Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」(SPI)をVASSAL対戦する(2/5)ルールの整理

 

ワーテルローの戦いの2日前に争われた前哨戦のひとつであるカトル・ブラの戦いを描いた「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」をVASSAL対戦することになった。

 

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本作のルールはワーテルローの戦いを扱ったビッグゲーム、「Wellington's Victory」(TSR/SPI)(以降、WV)のゲームシステムを用いている。だがWVのルールとをあわせ読みしていくと、根幹となるシステムは同じだが、あちこちでルールの変更(改善?)が施されていたため、プレイにあたって混乱が生じた。

 

システム概要

各ユニットは戦闘力と効力レート(Effectiveness Rating)という2つの数値を持ち、前者が兵員数や砲門数(砲兵の場合)といった定量面の評価、後者が各部隊の士気や練度といった定性面を相対化した数値となっている。

戦闘力(=戦闘ポイント)は次のように定められている。

  • 歩兵/騎兵ユニットは、大隊単位でかつ1戦闘力ポイント=100人
  • 砲兵ユニットはバッテリー単位で1戦闘力ポイント=1門

ナポレオン時代のフランス軍の歩兵1個中隊の定数は140人、1個大隊は6個中隊、大隊の定数は840人だった。実数は500~600人程度であったということだが、本ゲームではユニットの戦闘力の数字を見ればその部隊の人数規模がわかるということになる。

 

1ヘックスは100ヤード、約90メートルになる。ゲームマップの縦横の実距離は4キロ弱四方になる。砲兵射撃の他、歩兵射撃でも射程があり、地形や部隊の状況によって相手が見える、見えないといった判定を行う視線(Line of Sight)がルール化されている。

 

1ターンは15分。全20ターン=実時間5時間の戦闘として描かれている。

ゲームの手順は互いに手順を交替しながらすすむIgoUgoスタイルのシステムだが、きれいに彼我のプレイヤーターンが分かれているのではなく、フェイズ毎に自分の手番・相手の手番・共通の手番が入り組んで構成されている。

攻撃手段として、歩兵射撃・砲撃・騎兵突撃・白兵戦がある。相手の移動に対抗した臨機射撃、相手の騎兵突撃に対するカウンターとして実施することができる臨機突撃といった要素もルール化されている。
部隊ユニットには向きがあり、兵種によって複数の隊列種類が設定されている(歩兵部隊の場合は、縦隊・横隊・拡張横隊・方陣・散兵と変換することができる)。ユニットは隊列や向きを意識しながら移動や隊列変換を行うことになる。

他に軍士気、司令部指揮、弾薬量などがシステム化されている。

 

ゲームの手順

交代で手順を実施していくことで進行するスタイルだが、ひとつのターンがきれいにふたつのプレイヤーターンに分かれている訳ではなく、相互に相手方に主導権があるタイミングに自分が主導権を持つフェイズが細かく織り込まれている。

実際のゲームターンの手順を書くと次の通り(一部簡略化している)

  1. フランス軍:指揮
  2. フランス軍:回復
  3. 連合軍:隊列変更・行軍
  4. フランス軍:白兵戦
  5. 両軍:砲撃
  6. 両軍:歩兵射撃
  7. 連合軍:指揮
  8. 連合軍:回復
  9. フランス軍:隊列変更・行軍
  10. 連合軍:白兵戦

 

両軍の手続きは同じものが並んでいるのだが、登場する順番が異なる。特に、5.と6.にある砲撃・歩兵射撃と、それぞれの軍の行軍(=移動)を行うタイミングに注目してほしい。

連合軍は行軍を行った後に砲撃・歩兵射撃を行うことになるが、フランス軍は行軍を行った後、(次のターンに)連合軍が移動を行ってようやく砲撃・射撃を行うことになる。
連合軍は、フランス軍の行軍の状況を見て、次のターンの自分の移動フェイズに移動することができる。その後に、射撃・砲撃のフェイズがあることから、連合軍はフランス軍の行軍の状況を見て、フランス軍の射界・射程内から脱することもできれば、逆にフランス軍に対して射撃・砲撃を行うことができるような優位な位置に移動することもできる。
この点、フランス軍は、連合軍の行軍に対応した移動を行うタイミングはなく、連合軍が射撃に優位な場所に移動したとしても対抗した移動は行えず、そのまま射撃・砲撃を受けかねない、という状況が生じる。

もちろん歩兵部隊・砲兵部隊の場合は機動力がある訳ではないので、言うほど相手の射界・射程に応じて機敏に移動ができる訳ではないことは追記しておく。

 

隊列

隊列の特性を知り使いこなすことは、ナポレオン時代の戦術級ゲームの醍醐味だろう。隊列は隊列変換のフェイズで変換することができる。兵種によってとりえる隊列種類は異なるがバリエーションが多い歩兵を例に説明すると、隊列は次のように分類されている。

  • 縦隊
  • 横隊
  • 拡張横隊 (横隊の一種。ゲーム内の概念)
  • 方陣
  • 散兵

隊列変換自体にはチェックなどはなく自由に実施できるが、「混乱」状態になっている部隊は隊列変換を行うことはできない。後に述べるがこのゲームでは部隊はいとも簡単に「混乱」状態に陥る。第二次世界大戦を扱ったゲームにおける「混乱」は戦闘の結果、部隊が士気阻喪を起こしたりして潰走するような状態を表しているように思うが、本ゲームでの「混乱」はもっと軽い状態。おそらくは、部隊の隊列が乱れた、とった程度の状態を「混乱」と表しているように思える。

 

縦隊

「縦隊」はいわゆる行軍形態。進路に沿って縦複数列などに並んで行軍していたものだ。移動力は高いが、密集しているため射撃や砲撃には弱い。撃てば誰かに命中する状態だったり、隊列の中に砲弾が命中すると目も当てられない惨状になる懸念が高いということだろう。「縦隊」のまま、射撃を行うことはできるが、射撃のため散開した状態ではないため正面に展開している兵士の数が限定され、火力は弱い。突撃に対しては密集しているためそこそこ抵抗できる。

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横隊・拡張横隊

「横隊」は射撃を効率よく実施するため横に散開した状態。横に薄く並んだ状態のため、相手からの射撃・砲弾の被害を最小限に止めることができるが、騎兵突撃にはからきし弱い。横隊のままで移動はできるが、移動力は小さい。隊列をまっすぐに保って凹凸や障害物がある原野を行くことは難しいということだ。ゲーム内でも、横隊状態のまま障害物(建物や林など)にはいろうとするとその部隊は「混乱」状態に陥る。

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「拡張横隊」はゲーム中、横隊がさらに長く横に展開した状態を指す。横隊の兵士が横に2列に並ぶのか3列に並ぶのかなど各国のドクトリンによって異なっていたのと、練度が高い国の軍隊のみが実施できる(イギリスなど)。通常は、「縦隊」から「横隊」に隊列変更しても、ユニットを裏返し横隊状態を表すだけでよいが、「拡張横隊」ができる国の部隊が横隊に変換すると、横に2ヘックス分の長さを持つ部隊となる。
射撃結果表で「拡張横隊」の射撃効果は通常の「横隊」や他の隊列よりも優れるが、移動や部隊の方向転換などの際、さらに不自由になることは言うまでもない。

 

方陣

方陣はこの時代の特徴的な陣形といえる。当時の戦闘において最大の衝力をもった攻撃手段であった騎兵突撃に対抗するため、歩兵を密集隊形、かつ四方からの攻撃に対抗するために四方へ攻撃できるように配置した陣形である。兵士たちは小銃に着剣し、四方に射撃できるように隊列を組んだ。移動はできなくなる。騎兵は銃と刀で槍衾を組んだ隊列にわざわざ攻撃を仕掛けなくなり、騎兵突撃への対抗となる一方で兵が密集している分、射撃や砲撃に対しては弱い。

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散兵

散兵は隊列を表す言葉ではない。軽歩兵や猟兵(ドイツ語でいうとイェーガーとなる)と呼ばれる部隊を指す。隊列を組んで展開する通常の部隊の前で独立して動き回り、隠れながら自由に射撃し、敵を混乱させる役割の兵を言う。
フランス軍歩兵大隊が6個中隊から編成されていたことは記載したが、うち1個中隊は「散兵」中隊となっていた。また「散兵」だけから編成された軽歩兵部隊も存在した。
フランス軍歩兵の強さは「散兵」を有効に活用できたからだという話もある。集団行動を取る通常の部隊とは異なり、個々に判断し自由に行動することが求められるため、練度が高い優秀な兵士だけがなることができた、という。

