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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「BATTLE IN THE EAST 2」(DECISION GAMES)を対戦する

 

第二次世界大戦の東部戦線の戦いを共通ルールで扱う「BATTLE IN THE EAST 2」(DECISION GAMES)を対戦しました。シリーズは現時点2作発売されており、2編ずつ独立したゲームが収録されています。今作は2作目にあたり、1941年の戦いを扱っています。このうち「Guderian's Last Blitzkrieg」をプレイしました。

 

 

 

歴史的背景

このシナリオは、1941年11月17日から12月7日までの期間を扱い、ドイツ軍によるモスクワへの最後の攻勢作戦(秋季作戦)において、南側の戦線を担当したグデーリアン率いる第2装甲軍による戦いに焦点を当てています。

作戦開始前の時点でグデーリアン上級大将はモスクワ攻略の好機は過ぎたと判断していました。しかし中央軍集団司令官ボック元帥はモスクワへの攻勢を主張し、参謀総長ハルダーは攻勢を認可します。

11月15日から18日までに、第2・第3・第4装甲軍が攻勢を開始し、第4装甲軍はモスクワまで8キロに位置まで前進に成功します。第2装甲軍工業都市トゥーラを包囲しますが、迂回し前進を継続します。最終的にはモスクワ南方を流れるオカ川の線まで前進しました。
11月末には各所でドイツ軍の攻勢は頓挫し、例年よりも早く到来した冬により完全に停止しました。気温が零下20度以下まで下がり、冬季戦用の防寒服や凍結防止剤を持たなかったドイツ軍は戦闘車両や火器は寒冷のため使用不能に陥り、兵士たちも戦闘を継続できなくなったのです。
12月6日、ソ連軍の反撃が始まりました。

 

ゲームシステム

1ヘックスは5-8キロ、1ターンは2日、ドイツ軍のユニットは連隊/旅団、ソ連の機械化部隊は旅団、歩兵は師団規模です。

“I Go You Go" 方式で、1つのプレイヤーターンは、

  1. 第1移動
  2. 戦闘
  3. 機械化移動

というシンプルなシーケンスになっています。
機械化移動は補給下の機甲・自動車化・機械化ユニットが追加的に実施できる移動です*1。ただし通常の移動よりも移動力は抑えられ、攻撃補給下でユニット記載の数値の1/2、一般補給化で1/4となっています。

ZOCは弱ZOCにあたります。移動フェイズの最初に敵ZOCにいるユニットは+2移動力にてZOCからの離脱が可能です。

特徴的なのは補給ルールです。補給下にあるユニットは「一般補給」と「攻撃補給」のいずれかの状態になります。「攻撃補給」では攻撃力フル(防御力フル)、また攻撃力1/2でオーバーランが可能であり、機械化移動フェイズで対象ユニットの移動力は1/2で移動可能となります。
「一般補給」では、攻撃力1/2(防御力フル)、オーバーラン不可、機械化移動フェイズでの移動力は1/4になります。
一般補給と攻撃補給は、両軍それぞれについてターン毎に指定されています。例えば今回プレイしたシナリオの場合、ドイツ軍の1-4ターンは「攻撃補給」、5-6ターンにて「一般補給」となります。残る7-8ターンはいくつかの司令部に限定して「攻撃補給」に指定することができます。

戦闘は通常の戦闘力比率に基づきます。同一師団/同一軍団効果、航空支援、司令部(師団砲兵/軍団砲兵を表す)、リーダー*2、包囲攻撃によって戦闘結果表の比率にシフトが行われます。また、装甲ユニットの一部は機甲シフトが与えられるものがあります。相手側に対戦車能力を持ったユニットが存在した場合は機甲シフトは打ち消されますが、対戦車能力をもたない部隊ユニットに対しては有利にシフトさせることができます。
戦闘解決は1D6にて判定され、数値で表される損害はステップロスか後退で吸収することになります。損害を与えても後退することでするりとかわされてしまうため、作戦級ゲームのオーソドックスな種々のテクニックを使うことになるでしょう。

移動フェイズにはオーバーランによる攻撃も可能です。

シナリオ特別ルールとして、天候表により「凍結」と「ブリザード」が発生します。どちらもドイツ軍には厳しい条件となりますが、特に「ブリザード」になると、ドイツ軍の装甲・自動車化ユニットの移動力がわずか2に制限されます。

また、ソ連軍にはカチューシャやNKVDユニット、スキーユニットといった特殊なユニットが登場します。

全体に特殊なルール、変わったルールはないため、作戦級プレイヤーであればすぐにプレイに入ることができるでしょう。

1点、プレイ途中に適用を間違えたルールがあります。地形が「大河(Major River)」の場合、大河ヘックスサイドを超えて敵ZOCに進入できないというルールがあるのですが、マップ上、大河とばかり思っていたヘックスサイドが実は「小川(Minor River)」に過ぎませんでした。実は今回使ったマップ上には「大河」にあたるものはなかったため、「小川」を「大河」と誤認したという訳です。マップ上に凡例をつけておけよ、という話なのですが。

 

プレイ

ドイツ軍を担当しました。

スタート時点ですでに前線が大きく張り出した状態です*3グデーリアンの第2装甲軍主力の装甲部隊は中央の突出部に散開しています。この主力の装甲部隊をどこに振り向けるかが問題となります。

左翼ではソ連軍の防衛線が河川沿いに張られ、歩兵軍団がにらみ合っています。右翼はドイツ軍の部隊密度もまばらな状態です。

 

マップは写真下側が西です。すでに前線はトゥーラの南側を大きく東方に張り出した形に突出しています。モスクワは写真で言うと左奥の方向のマップ外に位置することになります。シナリオの勝敗に直結する勝利ポイントが指定された都市は、マップの右上あたりから上辺あたりに点在していますので、ドイツ軍はそこまで前進していく必要があります。

写真では左翼からトゥーラあたりまで、河川(これが前述の「大河」と誤認した河川です)に沿い、ソ連軍の防衛線が構築されています。トゥーラより右側はソ連軍の防衛線が薄いのですが、ドイツ軍の装甲部隊もまだ十分に前線に揃っているわけではありません。

ここで史実と同じようにトゥーラを迂回することをまず考えました。その場合、ドイツ軍は東方向に突出することになりますが、トゥーラ付近に密度高く存在するソ連軍部隊に側面をさらすことになります。

我が心の中のグデーリアンはしきりに、「装甲部隊は機動せよ、東に進め、難敵は迂回せよ」と繰り返しささやいていました。グデーリアンのささやきに従えば装甲軍の主力はまっすぐに東進します。マップ端に連なっている勝利得点が割り振られた都市に向けて突進することになります。
しかし、もしかすると戦力を集中すればトゥーラを落とせるかもしれないという誘惑も受けていました。トゥーラを落とせば、ドイツ軍は側背を気にせず前進できるのではないか・・・と。

 

トゥーラ周辺の部隊を集結させ、軍団砲兵や航空支援を組み合わせ、グデーリアンユニットの直卒によるシフトも活用し、満を持したトゥーラ攻撃はダイスの目としては成功しました。しかし、トゥーラが要塞都市という地形に分類され、要塞都市のユニットは後退の結果が打ち消され、さらにステップロスも1ステップ分無効にできるということで、損害を与えることに失敗しました。ステップロスさえ与えられれば次のターンには戦闘力比率を向上させ、より有利な結果を得ることができるのではないかという期待が霧散したのです。
ゲームとして、きちんと守られらたトゥーラを落とすことはほぼ無理ではないかというのが結論です。

その後、ドイツ軍はトゥーラを包囲にとどめ、主力は東進します。しかし、トゥーラ攻撃で1ターン、その後の戦線の整理で1~2ターンを時間を浪費していたことから、補給状態が「攻撃補給」から「一般補給」になった段階でドイツ軍の攻撃は頓挫します。さらに遅れを取り戻すため、無理な前進を続けていたことから、一部の突出したスタックが包囲され、ソ連軍の反撃によってぼろぼろになってしまいました。

 

終了時点の状況
ドイツ軍は東進するものの、早々と「ブリザード」が発生し、足を止められた後、その後、「一般補給」下では積極的な攻勢をとることができないまま、ソ連軍に増援が到着し戦線を固められてしまいます。

 

