Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

2021年こんなゲームをした(下半期編)(2/2)

恒例のまとめ記事です。
前半の記事はHAさん主催の「War-Gamers Advent Calendar」に投稿しています。本記事は続きです。

 

 

 

作戦級(承前)

砂漠の狐(エポック/国際通信社)

レックカンパニーデザインのエポック社のゲームの初期作品の中で唯一未プレイだったのが「砂漠の狐」。タクテクス誌2号でのリプレイ記事が印象的で引っかかっていたが、箱の重さで買う作品を選んでいた中高生にはなかなか手を出しづらく、周囲の友人たちも誰も持ってなかったため未プレイのまま今にいたった。

砂漠での機動戦、ダミーを含む隠匿配置といった条件からクセがある部隊運用が求められた印象。今回はサワリだけでじっくりプレイではなかったので機会を見て再戦したい作品。

 

 

EWE日本海大海戦(エポック)

電子判定装置がついた入門用ウォーゲーム、EWEのデッドストック品を入手したので初プレイ。
対馬海峡いっぱいに展開して日露両艦隊が対峙するという大胆な構図。初期配置こそ艦隊戦っぽい縦列状態からはじまるがその後は壮絶な殴り合い。数隻突破させればロシアの勝利だが、日本軍は当然のことながら二重三重に防衛線(!)を張り妨害する。

ゲーム内容はともかく、マグネットで盤面に固定できるユニットや、噂の電子判定装置など、けっこうよくできている。
これは再販してほしいなぁ、でもプラスティック製の筐体の金型とか初期コストがかかりそうなのでいまさら無理なんだろうな、と妙に納得してしまった。

 

 

 

戦略級

戦略級ゲームの好き嫌いはゲームデザインの抽象化の感覚が自分の好みにあっているかどうかに依存する。実は一番最初に買ったウォーゲームは「第三帝国」(AH)で、これで欧州の地理を覚えた!

最近の戦略級ゲームはユーロゲームに近い処理を採用しているゲームも少なくないようだ。

 

THE LAMP IS GOING OUT(Compass Games)

欧州を中心とした第一次世界大戦全体を描いた作品。最大4人のマルチプレイヤーズゲーム。
エリアマップ。イベントカードに加え、技術の進歩を扱う技術カードがあり、大戦中に新登場した新兵器・新技術が続々と登場する。

プレイでは西部戦線の両軍が早々と塹壕に籠もったまま互いに手を出さないという事態に陥り、代わりにバルカン・トルコや東部戦線で激戦が交わされるという展開になってしまい、デザイナーが意図したゲームシステムやバランスが働らかなくなった印象(こういう事態に対するなにかしらの防止ルールや仕掛けを見落としたのではないかという気がしてならないが・・)。

プレイ後、すぐに記事を書いたように決して面白くなかった訳ではない。ルールやカードイベントの内容、特殊ユニットの存在などなど各所に仕掛けられた第一次世界大戦を演出する仕掛けには感心してしまった。

 

 

 

ボードゲーム

最後はウォゲームではないがゲーム会などでプレイしたボードゲームのうち、面白かった作品については記事を起こしている。

 

HEART OF DARKNESS(闇の奥)(LEGION WARGAMES)

アフリカ探検テーマのマルチプレイヤーゲーム。
スポンサーを募り、道具や武器といった各種アイテムと食料を購入し、探検隊を組成する。探検の途中の発見や出来事などで得られる名声値を競う。プレイ中はプレイヤー間で直接的な競合関係はないため、見方を変えればプレイヤーがそれぞれソロプレイを行っているよう。ただアフリカ探検をボードゲームとして昇華している点は感心する。

 

 

 

Thunderbirds(ASYNCRON Games)

サンダーバードテーマのマルチプレイヤーズゲーム。さながら「パンデミック」のサンダーバード版。サンダーバードに登場するキャラの一人になり、世界中で発生する事故に対し協力しながら、各種のマシンを駆使しながら東奔西走する。

 

 

 

IRON DRAGON(Mayfair Games)

ファンタジー世界の大陸に線路を引き荷物を運び資金を集め、鉄道王になろう!というゲーム。白地図状態の地図上に水性マジックで敷設した路線を描いていく。オリジナルはアメリカ大陸を舞台にしたゲームだが、本作は、各所に散りばめられたファンタジー要素が雰囲気を出していた。

 

 

最後に

個人的な2021年ゲーム関係ニュース

ASLはシナリオ集はじめ書い続けているが結局対戦は1度もやらなかった。
そろそろ再開しなければ・・。

来年最初の対戦はナポレオニックの予定。

 

(終わり)

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2021年こんなゲームをした(下半期編)(1/2)【改訂】

 

キリストの降臨(Advend)を待ち望む・・転じてクリスマスの到来を扱う「Advend Calender」。ウォーゲーマーがクリスマスを待ち望んでいるのかはよくわかりませんが*1、今年5年目を迎えるHAさん主催の「War Gamers Advend Calender」に初参加させていただきました。
本記事はその投稿記事になります。

半ば無邪気に考えなしに応募したのですが、他のブロガーのみなさんの記事を見ているとテーマへの掘り下げや思慮の深さなどなど感心することしきり。翻って自分の記事は、というと、とりあげるゲーム類も流行りや時流など全く無視、気が向くままに選んだという一貫性すらないという・・。

自己満足的、プレイゲーム備忘録「こんなゲームをした」2021年度下半期版になります。まずはご笑覧ください。

 

ちなみに上半期版も記していてこちらになります。

 

 

 

戦術級

実は戦術級ゲームが好きです。
心理学的自己分析としては、戦術級ゲーム好きというのはプラモデルやミニチュアモデルのコレクションに代わる代償行為なのではないでしょうか。
模型やモデルを並べるのは場所が必要ですし、コレクションするには結構なお金も必要でしょう。プラモデルにはさらに製作時間の問題があります。時間がない(余裕がない)社会人には本腰いれて取り組むにはなかなかハードルが高いです。その点、ボードゲームであればユニットは場所をとりません。ともあれ。
兵器ファンとしては艦船 >陸上兵器 >航空機の順番で好きなのですが、ゲームとして好んで遊ぶのは、陸上兵器 > 艦船 >航空機 の順番ですね。

 

ASSAULT(GDW)

1980年代欧州を舞台に米ソ間で起こったかもしれない戦闘を小隊規模のユニットで描いた戦術級。ホビージャパンからシリーズ2作目まで日本語版が発売され、それなりに売れたっぽいので、当時のプレイヤー間での知名度はかなり高い作品。

状況が設定されたシナリオを選ぶと、勝利条件は公開されるものの、お互いに相手の兵力は全く不明というところから始まる*2。これがかなり新鮮で、刺激的。相手の勢力がわからない上に、盤上に登場した段階では「?」マークが描かれた隠蔽状態で登場するため、ダミーなのか本物の兵力なのかさえわからない。このため偵察ユニットによって敵情を確認するところから展開していくことになる。

スケールとしてはPanzer BlitzやPanzer Leaderと同規模ながら、司令部と指揮系統、移動時と戦闘時とで異なる隊列などもルール化されている。一方でハプニングやイベントといったゲーム内での不確実性の演出*3は抑え気味で真面目なデザインという印象。

良いゲームと思う一方、いまひとつブレイク感がないのはソロプレイに向かないためなのかな、と思う。対戦時の感覚は魅力なだけに残念。

 

 

 

SS装甲師団長(Game Journal)

オリジナルゲームはアドテクノスが発売していた「ドイツ装甲師団長」。ランダムに組成された師団規模の部隊を率いて戦っていく。
同じコンセプトでデザインされた作品がリリースされている。
ゲームジャーナル誌で「ドイツ装甲師団長2」、さらに好評であったということで西部戦線版として本作「SS装甲師団長」がデザインされた。

基本コンセプトはシリーズ作のいずれも同一で、相手の作戦意図や部隊内容が不明の状態ではじまる。「ASSAULT」では相手の部隊内容が不明という状態でゲームが行われるが、本作ではさらには作戦意図(勝利条件)も不明ということになる。勝利条件は両プレイヤーがそれぞれチットを引くことで決められ、チットの結果は最後まで相手に秘匿される。相手の目的が、戦線の突破なのか、点在する町や村の占拠なのか、相手の撃滅なのか等々、最後までわからない。ゲーム終了時に引いたチットを明かし、勝利条件を満たしているかによって勝敗を決めるというシステムになっている。

部隊編成や規模も兵種・装備兵器毎に何コマ登場するのかをひとつひとつダイスで決めていく。この瞬間は楽しい。
特に出現頻度が低い強力な兵器(ドイツ軍であればティーゲルⅡなどなど)やマイナー兵器(例えばヴィルベルヴィント)が登場することになった時には歓声をあげたくなる。登場兵器のダイスは相手に秘匿して振られるので、相手がどのような編成・装備なのかは戦ってみるまでわからない。

こうしたランダム性を取り入れたゲームシステムやダイスを振って決める自軍部隊の編成などもありプレイは非常に魅力的なのだが、おもちゃっぽい感覚というか箱庭感が拭えないのも事実。なんだろう、これは・・と思うに、「大戦略」のようなPCゲームに近いというか・・。師団対師団という規模の戦闘の割には舞台が完全なランダムマップで表現されているためなのかな?