ゲーム内では、条件を満たす部隊が部隊の戦闘力の一部を分割するということで、新たに配置することができる(初期配置の一部として最初から登場しているものもある)。部隊の分割として表されており、歩兵ユニットから中隊規模の部隊を分割することができる。分割された「散兵」部隊は中隊規模なので兵士100人規模。戦闘力は「1」となる。相手の足止めや撹乱には役立つ。
1ユニットの人数が少なく隊列なども組まずに活動するため、射撃・砲撃に対しては命中がしにくく、防御効果は通常の隊列を組んだユニットよりも高いとされている。

人数が少なく対抗する術がないということだろう、「騎兵突撃」を掛けられれると自動的に「混乱」状態に陥る。

 

戦闘

射撃・砲撃

最も多用される攻撃手法は歩兵部隊による射撃と、砲兵による砲撃になる。歩兵は2ヘックス、砲兵は8ヘックスの射程を持つ。
注意する必要があるのは砲兵。射程最大8ヘックス(720メートル)を持つが、視線(LOS)のルールにより、目標ヘックス(目標としようとしていたヘックス)と自分が位置するヘックスの間のいずれかにユニットが存在するとLOSがとれなくなる。このため、砲兵部隊の前は空けておく必要がある。
通信機器などがない時代で、かつ大砲の射程も十分ではなかった時代なので自ら視認して射撃を行う直接射撃の手法しかなかったということだろう。

射撃戦闘にあたって使われるパラメータとして、「目標のターゲットクラス(隊形や地形)」、「射程」、射撃側の「効力値(Effectiveness Rating)」、「隊形」がある。

 

騎兵突撃

騎兵突撃は花形だ。最高の衝力を持っているが、一方で脆い側面もあり、攻撃終了後、突撃を行った騎兵部隊は必ず「混乱」状態に陥る。騎兵突撃の経路の途中に小川や石垣などの障害物があった場合も突撃途中で「混乱」状態に陥る。

「騎兵突撃」を受けた側は、攻撃を受けた部隊が戦闘結果として後退するとその周囲の部隊も士気チェックが求められる。

騎兵突撃を行うためには、「指揮」フェイズで宣言を行い、「白兵戦」フェイズで突撃を実行する。

突撃の宣言を行うと、騎兵部隊の前方両翼6ヘックスに「突撃エリア」が設定されマーカーで示される。
「突撃エリア」の中にいる敵軍部隊は「隊列変更・行軍」フェイズ(例えば、フランス軍が「1.フランス軍:指揮」フェイズで騎兵突撃を宣言すると、続く「3.連合軍:隊形変更・行軍」フェイズ)に「突撃エリア」内にいる部隊ユニットは士気チェックを行う必要がある。失敗するとその「混乱」状態に陥る。「混乱」状態のユニットは隊形変換はできなくなる(「行軍」は可能)ため、その時点であわてて隊形を騎兵突撃に対抗して「方陣」に隊形変更しようとしてもできなくなる。

この突撃の宣言によって設定される「突撃エリア」の相手に与える効力は絶大で、強制士気チェックの他、エリア内で移動するために必要な移動力が2倍になるという効果もある。あわててエリアから脱しようとしてもなかなか逃れられなくなる。騎兵部隊が突撃準備をはじめると、相手側の部隊が動揺してしまうということだろう。

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ゲームの手順のところで連合軍はフランス軍の行軍を見てから行軍を行うことができ、射撃・砲撃を実施できることを書いた。いわばリアクションをとることができる分、連合軍が優位な状態と言えるが、一方でフランス軍はこの騎兵突撃の宣言を行い、突撃エリア内の連合軍部隊に士気チェックを強制させるという行為により、連合軍の部隊移動を制することができるかもしれない。このあたりの駆け引きはゲーム内で検証したい。

 

 

臨機射撃と臨機突撃

相手の移動途中、自軍ユニット近くを移動した場合、臨機射撃を実施することができる。歩兵部隊は隣接ヘックスに対してのみ臨機射撃を行うことが可能。

臨機突撃も考え方は同じで騎兵突撃が行われている際、付近に味方騎兵が存在した場合、「臨機突撃」を宣言し実施できる。

 

補足

まだルールとして整理しなければならないパートはあるのだが、いったんここまで。

冒頭に書いたように、本作「Ney vs. Wellington」と「Wellington's Victory」だが微妙にルールが異なる部分がある。気づいたところを記載すると次の点。こちらも適宜補完したい。

 

  • 戦術移動の際に求められる敵ユニットからの距離
  • 高度が異なるヘックスにはいるときの追加移動力
  • 小川(Stream)の通過可否
  • 騎兵突撃エリアの設定範囲(小川の影響)
  • 突撃エリア内での士気チェック時の修正値

 

次回はAARに入りたいと考えている。

 

 

 

「S.F.3.D Original」(Hobby Japan)を試す

 

ホビージャパン」誌上で連載されていた、未来の荒廃した地球を舞台にしたストーリー付きジオラマシリーズをゲーム化した「S.F.3.D Original」(Hobby Japan)を入手した。

未来の地球で起こった地上戦(+地上支援を行う航空機同士の戦闘)を扱った戦術級ゲームだ。

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ホビージャパン」誌での連載は時々見ていたので雰囲気は知っていたが、ゲームを入手したいと思うほどではなかった。
今回入手したのは、ゲームがいまだにオークションで高値をつけているのを見てにわかに興味を引いたためだ。

詳細は上記の記事を参照されたい。最低限の知識としては次のようなものになる。
星間戦争後の荒廃した地球を舞台にした戦争。地球に対する支配を強めようとする軍事国家シュトラールと、地球の独立を目指す独立派が編成した傭兵軍との戦いを描いている。原作では宇宙空間や月面なども戦場となっているということなのだが、ゲームが扱っているのは地球上の地上戦(+地上支援を行う航空機同士の戦闘)。地上戦はボックスアートにあるようなパワードスーツ的な装備の機動歩兵を中心とした兵力による戦いになっている。

本作は、S.F.3.Dの模型ファンも取り込むためルールの難易度は低く抑えられている。

さっそくだがゲームシステムを紹介する。

 

ゲームシステム

ゲームスケール

1ユニット=車両・機動歩兵など1機単位

1ヘックス=80~100メートル

1ターン=1分

 

ゲームの手順

ひとつのターンは次のような構成になっている。

  1. 空戦フェイズ
  2. シュトラール軍フェイズ
  3. 傭兵軍フェイズ
  4. 更新フェイズ

シュトラール軍と傭兵軍の各ユニットはそれぞれのフェイズで「対地攻撃」「射撃」「白兵戦」「移動」のいずれかの行動を行う。2種類以上の行動をひとつのターンの中で同時に行うことはできない。

 

戦闘処理

戦闘は「命中判定」と「破壊判定」の2段階。
「命中判定」は攻撃力ー目標ユニットの防御力+各種修正(距離、地形など)で判定値を算出し、6面ダイス2個により出た目をかけ合わせた数値が判定値以下であった場合、命中となる。「破壊判定」は攻撃を受けたユニットの種類により耐久力が3種類に分類されており、1D6により判定する。
なお「命中判定」時のダイスが1ゾロだった場合、クリティカルヒットとなる。

なによりも「命中判定」時のダイスの目をかけ合わせるというのが珍しい、というかはじめてだ。デザイナーズノートにはそのデザイン意図が記述してあったが、実際どのような影響を与えているかはプレイの中で確認したい。

 

射撃のパターン

直接的にLOS(視線)を設定できる「直接射撃」と、一部の兵器(ロケット砲など)は「間接射撃」が可能となっている。

自軍フェイズの間に、相手側が実施できる「防御射撃」があり、攻撃側は注意して移動や攻撃を行う必要がある。
ひとつは、彼我の距離が3ヘックス以内で攻撃を受けたユニットはその射撃に生き残った場合に攻撃を行ったユニットに対して射撃することができるというもの。攻撃側は1ユニットは1回しか射撃を行うことができないのに対し、防御側ユニットは3ヘックス以内の射撃で、射撃に生き残ったという条件が満たせる限り、攻撃を受けた都度、射撃を行ったユニットそれぞれに対して射撃を行うことができる。攻撃側はむやみに攻撃を仕掛けると、防御側ユニットによる複数回の「防御射撃」を呼び込みかねないことになる。
もうひとつのパターンは簡略化された臨機射撃だ。相手ユニットが隣接するヘックスを移動した場合、射撃することができるというもの。

装備兵器には、レーザー、機銃、ロケット砲、パンツァーファウストがある。最後のはまぁあのパンツァーファウストだ。もともと模型から来ている作品であることは説明したが、機動歩兵はまんまの姿でパンツァーファウストを装備している。
いずれも弾切れのルールがあり、特にパンツァーファウストの補充はゲーム中に登場する集積所(Dept)に取りに行く必要がある。このあたりのプレイ感もゲーム内で確認だ。

 