感想戦

最近はルールが変わった作品をプレイすることが多かったため、本作のルールはよく知った世界に戻ってきたような観さえありました。ルールがシンプルな分、作戦に没頭できるゲームと言えそうです。
ゲームとしては小ぶりな印象です。プレイ時間は長くはないです。ボックスとしては、独立した小ぶりなシナリオ2本セットということになるのでしょう。

「戦闘補給」と「一般補給」とで攻勢の様相ががらりと変わってしまいます。「一般補給」のターンでは、戦闘力が全て1/2になることを考えると、積極的な攻勢は取りにくくなります。
OCSのように攻勢にあたって補給ポイントを貯めるといった行為は不要なのですが*4、本作品の場合、補給状況はシナリオによって最初から両軍のターン毎に決定されている点はやや恣意的に感じられました。

ゲーム紹介を見ていると「赤軍には多数の未経戦(アントライド)ユニットが登場します。」とありましたが、実際のプレイでは数は多くなかった印象です。
プレイの中では戦力が確定していて値が大きめのユニットとスタックされていることが多く、先を急ぎたいドイツ軍としては数値が確定していない以上、無理に攻撃できないスタックになっていて、手を出せないという状況。この点はソ連軍プレイヤーの巧妙な運用も影響しているのでしょう。

(終わり)

 

 

 

モスクワ攻防戦

モスクワ攻防戦

Amazon

 

*1:対象の兵種であれば第1移動を実施したユニットでも実施可能です。

*2:グデーリアンジューコフユニットは2シフト有利に変更できる

*3:この直前まで実施されていた「オペレーション・タイフーン」の結果として、第2装甲軍は前進していました

*4:OCSの場合は補給ポイントを貯めることでプレイヤーは攻勢のタイミングを自らコントロールできることになる

2023年はこんなゲームをした(ボードゲーム/ウォーゲーム)

 

2023年内に記事で取り上げたゲームは28作品。
記事にしていない対戦分もカウントすると30作強といったところでしょうか*1。月あたり2.5作品となります。2022年については39作品を取り上げていますので少々減っています。昨年の記事は本記事の巻末にリンクを貼っていますのでご参照ください。
月間2作品から3作品というのは物足りない実績ですが、週末専業プレイヤーとしては仕方のない件数でしょう。

今年プレイしたゲームの中から印象に残った作品を挙げます。最新作やトレンドに追随しているわけではないため、取り上げた作品が2023年を代表するものとは言えない点はご承知ください。

 

 

 

 

本記事は「War-Gamers Advent Calendar 2023」に参加しています。

 

 

 THE BATTLE OF ARMAGEDON(COMPASS GAMES)

稀代の怪作!?、いえ快作!

6つの勢力(イスラエル、アラブ連合、ロシア、アメリカ、欧州連合、中国)がエルサレムを巡り、現用兵器を駆使して争う一方で、黙示録に描かれた超自然現象が次々と発生するという世界線が異なる世界を舞台にしています。

現用兵器を描いた部分では、陸海空の三軍のユニットが登場し、ヘックスを使用したマップが広がり、ゲームシーケンスやZOCルール、戦闘ルールなど、普通のウォーゲームらしい「まともな」要素で構成されています。軍隊・装備には、超兵器や超能力、怪異は一切登場しません(中国軍だけが発動することができる「人海戦術」は黄禍論的なカリカチュアが施された、掟破りな内容ですが)。

アンナチュラルなのは、毎ターン冒頭に発生するイベントです。天から遣わされた天使がラッパを吹くと、黙示録に描かれた災害・事件が次々と発生し、マップ上の各種軍隊ユニットが全滅したり、各国の母国の人口が数千万人や数億人といった単位で失われていきます。

世界の終末が刻一刻と近づいていく中でも人類は愚かしくも大戦争を止めようとしない、というアポカリプスな終末世界の描き方が素晴らしいです。

トンデモ設定のため見るからにキワモノのゲームですが、これが非常に盛り上がる快作だという話です。本作は可能であればフル人数(6人)でプレイしたいですね。なお、COMPASS GAMESのセールでは "BLOWOUT PRICE" で販売されています。

 

 

 SEAS OF THUNDER(GMT GAMES)

艦艇ファンなら許してくれるよね!(というか、待ち望んだ?)

第二次世界大戦に登場した連合国・枢軸国・中立国も含め、当時地球上に存在した戦闘艦艇の大部分を網羅していると思われる、1400ユニットもの艦艇が登場する作品です。個艦レベルでの扱いになると、連合艦隊ファンとしては不満が残るところもありますが、少なくとも巡洋艦以上は1隻=1ユニットで登場し、多数の艦艇が一堂に並ぶ光景は壮観としか表現しようがありません。

描かれる海軍作戦は通商破壊戦を中心とした大西洋での海軍作戦風に扱われてしまっている点や、ビッグゲームにありがちなユニット数が多すぎて端々まで管理が行き届かなくなり扱いが作業になってしまいがちな点、この世界には燃料問題はなく(毎ターン全艦全力出撃できる)、史実の日本軍にあったパイロット不足問題などは起きない(航空母艦が搭載する航空戦力は出動の都度フル装備状態になる)といった仕様など、いくつかの問題点や不満点は存在します。
個々の海軍作戦のシミュレーションというよりも、多数の艦艇ユニットを登場させたいというさながらグローバルな観艦式を目指したようなデザインポリシーは好みが分かれることでしょうが、艦艇ファンなら許してくれるよね!といった作品に仕上がっています。

 

 

 THE BARRACKS EMPERORS(GMT GAMES)

どっちのグループにも入れてもらえなさそうな作品ですが・・

「軍人皇帝」と聞いて色めき立ち、歴史知識が不要なトリックテイキングゲームという説明にがっかりし、プレイしてみると「これは傑作ではないか!」と、印象が二転三転した作品です。

パズル的に盤面を解決していく1人プレイもできますが、フルセットの4人プレイがオススメではないでしょうか。4人プレイでは、1周回って自分の手番になる間に盤面ががらりと変わるほど変化が激しい点や、パズルのように盤面を解いていく点が面白い作品になっています。

歴史事象はフレイバーではありますが、それはそれで必然性を感じさせてくれます。
なんとなくですが作品の風貌としてアピール不足というか、歴史ゲームファンからもボードゲームファンからも見落とされそうな点が心配です。もう一度言いますが、面白い作品です。傑作です。

 

 

 ワイマール:民主主義の戦い(ホビージャパン

かくしてドイツの社会民主主義は瓦解し、全体主義が勃興した

第一次世界大戦での敗戦後、戦間期のドイツを舞台にした4つの政党が政権奪取を競うヒストリカルゲームです。
シリアス度はマイルドになり、勢力間のバランスを取るようにゲーム的な調整がされているものの、史実に裏打ちされたシチュエーションは面白く、興味深くプレイできます。
政策論争で支持を得て、主要都市・地方での支持を集め、国政選挙を行い、議席数が単独過半数に足りなければ連立政権を樹立して... 議会制民主主義において政権を取ること、そして政権を運営していくことがいかに大変かを考えさせられ、現実の国内政治も思い起こされます。ナチス党の扱いにも感心しました。

ハードなテーマですが、凝りすぎていない点と、間口広め(?)の作品になっている点を評価します。

 

 

 ENEMY ACTION KHARKOV(COMPASS GAMES)

アバロンヒル・クラシックの時代以来の呪縛から解き放たれる

戦闘結果についてドローしたチットにより決める方式であるため、戦闘解決での確率計算がほぼできません。

攻撃側・防御側のユニットの攻撃力の比率を算定して戦闘解決に用いるゲームの場合、戦力比2対1では攻撃側ユニットが除去される確率が高いため攻撃を控えようとか、確実に敵を退けるために戦力比が4対1になるまで戦力を集めようとか、少し戦力が足りないから部隊ユニットを抜いてこちらに回そうと不自然な部隊移動を行うといったゲーム的な行動が横行します。
この作品では、戦力比率が目安にならないことから、攻撃の重点や進退を決定するとき、不確かな状況で判断を下すことになります。実際の戦場で数値化された情報が得られないのと同様の感覚が味わえます。戦闘解決システムだけでなく、カードドリブンによる活性化ルール、地形修正・ZOC・補給などの縛りが緩いといった特徴もあり、研究余地が多々ある作品です。

 