 

 

 

作戦級

The Korean War(Compass Games)

旧VICTORY GAMESの再販。
ユニットもマップもサイズアップして、マップに至ってはフルサイズ4枚というビッグゲームになった。

ゲームのスケールが1ターン=1ヶ月であることを聞いて、戦線が南から北へ、さらに押し戻してと目まぐるしく変わっていった朝鮮戦争を再現できるものなのかと思ったが、全くの杞憂だった。
両プレイヤーが交互にユニットを活性化させていくアクティベーションシステム、補給廠を前線に設け補給ポイントを配分していく補給ルール、歩兵戦闘の前に解決される装甲部隊ルールなどにより見事に朝鮮戦争の雰囲気を出しているといってよい内容だった。

下半期だけで3回プレイしたがいずれも楽しめた。
マップの大きさに比べてユニット数が多くはないこともあり、1日あれば開戦から釜山防衛線、仁川上陸作戦あたりまでいけるという手軽さも良い。

上級ゲームになると国際情勢ルールが追加され、特に国連軍(アメリカ軍)側は介入の度合いを考慮しながらゲームをすすめることになる。
攻撃対象範囲を気にせずに攻撃するとか、大規模な介入を行うことも可能だが、単に朝鮮半島だけではなく国際情勢全体の緊張度を高めることになり、場合によれば核兵器の使用ができるようになったり、最後には第三次世界大戦の勃発することさえある。
北朝鮮軍側も国際情勢に基づくイベントが発生する。ソ連軍の介入、中共軍の台湾侵攻だ。当時の情勢が局地的な戦争にとどまらなくなる可能性があったことを示唆しており、単純にマップ上の状況だけではないという演出がよかった。*4

 

 

 

STORM OVER DIEN BIEN PHU(MMP)

ディエンビエンフーの戦いをエリアインパルスシステムで描いた作品。

元来の作戦意図はベトナム軍兵力を誘引し撃滅するというものだったが、想定を上回る兵力を集められて逆にフランス軍が討滅されてしまったという戦いだ。
ゲームは飛行場を中心に防御陣を展開するフランス軍に対して周囲からベトナム軍が攻撃を開始するところからはじまる。

ゲーム的ではあるがフランス軍は、飛行場より南方の荒れ地に構築した陣地数エリアをゲーム終了時に確保していれば勝利、という勝利条件を見越して段階的な戦線の縮小と遅滞行動をとり、ベトナム軍はそれらを阻止するべく動くことになる。フランス軍としては失陥することで補給や部隊の回復などで不利な条件がつくことになる飛行場をいつ諦めるのか、といった点もポイントになるのかもしれない。

防御側の占拠しているエリアが少なくなっていくと、勝利条件となっているエリアに大量の防御側ユニットが集中してしまい、攻撃側ユニットはなんとも攻撃がしくくなるという、エリアインパルスシステムあるあるな状況はこのゲームでも発生しがちな嫌いはある。
ベトナム軍としては、フランス軍の防御戦力が最終陣地に付近に集中しないように、集結を妨害する、分散している段階で削っていくといったことが必要となるのであろう。

エリアインパルスシステムに良くフィットした好ゲームだった。

 

 

 

STARGARD SOLSTICE(ゾンネンヴェルデ作戦)(3CG)

1945年2月、ドイツ軍の敗色濃い東部戦線、ベルリンまで間近に迫ったポメラニア地方(ポーランド西部の地域)で行われたドイツ軍による限定的な反抗作戦を扱う。

チットドリブンで師団単位に活性化を行っていく。
圧倒的な兵力のソ連軍だが、ゲーム序盤は、部隊ユニットが師団司令部の指揮範囲を超えるほど分散しすぎていたり、部隊によって活性化可能となるタイミングがずれていたり、と連携がままならない状態ではじまる。
一方のドイツ軍は主力となる2個装甲師団を駆使して、相手の動きが鈍いうちに機動的に打撃を与えていくことになる。
ところがこのなけなしの兵力も、タイミングこそ若干ぶれるが、1個師団は確実に総統命令により転進させられるという、無慈悲としかいいようがないイベントが用意されている。
対称的な両軍を率いぎりぎりの戦いが展開する。

最近のゲームらしく、ユニットやマップなどのコンポーネントがキレイなのもうれしい。

 

 

 

Decisive Victory 1918:Soissons(ソワソンの戦い)(LEGION GAMES)

第一次世界大戦終盤1918年の西部戦線。連合軍の反撃を描いたシリーズ作品のうちのひとつ。
1日をさらに午前・午後・夜間の3ターンに分け、第一次世界大戦における陸上戦闘を作戦級の目線で緻密に描いた。

効果的な攻撃のためには「突撃」が必要。突撃を行うには前のターンには敵に隣接したヘックスに移動し、「突撃準備」態勢にはいる必要がある。突撃前には「準備砲撃」で敵を叩く。もちろん敵からも「阻止砲撃」を受ける場合もある。航空支援や戦車も出撃する。この時代の戦車はポンコツなので2、3回出撃を繰り返すと自然に消耗していく・・。
敵が潰走するとすかさず追撃。ただ左右の味方と歩調をあわせないと、戦線にほころびができ、反撃を誘発してしまうかもしれない。
夜間は「突撃」は行えないものの、補充と戦線の整理、損耗した部隊のローテーション、翌日の「突撃」に向けた移動や準備と忙しい。

「移動」「突撃準備」「支援砲撃」「(敵の)阻止砲撃」「突撃」「追撃」といった一連の攻撃のサイクルに対して、部隊のローテーション、戦線の状況などを加味し、連続的に攻撃を継続していくリズムのコツを掴まないと連続的な攻撃にならない。

紹介記事ではこれをダンスのように・・と表現したが、まさに整然とダンスを踊らせることができるかが勝敗を握っている印象。

 

 

 

シンガポール攻略戦(エポック/国際通信社)

時間が空いていた時にやってみたソロプレイ。

エポック社レックカンパニーデザインゲームの再販版。
「マレー電撃戦」に同梱されているが、マレー電撃戦本体とはルールの互換性やゲームとしての連続性がある訳ではなく独立している。
マップには大きくシンガポール島が描かれ、周囲のジョホール水道を超えた日本軍の上陸侵攻が始まるところから描かれる。シンガポール島内は思いの他、地形のバリエーションに富んでおり、兵力・戦闘力に優れる日本軍も地形に依り遅滞行動をとったイギリス軍の排除には手こずるかもしれない。

部隊のスケールが不明、部隊番号などのヒストリカルな演出もない。ミニゲームというにはユニット数が少なくない。小規模なゲームが詰め合わされた「ドイツ戦車軍団」に収録されていたゲーム群に比べるとどうしても荒削りな印象は否めない。まぁ何も考えずに両軍とも続々とユニットが除去されていくようなゲームをやりたいときにはよいかも。

 

 

 

コレヒドール1945(国際通信社)

エリアインパルスシステム。
1945年2月、マニラ湾に浮かぶ要塞コレヒドール島での1週間の戦いを1ターン=1日で描いた。
空挺降下と海上から島に侵攻するアメリカ軍。昼間ターンの間は、島のどこにいても艦砲射撃と空爆の目標となる。
日本軍は地下壕に潜み、アメリカ軍の攻撃をやりすごす。ただ籠もったままでは侵攻を食い止められないので損害覚悟で地上に展開する。
地下壕から日本軍はアメリカ軍が占拠していないエリアであれば島内のどこにでも出現することができる。浸透攻撃によりアメリカ軍が位置するエリアに進出し、さらにダイスの目がよければバンザイ突撃(という名の白兵戦)を仕掛けることができる。通常時の戦闘力ではアメリカ軍ユニットより劣っている日本軍にとって戦闘力が2倍になるバンザイ突撃は数少ない有効な戦術である。
日本軍は地下壕に予備部隊を持っている間は島内のあちこちに出撃することができるため、アメリカ軍からするとやっかいな相手かもしれない。

