Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム、ボードゲーム

「RISING SUN」(MMP)を入手する(1)

ASLの太平洋戦域モジュール「RISING SUN」が再販されたので入手した。
プレオーダーを行って1年以上要したが諸事情により結局のところはプレオーダーではなく、クロノノーツ経由での購入になった。内容量が多くかなり重量があるため送料が嵩んだであろうこと、急速に進んだ円安から推測すると、プレオーダーによるメリットはあまりなかったと思われるので、まぁ良しとする。

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ボックスアートはASLシリーズのボックスアートを多く手掛けているKEN SMITH氏によるもので、中でも本作は飛び切りに素晴らしい。
作品紹介によると舞台はペリリュー島。上陸した海兵隊に対して、九五式軽戦車を擁した日本軍によリ行われた反撃を描いたものらしい。ペリリュー島の地形を調べた訳ではないが同島に描かれたような平原があったのかどうかはよくわからない。
描かれたのがペリリュー島であるのは、戦車砲塔に描かれた三ツ矢印の部隊章からもわかるようだ(第14師団戦車隊)。

本作以外の他の作品紹介を見ると見た事がある作品がいくつも紹介されている。ASLファンであればチェックするべし。こうして見るとシリーズのコアモジュール1作目である「Beyond Valor」のボックスアートはどうにかしてほしいと思ってしまう。

 

 

本作はアバロンヒル時代に発売された「CODE OF BUSHIDO」とアメリ海兵隊と中国軍モジュール「GUNG HO!」を合併させ2013年に初版が発売されたがしばらく在庫切れで入手困難が続いていた。*1
このため一昨年、ASLの入門版であるスターターキットの4作目モジュールとして発売された「ASL Starter Kit #4 PTO」が出るまで日本軍ユニットは入手が難しいという状況になっていた。ASLスターターキットではユニット、特に車両・砲兵器はシナリオに登場するものだけの最低限のものにしか同梱されていないので、ASLとしての日本軍像の全貌がわかる今回の再販はうれしい。

 

本作には、日本軍の他、アメリカ軍海兵隊、初期アメリカ軍*2、中国軍が登場する。
マップ7枚、カウンターシート8枚、シナリオ32種類、オーバーレイ16ページ分。

2013年版にも同梱されていたヒストリカルモジュールとしてガブツ島・タナンボゴ島という小島のマップが付属している*3
さらに今回の再販版ではボックスにはなんら紹介はされていないのだが、「Hell's Corner」というガダルカナル島のマタニカウ川周辺地図を収録した大きめのマップと複数のシナリオがはいったヒストリカルモジュールセット(Histrical Study)が付属している。*4

 

ユニット

日本軍

ユニットカウンターは鮮やかな黄色。まぁ人種差別的なカラーリングという人もいるようだが、個人的には好きな色合いなので気に入っている。
*5

f:id:yuishika:20211209213743j:plain 日本軍のエリート分隊。ユニット下部にある数値により「火力-射程-士気」という並びになっており、「4-4-8」。

残念ながら数値的には他国兵と比べて強くない。

火力の「4」はボルトアクションの小銃装備の歩兵分隊では他国でも同じ数値であることが多い。ただ他国の場合は小銃装備の分隊の他、短機関銃装備の分隊が登場しており、射程は短いながらも強力な火力(火力5~8)をもった分隊が存在する。
日本軍も空挺部隊など少数に短機関銃装備の部隊があったようだが、ASLでは登場していない。結果として日本軍の中では本ユニットが最強ユニットと言える。三八式歩兵銃でジャングル戦を戦わなければならなかった日本兵の悲哀がにじみでているようなユニットだと思う。

射程の「4」は同じ小銃装備の分隊として比べると他国に劣っている。ドイツ・イギリスなどの小銃装備分隊の射程は「6」であることが多い。射程「4」は、ソ連兵・中国兵の他中小国軍のユニットで見られる数値だ。
分隊ユニットの射程が短いと射撃距離は自然に短くならざるをえない。射程が長い兵との射撃戦では撃ち負けてしまうことが必至だ、むしろ接近して白兵戦を行ったほうがよい。といったところで小銃装備分隊ユニットの射程が「4」に設定されている、ソ連軍・日本軍・中国軍のいずれも、射撃戦よりは白兵戦を促すように射程を短めに設定されているのかもしれない。もしかすると各国の歩兵戦闘ドクトリンの相違点などが反映されているのかもとちらっと思ったが、そのうち調べてみよう。

士気「8」は他国も含めエリート部隊が持つ士気値としては標準的なものなのだ。

こうしてみると日本軍ユニットは強くないように見えるが決してそういう訳でもない。実は日本軍ユニットには特殊な能力・スキルが与えられており、これがASLに登場する他の国のどこの軍隊とも異なった特色となっている。

どのような能力・スキルなのかは次の記事で紹介している。

 

アメリカ軍

f:id:yuishika:20211209215346j:plain アメリカ軍最強、ASL内に登場する各国分隊の中でも最強のひとつといえるアメリカ軍海兵隊ユニット。島嶼戦を扱うシナリオに登場する。