 LITTORAL COMMANDER(The Dietz Fundation)

最先端の「マルチドメイン作戦」を語ろう

近未来戦を象徴する「マルチドメイン作戦(多領域作戦)」は、従来型の陸海空の戦力だけではなく、各種ドローン、無人機、航空機、長距離砲、電子戦、サイバー戦、弾道ミサイル人工衛星などの機能を統合・同期させ、ニア・ピア(同等に近い敵)による脅威を克服することを目的としています。このようなテーマを正面から取り扱った作品はまだ多くはありませんが、本作は平易なルールで「マルチドメイン作戦」に触れることができる作品として注目です。

ゲームでは、旧来型の陸上部隊や艦艇が主なユニットとして登場しますが、各種兵器や手法・作戦をカードとして取り入れることで、様々な作戦への適用が可能となっています。プレイヤーは用意されたシナリオに対して、どのような戦力・手法・作戦を展開するか、また、敵の投入・実施する戦力・手法・作戦に対して的確な対抗手段を用意する必要があります。ゲーム的には、敵の繰り出す各種のカードに対する対抗手段を考え、うまく立ち回る必要があります。教育用途を念頭に置いて作られたということからか、ゲームとしては洗練されていない部分もありますが、将来的な東アジアでの事態に対する戦闘の様相を実感できる作品として魅力的です。

 

 

 Levy & Campaignシリーズ(GMT GAMES)

ALMORAVID: Reconquista and Riposte in Spain 1085-1086

Inferno: Guelphs and Ghibellines Vie for Tuscany, 1259-1261 

GMT GAMESのラインナップの中でも最も活発なシリーズのひとつ

中世欧州の封建社会における戦役を扱ったLevy & Campaignシリーズはいまや一大シリーズになったようで、第4作まで発売済、さらにGMT社の発売予定P500を見ると7作目までラインナップされています。

今回の2作は、11世紀イベリア半島におけるレコンキスタを扱ったシリーズ第2作と、中世イタリアを拘束した神聖ローマ帝国ローマ教皇との間の確執を扱った第3作になります。
ルールの基本的な構造は同じですが、各作品が扱うシチュエーションに応じてルールが足し引きされています。

シリーズを通して共通するシリーズの魅力はなんといっても、中世封建社会における主従関係や戦争がどのようなものであったかを描いているところでしょうか。

封建君主が配下の領主の軍隊を動員した際には契約期間があり*2、契約期間を過ぎるとどんな戦況だろうが構わずに帰国してしまいます。帰国を防ぐには別途報奨を与えるか、略奪行為を認める必要があります。略奪された土地は荒廃してしまい、土地が回復するまで、収穫や収入を得ることができなくなります。
軍隊は自分たちが消費する食料を自分の本拠地から運搬する必要があります。運搬のために馬車や驢馬や舟といった手段(運搬手段のバリエーションは作品によって異なります)を常備しなければなりません。運搬手段の中には、手段を維持するために補給を消費するものもあります(馬や驢馬も糧秣を消費するのです)。食料がなくなると、その地での略奪を許すか、そうでなければ勝手に帰国してしまいます。
では本拠地を出発する時点で十二分な食料や資金を抱えて進軍すればいいじゃないか、という話ですが、多くの補給品を調達するには時間を要するため出発が遅れることになり、契約期間を食いつぶしてしまうことになります。もちろん大量の食料を運ぶにはそれだけの多数の運搬手段を確保する必要があります。
さらに、余計な食料や資金、または運搬手段を抱えた軍団では、横流しや無駄を表す「浪費」が発生し、せっかく運んできた食料や資金や運搬手段を無駄に消費してしまうという罰ゲームのようなルールまで用意されています。この「浪費」というルール、プレイしているとなんて嫌らしいルールだろうと思うのですが、いかにもありそうです。

戦闘ルールも魅力的です。
戦闘は、簡易的な戦術マップ上で解決されます。各国、また動員された各領主の軍勢はそのお国柄・土地柄により様々な兵種で構成されます。強力な重装騎兵から農奴兵やアフリカ弓兵といった様々な兵種が登場し、それぞれの特徴に応じた戦闘を行うのです。

冒頭に書いたようにGMT GAMESの一大シリーズになりつつあるようなので中世ヨーロッパに興味があればオススメします。
シリーズ第1作「NEVSKY」にあったある種、マゾヒスティックなほど束縛が多かったルール*3もその後のシリーズ作では緩和されており、プレイしやすくなっています。
これから発売される作品も、セルジューク朝トルコとか、フス戦争とか名前だけでワクワクしてきそうな作品が並んでいます。
既存作については、先ごろ発売された第4作含め、有志の方によるすばらしい日本語マニュアルも公開されていますのでプレイ環境は確保されています。

 

※ 上の記事は書きかけで止まっています。

 

(つづく) → (おわり)

 

以下は2022年版

 

 

 

*1:複数回プレイしていても作品単位に1作品としてカウント

*2:知識不足ですが、この点が日本の封建制と最も異なる点なのかなという印象を持っています。有識者の方教えてください。

*3:あちらを立てればこちらが立たないという、舞台となったロシアの厳冬のような印象のルールでした・・・

「EUROPE UNIVERSALIS」(AEGIR GAMES)を対戦する【2回戦】

 

大航海時代からフランス革命までの欧州史を扱ったマルチプレイヤーゲーム「EUROPA UNIVERSALIS」(AEGIR GAMES)をプレイしました。これが2回目のプレイとなります。

政治、軍事、外交、科学・技術・文化の発展、宗教、探検*1など様々な要素が組み込まれています。政略結婚、宣戦布告*2などのルールに加えて、ローマ法王枢機卿*3、十字軍や破門、宗教改革や国教の変更といった宗教に関する要素は特にルールが多く、神聖ローマ帝国*4など、西洋史ファンにとっては興味を引くルールが満載です。その分、プレイヤーができること、管理しなければならないことは多岐にわたります。

 

 

前回のプレイ時には、プレイにあたっての課題を挙げていました(詳細は下記にリンクを置いた前回記事をご参照ください)。

 

目を配る必要がある情報が多い:

勝敗を決定する「プレステージポイント(勝利ポイント)」の獲得には、各勢力ごと、またはプレイヤー全員に対し共通して与えられた課題をクリアする必要があります。これらの課題には「ミッション」、「マイルストーン」、「アイディア」の3つの種類があり、加えて毎ターンクリアしなければならない「イベント」も存在します。これらを表示したカードが、同じタイミングで順に、2枚、4枚、9枚、3枚と合計18枚*5がオープン状態にあり、プレイヤーはこれらのカードの状況・内容に目を配りながらゲームを進める必要があります。

 

ルールやカードの文章の記述に、アイコンが多用されわかりづらい:

ルールやカードの文章内に絵文字、つまりはアイコンが多用されているため、読み解くにはひとつひとつアイコンリストと照合していく必要があります*6。読み込んでいくとアイコンにも慣れるとは言うものの、似たデザインのアイコンが多いこともあり、初見殺しであることは確実です(アイコンの多用はそれはそれで理由があるようです。詳しくは前記事参照)。

 

プレイヤーの選択肢が多い:

プレイヤーは各国の君主と家臣の能力、または所持資金に応じて一度のターンに複数のアクションを実行できます。実施できるアクションの種類は多岐にわたり、基本アクションは9種類、統治アクションは3種類、外交アクションは4種類、軍事アクションは4種類あります。プレイヤーはアクションの実施とあわせ、同じターンの中で、前述のイベントの解決やプレステージポイント獲得のためのカード内容の解決を行っていく必要があります。用意されたアクションのバリエーションが多いことは、プレイヤーがとり得るアプローチが様々用意されているということですが、これもゲームシステムへの習熟が必要な要素となっています。

 

今回、2度目のプレイということで前回よりはまだ見通し良くプレイはできました。相変わらずルールやカードの読み込みにはアイコンリストと首っ引きなのは確かですが、あれをやってこれをやってという手順は考えることができるようになったと感じます。

 

 

 

マーカーが置かれている範囲は今回のプレイ範囲になります。
フランス(青)、スペイン(黄)、ヴェネチア(赤)、オスマン帝国(緑)、マムルーク朝(紫)

 

 