とり得る手段が少ない日本軍のほうが厳しいかなという印象。太平洋戦争末期、悲痛な防衛戦を戦った日本軍に思いを馳せ、疼痛を抱えながらプレイした。

 

 

 

 

 

NATOCompass Games)

VICTORY GAMESで最も売れたゲームのひとつ(とのこと)。再販にあたってデザイナー自ら、ルールや戦闘序列などかなり手を入れたという。実際、オリジナルの1983年シナリオの他、NATO軍側が強力になった1988年シナリオが追加された。
丁寧に記述されたルールブックはかなりの枚数で読むのが大変。ひとつひとつのルールは決して複雑ではないのだが、現代戦らしく様々な手段・手法が提供され、細かなルールが積み重なっているため、組み合わせて適切な戦術(ゲーム内テクも含む)にしていくかはルールへの十分な理解と、慣れが必要に感じた。

  • ZOCは弱く機甲ユニットはすり抜けて侵攻が可能
  • 包囲・半包囲という概念から戦線の張り方も工夫が必要
  • 敵包囲の手段として空挺降下を多用できる
  • 攻撃ヘリによる地上支援
  • ほとんどのユニットは1ステップのみであるため、派手にユニットが飛んでいく
  • スタックは狙われる。戦術空軍による地上支援により強力なユニットでも簡単に飛ぶ(ショックが大きい)

などなど本ゲームならではのシステムへの慣れや作戦を考慮しないといけない印象。

 

紹介記事は別途作成予定

 

 

 

下半期でやったゲーム記事、1回で終わらなかったのでもう1回続きます。

 

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写真に特に意味はありません。MMPの11月セールで購入した製品を写しました。せっかく写すなら2021年に購入したゲームを全部出せよ、という話もありますが、これはこれでいろいろと悔恨というか現実を見たくない、自覚したくないというモーメントの中でとりあえず手元に固まっていたものを写したというところです。

(つづく)

 

 

2020年「こんなゲームをした」は次の記事。

*1:いまさらプレゼントがもらえる訳でもないでしょうしねっ!

*2:両プレイヤーはチットを引いて各シナリオ毎に6パターン用意されたユニットを登場させることができる

*3:例えば戦術級の代表作「ASL」では、2D6により2個とも「1」、いわゆるゾロ目が出た場合、なにかしらのハプニング。一部の兵が凶暴化したり、弾切れや故障が発生したりする。わざとこうしたハプニングが起こる仕掛けを施されている。

*4:実際に上級ルールを導入して試してみると、史実以上に厳しい国際情勢にすることはなかなかハードルが高いのも事実で、簡単には第三次世界大戦勃発・即ゲーム終了というシチュエーションを実現するのは難しいかな、という印象を受けた。

「RISING SUN」(MMP)を入手する(2) 日本軍の車両・砲兵器

ASLの太平洋戦域モジュール「RISING SUN」が再販されたので入手した。

 

前の記事で三式戦車以降の車両は実用化されても実戦投入されていないため、ASLではユニット化されていないといった主旨の事を書いた。実際にデザイナー側にそのような基準があるのかはわからないが(いつか他国の車両・砲兵器で調べてみよう)、実戦投入された車両では結構マイナーなものがユニット化されていて、さながら日本軍装備の車両・砲兵器一覧といった観をなしている。

日本軍の車両にはマイナー車種が多いのですが、特に注目した車両を紹介していく。

 

一式砲戦車ホニⅠ

f:id:yuishika:20211211152637j:plain 九七式中戦車の車体に、日本陸軍の対戦車砲装備の中で唯一実用性能に達していたといってよい九〇式野砲を装備した対戦車自走砲
砲戦車というのは日本陸軍独自の分類らしく、英訳するとそのまま「Gun Tank」とされている。一式砲戦車は装備は固定式だが、砲戦車の思想としては旋回砲塔を備えることが理想とされていたということなので、ドイツ軍が保有していた固定砲の自走砲、例えば、マーダーあたりではなく、アメリカ軍が保有していたM-10、M-18あたりに似たスタイルを志向としていたのかもしれない。

この一式砲戦車、生産台数は124両。10両が第二戦車師団の部隊としてフィリピンに送られるが6両は海没し、戦闘に参加したのは4両だけである。
装備した部隊一千数百名は、1945年1月から6月初旬にかけ、制空権がない中、活動し続けた。

H章では次のような説明されている。

九七式中戦車チハの車体に九〇式75ミリ野砲を搭載した。中国の第三戦車師団と、ルソン島の第二戦車師団で使用された。本車両は、自走砲部隊(ルソン島では、機動砲兵第2連隊所属)か、対戦車部隊または軽突撃砲部隊(この場合は戦車連隊の中に中隊規模(10両))に配備された。124両すべて日立製作所が製作した。
(自作シナリオでは)中国大陸とルソン島でのみ登場することができる。

ユニットに記載されている各種記号から読み取ることができる本車両の性能は次のような評価である。

  • オープントップ(上部開放型)車体
  • 移動力・装甲値はベースとなった九七式中戦車と同じだが、砲塔(上部構造物)の後面は非装甲
  • 「低接地圧」に分類されているため、建物などの障害物ヘックスにはいった時に走行不能になりにくい(車体重量に対して十分な性能の無限軌道をもっていたということになる)
    ちなみに九七式中戦車自体も「低接地圧」に分類されている
  • 兵装は75ミリ砲のみ。元になった九〇式野砲と同じく、故障値が通常の兵器よりも悪く、故障を起こしやすい兵装となっている

 

四式十五糎自走砲ホロ

f:id:yuishika:20211211225734j:plain フィリピン防衛線には参加したさらにレアな車両として、生産台数は12~25両とされている(Wikipediaより)本車も収録されている。フィリピンでは、苦心の末に揚陸された2両が活動しており、今年発売された「歴史群像」のいずれかの号にこの部隊に所属した当時の戦車兵の方の証言記事が収録されていた。

H章では次のような記述。

日本陸軍が機動砲兵を組織するために用意した。本車両は九七式中戦車チハの車体に,、三八式150ミリ榴弾砲(1900年代初め頃にクルップ社からライセンス生産された)を搭載し、一式砲戦車ホニⅠと似た形状となった。少数の本車両は、1945年のルソン島アメリカ軍と戦闘を行っている。戦後の資料では本車両を、三八式や九八式と誤って記載しているものもある。
(自作シナリオでは)ルソン島でのみ出現することができる。

ユニットから読み取れる本車両の性能は次の通り

  • オープントップ(上部開放型)車体
  • 移動力・装甲値はベースとなった九七式中戦車と同じだが、砲塔(上部構造物)の後面は非装甲
  • 「低接地圧」に分類されているため、建物などの障害物ヘックスにはいった時に走行不能になりにくい
  • 兵装は150ミリ砲のみ。短砲身。榴弾砲のため徹甲弾AP弾)は使えない。対装甲車両戦闘は不得意だが、口径の大きさから対歩兵戦や非装甲戦力に対する攻撃としてはかなり威力がある兵器といえる
  • 弾薬搭載量が少なく(wikiによれば12発)、弾薬欠乏を起こしやすい
  • 破壊判定の際に炎上しやすい車体ということでマイナス修正を受ける(搭載している弾薬のせい?)
  • 「追加射撃」(緊急時の急速射撃)ができない(砲弾が大きいため連続射撃などには適さないということなのだろう)

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ルソン島,1945

 

特二式内火艇カミ

f:id:yuishika:20211211230555j:plain 「艦これ」や「ガルパン」にも登場し今やマイナーとは言えない車両だが、特二式内火艇カミも登場している。ASLでは、フロートの装着時と取り外し後とで別ユニットが用意されているなど凝った仕様になっている(掲載したユニット図は、取り外し後の状態)。

H章の記述。

1933年から1941年にかけて日本陸軍は3種類の異なる種類の水陸両用戦車を試作した。日本海軍はこうした試作を踏まえ1942年、九五式軽戦車ハゴをベースに、本車両を開発した。本車両は鉄製の2つの分割されたフロートを車体の前後にとりつけており,、戦車の中から取り外しができるような仕掛けになっていた。水中での推進力と操舵は2つのプロペラと舵によって行う。装備として主砲と同軸での機銃を搭載している。180両が生産され、海軍陸戦隊で利用された。フィリピンや太平洋の島嶼防衛(クェゼリン諸島やサイパンなど)で少数の本車両が見られた。