「火力-射程-士気」が「7-6-8」というのは、ドイツ軍の突撃工兵分隊「8-3-8」双璧をなす強さだと思う。おそらく射程「6」で撃ち合うのであれば、他国の小銃装備分隊の倍近い火力(他国の小銃装備分隊の火力は「4」であることが多い)を投射できることになる。
火力の数値と射程の数値の下に下線があるのはそれぞれ「自動火器ボーナス」「散布射撃」を使うことができる能力があることを示している。いずれも自動火器を持っていた部隊のみに与えられているボーナスだ。これにより日本軍との火力差はますます広がることになる。

 

中国軍

f:id:yuishika:20211209220845j:plain 中国軍のエリート歩兵分隊。「火力-射程-士気」が「5-3-7」と火力が大きく射程が短いところを見ると短機関銃装備の部隊であるように思われる。士気はエリート部隊といえども他国の一般兵と同じレベルの「7」と1レベル低い数値に留まっていることから、中国軍の士気が一般的に高くなかったことを表しているように思う。

レンドリースなどにより他国からの武器を用いていた部隊については日本兵よりも火力などにおいて優勢であったことがわかる。

中国兵はソ連兵などと同じく人海戦術を発動することができる。

 

 

車両・砲兵器

ASLのルールブックの中には、各国軍が装備した車両や砲兵器を登場したユニットごとにヒストリカルな説明とゲーム内でのその装備特有の特別ルールとを記載した「H章」という章があるが、これは単なる特別ルール集ではなく、ヒストリカルノート部分も含め抜群に面白い。

日本軍の装備を中心に本ゲームで登場している兵器類を見ていきたい。

 

九七式中戦車チハ

f:id:yuishika:20211209223345j:plain 言わずと知れた太平洋戦争中の日本軍主力戦車。ゲーム中はきちんと57ミリ砲を載せたノーマル型と砲を載せ替えわずかながら対戦車戦闘力を向上させた「新砲塔」または「改」が登場する。*6
ユニットとしては、前者をA、後者をBと表示しているが、ASLの車両ユニットの常で主砲の数値で区別するのが早い。

移動力・機動力(上のユニットで言うと、右上の「14」の数値が該当)はこの当時の他国車両とあまり変わらない。装甲値(移動力の下に縦に並んでいる「3」「2」の数値)は、正直言うと他国でいうと大戦前の車両と同等なので、大戦期中、まして末期においては完全に性能が劣後していたことがわかる。

なお左下にある「47L」というのが本車両の主砲が47ミリ長砲身と整理されている。他にユニットから読み取れる情報としては、低速回転砲塔ということがわかる。

なお大戦中に登場した戦車の中で最高傑作のひとつとされるT34/76は次のようになる。

f:id:yuishika:20211209225717j:plain 主砲の「76L」(76ミリ長砲身)は言うに及ばず、移動力「16」、装甲値(前面/側面・後面)「11/6」という数値になっている。九七式中戦車で撃ち合って勝てる相手ではない。

九七式中戦車に話を戻すとヒストリカルノートはけっこう詳しく記載してある。長いのでかいつまんで紹介すると、

「選定段階で、性能が劣るが安価なチニ車との競合になったが、日中戦争で使用したところ現地部隊の選定としてチハ車が選ばれた」

「チハ車開発時には対戦車要件がなかったが、将来的に対戦車要件が追加されることを見越した技術者によって可能な限り大きな砲塔リングを採用したことから、拡張性を確保できた」

ノモンハンで大量投入されたソ連製戦車との戦闘経験から、すぐさま主砲のアップグレードが検討され、「新砲塔」として結実した」

その後は、日本軍の戦車部隊の編成と九七式中戦車の配備定数について長々と詳細に書いてあるが、アメリカ軍戦車との戦闘でどうだったといった話はいっさい触れていない。

 

日本軍の戦闘車両では、八九式中戦車、一式中戦車はユニットが用意されているものの、実戦投入されていない三式戦車以降の車両は登場しない。
過去のタクテクスに日本軍の三式戦車以降の車両をユニット化するという記事が掲載されていたのを覚えているが今度探してみる。

(つづく)

 

 

 

 

*1:BGGでは9.1という驚異的なスコアがついているが、熱心なファンが投票したということだろう。

*2:開戦直後1941~1942年あたりのアメリカ軍またはフィリピン軍などのアメリカ植民地軍を表していると思われる

*3:戦史ファンにはガダルカナル島ものの海戦ゲームなどに多く登場するツラギ島と同じフロリダ諸島にある島というと、あたりがつくかも

*4:「Hell's Corner」が同梱されていることはボックスの裏面などには説明はなく、シュリンク包装のビニール側にシールが貼られている。「Hell's Corner」は、Operation Special Magazine #3(2010)の付録ゲームだった模様

*5:ASLのユニットのカラーリングではドイツの武装親衛隊SSの黒ユニット問題があるが、日本軍黄色ユニットは他のゲームでもたまに見かけるカラーリング。もはやデフォルト?

*6:「新砲塔」タイプは英訳に困ったのかそのまま「Shin-hoto」型と書いてある。