プレイ

シナリオは前回と同じ5人シナリオを対戦しました。シナリオによって登場する国は異なり、今回のシナリオは、1444年の地中海を中心としたエリアを舞台にし(中欧・北欧は使用しない)、フランス、スペイン、ヴェネチアオスマン帝国マムルーク朝(エジプト)の5勢力が登場します。
担当国をランダムに決め、マムルーク朝を担当しました。

マムルーク朝は名前の通りイスラム教国のひとつで、勢力範囲は現在のエジプトから東はシリア地方までを治め、イラク地方やリビア地方にも影響力を及ぼしている存在です。プレイ開始時の君主は「ザーヒル・ジャクマク(Jaqmaq)」という名のスルタンです。高齢のため通常は2ポイント持っているはずの生命力ポイントが1個に減った状態から開始です。イベントカードなどにより1発で死んでしまうことになります。キャラクターとしての能力は凡庸なため、いっそ新しいスルタンを迎えたようがよさそうです。幸いランダムに引いたカードにより、家臣(アドバイザー)や将軍は優秀な人材が揃ったため、無能なスルタンは惜しくはありません。

マムルーク朝が目指すべき「ミッション」として2点が与えられました*7
1枚は国の安定度を上げ、周囲のノンプレイヤーの国家に良い影響を与えるといった趣旨のものでした。もう1枚はインドとの香料貿易を独占するように海域や陸路を単独で押さえるというもの。前者は統治アクションにより安定度を上げることで対応できそうです。後者についてインドとの交易路はマムルーク朝が押さえているため、他プレイヤーから邪魔されそうにありません。いずれも他国と相争うような内容ではないですね。平和主義でいきましょう。

マップ全体を見渡すと、コンスタンティノープルオスマン帝国の包囲化にあります。キプロス島ロードス島ヴェネチア支配下にありますが、東地中海はオスマン帝国マムルーク朝の両イスラム国家に制海権を奪われています。スペインはイベリア半島内にアラゴン王国レコンキスタ問題を抱えています。フランスもプロヴァンスブルゴーニュアキテーヌなどに諸外国の領有地を抱え国内統一ができている状態ではありません。
他勢力が国内または差し迫った海外問題を抱えているのに対し、マムルーク朝は特に問題を抱えている訳ではないようです。
同じイスラム教国家として、オスマン帝国とは協力関係を取ることにし、ヴェネチア支配下にあるロードス島キプロスを分け合う密約を交わします。

 

第1ターン

このゲームのシーケンスの特徴として、全てのプレイヤーが1枚ずつイベントカードを実行しなければ、ターンが終了しないという点があります。終了しない間は、プレイヤーはアクションを実施することになるのですが、全てのプレイヤーがイベントカードをどこかのタイミングで実行するまで、ぐるぐると何度も手番が回ってくることになります。

どのタイミングでイベントカードを実施するかは駆け引きになります。イベントカードによって引き起こされるイベントの内容は悪いものが少なくありません。イベントカードは3枚オープンになっており、処理されるごとに1枚追加でオープンされていきます。オープンになっているカードの内容が良いものであれば、いち早くそのカードを実行してその特典に預かるところですが、あまりよろしくないイベントのカードが並んでいた場合は、自分にとってなるだけ影響が少ないイベントを実行させるか、まだ開かれてなくこれから開かれるカードを待つといったことが考えられます。

 

スペインとフランスは国内の反対勢力を力でねじ伏せるように動きます。オスマン帝国コンスタンティノープルへの包囲攻撃です。ヴェネチアは外交アクションのひとつである「貿易アクション」を実施します。
「貿易」は軍事と並んでこのゲームでの重要なアクションのひとつです。実施すると「貿易カード」を引き、カードに示された地域・海域に自勢力の「商人ユニット」が存在する場合(移動させることも可)、収入を得られるというものです。徴税以外で資金を獲得する重要な手段になっています。

我がマムルーク朝は手札にあった「革命的な発明」というカードを利用して、コストを抑え、アイディアカードの中から「大砲の発明」を獲得します。これにより、「歩兵」と「騎兵」しかなかった陸上ユニットとして「大砲」を生産できるようになり、さらに無料で1ユニット確保できます。「大砲ユニット」が存在する軍隊は戦闘の際に有利に働き、また「大砲の発明」カードは枚数が限られているため、持たない軍隊に対してかなりのアドバンテージになるでしょう。

2周目では、すぐにイベントカードを実行しました。無害系のイベントであったため、他プレイヤーに先を越されないうちに発動させます。その後、3週目と4週目は「貿易アクション」を実施し、小金を得ます。大砲ユニットや他国よりも家臣や将軍を多く抱えているため、維持費が必要です。

その間、スペインが発動したイベントにより、我がスルタンは死亡し、能力的にはさらに凡庸ですが、若いスルタンが跡を継ぎました。君主+家臣の「統治」「外交」「軍事」の能力値は次のターンからの実行できるアクションの数に直接的に影響するため、非常に重要です。現在は君主の能力値をカバーするだけの有能な家臣がいるため、能力値の低下の心配はありません。
コンスタンティノープルが陥落し、東ローマ帝国は滅亡します。フランスではプロヴァンス地方がフランス王の支配下に収まります。

今回は年末のイベントがあったため1ターンのみで終了しました。前半に書いた通り、ゲームへの見通しが良くなってきたため、構造が理解できるようになりました。参加するプレイヤーが前半に書いた課題に対応できるようになると、なかなかに楽しいプレイになりそうな予感がします。

 

第1ターン終了時の状況。勢力図としてはほぼ変動はありません。

 

(終わり)

 

 

 

*1:新大陸やインド、アジア、アフリカなどへの

*2:戦争をはじめるにも一定の作法が存在します

*3:各国から選出された枢機卿の中から、さらに教皇を選ぶ

*4:今回は登場しませんでしたが、政体が異なるために特別なルールが一章に割り当てられています

*5:うち「ミッション」の2枚は個々のプレイヤーだけに開示

*6:ウォーゲーム系の場合、略語が多用されている作品はありますね。略語の場合まだ文字として認識できるので区別は付きやすいのですが・・

*7:ミッションは各勢力の専用カードにて、勢力毎に2枚ランダムに用意され、他プレイヤーには秘匿されます

「WunderWaffen」(Aleph Game Studio)を対戦する

「WunderWaffen」は、第二次世界大戦の末期戦を扱った2~4人によるボードゲームです。プレイヤーはイギリス・アメリカ・ソ連とドイツを担当します。連合軍の3国は占領地を増やし政治的地位を上げ、最終的にはベルリンを占領することでポイントを稼ぐ一方、ドイツ軍は連合軍の進攻の邪魔をしつつ、新兵器を開発することでポイントを稼ぐという変わった構造をもった作品になっています。

 

 

連合軍3国が競争をするという意味では「Churchill」(GMT Games)の会議パートを除いた侵攻状況パートを膨らませた内容を想起しましたが、「Churchill」の侵攻状況を表すパラメーターが東部戦線・西部戦線それぞれが直線的に表されていたに対し、本ゲームのそれはベルリンを中心としたエリア式のマップになっているといえばいいでしょうか。
また「Churchill」では互いの戦線に対して直接的な邪魔はできなかったのですが、本作では、お互いに直接的に邪魔をする手段が用意されています。

 

マップ全景。
左手からイギリス、下手からアメリカ、右手からソビエトが占領地を拡大していく。マップの中央やや左上あたりの赤い点がベルリン。
各エリアに書かれた3つのボックスに各勢力は手持ちのチットを配置していくことになる。

 

ここでルール説明をしようと思ったのですがなかなかにややこしく、BONSAI GAMES ONLINEのコラムがわかりやすいかったのでそちらにおまかせします。

 

 

 

感想戦

かなり変わったシステムで四苦八苦したため、写真を撮っていません。

今回は2人プレイだったのですが、これもまた変則的で、イギリス&ソビエト、もうひとりがアメリカ&ドイツを担当します。当方は後者。
そんな相反するような分担でゲームが成り立つのか、という話なのですが、2人用特別ルールとして勝敗は、プレイヤーが担当する2勢力のうちゲーム終了時での獲得ポイントが低いほうの勢力を比べるというのです。

F1のチームではファーストドライバーをサポートするようにセカンドドライバーが動きますが、このゲームでは先を走るファーストドライバーの順位でも、チームとしての成績でもなく、セカンドドライバーのポジションによって勝敗を決めるというところでしょうか。