水陸両用能力について、フロート装着時の制約について(機動性が減殺される他、行動に制約が発生する)、またフロート取り外しに関するルールなど、本車両のために細々とルール化されている。なお一度取り外したフロートはゲーム中、再装着することはできないとされている。

 

九五式装甲軌道車ソキ

f:id:yuishika:20211211230018j:plain 中にはなんでこんなもの!?、と絶句しそうになる車両もユニット化されている。本車両もそのひとつで、わざわざ本車両を登場させるシナリオはありえるのか?
無限軌道の他、軌道走行用の鉄輪も装備していて、レール上を走ることも、レール外を走ることもできたという装甲車。装輪式ではなく装軌式なので見かけはまんま戦車。
仕様から想像できるように中国大陸で使われたとあるが、ビルマ戦線にも投入されたとのこと。

H章での紹介は次の通り。

この珍しい車両は初期の九一式装甲車(訳註:正式には九一式広軌牽引車の事と思われる)と同じ様に、鉄道工兵が、鉄道警備のために開発したものである。九一式広軌牽引車と異なり、本車両は乗員が搭乗したままで軌道走行用の鉄輪を水力により車体内に格納し、代わりに野外走行用の無限軌道を使うことができるようにすることができた。つまり本車両は必要に応じ、線路から外れた攻撃を素早く行うことができるという点で装甲車よりもより実用的な仕様になっていた。本車両は九一式広軌牽引車と同様に、小編成の列車の前後におかれることが多かった。また鉄輪の幅は異なる軌間に調整することができた。本車両は九四式装甲車を大きくしたようなデザインであったが、標準的な固定兵装をもたなかった。代わりに乗員は銃眼から軽機関銃や歩兵装備の兵装を用い射撃を行った(ゲーム内では単純に砲塔に軽機関銃(LMG)を装備しているものとみなす)。本車両の多くは中国戦線で用いられたが、一部はビルマにも配備された。

主兵装の標準射程は8ヘックスである。武装の取り外しや挑発(Scrounging)[A20.552]が可能である。

固定装備を持たなかったのは固定装備を持つと戦車となるため歩兵学校の管轄となり、工作用車両としては認められないという事情からだとか。固定兵装をもたずに軽機関銃を銃眼から出して射撃を行った・・。海軍対陸軍のセクショナリズムは有名だが、同じ陸軍内の兵科別のセクショナリズムのなせる結果といえるだろう。

 

九五式軽戦車 ハゴ

f:id:yuishika:20211211230214j:plain 最後は九七式中戦車と共に日本陸軍戦車部隊の主力であり続けた本車。H章の説明では、九五式軽戦車だけではなく、日本軍が鹵獲して使用したM3スチュアートについて触れている。スチュアートについて日本軍鹵獲版ユニットは収録されていないがシナリオに登場させてもよいということだろう。

1933年、八九式中戦車の性能不足からより軽量で快速な砲装備の戦車が必要とされた結果、九五式軽戦車ハゴが生まれた。中速度の37ミリ砲、八九式中戦車後期型と同じ空冷式ディーゼルエンジンを搭載したが、装甲は12ミリしかなかった。騎兵学校は仕様に満足したものの、歩兵学校ではより重装備の兵装と装甲を求めた。騎兵部隊が主な配備部隊になることが想定されたため、歩兵部隊からの要求仕様は抜きにして生産にはいることとなった。いったん配備されると、高い信頼性から前線からの評価を得ることとなった。性能が陳腐化した1943年まで生産は続けられ、結果的にその間、本車両の後継にあたる車両は設計書以上になることはなかった。

初戦は1937年中国の関東軍に配備された戦闘であった。すぐにそれまでの装甲車や豆戦車の役割(多くは師団直轄の戦車中隊配備)に取って代わり、いくつかの軽戦車連隊が編成されることとなった。1941年まで中戦車装備の戦車連隊には軽戦車中隊が配備され、また独立した軽戦車中隊も編成された。
日本海軍陸戦隊でも本車両は使用された。軽戦車中隊の1個小隊は3両の車両からなり、中隊は通常10両の車両を擁していた。九五式軽戦車の正式な名称はケゴであったが、試作段階で使用されたハゴという呼称のほうがより多く使われた。ニックネームKYU-GOであった。約1250両が生産された。第2次世界対戦中、九七式中戦車チハと並んで日本軍の戦車連隊の主力装備として活躍した。

日本帝国陸軍は本車両の後、いくつかの異なるタイプの軽戦車を開発したが、全ては日本国内に留め置かれた。1942年の早期においてビルマにおいて複数台のM3スチュアートが鹵獲され、日本軍の第14戦車連隊にて1944年の中頃まで使用された。最後の1両は同年6月、Tiddim Roadで失われた。M3スチュアートは、1942年のフィリピンでも日本軍によって鹵獲された。

 

 

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戦車を中心に紹介したが、他にも装甲車・装甲歩兵輸送車(一式装甲兵車ホキ)から各種トラック類、また日本版ジープである九五式小型乗用車までユニット化されている。

砲兵器はさらに多彩。ただし硫黄島沖縄戦で有名な九八式臼砲はASLの枠組みではスケール外なのかユニット化されていない(見つけられなかった)。

 

次回はシナリオあたりを眺めてみたい。

(つづく、か?)

 

「RISING SUN」(MMP)を入手する(1)

ASLの太平洋戦域モジュール「RISING SUN」が再販されたので入手した。
プレオーダーを行って1年以上要したが諸事情により結局のところはプレオーダーではなく、クロノノーツ経由での購入になった。内容量が多くかなり重量があるため送料が嵩んだであろうこと、急速に進んだ円安から推測すると、プレオーダーによるメリットはあまりなかったと思われるので、まぁ良しとする。

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ボックスアートはASLシリーズのボックスアートを多く手掛けているKEN SMITH氏によるもので、中でも本作は飛び切りに素晴らしい。
作品紹介によると舞台はペリリュー島。上陸した海兵隊に対して、九五式軽戦車を擁した日本軍によリ行われた反撃を描いたものらしい。ペリリュー島の地形を調べた訳ではないが同島に描かれたような平原があったのかどうかはよくわからない。
描かれたのがペリリュー島であるのは、戦車砲塔に描かれた三ツ矢印の部隊章からもわかるようだ(第14師団戦車隊)。

本作以外の他の作品紹介を見ると見た事がある作品がいくつも紹介されている。ASLファンであればチェックするべし。こうして見るとシリーズのコアモジュール1作目である「Beyond Valor」のボックスアートはどうにかしてほしいと思ってしまう。

 

 

本作はアバロンヒル時代に発売された「CODE OF BUSHIDO」とアメリ海兵隊と中国軍モジュール「GUNG HO!」を合併させ2013年に初版が発売されたがしばらく在庫切れで入手困難が続いていた。*1
このため一昨年、ASLの入門版であるスターターキットの4作目モジュールとして発売された「ASL Starter Kit #4 PTO」が出るまで日本軍ユニットは入手が難しいという状況になっていた。ASLスターターキットではユニット、特に車両・砲兵器はシナリオに登場するものだけの最低限のものにしか同梱されていないので、ASLとしての日本軍像の全貌がわかる今回の再販はうれしい。

 

本作には、日本軍の他、アメリカ軍海兵隊、初期アメリカ軍*2、中国軍が登場する。
マップ7枚、カウンターシート8枚、シナリオ32種類、オーバーレイ16ページ分。

2013年版にも同梱されていたヒストリカルモジュールとしてガブツ島・タナンボゴ島という小島のマップが付属している*3
さらに今回の再販版ではボックスにはなんら紹介はされていないのだが、「Hell's Corner」というガダルカナル島のマタニカウ川周辺地図を収録した大きめのマップと複数のシナリオがはいったヒストリカルモジュールセット(Histrical Study)が付属している。*4

 

ユニット

日本軍

ユニットカウンターは鮮やかな黄色。まぁ人種差別的なカラーリングという人もいるようだが、個人的には好きな色合いなので気に入っている。
*5

f:id:yuishika:20211209213743j:plain 日本軍のエリート分隊。ユニット下部にある数値により「火力-射程-士気」という並びになっており、「4-4-8」。

残念ながら数値的には他国兵と比べて強くない。

火力の「4」はボルトアクションの小銃装備の歩兵分隊では他国でも同じ数値であることが多い。ただ他国の場合は小銃装備の分隊の他、短機関銃装備の分隊が登場しており、射程は短いながらも強力な火力(火力5~8)をもった分隊が存在する。
日本軍も空挺部隊など少数に短機関銃装備の部隊があったようだが、ASLでは登場していない。結果として日本軍の中では本ユニットが最強ユニットと言える。三八式歩兵銃でジャングル戦を戦わなければならなかった日本兵の悲哀がにじみでているようなユニットだと思う。