航空ユニット

航空ユニットは制空戦闘と対地支援を行うことができる。

 

ここまで説明した以外のほとんどのルールは目新しいものはないように思う。

 

両軍の代表的な兵器

にわかの説明なので誤った内容が書かれている可能性がある。気づいたところで修正していくが、まずはご容赦いただきたい。

各ユニットの性能は、ユニット表面に移動関係、裏面に戦闘関係の情報が記載されている。

 

機動歩兵

S.A.F.S(Super Armored Fighting Suit)

f:id:yuishika:20220123002525j:plain 装甲服は最初に傭兵軍が実戦投入した。S.A.F.Sは、最初の装甲服A.F.S(Armored Fighting Suit)の強化版。対ナッツロッカー戦のため耐レーザー性能を高めている。

P.K.A グスタフ(Panzer Kampf Anzug Ausf.G Gustav)

f:id:yuishika:20220123003135j:plain A.F.Sに対抗してシュトラール軍は、P.K.Aを投入したが、本作はその強化版。P.K.Aと同様に、空戦ユニット”ホルニッセ”と合体した空中移動と、分離が可能(参照:ホルニッセ)

 

車両関係

ドールハウス

f:id:yuishika:20220123003752j:plain 傭兵軍装備。ロケットランチャーを装備した火力支援用戦車。

サンドストーカー

f:id:yuishika:20220123004258j:plain 傭兵軍の武装装甲ホバー。初期傭兵軍の機械化部隊主力を担った。

シェンケル

f:id:yuishika:20220123004512j:plain 傭兵軍の大型四足歩行戦車。重装備が不足した初期の傭兵軍がブラックマーケットなどで調達した。一線兵器としてはあまり役立たなかったが、広い居住スペースを利用して、師団/連隊の移動司令部として用いられることが多かった。

ナッツロッカー

f:id:yuishika:20220123005225j:plain 対A.F.S戦用に開発されたシュトラール軍装備の無人ホバー戦車。急造仕上げの兵器だったが装備した大出力レーザー兵器の破壊力によりA.F.S装備の傭兵軍は大打撃を受けた。結果、A.F.Sを強化したS.A.F.Sの装備が急がれることとなった。

クレーテ

f:id:yuishika:20220123005804j:plain シュトラール軍の2脚歩行自動戦闘機会。強行偵察用途などに使われる。

 

航空ユニット

フレーダーマウス

f:id:yuishika:20220123010241j:plain 両軍とも装備したV/STOL軽戦闘機。写真は傭兵軍装備分。
シュトラール軍にホルニッセが登場すると、対抗できずに制空権はシュトラール軍が握った。

ホルニッセ

f:id:yuishika:20220123010604j:plain シュトラール軍装備で、P.K.Aと組み合わせて用いる空戦ユニット。フレーダーマウスをベースに強化された機体だが、P.K.AまたはGustavとの合体・分離機能を持つ。この機体によりシュトラール軍はファルケ登場まで制空権を握ることとなる。

ファルケ

f:id:yuishika:20220123010837j:plain 戦争中盤に登場した反重力装甲戦闘機。高い運動性能と間接視認システムによる完全装甲を備える。この機体により、傭兵軍は制空権の奪回に成功する。

 

と、ひとつひとつの兵器にもストーリーが用意されている。ゲームに登場する兵器類の種類は限定されているが、作品世界としてはかなりの数の兵器が設定され、それらに伴う先史も用意されている模様。こうした作り込みが作品世界に奥行きを与えているのだろう。

次回以降、ソロプレイを通してゲームの中身を確かめていきたい。

(おわり)

 

 

 

 

 

 

「九七式中戦車」(ツクダ)を試す

 

タンクコンバットシリーズ4作目、太平洋戦域と日本軍を扱った「九七式中戦車」(ツクダ)を年初早々入手した。
プレイしてみたいというよりも日本軍戦車のデータカードを見たかったのだ。

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高荷義之によるボックスアートはシリーズ中でも屈指のカッコ良さだと思うのです。

 

 

タンクコンバットシリーズについて

ツクダホビーがシリーズ化していた戦術級ゲーム。戦車戦だけをピックアップしており、歩兵は登場しない*1。対戦車砲対戦車ミサイルは登場する。第二次世界大戦ものから現代戦まで6作リリースされ、本作は第4作にあたる。
シリーズ作品は次の通り(たぶん)

 

< タンクコンバットシリーズ作品 >

 

1ヘックス=50メートル。1ターン=30秒。

なによりも本作を特徴づけているのがエンドレスフェイズシステムと呼ばれる進行手順。1ターンをさらに5秒毎の6つのインパルスに分割している。
それぞれのインパルスでは移動-戦闘を行うのだが、時間を細切れにした分、移動は少しずつ細切れに実施される(ひとつのインパルスでの移動距離は2~3ヘックス程度になる)。

戦術級ゲームでは、相手の移動中に射撃を行う臨機射撃という概念があるが、このエンドレスフェイズシステムを用いることで、臨機射撃の複雑なルールを用意する必要がなくなる。実際はリアルタイムで同時じタイミングで活動を行っているはずの両軍の活動を、時間を細切れにすることによりリアルタイムに近づけていこう、プレイヤーが交替で動作を行っていく通常のゲームの矛盾点を解消していこうという試みだ。


エンドレスフェイズシステムによる移動の仕組み、また戦闘システムについては次の記事でまとめているので参照されたい。


本作について

1939年のノモンハン事変から、1945年の本土決戦までが収録されている。収録された車両は、日本軍29種類、アメリカ軍8種類・ソ連軍10種類の計47種類になっている(他に対戦車砲のデータカードが複数)。

日本軍車両のラインナップを見ると改造型も多く、また本土決戦用に温存されたため実戦未投入の車両や試作や計画止まりであった車両も含まれている。

  1. 八九式中戦車・甲型(八九)
  2. 八九式中戦車・乙型(八九)
  3. 九七式中戦車(チハ)
  4. 指揮戦車(シキ)
  5. 九七式中戦車・増加装甲型(チハ)
  6. 九七式中戦車改(チハ)
  7. 九七式中戦車改・増加装甲取付型(チハ)
  8. 九七式中戦車改・砲塔装甲強化型(チハ)
  9. 九七式中戦車改・57ミリ砲装備型(チハ)
  10. 一式中戦車(チヘ)
  11. 三式中戦車(チヌ)
  12. 三式中戦車改(チヌ)
  13. 四式中戦車(チト)
  14. 四式中戦車・57ミリ砲装備型(チト)
  15. 五式中戦車(チリ)
  16. 九七式軽装甲車(テケ)    ※ 砲搭載型が収録されている
  17. 九五式軽戦車・前期型(ハゴ)
  18. 九五式軽戦車・後期型(ハゴ)
  19. 九五式軽戦車・ケニ車砲塔型(ハゴ)
  20. 九八式軽戦車(ケニ)
  21. 九八式軽戦車改(ケニ)
  22. ニ式軽戦車(ケト)
  23. 三式軽戦車(ケリ)
  24. 四式軽戦車(ケヌ)
  25. 五式軽戦車(ケホ)
  26. 一式砲戦車(ホニⅠ)
  27. 三式砲戦車(ホニⅢ)
  28. 特ニ式内火艇(カミ) ※ フロート有り/無しの2パターン用意されている
  29. 特三式内火艇(カチ) ※ フロート有り/無しの2パターン用意されている

 

ちなみにアメリカ軍・ソ連軍の車両は戦線に登場した車両となっている。

 

日本軍ルール

ASLや以前にプレイしたOLD SCHOOL TACTICALなど欧米でデザインされた戦術級ゲームでの日本軍の描き方としては、良く言えばケレン味がある、悪く言えば”変わった”軍隊扱いしているものが少なくない。

本作では日本軍特有のルールはほぼない。日本軍の特徴を表す状況としては、大戦末期近くまで日本軍戦車兵の練度が最高練度を保持し続けていることくらいだ。

ASLやOLD SCHOOL TACTICALにおける日本軍ルールは次のような記事でとりあげている。

 

 

登場する日本軍の車両について

デザイナーズノートに辛辣な記述がある。
「・・デザインを終えてあらためて判ったことは、日本戦車の予想以上の性能の低さです。」

性能がいまいちな点として、砲弾/貫通力、装甲、機動力といずれも他国の車両に遅れている、と記している。貫通力、装甲はわかるとして機動力については、馬力が低く速度が遅いと言っている。

唯一乗員の質の高さだけは「世界一」と評価した。オプションルールで乗員レベルのルールがあり、時期毎・国毎の乗員のランクが数値化されているが、ドイツ軍戦車兵のピーク時(1941年夏)の数値と同じランク7のレベルが、日本軍戦車兵に対しては戦争のほぼ全期間に渡って設定されている。