また基本ルールの中で、各プレイヤーがターン毎に使う3枚のチットのうち1枚は自分以外の勢力の面で使用しなければならないというルールがありますが、2人プレイの場合は、自分が担当する2勢力以外の勢力として使わなければならないという制約になります。

 

3枚のチットのうち1枚は別プレイヤーの勢力のために使うという制約は、ゲーム的な処理でこのゲームにひねりを加えているのは確かですが、技巧的で直感的ではありません。ただ4人プレイだと4人が相互に入り組んで差し合うことになるため、異なる様子になったのかもしれません。

連合国に比べるとドイツのポイント獲得手段が細いように感じました。
ドイツはポイントを稼ぐ方法として新兵器の開発がメインとなっているため間口は広くありません。早々にゲームを組み立てて、地道に得点していく必要がありそうです。
ひとつのゲームの中で使うことができるチットの数は決まっているため、自ずと兵器の研究開発に投入できるポイントはある程度計算できてしまいます。

  • 獲得できそうな研究開発ポイントを計算すること
  • 場に出ている開発兵器カードから何を開発するのがコスパがよいか判断すること
  • エリアが占拠されるとドイツに研究開発ポイントがはいるエリアは連合国にどんどん占拠させて、開発ポイントがドイツにはいってくるように動く。

ドイツが得点力が弱いという点についても4人プレイで連合国3勢力を互いに競わせて、その間にドイツとして得点を稼ぐということなのかもしれません。

 

雑誌ゲームだから仕方ないといえばそうなのかもしれませんが、ルールの細かい適用が説明不足の部分が少なくないように感じました。新機軸が多い作品だけに丁寧な説明が必要だったのではないでしょうか。
またマーカー類も区別がつきにくいなどいまひとつな印象です。

 

(終わり)

 

 

 

 

 

「We Are Coming, Nineveh」(Nuts! Publishing)を対戦する

モースル(モスル;Mawsil)はイラク北部にある都市で、2002年の調査では人口約1,740千人*1イラク第二の人口を擁しています。日本でいうと福岡市(人口1,600千人)から札幌市(1,900千人)くらいの規模というのでかなり規模が大きいことが伺えます。2014年以降、過激派組織ISIL(イスラム国/ダーイシュ)により統治されますが、2016年から2017年にかけて行われたイラク治安部隊によるモスル奪還作戦の戦闘の結果、解放されました。

本ゲームはこのイラク治安部隊によるモスル奪還作戦を扱っています。

このモスル奪還作戦の作戦名が、本作のタイトルになっている「We Are Coming, Nineveh」。Ninevehは、ニーナワー県と呼ばれるこの地方の行政単位で、モスルはニーナワー県の県都という訳です。

 

 

 

 

ゲームシステム

プレイヤーはモスル市街を占拠したIS部隊(ゲーム中は「ダーイシュ」と呼ばれる)か、開放を目指すイラク治安部隊のいずれかを担当します。

1ターンは10日から2週間とされています。マップスケールからすると長めに見えますが、史実では戦闘開始から解放宣言まで半年程度は要していますので妥当なところなのかもしれません。全12ターン。

もともと教育用にデザインされたという由来からルールはシンプルで、プレイアビリティは高いです。

 

エリア方式のマップ

マップはエリア方式、モスル市街が全面に描かれる中、目を引くのはグレーで描かれた旧市街エリアでしょう。
建物が密集し、道路が細く、部外者を寄せ付けないこのエリアについては、IS側の一部の部隊の戦闘時にアドバンテージを得られる一方、治安部隊側は重装備を有する陸軍部隊(=強力な部隊)は侵入できないといった制約があります。さらに後に紹介する「航空支援」「砲撃支援」といった支援攻撃について、旧市街を対象にすると「巻き添え被害」(市民への被害)を生みやすいといった事情もあり、I治安部隊からすると扱いがやっかいな地域になっています。

両勢力のユニットは、基本は1ターンに1エリアしか移動できないのですが、マップ上に描かれた幹線道路上を移動させる場合、移動力に制約はなく、敵ユニットに隣接するまでどこまでも移動できます。ゲーム開始時に治安部隊はマップ端から進入するのですが、幹線道路沿いに部隊を展開させることにより、マップ全体へのいち早い浸透が可能となるでしょう。

 

マップの(ほぼ)全景。右上の赤線で囲まれたグレーのエリアが旧市街、黄色のラインが幹線道路を表します。初期配置ではIS部隊はマップ全体に配置できるのに対し、イラク治安部隊は手前の鷹の印がある緑色のマークがあるエリアに配置されます。
両勢力のユニットとも移動は1回=1エリアに限られますが、幹線道路沿いであれば、敵ユニットが配置されたエリアにぶつかるまでどこまでも移動できます。

 

シンプルなゲームシーケンス

移動‐戦闘を交互に繰り返します。各プレイヤーターンの冒頭に後で紹介する付加的な能力(Capability)を用いた攻撃やイベントが発生します。Capabilityとしては、航空支援や砲撃支援などが該当し、移動・戦闘フェイズの前に実施されます。
移動後、相手ユニットと同一エリアにいる場合、戦闘が発生します。

 

ユニットは積み木ユニット。各ユニットは2~4ステップからなります。
戦闘時は戦闘に参加するユニット数分のダイスを振り、各ユニットに設定された戦闘力以上の目が出た場合、防御側はその個数分のステップを失います。

特徴的なのは戦闘時に振ったダイスの目が修正前で1か6であった場合、1枚イベントカードが開けられ、記載されたイベントを解決することになります。これによって、シンプルな戦闘解決に様々なイベントを付加することになります。

戦闘解決後、防御側ユニットのステップがひとつでも残っている場合、攻撃側(エリアに進入してきた側)は隣接エリアに後退する必要があります。相手を全滅させない限り、攻撃側は後退しなければならないことは注意が必要です。

 

多様な部隊編成

両軍の特色にあわせそれぞのユニットは複数の兵種からなります。

例えばイラク治安部隊は、警察、対テロ部隊(Counter Terrorism Service)、陸軍の3種類に大きく分かれています。

ユニットに戦車が描かれた陸軍部隊は、攻守ともに能力がずばぬけているのですが、旧市街への進入できないという制約があります。

対テロ部隊は戦闘力も高く、戦闘時に通常は1ラウンドで終わるものが2ラウンドまで継続できるという特徴があり、デメリットもなく、使い勝手から治安部隊側の主力となるのではないでしょうか。

警察はさらに3種類、連邦警察(Fuderal Police:準軍事組織)、緊急対応部隊(Emergency Responce Division)、人民動員部隊(Popular Mobilization Force)に分かれています。やっかいなのは最後の人民動員部隊*2で、Capability(後述)によりポイントを使うことで追加兵力として登場するのですが、彼らが関与した戦闘においては「巻き添え被害」が2倍になるというデメリットがあります。この部隊、イラク国内に存在する複数の宗教の複数の部族からなる民兵組織なのですが、一種の宗教戦争として対IS国戦闘に参加してきたという来歴を持っているようです。

 

イラク治安部隊のユニット。左下から時計回りに連邦警察、緊急展開部隊、人民動員部隊、対テロ部隊、陸軍。それぞれの能力・特別ルール等を表記したカードが用意されている。

市街地戦闘を特色づける勝利条件

勝利条件ポイントは「損害」「巻き添え被害」「時間」の3つの観点で評価されます。
「損害」は相手に与えた損害、「巻き添え被害」は戦闘にあたって発生した市民の被害、「時間」は鎮圧までに要した時間になります。

「損害」や「時間」を追求する場合、「巻き添え被害」が大きくなる懸念があります。「巻き添え被害」を抑えるには航空支援や砲撃支援、部隊投入を抑えたりする必要があるかもしれませんが、打撃力は失われるでしょう。

両プレイヤーは開始前にこの3つの観点のいずれかひとつを重視する条件として指定します(カードを選び、ゲーム終了時まで伏せておく)。

 

付加的な戦闘能力を表す「Capability」

「Littoral Commander」(The Dietz Fundation)に登場したJCC(JOINT CAPABILITY CARD:統合能力カード)と似たコンセプトで本ゲームでは、「Capability」というカードを一定のポイントの範囲内で購入することでデッキを構築します。

