置されるが、非活性化状態のフォーメーションが活性化した際には「調整」状態がすでに解消されており、Coordinationマーカーのみが残っている場合は、「調整」による”-1”修正のみが適用される。
    適用後、そのフォーメーションに関するCoordinationマーカーは除去される。

私的な解釈ではありますが、複数のフォーメーション間でユニットが入り組んだ”状態”を「混在フォーメーション」と言い、その状態が一時的にも発生していた場合は、関係したフォーメーションには、それぞれ「調整」のマーカーが載せられる。
その後、当該フォーメーションが活性化された際に判定したところ、「混在フォーメーション」の”状態”が解消されている場合は、「調整」の手間だけが必要となったということで、「調整」によるマイナス修正が発生、影響を適用したということでその修正のみが適用され、「調整」マーカーは除去される、ということかと思われます。

なお「Crossing the Stream」「混在フォーメーション(Mixed Formation)」のペナルティについては、「BAPTISM BY FIRE」の特別ルールとして一部部隊は免除されています(アメリカ軍の第一装甲師団のCombat Command、枢軸軍の第21装甲師団と第10装甲師団、DAK)。

 

 

追加:攻撃目標・OBJマーカー・OBJゾーン

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OBJマーカーはそのフォーメーションの作戦立案能力を表しています。
フォーメーションが活性化された後に実施する「SNAFUチェック」において、その活性化の期間内に使うことができる「OBJマーカー」の数が決まります。
次回説明する攻撃方法の種類によって、多くの場合は「OBJマーカー」が置かれたヘックスとその周辺にいる敵ユニットしか攻撃できません。活性化したからといって、ひとつのフォーメーションに属するユニットが、あちこちで同時に攻撃を行うことはできないという仕組みになっています。
またSNAFUチェックの結果次第ではそのターンの間、全く攻撃を行う機会を失ってしまうことになります。

フォーメーションに属する部隊ユニットが、「交戦(Engagement)」以外の戦闘(通常攻撃、急襲攻撃、直接射撃、砲爆撃)を行う場合は、配置されたOBJマーカーの周囲2ヘックスの中にいる敵ユニットしか攻撃することができません。

HQユニットの指揮範囲のルールとあわせ、戦闘区域がOBJマーカーの周囲に限定されることを考えると、フォーメーションある程度固まって運動する必要がありそうです。*9

 

次回はこれまたある意味複雑な戦闘ルールあたりを整理したいと思います。

(つづく)

 

yuishika.hatenablog.com

 

 

 

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*1:砲火の洗礼という意味です。登場するアメリカ軍は1942年11月にフランス領モロッコに上陸してチュニジアまで東進してきた軍で、ここではじめてドイツ軍による本格的な攻勢作戦・反撃を受けることになります。このゲームが取り扱う期間の最初にあたるファイド峠の戦いでアメリカ軍が大損害を受けたという報告を聞いたルーズベルトはこう言ったと言います。「我々のボーイ達は戦争ができるのか?」

*2:ちなみにOCSは1ヘックスが標準で8キロ(5マイル)か4キロ(2.5マイル)、ユニット規模も大きいようです。

*3:凡例の図が小さくてよくわからないとか、少なくとも親切なルールブックではなかったのは確かです。

*4:このルールブックがわかりにくい一例として、この基本となるフォーメーションという概念が定義されたり十分な説明がなされないまま、話が進められ、各領域の説明で断片的に「フォーメーション」という概念やそれに関するルールが語られていく。読み手はルールのすべてを読んで、さらにユニットを見て初めて全貌がわかる(?)という印象を受けました。

*5:このイニシアティブのダイスの目についてはゲーム/シナリオによって修正値が付く場合もある

*6:SNAFU判定が失敗した際にできる唯一の活動として、疲労度の回復を行うことはできます(「回復転換(Failure Flip)」)。ただし「第2活性化」でのSNAFU判定失敗時には「回復転換」は不可。また「回復転換」を実施した場合は、「第2活性化の判定」を行うことができなくなります

*7:

  • あるユニットから所属するHQまでの連続するヘックス列からなる経路を「連絡線(Safe Path)」と言う。「連絡線(Safe Path)」を構成するヘックスは移動クラスの種類によって、敵ZOCの影響を受ける。
  • 自軍ユニットは、「連絡線(Safe Path)」について敵ZOCを無効にする。
  • ユニットからそのHQまでの連絡線は、指揮範囲+5ヘックスを超えることはできない。
  • そのHQの「補給段列ユニット」が地図上にいない場合は・・
  • HQユニットがいるヘックスに存在するユニットについて、「連絡線(Safe Path)」を確認する場合は、・・・

*8:適当な訳語が見つからないのです。直訳は渡河するといった事なので、複数の補給の流れが相互に入り混じっているといったイメージでしょうか。ニュアンスはわかるのですけどね。

*9:以下、「作戦OBJマーカー」の説明((選択ルールで「移動OBJマーカー」があるが割愛

  • OBJマーカーは敵ユニットが存在する任意のヘックスに配置できる(例外有)。
  • OBJマーカーの周囲半径2ヘックスにOBJゾーンを形成する
  • 通常攻撃、奇襲攻撃、直接射撃、砲爆撃は、OBJゾーン内のヘックスに対してのみ実行できる(「交戦(Engagement)」だけはOBJゾーンに関係なく実施できる)。
  • OBJマーカーは、フォーメーションの「SNAFUチェック」の結果として配置することができる。
  • OBJマーカーを同じヘックスに2個重ねて配置することができ、「ダブルOBJ」として攻撃に際してプラスの修正がつく。