 

では日本軍戦車がどう評価されているかを見てみる。
タンクコンバットシリーズにおける戦車砲の射撃時の戦闘解決は次のような手順によっている。

<戦闘解決手順>

① 命中判定
- ベースとなる命中率は距離と使用砲弾によって決まる【データカードに記載】
- 目標の状態による修正(サイズ、捕捉状態、移動状態、地形)
- 射撃側の状態による修正(射撃状態)
- ラッキーヒットあり

② 命中箇所判定【データカードに記載】

③ 装甲厚判定【データカードに記載】
- 水平方向での入射角(車両前方・後方・側面の他、それぞれ入射角30度という斜めからの射線も考慮)
- 垂直方向での方位(車体上面、車体下面、稜線の考慮

④ 被害判定
- 目標ユニットの装甲厚と射撃ユニットの貫通力より判定

 

■ 九五式軽戦車 vs. M3軽戦車

M3軽戦車は大戦初期にフィリピンやビルマに配備されていたので十分対戦する可能性があった車両だ。

主砲は両車とも37ミリ砲を搭載しているが、性能は大きく違う。
平地で撃ち合った場合、九五式軽戦車は正面からではM3 軽戦車を破壊することはできない。側面または後面から距離100メートル(2ヘックス)まで近接してようやく約60%の確率でで破壊できる。

いっぽうのM3軽戦車は距離1300メートルであっても命中さえすれば、どこに命中したとしても九五式軽戦車を破壊できる。距離500メートルでの命中率は半分強、距離1000メートルで命中率10%弱。

移動力はM3は19、九五式軽戦車は13と大きく差がつけられている。

 

九七式中戦車改 vs. M3軽戦車

対戦車戦闘を想定して主砲を47ミリ砲に換装後の車両。いわゆるチハたん
九七式中戦車改の47ミリ砲(一式)は、M3軽戦車の37ミリ砲(M5)より射程が若干長く、同じ射程であれば命中率も若干高い(砲身の長さの差か?)が、貫通力はM5のほうが勝っている。

結果、正面から撃ち合った場合、距離400メートルになってはじめてM3軽戦車を撃破する可能性があるが、M3軽戦車は距離1000メートルでかなりの確率で九七式中戦車改を撃破できる可能性がある。

側面・後面からであれば、距離1000メートルでも、九七式中戦車改もかなりの確率でM3 を破壊できる。

移動力は九七式中戦車が12なので、機動力でも差が大きい。

こうしてみると鹵獲後のM3軽戦車が、日本陸軍最強の戦車と言われたという話もうなづけてしまう。

 

九七式中戦車改 vs. M4A1中戦車・後期型

日米両軍の実戦ベースでの主力戦車同士の場合の比較だ。M3軽戦車相手ですでに差がつけられていたように、M4シャーマン相手ではその差は圧倒的になる。

九七式中戦車改がM4A1を破壊するためには、シャーマンの側面か後面から距離400メートルまで接近してかなりの僥倖に恵まれた際に可能。距離100メートルでは半分超の確率で破壊可能。

対するM4A1側からは正面から撃ち合った場合、距離2000メートルでも九七式中戦車に命中さえすればほぼ破壊できる可能性がある。もっとも距離2000メートルでの命中率は2~3%となる。

なお機動力の比較では両車とも移動力は12のため同等。

 

■ 一式中戦車 vs. M4A3中戦車

本土決戦用に温存されていた車両だが、主砲は九七式中戦車改と同じなので貫通力は変わらない。装甲が若干向上しているが、シャーマンの前には同じだ。正面からでは2000メートルでも破壊されてしまう可能性がある。

一式中戦車側の威力は九七式中戦車改と同等。

なお機動力の点で、移動力が14に向上している。

 

■ 三式中戦車 vs. M4A3中戦車

主砲として日本陸軍保有した最良の対戦車砲である九○式野砲を搭載した車両。このあたりからようやくアメリカ軍車両に対抗できるのではないかと期待したが・・。

正面から撃ち合った場合、距離900メートルでハッチに命中させることができればM4A3を破壊できる。もちろんハッチへ狙って命中させるのは至難の技であることは言うまでもない。

側面・後面からであれば距離1500メートル程度でも破壊できる可能性がある。

三式中戦車の装甲は一式中戦車と同等。決して強くはなく、九七式中戦車からわずかに改善された程度だ。

機動力の観点では、両車とも移動力13。

 

■ 四式中戦車 vs. M4A3中戦車

三式中戦車までは実車が存在するので実戦配備されていたことが伺えるが、このあたりになるとちょっと試作車という印象がある。

主砲は75ミリ。カードを見て驚いた。貫通力こそM4A3にわずかに劣っているものの、装甲や貫通力でM4A3に遜色ない数値になっている。むしろ砲身長により長射程での命中率は若干、四式中戦車のほうが優位だ。
距離2000近い距離で正面から撃ち合っても拮抗する。乗員の質や長射程の命中率の差によりもしかすると、四式中戦車のほうが良いスコアを出すかもしれない。

機動力の観点では、わずかに四式中戦車が優れている。

 

■ 五式中戦車 vs. M4A3中戦車

試作レベルで終わった車両。砲塔に四式中戦車と同じ75ミリ砲、車体に37ミリ砲を固定で搭載。主砲の威力は四式中戦車と同じ、また装甲値も四式中戦車と同等とされている。機動力は四式中戦車よりもさらに向上した移動力15となっている。

副砲まで搭載して機動力マシマシというのは日本の発動機の製造技術から無理だろう、という印象だ。

貫通力、また装甲が同等ということから、M4A3中戦車との比較では四式中戦車と同等となる(副砲の37ミリ砲の使い所がない・・)。

 

四式中戦車以降でようやくアメリカ軍の車両性能に追いついたというところ。本ゲームにはカードははいっていないが、本土決戦となるとM26パーシングが投入されていたであろうことから、機会があれば「パットン」にはいっているパーシングのカードと比較してみよう。

 

【2022/01/19 訂正】

「パットン」のカードは他のカードと互換性がないという指摘がありました。確かにそんな気もします。「パットン」は第二次世界大戦直後から対戦車ミサイルや特殊砲弾が行き交う1980年近くまでカバーしているので数値項目の変更があったような気がします。確認しようと「パットン」を探したのですが見つからないのでとりあえずうろ覚え状態で。

代わりにパーシングは、「タイガーⅠ」にはいっているそうです。

 

(終わり)

 

 

 

*1:最終作となった「レオパルドⅡ」のデザイナーズノートによると、同作が扱った現代戦では索敵の重要度が高まり歩兵を登場させる必要性が生じた、と書かれている。エキスパンションキット等で歩兵を登場させるといった予告がなされたが、リリースはされなかった。

「Granada: Last Stand of the Moors – 1482-1492」(Compass Games)を対戦する(2/2)

 

15世紀末のスペインにおけるレコンキスタを扱った「Granada: Last Stand of the Moors – 1482-1492」(Compass Games)を対戦した。

 

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グラナダの降伏:ナスル朝最後のグラナダ王であったボアブディルが、1492年グラナダの街を明け渡し、カトリックの君主であるカスティーリャ王国のイザベラ一世、アラゴン王国のフェルディナンド二世に鍵を渡した場面。1882年製作、フランシスコ・プラディーリア・オルティス作、マドリード上院議事堂

 

 

 

 

ルール補足

戦闘ルール

戦闘ルールの説明が十分ではなかったので蛇足ながら追記する。

戦闘は移動終了時に、マップ上の同一地点に両軍ユニットが存在した場合に発生する。
地点に城塞がありその地点に位置する防御側ユニット数が2個以下の場合は籠城することができ、攻城戦に移行する。防御側ユニット数が2ユニットを超える数の場合は野戦になる*1
「砦(監視塔/Watch Tower)」がある地点の場合、防御側が「Watch Tower」カードを出した場合は野戦軍対「砦(監視塔/Watch Tower)」の戦闘になるが、「Watch Tower」カードが提示されない場合は野戦とみなされる。

特殊ユニットに騎馬、クロスボウ、大砲があると説明したが、野戦、攻城戦、Watch Tower戦の違いにより特殊効果の効果が異なってくる。
例えば騎馬突撃は野戦では有効だが、攻城戦やWatch Tower相手では使えない。大砲は攻城戦やWatch Tower戦では半ば必須と言えるが、野戦では使えない。諮るに当時の大砲は城や砦といった固定目標相手に固定的な砲撃位置から射撃するのはできるが、野戦で自由に位置を変えたり、目標を変えたりする戦闘には向かなかったということなのだろう。

 