射程の「4」は同じ小銃装備の分隊として比べると他国に劣っている。ドイツ・イギリスなどの小銃装備分隊の射程は「6」であることが多い。射程「4」は、ソ連兵・中国兵の他中小国軍のユニットで見られる数値だ。
分隊ユニットの射程が短いと射撃距離は自然に短くならざるをえない。射程が長い兵との射撃戦では撃ち負けてしまうことが必至だ、むしろ接近して白兵戦を行ったほうがよい。といったところで小銃装備分隊ユニットの射程が「4」に設定されている、ソ連軍・日本軍・中国軍のいずれも、射撃戦よりは白兵戦を促すように射程を短めに設定されているのかもしれない。もしかすると各国の歩兵戦闘ドクトリンの相違点などが反映されているのかもとちらっと思ったが、そのうち調べてみよう。

士気「8」は他国も含めエリート部隊が持つ士気値としては標準的なものなのだ。

こうしてみると日本軍ユニットは強くないように見えるが決してそういう訳でもない。実は日本軍ユニットには特殊な能力・スキルが与えられており、これがASLに登場する他の国のどこの軍隊とも異なった特色となっている。

どのような能力・スキルなのかは次の記事で紹介している。

 

アメリカ軍

f:id:yuishika:20211209215346j:plain アメリカ軍最強、ASL内に登場する各国分隊の中でも最強のひとつといえるアメリカ軍海兵隊ユニット。島嶼戦を扱うシナリオに登場する。

「火力-射程-士気」が「7-6-8」というのは、ドイツ軍の突撃工兵分隊「8-3-8」双璧をなす強さだと思う。おそらく射程「6」で撃ち合うのであれば、他国の小銃装備分隊の倍近い火力(他国の小銃装備分隊の火力は「4」であることが多い)を投射できることになる。
火力の数値と射程の数値の下に下線があるのはそれぞれ「自動火器ボーナス」「散布射撃」を使うことができる能力があることを示している。いずれも自動火器を持っていた部隊のみに与えられているボーナスだ。これにより日本軍との火力差はますます広がることになる。

 

中国軍

f:id:yuishika:20211209220845j:plain 中国軍のエリート歩兵分隊。「火力-射程-士気」が「5-3-7」と火力が大きく射程が短いところを見ると短機関銃装備の部隊であるように思われる。士気はエリート部隊といえども他国の一般兵と同じレベルの「7」と1レベル低い数値に留まっていることから、中国軍の士気が一般的に高くなかったことを表しているように思う。

レンドリースなどにより他国からの武器を用いていた部隊については日本兵よりも火力などにおいて優勢であったことがわかる。

中国兵はソ連兵などと同じく人海戦術を発動することができる。

 

 

車両・砲兵器

ASLのルールブックの中には、各国軍が装備した車両や砲兵器を登場したユニットごとにヒストリカルな説明とゲーム内でのその装備特有の特別ルールとを記載した「H章」という章があるが、これは単なる特別ルール集ではなく、ヒストリカルノート部分も含め抜群に面白い。

日本軍の装備を中心に本ゲームで登場している兵器類を見ていきたい。

 

九七式中戦車チハ

f:id:yuishika:20211209223345j:plain 言わずと知れた太平洋戦争中の日本軍主力戦車。ゲーム中はきちんと57ミリ砲を載せたノーマル型と砲を載せ替えわずかながら対戦車戦闘力を向上させた「新砲塔」または「改」が登場する。*6
ユニットとしては、前者をA、後者をBと表示しているが、ASLの車両ユニットの常で主砲の数値で区別するのが早い。

移動力・機動力(上のユニットで言うと、右上の「14」の数値が該当)はこの当時の他国車両とあまり変わらない。装甲値(移動力の下に縦に並んでいる「3」「2」の数値)は、正直言うと他国でいうと大戦前の車両と同等なので、大戦期中、まして末期においては完全に性能が劣後していたことがわかる。

なお左下にある「47L」というのが本車両の主砲が47ミリ長砲身と整理されている。他にユニットから読み取れる情報としては、低速回転砲塔ということがわかる。

なお大戦中に登場した戦車の中で最高傑作のひとつとされるT34/76は次のようになる。

f:id:yuishika:20211209225717j:plain 主砲の「76L」(76ミリ長砲身)は言うに及ばず、移動力「16」、装甲値(前面/側面・後面)「11/6」という数値になっている。九七式中戦車で撃ち合って勝てる相手ではない。

九七式中戦車に話を戻すとヒストリカルノートはけっこう詳しく記載してある。長いのでかいつまんで紹介すると、

「選定段階で、性能が劣るが安価なチニ車との競合になったが、日中戦争で使用したところ現地部隊の選定としてチハ車が選ばれた」

「チハ車開発時には対戦車要件がなかったが、将来的に対戦車要件が追加されることを見越した技術者によって可能な限り大きな砲塔リングを採用したことから、拡張性を確保できた」

ノモンハンで大量投入されたソ連製戦車との戦闘経験から、すぐさま主砲のアップグレードが検討され、「新砲塔」として結実した」

その後は、日本軍の戦車部隊の編成と九七式中戦車の配備定数について長々と詳細に書いてあるが、アメリカ軍戦車との戦闘でどうだったといった話はいっさい触れていない。

 

日本軍の戦闘車両では、八九式中戦車、一式中戦車はユニットが用意されているものの、実戦投入されていない三式戦車以降の車両は登場しない。
過去のタクテクスに日本軍の三式戦車以降の車両をユニット化するという記事が掲載されていたのを覚えているが今度探してみる。

(つづく)

 

 

 

 

*1:BGGでは9.1という驚異的なスコアがついているが、熱心なファンが投票したということだろう。

*2:開戦直後1941~1942年あたりのアメリカ軍またはフィリピン軍などのアメリカ植民地軍を表していると思われる

*3:戦史ファンにはガダルカナル島ものの海戦ゲームなどに多く登場するツラギ島と同じフロリダ諸島にある島というと、あたりがつくかも

*4:「Hell's Corner」が同梱されていることはボックスの裏面などには説明はなく、シュリンク包装のビニール側にシールが貼られている。「Hell's Corner」は、Operation Special Magazine #3(2010)の付録ゲームだった模様

*5:ASLのユニットのカラーリングではドイツの武装親衛隊SSの黒ユニット問題があるが、日本軍黄色ユニットは他のゲームでもたまに見かけるカラーリング。もはやデフォルト?

*6:「新砲塔」タイプは英訳に困ったのかそのまま「Shin-hoto」型と書いてある。

「IRON DRAGON」(Mayfair Games)を対戦する

「IRON DRAGON」(Mayfair Games)を対戦しました。
タイトルがカッコよいのですが、いわゆるユーロゲーム系ボードゲームです。

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ゲームの概要

ファンタジー世界を舞台に、線路を敷設し貨物を運ぶことで収入を得、鉄道ネットワークを拡大し異世界での鉄道王を目指すゲーム。
オリジナルゲームは北米大陸を舞台とした鉄道ゲーム「エンパイア・ビルダー」ですが、基本的なゲームシステムはそのままに舞台を異世界に移し、ファンタジー要素たっぷりの演出を施されたのが本ゲームです。

 

プレイヤーの役割と勝利条件

プレイヤーは、自分の鉄道ネットワークの中で列車を移動させ貨物の運搬を行い、収入を得ます。得られた収入により列車のグレードアップと鉄道の敷設を行うことができます(一度に運行できる列車は1編成のみです)。

マップ上に登場する7ヶ所の大都市のうち6大都市を自分の鉄道ネットワークをつなぐこと、さらに250ゴールドの資金を貯めることで勝者になります。

 

敷設した線路をマップに書き込みます

マップ表面はラミネート加工されており、水性ペンで路線を記入していきます。マップ上には小さなドットが記載されてドットとドットを結ぶことで線路となるのです。

プレイ終盤になるとマップ上には各プレイヤーが担当する色による鉄道ネットワークがかなりみっしりと輻輳した状態で記述されていることになります。

ドットには平地の他、森林・高地・山岳・砂漠・ジャングルといった地形が記載されており、地形によって線路の敷設に要するコストが異なります。平地は1ゴールドですが、高地・森林は2ゴールド、山岳に至っては5ゴールドとはねあがります。

マップに書き込む線路は他人の線路と交わることはできますが、重ねて敷設することはできません。さらに都市はその規模によって乗り入れすることができる路線数に制限があります。