イラク治安部隊には航空支援、砲撃支援、ドローン、部隊の追加(人民動員部隊など)の他、野戦病院(民間人の犠牲を抑える)、爆弾処理チームといった各種カードが用意されています。
「Littoral Commander」でのJCCとの相違としては、対象となる作戦規模が異なるため弾道ミサイルといった大掛かりなカードはないのは当然ですが、「Littoral Commander」ではアメリカ側と中国側のカードは似た効果を持つカードがそれぞれ用意されていたのに対し、本ゲームでは非対称の戦闘であることから、全く性格が異なるカードが多いということでしょうか。

 

イラク治安部隊側のCapabilityカードの一部。

 


 

AAR

イラク治安部隊を担当。

重視する勝利条件として「巻き添え犠牲」を選択。これに伴い、Capabilityも巻き添え損害出にくいものを中心に選定しました。

初期配置では、IS部隊の主力は旧市街に置かれていると推測し、旧市街へ突入する「対テロ部隊」、旧市街への突入はしない(できない)ものの旧市街エリアを孤立させるべく周囲のエリアを占拠する目的で「陸軍」を旧市街地の周辺部、さらに遠方の残りのエリアは警察部隊という展開です。

 

初期のターン。
IS部隊(黒ユニット)は旧市街にみっしりと配置されています。
治安部隊(緑ユニット)は手前にいたIS部隊を警察部隊を用いて掃討しつつ(治安部隊)、中央から精鋭陸軍、右翼に旧市街突入を目指す対テロ部隊が展開しています。

 

旧市街に突入した治安部隊側の精鋭である対テロ部隊。戦闘力が比較的高く、継戦能力があり(2ラウンド目の戦闘が可能)、耐久力もあります。
IS部隊は、各種「IED(即席爆発装置:Improvised Explosive Device)」をIS部隊側のCapabilityとして提供されている「爆弾製造工場」から次々と作成して展開します。治安部隊は、Capabilityで提供される「爆発物処理班」を出動させ、処理させていきます*3


IS部隊のうちエリート部隊ユニットは旧市街地エリアの戦闘において、ユニットの特殊能力として戦闘時にヒットアンドアウェイが可能となっており、治安部隊に対して戦闘発生時に先制攻撃を実施、その直後、治安部隊からの反撃を受けることなく後退ができます。ASLにおける”スカルキング戦術”*4を彷彿とさせる嫌らしい行動ですが、難点は攻撃後、後退する必要がある点。多用しすぎると地歩を失います。

治安部隊側のCapabilityで活躍したものを挙げるとすると、「ドローン」があります。ドローンは通常、後ろ向きに配置され正体が隠された状態のIS部隊のユニットを露わにして、ダイスチェックに成功すれば1ステップロスさせることが可能となります。
IS部隊側には少なくない数のダミーユニットが混在していますので、余計な場所への探索が不要となったり、幹線道路沿いに配置されて移動を邪魔しているユニットを事前に処理してしまうなど非常に役に立ちました。

 

全景。右翼側で調子良く支配範囲を広げていたところ、IS部隊に取り巻かれてしまい、後退位置を失うことで余計なステップロスを被ってしまいました。
このゲームの戦闘解決において、防御側を全滅させられなければたとえ相手に損害を与えていたとしても攻撃側が後退しなければならないことから、思わぬところで後退を強制されることがあります。後退においては後退方向のルールなどがあるため、後退位置を失うことがあるのです。治安部隊側が戦力に任せて進攻すると陥るリスクがあるため注意が必要でしょう。

その後も旧市街を中心に着実に支配エリアを拡大しつつ、その他のエリアでも主たるところは確保しつつあるなど優勢に展開しているつもりだったのですが、治安部隊は「損害」が思いの他膨らみ、勝利条件を満たせないと投了しました。

 

感想戦

勝利条件となる3つの要素のコントロールが難しい

「巻き込み犠牲」を抑えるため、「攻撃支援」「砲撃支援」といった強力なCapabilityを使わないようにしていたのですが、打撃力として十分ではなかったようです。
地上軍の進攻に先立って前さばきをする火力が不足した分、地上部隊の負担が増え、損害につながったといったところでしょうか。

また「巻き込み犠牲」を出さないようにCapabilityは選択したものの、毎戦闘時に発生する可能性があるイベントなどによって犠牲は積み上がったのでした。
ここからは想像だが、「巻き込み犠牲」を本当に抑えるにはもっと徹底的にデッキ構成や攻め方なども含めて考慮する必要があるということになるのかもしれません。

「巻き込み犠牲」を主目的とした場合のデッキ構築や戦術・作戦の詰めが甘かったということであれば、「損害」を主目的とした場合の戦術・作戦、「時間」を主目的とした場合の戦術・作戦と3つの要素毎に攻略方法を考えることができるという点で、3倍美味しい作品といえるのかもしれません。

 

デッキ構築

カードによって付加的な攻撃能力を追加するデッキ構築を行う作品として「Littoral Commander」を挙げていました。「Littoral Commander」ではカードとして提供されるアメリカ軍と中国軍のカード能力が拮抗していて(厳密には、同じような能力・効果を持つカードについて購入するコストが異なったりしていた)、各カードに対する対抗手段が用意され、きちんと対抗手段のカードをあてがっていない場合、その段階でゲームとして詰んでしまうことさえありました。
一方で本作に登場する2勢力は戦力やスキルとして非対称であり、両軍のCapabilityの内容を見ても、対抗手段がないと即詰みというまでのシビアな面はありませんでした。

今回のプレイについて言えば、相手への対抗手段として選んだカードが機能を発動するタイミングが一向にないということも少なくなかった(おそらく相手からしても同様だった模様)ことからも、デッキ構築にあたっては「Littoral Commander」にあった、”なんとしてでも対抗手段を用意する”といったシビアさはないのかもしれません。

 

(終わり)

 

 

 

*1:別の資料によると、2014年のISILによるモスル占領前の人口は約250万人、2年間のISILによる統治の結果、150万人まで減少したという。

*2:2018年に再編され「新イラク共和国防衛隊」となった

*3:処理の成否はダイスで決まるのですが、中には処理に失敗した上、処理班自体も除去するという結果もある。

*4:ASLにおいて主に防御側が取る定石的な戦術で、自軍の移動フェイズで敵が射撃をできない位置にユニットを移動しておき、敵側の射撃フェイズで射撃を受けることなくしのぎ、続く自軍の突撃フェイズで元に位置に戻るという動作。敵側からすると1回分そのユニット(スタック)に対する射撃タイミングを失うことになる。ルールに即しているものの、ゲーム的な対応です

「THE HUNT」(Salt & Pepper Games)を対戦する

ドイツ海軍の装甲艦「アドミラル・グラーフ・シュペー」の通商破壊行と、それを追うイギリス海軍を扱ったボードゲーム「THE HUNT」(Salt & Pepper Games)を対戦しました。

 

 

 

ドイツ軍プレイヤーは「シュペー」号、イギリス軍プレイヤーは「シュペー」号を追う追跡艦隊を表す複数のユニットを扱います。他に、ドイツ軍にはカードイベントで登場する補給艦、イギリス軍は航路上をルールに沿って移動する商船ユニットを操作します。

基本的なゲームシステムはカードドリブンで、カードに記載されたポイントを使ってアクションを実施するか、カードのイベントを発動させます。通常のカードはアクションポイントとイベント実施を選択することになるのですが、カードによっては必須で発生するイベントもあります。

 

 

「シュペー」号は通常の状態では盤上には現れず、ドイツ軍プレイヤーは位置を別に記録していきます。「移動」アクションにより、1~3ヘックス位置を変えていきます(「移動」アクションに費やすポイントによって移動距離が変わる)。商船と同じ海域(ヘックス)に入ったところで「索敵」アクションを実施するとダイスによるチェックを行い、成功すると商船は即撃沈になります。
「シュペー」号は水上偵察機を搭載しており、可動状態にあると「索敵」時の発見率があがるというギミックが用意されています。

 

 

イギリス軍プレイヤーは「移動」アクションにより艦隊を移動させます。「シュペー」号が隠れていそうな海域(ヘックス)で「索敵」アクションを実施、チェックに成功すした場合、ドイツ軍は実際にそのヘックスに「シュペー」号がいるかどうかを回答しなければなりません。