同一地点に味方ユニットを連れて行ってもそれだけでは戦力にはならないことは前記事で説明した。
お互いにカードを出し合い、カードに書かれた紋章と同じ紋章が描かれたユニットを、通常はカード毎に1個ずつ参戦させていく。参戦したユニットの戦闘力の合計値が相手に対する打撃となる。
最終的には出せるカードがなくなるか、参戦させるユニットがなくなるか、またはパスを宣言するかまでこの戦闘力ビッドが継続され、両軍がパスを宣言した時点で打撃力を比較し、上回ったほうが勝者となる。
打撃力に応じて相互に相手ユニットを除去し、敗者は退却する(攻城戦の場合で防御側ユニットが残っている場合は包囲状態が継続される)。

カードによって戦闘に参加する時点で同じ種類の氏族のユニットや、特殊攻撃ユニットが先に戦闘に参加している場合は、ユニットの戦闘力を戦闘力合計の値に追加するだけではなく、同一氏族効果または同一特殊攻撃効果によるボーナスポイントが戦闘力に加算される。一度の戦闘にあたって同じ種類の氏族や兵器種類を送れば送るほど、このボーナスポイントは大きくなっていくので単純にバラバラに異なったユニットを戦闘に追加する以上の戦闘力を入手できることになる。
ただし、同じ種類のユニットを一度の戦闘に集中して投入するためには、戦闘時のタイミングでそうしたユニットが手元になければならないし、同じ種類の氏族や特殊攻撃が可能となるカードを複数枚持っていることが必要となる。

 

その他

基本ルールでは補給の概念はない。補給ルールの有無は侵攻ルートの検討では必要。

 

 

プレイ

当方はイスラム教国を担当。

 

初期配置

ユニットは黒。初期配置位置は決まっているが、配置されるユニットのうち半分超は動員可能なユニットが入れられた袋からランダムに引かれる。このため各所におけるユニットの種類(強さ、特殊ユニット、氏族)はバラバラである。

戦場のほとんどはグラナダ王国いわば自国内となるため、イスラム教国軍ユニットは移動にあたって主要道路使用による移動力ボーナスを得やすい。

 

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マップの赤いエリアがグラナダ王国版図。ポイント間を結んだ道路のうち、赤色道路は主要道路ボーナスを得ることができ、大軍を動かしやすい。黒色ユニットがグラナダ王国軍。

1482~1483年頃

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キリスト教国は、国境沿いの数カ所にて軍を集結中。
イスラム教国は、国内にあったキリスト教国の拠点ポイントを殲滅。

 

1484年頃

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キリスト教国はイスラム国の西側から蚕食しはじめる。

 

1485年

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キリスト教国は東の拠点、内陸にある(写真ではターンの表示がある下あたり)であるバザを攻略。

 

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続けて西の拠点、港町のマラガが陥落。

 

前記事で少し触れたように史実としてグラナダ王国の内紛が背景にあるのだが、ゲームスタート時にイスラム教国側には2人の王が存在する。このうち一人の王はキリスト教国軍との戦闘で敗北すると、捕虜となり囚われ今度はキリスト教国側でその配下も含めて参戦する。
ところが今度はイスラム教国軍側との戦闘で負けると、イスラム教国軍側に寝返る・・。さらにさらに連合軍側勝つと・・・という特別ルールが用意されている。

 

1487年頃

基本的に主導権は常にキリスト教国側が握っている状態。
グラナダ王国はすべてを守ることはできないため、防衛線を縮小させていく必要があるのだが、勝利得点確保との兼ね合いからタイミングを迷う。
ただ退却していくばかりではキリスト教国軍の勢いを削ぐことはできないため、少ないユニットしか配置されていない地点をみつけると攻撃側有利な状況での攻撃を行うことで、少しでもキリスト教国側のユニットを減らすように務める。

このターン、イスラム教国軍側に千載一遇のチャンスが生まれた。
前ターンにバザ城を陥落させたキリスト教国軍のユニットに対して、イスラム教国軍は相手を上回る戦力を投入させることが可能な状況になっていた。
バザ郊外で発生したキリスト教国軍約20000(13個ユニット)とイスラム教国軍約23000(15個ユニット)による会戦は、より戦闘力が高いユニットを投入することができたことからイスラム教国軍側が勝利した。キリスト教国軍は2/3の兵を失い(8個ユニット)、退却した。イスラム教国軍も相応の損害を受けた。

 

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バザ会戦直後の状況。
イスラム教国はすでに少なくない数の城塞・砦・資源地を失っていたが、ポイント評価ではまだキリスト教国軍を上回っている状況にあった。

 

1492年頃(最終局面)

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写真は1492年(最終ターン)開始時の状態。
キリスト教国軍はグラナダの周囲に大軍を進出させているが、イスラム教国軍も少なくない防衛軍をグラナダに配置している。グラナダは通常の城塞都市ではなく、アルハンブラ宮殿の特別ルールが用意されているため、容易に陥落させることは難しくなっている。残りターンを考慮すれば、キリスト教国軍がグラナダを陥落させることによるサドンデス勝利はなくなっていた。
勝利得点についてはこの直前の状態で1ポイント差でしかなかったが、このターンで、勝利得点獲得のためのムーブを両軍とも行ったとすると、キリスト教国軍がポイントを稼ぐ機会は多いと判断されるため、同国優勢状態と判断された。
イスラム教国軍はマップ最東端の、キリスト教国の港町に強襲上陸を成功させている。

 

感想戦

生産や内政といった要素は捨象されているため戦闘によって土地を奪い合う戦争ゲームになっている。ゲームの中心となる戦闘ルールが、戦略性や作戦性を追求するにはランダム要素が強い構造になっている点が気になった。

ランダム性が高いというゲームの方向性を否定するつもりはないが、その割には必要となるプレイ時間が長い印象を受けた。時間をかけてプレイしても、戦略や作戦といった要素での工夫が限定されるため、結果として徒労感が伴ってしまう。
ランダム性が高いゲームとするのであればプレイ時間は短縮化する方向に持っていったほうがよかったのではないか。

戦闘ルールにランダム要素が強いのは、氏族毎の活性化ルールと、カードの取り回しに起因している。せっかくの氏族活性化ルールが単なるフレイバーに終わっている点、さらにはゲーム中の手札カードの入れ替わりが激しいためカードデッキを構築するといった工夫する余地があまり働かないことだ。

このゲームの手札はかなり流動性が高い。毎ターンはじめにはおおよそ10枚弱から10枚強のカードが手札に存在するのだが、それらはターンの途中で、特に戦闘が発生すると1回の戦闘で手札の半分以上、どうかするとほとんど一新するくらいに変わってしまう。それだけ戦闘の中で使ってしまい、戦闘後補充される。1ターンの間に複数回戦闘が発生すると、ターン途中で何度も手札の変わっていってしまうと言ってもよい。
最後は各ターン終了時に残った手札の半分は強制的に捨てさせられ、新たにドローする。
戦略・作戦として特定のカードを保持しようとしても、ほんの数枚程度であれば可能だがほとんどのカードはターンのうちに使わざるを得ない状況になる。カードデッキを構築するより先に、手札はほとんどランダムドローされたカードという状態になる。

戦闘時において氏族ユニットの参戦には合致した紋章カードが必要であることは説明したが、手持ちカードの流動性の高さのため、氏族の活性化自体がランダムに引き当てた手札に依存することになってしまっている。
結局、せっかくの氏族の概念が、記号合わせや数合わせの単なるフレイバーになってしまっているように感じた(別に氏族という概念を持ち出さなくてもいいのではないかという状態)

封建時代を扱うゲームにおいて、領主が勢力圏内の豪族や氏族を動員して戦争に向かわせるということを表すのに、氏族毎に動員や活性化を行うという方向は良いと思う。こうしたコンセプトを導入して成功しているゲームに、例えば「NEVSKY」(GMT)がある。「NEVSKY」では配下の豪族/氏族を一定期間の戦役に動員すると、就役期間が過ぎると勝手に帰ってしまったり、恩賞与える必要があったりする。もちろん「NEVSKY」のプレイ時に感じる、封建領主としてのままならなさや苦労を感じさせる事は本ゲームの主題ではないのはたしかだろうが、戦闘ゲームを展望している割に、戦闘の行く末が、その時点でランダムにドローしていた手札の内容とたまたま戦闘に参加させていたユニットの顔ぶれという偶然性の中で、一種のプレイテクニックに依存しているように感じてしまった。

ゲームを通してこうした偶然性に支配された戦闘が繰り返されることもあり、ゲームに登場する、氏族をはじめとする各要素が単なる記号に終始している感じがしたのだ。

 

 

(終わり)

 

*1:城塞の防御にあたる2個ユニットを残して残りのユニットは野戦を行うという選択肢はない。野戦になるとユニット数が少ない側(通常は防御側)が不利なため、全滅することがよくある。城塞が存在する地点には3個以上の防御ユニットを配置していると、城塞を使うことができずに強制的に野戦となることにより、防御側が不利に働くという変な作用がでてしまう。