プレイヤーが同じ2つの都市間に路線を設定するとしても、同じルートは設定できませんので、コストや距離などに差がでてきます。地形が複雑、狭い場所にあるといった都市に路線を引こうとした際に新たな路線が引けない、または引きにくいといったことが起きてきます。*1

1回の手番の中で投資できる金額に制限があること、また現在の自分のネットワークを延長する形でしか敷設できないという制約があるため、路線の拡大は無闇にできる訳ではありません。

プレイの序盤から中盤にかけて資金はかつかつで、荷物を運んで得られた資金をそのまま鉄道敷設に投資するという自転車操業状態ですので、積荷の依頼内容の取捨選択を含め、計画的に拡張を行っていかなければ、すぐに資金不足に陥ってしまう、または他プレイヤーに先を越されて効率的にネットワークを設定できないということがでてきます。

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序盤の状況。赤く塗られたおおきな六角形が大都市。大都市はマップ内に7ヶ所あり、このうち6ヶ所は自分の路線ネットワークでつなげる必要がある。
カラーリングされたコマが各プレイヤーが操作する列車を表し、1回の手番の中で決められた移動力分、自分の路線ネットワークの中を移動させることができる。
マップ上には小さなドット模様とドットの代わりにカラーのシンボルマークが記載されている。単なるドットは平地、カラーのマークはそれぞれ森林や高地、ジャングルなどを表す。

 

積荷は積荷カードによって依頼される

積荷の依頼が記載している積荷カードには、3種類の積荷とその目的地・報酬が記載されています。積荷にはそれぞれそれを取得できる固有の産地がありますので、産地の都市でそれを積載して、目的地まで運んで報酬を得るということになります。産地と目的地が遠いほど報酬は高くなりますが、当然難易度が高くなります。鉄道が敷設されていなければ目的地または産地まで鉄道を敷設する必要があるでしょう。

プレイヤーは最初に配られる3枚の積荷カードをみながら、最初に敷設する鉄道の路線を決めます。最初は慣れていないのでそれぞれの産地や目的地をマップ上から探すことになるでしょう。

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手前に置かれた3枚のカードが積荷カード。それぞれ3種類の運送の依頼内容が記載されている。

 

ファンタジー要素は随所に

ここまではオリジナルの「エンパイア・ビルダー」をはじめシリーズの共通的なルールと言えます。

ファンタジー要素としてはまずマップが完全な架空世界になっています。中央にある大きな大陸の他、海を挟んで魔法の大陸、さらには地下世界もあります。
魔法の大陸へはワープゾーンがあるとある大都市経由で渡るか、海峡越しの路線を敷設することで渡ることができます。地下世界は大陸の複数ヶ所にある地下世界へのトンネルを経由して行くことができます。

勝利条件となっている7つの大都市は魔法大陸や地下世界にもありますので、無視することはできません。

積荷にはスパイス、木材、牛・鉄といった通常のものだけではなく、魔法の杖、武具、呪文の文書、果てはドラゴンといったものがあります。魔法大陸や地下世界からでしかとれない産品もあります。

プレイヤーは雇用人として1種族を指定することができます。各種族には特殊スキルそれぞれにあり、主に線路の敷設の際の必要コストを削減することができます。例えば、エルフを雇用している間は、森林の敷設コストが2ゴールドから1ゴールドに削減などです。特に地下世界においては1ドットあたり5ゴールドの敷設コストが、トロールを雇用することで2ゴールドと劇的に削減することができます。

種族カードはゲーム中、随時交換することができるのですが、各種族のカード枚数は限られているため、都合が良いタイミングで目当ての種族を雇用できないことがあります。

積荷カードの中にはイベントカードが紛れており、ほとんどはトラブルイベントであるためなんらかの障害が発生します。

洪水により橋がながされた(架橋し直さなければ通行できなくなる)、砂嵐で砂漠地方の路線が消えた(敷設し直す必要がある)、火山の噴火、シー・サーペントが暴れたため海岸地方で積み下ろし不能、エルフ族の暴動により森林地帯通行不能・建設不能などなど、ファンタジー世界っぽい事件が起きるのです。

 

言い忘れましたゲームタイトルとなっている「アイアンドラゴン」はこの世界で運行される列車名です。*2

アイアンドラゴン号は、投資をすることで荷物の積載量や1つの手番での移動量を増加させることができます。

 

ゲームの展開

インスト後、すぐにプレイできるでしょう。2、3周手番を回せばやり方は理解できると思います。

プレイ人数は2~6名とありますがベストは3~4名とのことです。今回は4名でプレイしました。マップ上の路線の埋まり方などからすると、ベストな人数というのもよく理解できます。

ゲーム開始時、各プレイヤーは、20ゴールドの資金、40ゴールドまでの路線設置の権利*3、また最初の3枚の積荷カードを渡され、最初の雇用種族もカードで配られます。
まずは積荷カードを見て、各カードに3件ずつ記載されている積荷の産地と目的地を確認します。何を運ぶのか、何を運べるのか、それによって最初に敷設する路線を検討するのです。
最初の頃は、記載された地名をマップ上から探すのが大変かもしれません。
積荷の報酬が次の路線敷設の資金になりますので、最初の積荷を何にするのか、路線をどう敷設するのか、次の積荷をどうするのか、などと作戦を検討する必要があります。

他のプレイヤーが目指している都市が一致する場合など線路の敷設のタイミングは注意が必要でしょう。相手に先んじてコストが安いルートを押さえてしまうということも必要かもしれません。なにせ都市によっては乗り入れ本数の制限があるため、中長期的に線路の拡張計画は検討する必要があるでしょう。

雇用種族もとりあいになるかもしれません。特に地下世界に有効なトロールは1枚しかありませんので、地下世界が路線拡張の対象となっていく中盤以降はわざとトロールを雇い続けることで他プレイヤーが地下世界に路線を拡張するのを妨害するといったこともできます。

ゲーム中盤から終盤にかけては比較的資金に余裕がでてくることもあり、いままでけちけちとルートを選んで路線をひいていたところを、コストおしまず山岳地帯をぶち抜いた縦貫線をつくってしまうことも可能になってくるかもしれません。

 

積荷カードは常に3枚手元にある状態になり、ひとつの荷物を運搬し終わるとその時点で次の積荷カードをドローできます。ドロ-した積荷カードの内容によってそれまで考えていた”運搬計画”や”路線設置計画”がガラリと変わることも度々です。

路線の設置で言えば、タイミングも問題で少し躊躇している間に他のプレイヤーにコストが安いルートを先に敷設させてしまい、コスト高のルートを敷設しなければならなくなるということも頻発します。
雇用種族についても適用される地形が広いため、使いやすいエルフ、ドワーフの一方でトロールのような特殊な種族の確保が進行上のボトルネックになったりすることもあるかもしれません。

 

プレイ時間はけっこう要し、インスト込みで4~5時間になりました。

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終了時の路線ネットワーク状況。中央の大陸の他、右側の魔法の大陸上も路線が描かれている。地底世界は写真内に収まっていない。

(おわり)

 

 

*1:路線が引けていない都市にどうしても行きたい場合などは、他プレイヤーのネットワークに一時的に乗り入れをさせてもらうという手段はありますが、借り賃が別途必要です。

*2:オリジナルゲームの題名は、アムトラックが実際に運行する列車名「エンパイア・ビルダー」からとられているのと同様にこの世界での列車の名称がゲーム名になっているという訳です

*3:消費できずに余った敷設資金分は手持ち資金となる

「The Korean War」(Compass Games)を対戦する【3戦目】(3/3)

「The Korean War」(Compass Games)【3戦目】の3回目の記事です。

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前々回、前回の記事はこちら

 

 

 

第3ターン(1950年8月)(続き)

開戦当初免除されていた補給ルールの適用を開始したが、北朝鮮軍は「物資集積所(Depots)」を集中配置することで、補給ポイントの確保に成功。さらには獲得した補給ポイントを全投入することで、範囲内の戦闘部隊の攻撃力が額面の1.5倍になるという「強襲攻撃」を実施した。

 

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光州攻略 - 第3ターン冒頭、西部戦線において南下した北朝鮮軍は光州を陥落させた。

 

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金泉攻略 ー 北朝鮮軍3個歩兵師団は金泉に構築された国連軍陣地を包囲攻撃、これを陥落させた。東部戦線では盈徳付近において突出していたアメリカ軍歩兵連隊を除去した。

 