両軍は実施するアクション種類を宣言しなければなりません。
特にドイツ軍は「索敵」アクションを実施した場合、ヘックスを指定しなければならないため、潜伏しているヘックスが露見してしまいます。続けて「移動」アクションを実施することでそのヘックスから離脱してしまうでしょうが、イギリス軍はすぐさま付近の海域に艦隊ユニットを移動させてくるでしょう。
イギリス軍はアクションのひとつである「諜報」を使うと、ドイツ軍は実際に「シュペー」号が存在するヘックスか、隣接するヘックスにマーカーを配置する必要があります。ウソをつくことはできないため「シュペー」号のおおよその位置がわかってしまうのですが、一方でイギリス軍への欺瞞情報として働くかもしれません。

イギリス海軍の艦隊ユニットの「索敵」により、「シュペー」号が発見されると(つまりはイギリス軍の艦隊ユニットと「シュペー」号が同じヘックスに位置していることになります)、海戦が発生します。

「シュペー」号の目標となる商船ユニットは、常にマップ上に2ユニットは存在するように、適宜ランダムに追加されます。商船ユニットには、イギリス本土とブラジル・アルゼンチン・インドといった地名が出発地と目的地として記載されていますので、その内容に沿うようにマップ上を移動します。

 

カードの美麗なイラストも雰囲気を良く伝えてくれます

 

ドイツ海軍プレイヤーは商船の航路に沿い商船ユニットを追いながら、一方でイギリス海軍の複数の追跡艦隊の裏をかくように移動させていく必要があるでしょう。イギリス海軍は、「シュペー」号の位置を推理しながら、見えない艦艇を追っていく必要があります。

カードは1~5ポイントのアクションカードとして使うか、イベントを発動することになりますが、強力なイベントのカードほどポイントも高いため、その使用は悩むことになります。また軍艦同士の海戦になった場合はカードのポイントが攻撃力となるため、海戦に備えて強力なカードを手元に残すのか、または強力なイベントを発動させるのか、はたまたポイントとして使うのか、悩みどころになります。

ドイツ軍プレイヤーは5枚の商船ユニットを撃沈する、イギリス軍プレイヤーは5枚の商船ユニットを無事に目的港まで到着させると勝者になります。

 

感想戦

プレイ時間は小一時間程度、ルールはシンプルにまとめられていますが、プレイは盛り上がります。

今回のプレイではドイツ軍を担当しましたが、複数のイギリス軍艦隊に追われながらも、商船の航路に出没しては撃沈し、すぐに姿をくらますという行動や、イギリス軍の推理の裏をかきながら商船隊に接近していくなどスリリングな場面も少なくなつ白熱しました。
最初は可動状態にあり、高確率で商船の発見に寄与する搭載の水上機もやがて故障し(一度出動すると整備しなければ可動状態にならず、整備のチェックで失敗すると故障状態になる)、後半はなかなか商船を発見できなくなります。
史実の「シュペー」号が母国ドイツに戻ることなく2ヶ月半の航海後に、遠く南米で自沈を余儀なくされた顛末につながる寂寥感を感じます。

今回のプレイでは商船ユニット4個の撃沈に成功するものの、イギリス軍が5個の商船ユニットを目的港に到着させることに成功させました。

軍事テーマのゲームですが、特に軍事知識は必要なく、間口が広いボードゲームになっており好印象な作品です。

(終わり)

 

 

 

「ワイマール:民主主義の戦い」(ホビージャパン)を対戦する(2/2)

「ワイマール:民主主義の戦い」(ホビージャパン)を対戦しました。
第一次世界大戦後、敗戦国ドイツに樹立されたワイマール憲法下の共和国を舞台に、主要政党を操るマルチプレイの政治ゲームです。

 

 

 

 

プレイの状況

日本版が発売された直後のプレイでしたので、ルールの適用間違えなどあることをご容赦ください。

 

初期状態

ドイツ共産党を担当。

中央党(青)、社会民主党(赤)が連立政権を担っており、ドイツ共産党(ピンク)とドイツ国民人民党(黒)が反政府側という状況。共産党(ピンク)と国民人民党(黒)は野党ですが、主義主張が正反対の対立関係にあります。このゲームではそこまでは深く描かれていませんが街で出会うと抗争をはじめるくらいの犬猿の仲です。

初期状態では、いくつかの都市で「貧困」や「社会不安」のマーカーがすでに置かれ、ミュンヘンには共産党による「評議会」いわゆる”ソビエト”が配置されています。*1

初期状態での議席の状況は、社会民主党7、中央党5、共産党4、国民人民党3です。

 

初期配置の状況

マップ左上のドイツ国と書かれたエリアに配置された2個のマーカー(いまは「ハイパーインフレ」と「封鎖」)が国が抱える「脅威」を表します。
今後の展開で、空きスペースがすべて埋まった状態から7枚目の「脅威」が登場すると、サドンデスでゲーム終了になります。

 

第1ターン

政策フェイズで他の3政党がデッキの増強ができる強硬な政策を選んだのに対し、ドイツ共産党は話し合い中心の穏健策を採用します。

 

ドイツ共産党の「政策カード」。上2枚が強硬策にあたる政策。
各党も同様に4枚の「政策カード」を持っており、「政策フェイズ」の冒頭に、1枚を選び、同時に開示します。

 


穏健策を選んだ結果、複数の論点を世論トラック上に配置でき、その後の衝動フェイズにおけるアクションの結果、他の政党より多くの論点を共産党のエリアに持ってくることができました。国会での活動によって世論誘導により、一挙に3議席を増やしました。
都市部においては、カードイベントである「スパルタクス団の蜂起」*2を使います。蜂起そのものはダイス判定により失敗するものの、準軍事組織を増強するのとあわせ、ベルリン、フランクフルト、ミュンヘンといった都市でデモを実施、ケーニヒスベルクとベルリンでは「暴動」の発生まで成功します。
結果として「社会不安」が増大。それ以外にも「ハイパーインフレーション」から経済情勢、「貧困」が悪化していきます。

「中央党」は反政府活動の中心になっていたミュンヘンに大量の官警を動員(白いユニット)して、ミュンヘンのデモや「評議会」を抑えにかかり、結果としてミュンヘンの「評議会」は壊滅させられます。

 

第1ターンの「政治フェイズ」終了時。
世論誘導により共産党は躍進し7議席を獲得、社会民主党議席、中央党4議席、国民人民党4議席となった。中央党の凋落は、議席獲得する活動が少なかった一方で、政権与党として議席を失うことが多かったことに起因します。

単独過半数を取る政党はなかったため(単独過半数を成立させるには12議席必要)、第一党の社会民主党は第二党の共産党へ連立の申し入れします。共産党としては断ることもできたのですが、共産党が政権側についた場合のゲーム展開を見たかったため、受諾しました。

ちなみに共産党が断った場合は、社会民主党は中央党へ連立を申し入れることになるのですが、中央党が受諾した場合も、与党側は7+4=11議席なのに対し、野党側は8+4=12議席過半数に達しない少数与党状態になり、政権は不安定化、ドイツ国の「脅威」が増えることになったでしょう。*3

 

第2ターン

政権与党にできて野党にはできない活動に「外交」があります。

外交は成功した際の報酬も大きく、勝利ポイントを多く獲得できます。一方で、大国からの無理目な圧力等が背景にあるため、多くの外交政策は国民には不評で、支持状況へ悪影響、つまりは議席を減らす結果となります。

共産党は与党のメリットに気づいてしまいます。
外交により勝利ポイントを大きく稼ぎつつ、議席数の減少は世論の誘導でカバーするのです。

一方で、衝動フェイズで使うことができるアクションカード枚数に限りがある以上、都市でのアクションに十分に力を割くことができなくなります。
野党のときには、デモだ、暴動だと活動していたのが政権与党になったとたん、当然反政府運動はできなくなります。もちろん政権側として、反政府活動を警察や軍を動員して取り締まるというアクションは可能ですが、いつまた議席を失い野党側になることを思うと、反政府活動の取締りに力をいれることもできなくなりました。

反対に、野党に転落した中央党は、他の3政党が保有しているような準軍事組織のユニットをもっていません。*4
結果としてこの時点で都市側で活動を行っていたのは国民人民党だけになっていました。このターン以降、国民人民党は各都市での支持を大きく伸ばすことになります。