「Granada: Last Stand of the Moors – 1482-1492」(Compass Games)を対戦する(1/2)

 

15世紀スペインにおけるレコンキスタを扱った「Granada: Last Stand of the Moors – 1482-1492」(Compass Games)を対戦した。*1

Final Cover

 

ゲームの紹介

15世紀末スペインにおけるレコンキスタレコンキスタ自体の開始は8世紀はじめなので実に800年近く抗争を続けていた事になる)の最終盤にあたる、スペインにあった最後のイスラム教王朝のナスル朝グラナダ王国の滅亡までの10年を描いたゲームである。

本作デザイナーは、GMT社から発売されている、”積み木”の関ヶ原として有名な「SEKIGAHRA The Unification of Japan」*2をリスペクトしていると書いており、基本的なゲームシステムは同作に類似している。関ヶ原の戦いが比較的短期間の戦役であったのに対し、本作では10年に及ぶ長期の争いを描くにあたって各所で見直しが図られている。

 

ターン

対象期間はグラナダ王国内で内乱*3が発生した1482年にはじまりキリスト教国軍によりグラナダが陥落した1492年までの10年間が対象。1ターン=半年~1年(ターンによって異なる)とし、全12ターンで構成される。

 

マップ

マップはグラナダ王国の全体が描かれている。
ゲーム内を通してイスラム教国(グラナダ王国)側が攻められ続けることになる。対するキリスト教国は、カスティーリア王国とアラゴン王国。この両国、アラゴン王太子フェルナンドとカスティーリア王女イサベルが結婚したことにより連合王国となっている(後のスペイン王国)。

 

Granada printed map

マップはポイントトゥポイント方式。赤いカラーリングのエリアがグラナダ王国版図。首都グラナダは赤い版図の中の内陸中央部よりやや右側に位置する。
対するカスティーリア=アラゴン王国は緑の版図として登場するがゲームのマップでは現れていない実際の国土はかなり広い。
上記の緑の版図の中では大きめの都市としてコルドバが登場するが、首都などではない。

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ジブラルタル海峡のそば、地中海に面した小さな国「REINO DE GRANADA」がグラナダ王国。マップはこのグラナダ王国の全体が収まるようなスケールになっている。
グラナダ王国に対するキリスト教国は、カスティーリア王国とアラゴン王国の国王・王女の結婚によって生まれた連合王国。国土の広さから、見るからに国力の差があったことが伺える。

 

勝利条件

サドンデスによる勝利条件は、イスラム教国側は、カスティーリア=アラゴン王国のフェルナンドとイサベラのユニット(将軍ユニットとして個々に登場する)を除去すること。対するキリスト教国側は、首都グラナダの陥落となる。
サドンデスが満たされない場合は、最終ターン終了時に、各々支配している「城塞」「砦(原語では監視塔/Watch Tower)」「資源地」の数にそれぞれ定められたポイントから算定された数字の合計値で比較する。

 

ユニット

ユニットは”積み木”になっており陸上部隊の場合はそれぞれ有力氏族の紋章が描かれている。イスラム教国側には、Banu Sarray、Zegríes、Banu Bannigas、Nasridsなど、キリスト教国側には、Andalusies、Aragon、Leoneses、Castile、Leonとそれぞれ5種類程度?が登場する。1ユニットあたり1000~1500人規模とされている。

他に両軍には王族クラスの将軍(司令官/Commander)ユニット、海域エリアに登場する艦隊ユニットがある。

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黒色ユニットはイスラム教国軍、白色ユニットはキリスト教国軍を表す。
横長のユニットにはそれぞれ氏族の紋章と描かれた紋章の数によりユニット毎の強さ(1~4)を表している。騎兵・クロスボウ・砲兵といった特殊ユニットには、氏族の紋章とこれらの兵器のシルエットが描かれている。

 

ゲームシステム概要

各ターン、プレイヤーは決められた枚数のカードを受領し、カードを使いイニシアティブをビットし、活性化の規模を決める。活性化により陸上部隊や艦隊を動かし、動員を行う。

カードを最も使うタイミングは戦闘時になる。
戦闘に参加させるためにはそのユニットの氏族の紋章が描かれたカードを使う必要がある。1枚のカードを使うことで参加させることができるユニットは基本1個に限定される。つまりあるポイントに複数のユニットからなる部隊を引き連れ進撃したとしても、戦闘(野戦や攻城戦)にそれらを活性化させることができる(氏族の紋章が描かれた)十分な数のカードを持っていなければ、戦闘に参加させることはできずにただ損害を受けるだけになってしまう。

ユニットの中には歩兵だけで構成されたユニットの他、騎兵、クロスボウ、砲兵が登場する。これらの特殊ユニットの効果を得るためには氏族のカードの中でも、特殊攻撃を実施することができるカードを出す必要がある。ここでも手持ちカードの使い方がポイントとなる。

 

戦闘時は氏族カードにより戦闘参加を行う必要があるが、移動は活性化範囲であれば氏族カードに関係なく実施させることができる。
移動にあたっては道路状況・司令官の有無・強行軍・同時移動するユニット数などにより移動力が増減する(1~3)。

 

艦隊は部隊の輸送(海上輸送)を行うことができる*4敵艦隊が存在する海域エリアに突入すると海戦が発生する可能性があるが確立は1/3程度なので大きくはない。

「SEKIGAHARA」になかった概念として、「城塞」「砦(監視塔)」があり、防御側に特別な効果を及ぼすが、防御側が全滅すると相手に奪われる。
本ゲームでは城塞や砦の破壊や構築、また増強といった概念はない。

1ターンの期間は長いが内政にあたる機能はない。

 

毎ターン終了時、手元に残ったカードの半分は強制的に捨て、その時の城塞の支配数に基づいた数分を新たにドローする。このためカードの流動性は高く、手元に蓄積することができる枚数は多くない。

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カードには戦闘時にそのカードを使うことにより戦闘に参加せることができる氏族の紋章・名前、騎馬・クロスボウなどの特殊攻撃の可否、またビット用の数字などが記載されている。

 

(つづく)

 

 

 

*1:前号まで展開しようとしていた「Ney vs. Wellington」はどうなったのかと言う話だが、これはこれで対戦継続中であるので、別の機会に紹介していきたい。

*2:

boardgamegeek.com

*3:国王アブルハサン・アリーに対して息子のボアブディル(後のムハンマド11世)が起こした。ボアブディルグラナダを奪い国は2分された。

*4:イスラム教国は北アフリカに領土があり、またひとつの氏族の動員場所が設定されているため、北アフリカから部隊を輸送させる必要がある。

「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」(SPI)をVASSAL対戦する(1/5)歴史・背景

ワーテルローの戦いの2日前に争われた前哨戦のひとつであるカトル・ブラの戦いを描いた「Ney vs. Wellington: The Battle of Qatre Bras 」をVASSAL対戦することになった。ナポレオニックの作戦戦術級のビッグゲームとして有名な「Wellington's Victory」のシステムを用いたゲームとして知られている。

 

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背景

経緯や戦況推移の情報はウィキペディアの記事が要を得ているので参照してほしい。

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位置関係は、蛍光ペンでマーキングしたポイント、上からブリュッセルワーテルロー、カトル・ブラ、リニー、シャルルロアとなっている。

要約すると、イギリス・オランダ連合軍(低地方面軍:ウェリントン)とプロイセンを各個撃破するべくフランス軍は、6月14日シャルルロアを出発。
ナポレオン直率の本隊はリニー付近のプロイセン軍を目標とし、ネイ率いる左翼軍は本隊とは別行動でカトル・ブラの交差点を奪取することを命じられた。ネイは同地奪取後、東に旋回してプロイセン軍の側背を攻撃することを求められていた。

6月16日、ネイはカトル・ブラに陣を張っていたイギリス・オランダ連合軍の一部と戦闘にはいるが、あとひと押しが足りず、後続していたエルロン伯率いる第Ⅰ軍団を増援として呼び寄せようとしていた。

ところがエルロン伯の元にはナポレオンからもプロイセンとの戦闘が始まっていたリニーに向かうようにとの命令が届いていたことから第Ⅰ軍団は右往左往してしまう羽目となった。

イギリス・オランダ連合軍が増援を呼び寄せ増強される中、ネイは手持ちの騎兵隊だけで突撃を行い、ついにカトル・ブラを奪取した。
だがやはり後詰が足りずに騎兵部隊は撤退してしまう。