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洛東江突破- 金泉陥落を受け、北朝鮮軍は洛東江の渡河を強行。国連軍は空軍の航空支援を駆使して阻止を図るが失敗した。「強襲攻撃」の効果は絶大。

 

第2アクションフェーズ

北朝鮮軍は「物資集積所」を金泉に集中して設置。このターンも国連軍空軍の補給妨害をかいくぐって補給ポイント「2」を前線に送り届けることに成功する。「強襲攻撃」状態が続行され、このターンも「集積所」近くに位置する部隊は攻撃力1.5倍効果を得ることとなった。
一方で国連軍の強力な空軍による交通妨害により全羅道(光州付近の地域)では道路移動が妨げられ、随所の戦闘において国連軍には強力な地上支援が行われ、北朝鮮軍の損害も目に見えて増えていった。

 

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大邸攻撃へ - 大邸攻撃に向け北朝鮮軍が集結中。国連軍は大邸の包囲を防ぐため戦線の整理を実施。東部戦線では浦項アメリカ軍連隊と戦闘開始。

 

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第3ターン終了時 - おおよそ釜山を中心に馬山-大邸-慶州をつないだ円陣に国連軍は押し込められつつあった。

 

第4ターン(1950年9月)

史実では9月15日に実施された仁川上陸作戦に向けて一定の国連軍兵力は上陸用部隊として後置されておくべきであったが、この時には国連軍は手持ちの予備部隊のほとんどを釜山防衛線に投入した状態にあった。

北朝鮮軍は「物資集積所」を洛東江河畔に設置、今回はダイスの目に恵まれず、受け取ることができた補給ポイントは「1」となった。
これにより「集積所」近くのユニットであればユニット額面通り、西部戦線・東部戦線の離れた位置に位置する部隊の戦闘力は1/2となることになった。

対する国連軍の補給ポイントも「1」となった。同値の場合、ルールにより北朝鮮軍がイニシアティブを得た。

 

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大邸包囲戦 - 大邸近郊で国連軍と北朝鮮軍の戦車部隊間で機甲戦が発生。包囲攻撃により大邸は陥落した。また西部戦線の晋州でも同様に包囲戦が実施されたが、こちらは北朝鮮軍の補給不足により包囲側が損害を受ける結果となった。

 

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最終状態 - 馬山攻撃 - 大邸・晋州の陥落後、第2アクションフェイズに突入するが、文字通り乱戦状態になる。この時期になると北朝鮮軍の損害も少なくなく、ステップロス状態の歩兵師団も目立ってきていた。

残念ながら時間切れで終了となった。
上述のとおり国連軍側に逆上陸を行うだけの余力はなく、このままでは北朝鮮軍の包囲を打破できずに終わる可能性が高いのではないか。

結局のところ38度線を超えての国連軍の北進も、中共軍の介入も実現できなかった。

 

感想戦

上級ルール「国際情勢」の適用について

1回目の記事で紹介した通り上級ルールで導入される国際情勢を表すために、国連軍が操作できる3つのパラメーターがあるが、初期値は決まっていたり、1ターンでの変化量も制約があるなど、急激にパラメーターを操作できるような仕掛けにはなっていないことがわかってきた。

パラメーターの状況は増援スケジュールなどに関係するのだが、実は「国連軍の介入レベル」にしても「アメリカ軍の動員レベル」にしても即効性がある訳ではなかった。

実際を考えてみれば当然の事で、「介入レベル」があがったからといってすぐに前線に部隊をおくるだけの余力をもった軍隊は少ないのだ。当時のアメリカ軍も緊急展開部隊のようなものをもっていたわけではなく、日本に駐留していた軍勢をまずは投入している。「介入レベル」「動員レベル」のパラメーターを操作しても実際の増援スケジュールに影響が出てくるのは3ターン先~6ターン先といった時間間隔になる。

結論としては本ゲームの「国際情勢」ルールは極めてまっとうな節度のあるルールになっていた。核兵器を使うことも、第三次世界大戦を起こすこともなかなかに難しかった・・・。

 

作戦面について

またもや中共軍に見えることはできなかった。
それにしても独特のゲームシステムで一見、うまく作用するのかわかりにくいのだが、毎回史実に近い展開になるのは非常に面白い。

 

 

(終了)

 

 

「The Korean War」(Compass Games)を対戦する【3戦目】(2/3)

朝鮮戦争の仁川上陸作戦以降、38度線を超えて北進する国連軍と人海戦術を駆使する中共軍の戦いをやってみたい。さらには上級ルールを導入することで、”核戦争の淵”を見てみよう、という不謹慎な動機から「The Korean War」(Compass Games)をDさんと再戦することにした。

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前回の記事はこちら

 

 

 

第2ターン(1950年7月)

第1ターン、韓国軍はすべてのユニットの活性化する前のタイミングで強制的にターンが終了したことから、部隊移動を完了させる前に第2ターンを迎えることとなった。*1

 

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第1ターン終了時の状況。ソウルの南、北朝鮮の侵攻路を横切るように流れる漢江は無防備な状態のまま第2ターンを迎えることになった。

第2ターンまでは、先行してアクティベーションを実施できるイニシアティブは北朝鮮が保持している*2ため、先手は北朝鮮軍が握った。前のターン、強制終了状態であった韓国軍は戦線の移動や部隊配置が不十分な状態のままで北朝鮮軍の新たな攻撃を受けることになる。

北朝鮮軍は最初の活性化で、韓国軍ユニットが配置されていない場所から漢江を渡河させ、渡河攻撃のペナルティを受けることなく、ソウル南岸の韓国軍部隊ユニットを除去。進撃路を確保したことにより、北朝鮮軍の精鋭は続々と国道を南下しはじめた。

 

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前のターンから引き続き、韓国軍は不十分な状況から開始することになる。
漢江を突破されると遮る地形は少なく、韓国軍の歩兵連隊単発では一時的な足止めにしかならない。
漢江を突破した北朝鮮軍の先鋒は水原の南方で韓国軍歩兵連隊の足止めに遭うも、すぐに撃破する。

 

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北朝鮮軍の先頭に立った2個歩兵師団は勝利ポイントの対象都市のひとつである大田に取り付き、守備の韓国軍を撃破すると大田に入城した。
大田から東南に伸びる街道は永同・金泉。さらには勝利ポイント都市の大邸を通り、最終的に国連軍の補給源となる釜山に続いている。大田の占領はいわば、大邸・釜山へ続く街道の玄関を占拠したようなものだ。

 

f:id:yuishika:20211202215853j:plain第1アクションフェイズ終了時。
韓国軍は一斉に後退し、山間地に防衛線を張るように動いた。退路を失った韓国軍歩兵連隊1個が水原と大田の中間位置に進出。東海岸日本海側)では、北朝鮮軍が韓国軍の連隊を後退させ、前進を実施。

 

1ターンはひとつの政策フェイズと2個のアクションフェイズに分かれている。
政策フェイズは上級ルールを用いた国際情勢に関する操作を行うフェイズになる。
2つのアクションフェイズは全く同じ内容なので、作戦レベルでの操作は実質1ターンの間に2回行動を実施できることになる。

第2ターン第2アクションフェイズは開戦時の特別ルールの適用がされる最後のターンにあたる。北朝鮮軍としては補給を気にせずに突進できる最後のターンであり、また無条件にイニシアティブを握れるのも最後だ。よってこのフェイズ、北朝鮮軍は可能な限りの突進を行うこととにする。

一方の国連軍は、増援として登場するアメリカ陸軍歩兵師団の扱いに迷っていた。師団単位で登場するこれらの部隊を師団単位で配置するのか、連隊単位に分割するかだ。
師団単位で使う時の戦闘力と、連隊単位に分割した際の数値を比べると、師団として1個ユニットとして扱ったほうが戦闘力が高いのだ。連隊単位に分割配置するのはどうにも損をしているように見えるというのだ。だが、前線の状況は四の五の言っていられる状態ではなかったのも事実であった。

 

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第2ターン第2アクションフェイズの状況。
北朝鮮軍の南進は続き、国連軍は金泉や大邸に塹壕や陣地を構築しはじめた。

第3ターン(1950年8月)(途中まで)

このターンより通常の補給ルールが適用されはじめる。
これまで補給線を無視して前進できた北朝鮮軍はとたんに「補給集積所(Depots)」との距離や集積所に届いた補給ポイントを意識して作戦をたてる必要がでてくる。
さらに第2ターンより本格的に参戦している国連軍航空戦力による補給妨害や交通妨害も頭が痛い足かせになってくる。