リニーではナポレオンが勝利するものの、一撃が足りずにプロイセン軍の撤退を許してしまう。プロイセン軍の側背を衝く好機にネイは軍を送ることはできなかった。

カトル・ブラでは増援を得て最終的にはフランス軍に倍する兵力を集めたウェリントンがネイの軍を退けたものの、プロイセン軍の撤退を知り、同地を捨て北へ撤退する。

ナポレオンはネイの軍と合流し、敗走していったプロイセン軍グルーシーに追わせた。

フランス軍と連合軍の両軍は二日後の6月18日にワーテルローで再びあいまみえることになる。そこでは、リニーで撃滅を逃れたプロイセン軍が遅れて戦場に到着することになり、劇的な役割を担うことになる・・。

 

このゲームは6月16日のカトル・ブラでのイギリス・オランダ連合軍とネイ将軍率いるフランス軍との戦いを描いている。

 

ゲームの概観

ルールは結構面倒な類のものなので次回紹介したい。

ゲームスケール

  • 1ヘックス=約100ヤード≒約90メートル
  • 1ターン=15分
  • ユニット=大隊単位、砲兵は中隊単位

※ WWⅡを扱った戦術級ゲームのASLは1ヘックス=40メートル、パンツァーブリッツ/パンツァーリーダーは1ヘックス=250メートルなので本作は戦術級クラスと言ってよいスケールであることがわかる。

 

マップ概観

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マップは北が上側。上下(南北)に走るブリュッセル街道と東西に走った街道が交わった箇所がカトル・ブラ。マップ中央部に点在しているオレンジ地で黄色ラインのユニットはオランダ軍、ブリュッセル街道を数珠つなぎ状態で北側から移動中の軍がイギリス軍(赤色)。南から展開した状態で迫っているのがフランス軍(青色)となる。

 

付:ボックスアートについて

ボックスアートは19世紀に描かれた「カトル・ブラの第28連隊」という題名の作品からとられている。カトル・ブラの戦いでイギリス第28連隊が方陣のフォーメーションをとってフランス軍騎兵隊の攻撃を受けている場面が描かれている。

作者はエリザベス・トンプソンという女流画家、描かれたのは1875年。
収蔵はオーストラリアメルボルンにあるビクトリア国立美術館とのこと。

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守る方陣*1の歩兵も、突進する槍騎兵も蛮勇と言って良いレベルでの勇気が必要な世界であったことが伺える。

 

(つづく)

 

 

 

*1:どことなく棒倒しの防御側の陣に見えなくもない・・

「コレヒドール 1945」(国際通信社)を対戦する(2/2)

エリアインパルスシステムにより末期フィリピン戦におけるコレヒドール島の戦いを扱った「コレヒドール 1945」(国際通信社)を対戦した。日本軍を担当。

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初期配置

日本軍は初期状態で地上にはトーチカのみが配置され、部隊ユニットはすべて地下壕を表す隠匿ボックスから開始する。

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第1ターン

昼間フェイズ

アメリカ軍の初手は島中央部にある飛行場エリアへの空挺降下となっている。*1
降下判定が行われ、運が悪いと部隊に損害が出たり、ターン内はそれ以上行動ができない状態(行動済)となる。

 

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日本軍にとってはやっかいなのは降下後、行動済とならず表向きのままとなった部隊で、その後のインパルスで移動や戦闘などの行動を行うことができる。

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空挺兵の一部隊が降下した飛行場と上陸部隊が上陸する海浜エリアとをつなぐエリアに進出(上記、赤破線矢印)。
日本兵が展開しないうちにエリアの確保のため飛行場周囲のエリアを占拠しはじめる。

海浜エリアは島で唯一揚陸ができるエリア*2に次々と揚陸部隊が上陸しはじめる。上陸チェック時には隣接するエリアに機関銃ユニットが存在すると成功チェックのダイスの目に修正を施すことができる。機関銃ユニットは同様に空挺降下を行う空挺兵ユニットに対しても対空射撃により成功チェックを悪化させるなどゲーム中、非常に有力なユニットとして扱われている。

海浜エリア近くに機関銃部隊を集中した結果、上陸部隊のチェックの失敗が多くなり、上陸できなかったり、活動済に陥る部隊が続出する。これはこのまま夜間ターンに海浜エリアに浸透し、バンザイ突撃(夜間斬り込み)ができるのではないかと目論んだ。

 

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島中央の飛行場エリアと上陸部隊が揚がった海浜エリアをつなぐ回廊のようなエリアをアメリカ軍に取られたのが痛く、日本軍はこれ以上のアメリカ軍の展開を防ぐべく派手に部隊を展開している。が、これは地下壕に留め置かれた予備部隊が少なくなることでもあった。

 

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アメリカ軍はある程度インパルスが進むと「アドバンテージ」を使用し、「インパルストラックのリセット」を宣言する。これによりそこまで活動済であった両軍ユニットはすべて活動未済の状態に戻る。いやらしいのは砲撃を実施できる砲兵隊も戻ることだ。さすがに空爆と艦砲射撃が活動未済に戻ることはないのだが、それでもここまで攻撃を実施してきたアメリカ軍部隊がまた再度攻撃を実施するというのは、ショックが大きい。日本軍は有効な手を打ちにくいのだ。

その後、”もう1回ずつ”攻撃を行ったところで、おおよそ行動が終わったところで夜間フェイズに移行する。

 

夜間フェイズ

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日本軍は一日目の上陸作戦で行動済の部隊が積重なっている海浜エリアのアメリカ軍に対して周囲の複数のエリアから連続して、浸透・斬り込み作戦を実行する。まさに水際撃滅の夜襲だ。二日目になるとまた新たな上陸部隊が登場することを想定すると、このターンが最初で最後の機会かもしれないのだ。

アメリカ軍も予め攻撃を見越して部隊を厚めに配置していたこと、個々のユニットの戦闘力ではアメリカ軍が優位であることなどから、勇戦の結果、日本軍の連続的な斬り込み作戦は失敗した。日本兵達は多大な損害を与えたものの、アメリカ軍を押し返すまでには至らず、また元の陣地に戻っていった。

 

第2ターン

昼間フェイズになると後続の空挺部隊と上陸部隊が姿を表し、アメリカ軍の強化が図られる。地上に姿を表した日本軍は空爆と艦砲射撃の恰好の目標となり、スタックが集中しているエリアを中心に、執拗に攻撃を受ける。

いくつかのエリアで戦闘が起き、孤立した日本軍部隊は押し包むようアメリカ軍に追われ除去されていく。

飛行場のアメリカ軍部隊は北方に進出する。アメリカ軍は日本軍の弱い箇所を中心に勢力範囲を広げ、島内の日本軍はその占拠エリアを分断されていく。
飛行場エリアと上陸部隊がいる海浜エリアが繋がったことにより、部隊の相互移動が可能となり、アメリカ軍は島中央部に対して協力な装甲部隊などを送り込み始める。

このターンでもまたアメリカ軍は、アドバンテージにより「インパルストラックのリセット」を宣言。2周目の攻撃が実施される。

夜間フェイズにはいくつかのエリアで浸透・斬り込みを実施し、さらに一部ではアメリカ軍を押し返すことにも成功するが、複数のアメリカ軍部隊がスタックしたエリアに対しては戦闘力差を考え、ほとんど手も足もでない。

 

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飛行場エリアから北方(写真下方向)に進出したアメリカ軍部隊は猛攻撃により、島北端エリアを奪取。これにより日本軍は勢力範囲が実質3分割されてしまった。
夜間ターンに海浜エリア付近の部隊が連絡をとろうとするが、強力なアメリカ軍部隊により阻止された。

 

第3~第4ターン

アメリカ軍は北方の孤立気味の日本軍へ集中攻撃を開始する。日本軍に押し止めるだけの力はなく、包囲され数度の攻撃に晒され続ける。

つづく第4ターン、包囲され次々と部隊を失った被包囲エリアの部隊は最後、爆薬を使って自分の身とともにアメリカ軍数個を道連れにした。*3

ここでアメリカ軍に対抗する術がないと、投了。

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第3ターン終了時。
北方(写真下方向)側で山間で包囲された日本軍部隊。第4ターンも彼らへの攻撃は続き、最後は爆破攻撃で最期を遂げた。
分断された日本軍に強力なアメリカ軍を押し戻す力はないと投了。

 

感想戦

日本軍の戦い方は研究の余地がある。アメリカ軍の進出を抑えるため薄く展開してしまったが、もとより戦闘力に劣る日本軍がアメリカ軍に対抗するためには戦力の浅薄化は得策ではない。
また今回、まんまとアメリカ軍による戦力分断作戦に乗ってしまったが戦力を分断しすぎるのも得策ではないだろう。
戦後、アメリカ軍プレイヤーにより海浜エリア近くに有力な日本軍ユニットを釘付けにできたのはよかったといった趣旨の意見をもらっていることからも、日本軍はどこでどのように戦うのかをはっきり見定めることが重要と見た。

比較的短時間で終わらせることができるゲームでもあり、また機会があれば挑戦したい。

(おわり)

 

 

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*1:史実ではこれが日本軍の裏を完全にかくことになり、奇襲状態となったという。ゲーム内でも奇襲効果を反映したルールが用意されている。

*2:1942年に日本軍がこの島を攻撃した際もここから上陸した。

*3:選択ルール。ゲーム中、2回のみエリアを爆破することができる。史実では最後の攻撃とばかりに準備をするが誤って地下壕の中で爆破してしまい、数百名の日本兵がそれにより失われたという。

「コレヒドール 1945」(国際通信社)を対戦する(1/2)

 

エリアインパルスシステムによりフィリピン戦末期におけるコレヒドール島の戦いを扱った「コレヒドール 1945」(国際通信社)を対戦した。

 

コレヒドール島について

 

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矢印の先のあたりに小さく存在する島がゲームの舞台、コレヒドール
1941年12月日本軍のフィリピン侵攻時にはマッカーサーコレヒドールに司令部を置いていた。翌3月にオーストラリアに逃れる。4月バターン半島アメリカ軍が降伏、コレヒドール守備隊は5月に降伏した。

 

コレヒドール島はマニラ湾の入り口に位置する、おたまじゃくしか、柄杓のような形の島。確かにマニラ湾の入り口にあるとすると邪魔な存在だろう。ただフィリピン情勢の大勢が決しつつある中、この小島をなんとしてでも取り戻す理由はアメリカ軍にはあまりないようにも見える。かつてほうほうの体でここから逃れたマッカーサー*1からすると意地でも取り返さなければならなかった模様で、アメリカ陸海空軍三軍を動員した圧倒的な攻撃で1週間弱で島を占領する。

日本軍は海軍が守備隊をおいていたことから守備兵は海軍部隊であり、しかも陸戦の訓練を受けた陸戦隊だけではなく、レイテ湾海戦やマニラ湾空襲、多号作戦など、フィリピン近海で沈んだ多数の海軍艦艇の乗組員の生き残りが多く配置されたという。*21週間の戦闘により守備側の日本兵はほぼ全滅した*3

ゲームは1ターン=1日とし、計7ターンで描いている。

現在、このコレヒドール島にはマニラからクルーズで訪ねる事ができるようだ。マニラから2時間弱とのこと。なかなか行けるところではないが、戦跡として訪ねてみたい。*4

 

ゲームシステム

エリアインパルスシステムを採用している。同システムのゲームを経験した事があるプレイヤーであれば特に支障なくプレイできるだろう。

エリアインパルスシステムの基本

1.インパルスを何回実施できるかはダイスで決まる

ひとつのターンの中には行動を起こすことができるタイミングとして昼間フェイズと夜間フェイズがある。さらにそれぞれのフェイズは複数回のインパルスと呼ばれる手順があることになるが、何回のインパルスを実施できるかはダイスで決まる。

ひとつのエリアを指定しエリア内のユニット(この際、同一エリア内であれば複数のユニットを対象とすることも可能)を活性化させる。これをインパルスと言う。インパルスは手番のプレイヤーが望めば2回以上連続して実施できるが3回目以降も連続して実施できるかはチェックを行うダイスの目によって決まる。回数がかさむ毎に可能性は下がるが、本ゲームで言えばこのチェック1D6で毎回6を出し続ければ何回でも連続させることができることになる。インパルスが終了すると手番は相手側に移る。

インパルスを連続させることができれば、例えば攻撃正面に兵力を集中するように複数箇所にいる兵力を移動し、集中的に攻撃を仕掛けるということを相手に邪魔されずに実施できるわけだが、集結途中にインパルスが終了することになった場合、手番は相手に移ることで目論見が頓挫するということが起こる。逆にうまく行けば相手が想定していないような箇所に攻撃を行うことも可能になるかもしれない。連続して行動する途中で相手は対処を行うことができなくなる。

なお個々のユニットが活性化できるのは1ターンのうち1回のみ(例外:アドバンテージでインパルス回数がリセットされた場合)なので、インパルス数が増えたとしても全体の活動が可能な分量は変化はない。

 

2.ゲームっぽい要素を加える「アドバンテージ」の存在

エリアインパルスシステムを特徴づけるもう一つの要素として「アドバンテージ」の存在がある。一種の切り札のような存在で発動させることにより、特殊な効果を得る。
エリアインパルスシステムのゲームには決まって採用されているルールだが、面白いのは「アドバンテージ」を発動させる権利は、使用すると相手側に移ることだ。なおこのゲームでは、毎ターンの昼間フェイズの開始時に強制的に「アドバンテージ」はアメリカ軍に移る。

アドバンテージを発動させた際の効果として次のものがある。

  • ダイスの振り直し
    いかにもゲームっぽい”切り札”だが、ここぞというダイス振りをやり直すことができる。”お守り”として心強いことこの上なし。
  • インパルス回数のリセット
    インパルスの終了チェックのダイスは連続して実施しているインパルス回数と反比例するように終了しやすくなることは説明したが、このインパルス回数をリセットできるというもの。つまりインパルス回数が1回目にリセットされる。論理的にはもう数回、連続するインパルスが増える可能性がでてくる。さらに両軍プレイヤーはそれまで活性化済のユニットを非活性化状態に戻すことができる
    実はこれをアメリカ軍にやられると日本軍プレイヤーは精神に来る。特に昼間フェイズのアメリカ軍による容赦のない攻撃をしのいだという、そろそろ終わりそうだ、というタイミングでこのアドバンテージを宣言されると、アメリカ軍の活性化済の兵力が非活性化状態に戻ることにより、もうひと回り攻撃を行ってくることになるのだ。
    もちろんこの際、活性化済の日本軍ユニットの状態も非活性化状態に戻すことになるのだが、日本軍の場合、夜間フェイズに備えて多くのユニットは非活性化状態であることが多いため、あまりメリット感はない。
  • 回復

 

アメリカ軍と日本軍

ユニットはおおよそ中隊単位。
基本は歩兵だが、両軍とも保有する機関銃中隊には移動妨害、(対空挺)対空射撃といった能力(ダイスの目修正)が与えられている。
回復ルールもやや特殊だが説明は割愛。

 

強力なアメリカ軍

砲撃(砲兵部隊が実施)、航空支援による空爆、艦砲射撃はアメリカ軍のみが、昼間フィズの間のみ実施可能。

空爆と艦砲射撃は島内のどこへでも実施可能
特に日本軍ユニットが集中している地上エリアは必ず狙われることが想定されることから、日本軍は昼間フェイズ期間内での兵力の集中はよほどの事がない限り避けたほうがよい。

 

隠匿配置・夜間浸透・バンザイ突撃の日本軍

日本軍は地下壕内に隠匿配置することができる。地下壕にある間、日本軍は攻撃を受けない。地下壕内のユニットは、アメリカ軍支配エリア以外であれば、島内のどこへでも登場できる。

通常敵ユニットが存在するエリアに移動した際には強制的に戦闘になるのだが、日本軍や夜間フェイズ中、浸透移動を宣言すると特殊な対応を引き起こす。

1/6の確率では浸透は失敗し強制戦闘になるが、2/3確率ではバンザイ突撃を宣言することができ日本軍の戦闘力を2倍にして攻撃を行うことができる。

ユニット単体で見た場合、日本軍の一線級ユニット(4−4−4)でもアメリカ軍歩兵(4−5−4)にそのままで攻撃を行うのは不利なため、この万歳突撃による戦闘力2倍は非常にありがたく、日本軍の攻撃はこれが基本になるのではないかと思われるくらい。

昼間フェイズ中は可能な限り地下壕でアメリカ軍の攻撃をやり過ごし、夜間フェイズでアメリカ軍の裏を書くような移動の末、バンザイ突撃により削っていく・・。というのが日本軍の基本的な過ごし方になるのではないだろうか。

 

マップ

島全体(若干、おたまじゃくしのしっぽの先は切れているが)が複数のエリアに分割されている。それぞれのエリアは地形により防御修正値が記載されている。

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写真の地図は南北逆。上側が南になる。

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

*1:有名な「I Shall Return」は、フィリピンを去ったタイミングではなく、逃れたオーストラリアで発せられたものらしい。

*2:海軍はマニラ防衛戦でも乗艦を失った海軍兵を多く配置し、第15軍の方針に反し最後までマニラでの市街戦を主張した挙げ句、凄惨な市街戦を演じ、多くのマニラ市民を巻き沿いにしてしまうなど、かなり破滅的な行動をとっている。

*3:守備隊4500名のうち捕虜となったのは250名のみ

*4:グーグル・マップから見るといくつか日本人によるレビューがでていて興味深い。