第2戦での戦訓を生かして「補給集積所」の場所は1ヶ所に集中させた。複数に分割してカバー範囲を広げる一方で受領できる補給ポイントを減らすよりも、集積所を1ヶ所に集中させることにより確実に補給ポイントを受け取ったほうが、多少補給線が届きにくい場所ができたとしても全軍ベースで見たときには補給状態は良くなることがわかったためだ。

国連軍は配備されたB-29を補給妨害に投入するも効果があまりなく(ダイスにより判定する)、北朝鮮軍は大田付近に集中して設置した「集積所」に補給ポイント「2」を受領する。
北朝鮮軍は受領したポイントをすべて投入することとし、「強襲攻撃(ACCEL ATTACK)モード」を可能とする。これにより「集積所」に近い位置にいる部隊ユニットは攻撃力を「1.5倍」にできるようになる。また距離が離れているユニットも攻撃力を「1/2倍」にすることなく「1倍」のままで攻撃を行うことができるという状況だ。

一方の国連軍は「集積所」は選択の余地なく釜山の1ヶ所としたが受領ポイントは「1」。投入した補給ポイントが大きいことからイニシアティブは北朝鮮軍が獲得した。これで行動を先に実施できるようになる。

 

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第3ターン冒頭の展開。攻撃力を1.5倍にできるという「強襲攻撃」の効果を最大限活かすべく、北朝鮮軍は集積所からの補給範囲内の全軍で積極攻勢を継続する。
光州から半島南端を周り、海岸沿いに馬山を攻めるべきか、大田から山間部を通って大邸を目指すルートを主にすべきか決めかねていた。最短ルートは当然、大邸を通る山間部ルートだが、2回目の対戦の際には国連軍に河川沿いに堅牢な陣地からなる戦線を構築されてしまい、補給状態がよくなかったことも相まってどうにもこうにも攻撃が頓挫してしまった事はマイナスだ。

 

(つづく)

 

 

 

 

*1:本ゲームのゲームシステムでは交互にユニットを活性化していくが、第1ターンと第2ターンの間、国連軍は活性化できるユニット数が「0」だったり、すべてのユニットの活性化が完了する前に強制的にターン終了する可能性がある。

*2:第3ターン以降は投入した補給ポイントの多寡によってきまる。

「The Korean War」(Compass Games)を対戦する【3戦目】(1/3)

朝鮮戦争の開戦から仁川上陸作戦までを扱っているエポック/サンセットゲームズの「The Korean War」は然り、OCS「KOREA」、また最近プレイを重ねているCompass Games「The Korean War」のいずれも1950年6月末の開戦からはじめると仁川上陸作戦が行われた1950年9月の前までの釜山包囲戦で力尽きてゲームを終了させていることが多い。

せっかくユニットやマップが用意されている訳なので、1950年10月以降の国連軍が38度線を超えて北進していく戦いや、10月末に山間から躍り出た中共軍をいつかは見たいものだと思っていた。

ということで「The Korean War」を上級ゲームルールを取り入れて、目指せ北進、いざ中共軍ということで1950年9月を超えた戦いに挑戦してみることにした。

対戦相手Dさんの希望で国連軍を担当、当方は北朝鮮軍を担当した。
Dさんが国連軍を担当したのには理由があり、上級ルールで取り入れられている「国際緊張」を意図的に高めることで、核戦争や第三次世界大戦が起こしてしまおう、というさながらタイ・ボンバ*1のゲームのようなことを画策していた!?

 

本ゲームのルール紹介と第1戦目のAAR

第2戦目AAR

 

 

上級ルール

本ゲームの上級ルールは国際情勢を取り入れた内容になっている。
上級ルールとはいっても、マップ上のユニットで表現される作戦レベルでは、これまでプレイしてきた基本ルールは変わらない。
基本ルールを用いたシナリオでは増援は予め用意されたスケジュールに沿って登場するのだが、上級ルールではこれらが可変になるという・・。実際の導入効果はおいおい説明していく。

上級ルールで国連軍プレイヤーは、「国連軍の介入レベル」「アメリカ軍の動員レベル」「国連軍の交戦レベル」といったパラメーターを操作することができる。

「介入レベル」また「動員レベル」はまさに増援内容やスケジュールに影響する。
「交戦レベル」は国連軍空軍の攻撃可能範囲に制約を設けるかという内容になる。マッカーサーが主張していたように、38度線を超えて北朝鮮領内や中国本土に対する戦略爆撃を許容するのか、または局地的な航空支援に止めるのかというパラメーターになる。

こうしたパラメーターから算出される紛争値に沿い、ダイスにより「国際的緊張レベル」が判定される。
これらのパラメーターは悪化する方向にしか変化しない不可逆な数値になっている。
「交戦レベル」が最高レベルに達すると国連軍は核兵器を使用できるようになる。
また「国際的緊張レベル」が最高レベルになると、第三次世界大戦が発生しゲームは終了する。

 

国連軍側だけではなく北朝鮮軍側もバリエーションがある。
ひとつにはあるターンに至ると中共軍による台湾侵攻を宣言できる。これにより中共軍が介入した際の兵力は減るものの、アメリカ軍の増援も減ることになる。
また北朝鮮中共軍やソヴィエト軍に対して介入を要求できる。中共軍の介入には、限定介入と全面介入があり投入戦力は異なる。

もちろんこうした中共軍やソヴィエト軍の介入は「国際的緊張レベル」の判定時に大きく影響してくる。

 

第1ターン(1950年6月)

6月25日*2、国境に集結した十数個の北朝鮮軍歩兵師団は一斉に38度線を超え南下しはじめた。一部の歩兵師団にはT34を装備した戦車大隊が随伴していた。
国境近くに駐屯していた韓国軍は有効な対戦車兵器どころか、重火器を持たなかったことから北朝鮮軍戦車を止めることはできずに潰走していった。

 

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フルマップ4枚で描かれる朝鮮半島の全貌。地理的感覚の参考に主要都市の位置を記した。黄色ユニットは北朝鮮軍。水色ユニットは韓国軍。

 

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開戦時の38度線付近の両軍配置。黄色ユニットと水色ユニットとの間がおおよそ38度線になる。

 

史実では開戦3日後にソウルは陥落しているが、ゲーム内では第1ターン内に陥落したことになる。ソウル攻略に最も近い位置にいるのは、議政府方面から進撃する北朝鮮軍の2個歩兵師団と2個戦車大隊による2つのスタックが該当する。これらの師団が、経路上に存在する韓国軍3個歩兵連隊を除去した上で、ソウルを直接攻撃する位置に付き、ソウル防衛の1個歩兵連隊を除去することができれば戦闘後前進によりソウル入城が可能となる。決して不可能なシチュエーションではないのがこのゲームの再現性の高さといえる。感覚的には成功率3分の2の3乗くらいの確率で成功するのではないかと思う。ざっくり成功率20~30%くらいか。

 

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議政府方面の北朝鮮軍は第1ターンのみ出動できる北朝鮮空軍の航空支援*3を得て、国境守備の1個歩兵連隊を除去後、街道沿いの2個歩兵連隊を除去することで、ソウルへの進撃路を開けた。その後、戦車大隊を伴った歩兵師団がソウルに突進し、ソウル防衛隊を除去、戦闘後前進により占拠した。写真は開幕冒頭、ソウル入城記念の図。

 

第1ターンから第2ターンの国連軍は活性化可能なユニット数を決める判定表も、特別な欄を使用する。ダイスの結果によっては活性化可能数がゼロとなったり、すべてのユニットが活性化しないうちに強制的にターンが終了する場合もあるなど、不確実性が高い状況で活動をしなければならないというハンディを負っている。

 

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第1ターン終了時の状況。
ソウル陥落後の北朝鮮軍のダイスの目は良い目もあればいまいちのものもあった。
開城で韓国軍連隊は踏みとどまり、平壌からの増援の歩兵師団の足を止めた。東海岸日本海側)では北朝鮮軍歩兵師団が南下した。

 

(つづく)

 

 

 

*1:多数のファンを持つ著名なゲームデザイナー。’80年代に、1943年の東部戦線をテーマにした「燃え上がる猛虎」を発表、ゲームデザイナーとしてデビューする。その後、様々なボードシミュレーションゲーム雑誌でゲームデザインを手がけ、1989年には独自のボードシミュレーションゲーム&戦史誌である「コマンドマガジン」を創刊する。現在は、「コマンドマガジン」の編集責任者兼経営者として活躍している。

*2:第1ターン第2インパルスよりゲームはスタートする。

*3:北朝鮮軍は開戦時イリューシンIl-10やアントノフAn-2など航空機211機を擁していた