 

おおよそ第2ターンの終盤と思われます(ただし世論トラックの精算が終わっていない状態)。外交や経済情勢は良好に推移し、ドイツ国の「脅威」も前ターンから増えていません。一方で、各都市において黒い駒(国民人民党)が増え、さらに配置されているマーカー(八角形の脅威マーカーや、カマボコ形の準軍事組織ユニット)が増大しているように見えます(在野での社会不安が増えた状態)。*5

 

ターンの終了時、共産党は外交の成功による勝利ポイントの獲得や世論誘導による議席の獲得の状況が続いたことにより、連立政権は政権を保持し続けることになりました。

 

第3ターン

この頃になるとプレイヤーは世論トラックを使った世論誘導のメリットに気づき、世論誘導(論点の取り合い)が熾烈になってきます。また政権与党として外交に力をいれるメリットもまた、野党にはない手段として認識が共有されます。

共産党は「タイムラインカード」として2枚の強制イベントカードを引いてしまいます。ひとつは「議会解散」、そして「エーベルトの死去」です。エーベルトとはこの時のドイツ大統領です。

前者は、そのカードが出された時点で、全てのプレイヤーの手札にある「政党カード」を全部捨て札にしてしまうというものです。議会が解散するのですから、活動ができなくなるという訳です。プレイヤーは後の周回に向けて強力なカードを残しているはずですから、それらを強制的に捨てさせるなんて、なんと魅力的なイベントでしょう。もちろん自分の手札にも同じような影響を与えるのですが、被害を最小限に抑えるべく、「政党カード」は先に使ってしまいます。

現大統領が死去すると大統領選挙になります。

 

議会解散」というイベントカードにより、プレイヤーはその時点で手元に残っていた「政党カード」をすべて捨て、このターンの衝動フェイズは強制的に終了させられました。このため都市部を中心に手当をされないままにマーカー類が多数残ってしまっています。

首相は国会における第一党から輩出されるのですが、大統領は国民選挙で選ばれます。
つまり国会における議席ではなく、各都市の支持状況により、ダイスを振り票数を決めていくのです。この時点で、各都市で圧倒的な支持を得ていたのは国民人民党でした。結果、同党が大統領を出すことになります。

このターンの終了時に共産党は下野、再び反政府側になります。政権は社会民主党と中央党が担います。

 

第4ターン

下野した共産党は各地で活動を行います。ただここまでの保守派との抗争で活動部隊がかなり壊滅しているのは地味に痛いです。
時間的に第4ターンがラストになりそうだったので、「政策カード」として革命の実行を書いたカードを選ぼうとしたのですが、勝利ポイントを考慮するとあまり得策ではなかったため、通常とおり穏健路線の政策を選ぶことになりました。

 

第4ターン終了時
前のターンまでに各都市で支持を集めていた国民人民党が国政に一挙に打って出ます(イベントカードで、各都市にある政党駒を国政に移動できるという内容)。これにより国民人民党は7議席の第一党となり、中央党との右派連立政権を取ることになります。

 

ここで時間切れ終了。勝利ポイントとしては与党を最も長く続けた社会民主党が1番、その次が共産党といった結果。第4ターンで右派大躍進でしたが、ナチス党は影はまだ見えませんでした。
金融大恐慌が発生するのは1929年ですので次のターンあたりからドイツ経済が再び暗転し、外交的にも賠償金支払条件の緩和&長期化案(ヤング案)の是非を巡ってギクシャクし始め、ナチス党の登場ということになるのでしょう。

 

感想戦

プレイアビリティに配慮された作品

1ターン=1時間、プレイ時間合計6時間という触れ込みでしたが、今回のプレイでは後半は1ターンは1時間もかかっていません。慣れてくるとスムーズに進むようです。それでも十分に重いゲームということでしょうが、1日で1ゲーム終了させることも十分可能ではないでしょうか。

ゲームマップ上のガイドや各プレイヤーが持つエイドなどプレイ進行を助けるためのアイテムが揃い、情報がきれいに整理されているので非常にわかりやすくなっていました。プレイアビリティには気を配っている様子がうかがえます。

 

政権は担ってこそのゲーム

ターン中の活動の結果として、毎ターンのように国会の議席数が変化します。
どうせプレイするには政権政党を担当するのが面白いです。内憂外患、当然のように苦労が絶えません。野党は準軍事組織まで動員して好き勝手暴れまわりますし、国のためによかれとした施策は必ずしも国民の支持を得ないのです。

政権政党が、とはいいながらも野党もまた興趣がつきません。
好きなだけ暴れまわっていると、「そんなに文句があるのだったら、あなたたちがやってみなさい’」とばかりに政権を渡されます。こうした立場の逆転は面白いですね。

 

若干不満に思ったところを書いてみる

プレイを重ねて研究は必要ですが、共産党や国民人民党のたてつけ、また政権政党である中央党のたてつけはそれぞれ野党向け、政権政党向けにデザインされているようで、政権交代が発生した後の振る舞い方は少々難しいかなという印象を受けました。

今回、共産党は途中、政権側に回り、外交など政権政党ならではの得点を重ねたのですが、ゲームの仕掛けとしては共産党は反政府側に徹したほうがよかったように感じました。もちろん政権側にはいって単独過半数議席を取ることによるサドンデス勝利という道は用意されているのですが、議席数決定のルール上、単独過半数の状態にするのは、共産党に限らずいずれの政党もかなり難しいように感じます。政権側にいると共産党の通常アクションで用意されている「デモ」や「暴動」を起こすことはできないため、それらからの得点は望めません。
共産党の通常動作としては、反政府側で「評議会(ソビエト)」を4か所の都市に立ち上げることを目指すのが妥当なのかな。同じことは右派の反政府政党である「国民人民党」にも言えるのかもしれません。
このあたりはプレイを重ねることで見えてくるものでしょう。

 

シミュレーションとして

ワイマール共和国内の政争のシミュレーションとして見ると、社会階層毎の支持層の違いは捨象されているように感じました。ルール紹介では触れませんでしたが、本ゲームには、「社会マーカー」というマーカーが用意され、イベントなどにより、「労働者」「兵士」「富裕層」といったマーカーは登場し、勝利ポイントや議席獲得に得ることができます。ただ「社会マーカー」自体はそれ以上の発展はなく、同じ社会階層に対して複数の政党がアプローチするといったことも可能で、競合関係は生じません。「労働者」や「富裕層」といった言葉はあくまでフレーバー的な扱いにとどまっていると言って良いでしょう。

社会階層という観点から考察すると例えば、「富裕層」「資本家」「富農(地主)」といった社会階層の人々からすると、共産化を謳う共産党なんて絶対的に忌避すべき政党でした。赤色革命が実現した日には財産が奪われる立場の人たちですから、この点は必至です。事実、中道系の政党が力を失う中、「富裕層」「資本家」といった階層は反共を標榜するナチス党と結びついていきます。

「労働者層」「小作農」といった階層から共産党は一定の支持を得ています。が、同時に労働者や小作農の階層は右派政党の支持層でもありました。共産党と右派政党が犬猿の仲と書きましたが、主張が正反対なばかりではなく、支持層が被っており、お互いに支持を奪い合う関係でもあったわけです。
有権者数、また政治資金という観点で見ると、当然人口が多いのは「労働者層」です。ただ彼らは資金力がある訳ではありませんでした。一方で「富裕層」「資本家層」は人口が少ない一方で資金力をもっていました。

社会階層別の政党の支持状況、地方の特性に応じた支持状況(日本でもそうであるように、都市部と農村部、または工業地帯とでは社会階層の構成が異なり、結果として支持政党の色合いが異なってくる)、さらには支持層をベースにした資金力に大きな違いがあったのですが、本作ではこうした要素はありません。

ゲーム的に捉えると、本作に登場するプレイヤー政党はカードデッキの構成や実施できるアクションは異なるのですが、政党として支持を得るという点では同列・同条件に置かれていると言えるでしょう。ゲームとして過度に複雑化することを避けたとも言えますし、異なるパラメーターをいれてプレイヤー間のバランスが崩れることを避けたとも見えます。

こうした要素が薄いといって本作が単純だとか面白くないということではないです。十分に複雑でかつ面白い作品です(時間はかかりますが)。

 

まだ1回プレイしたきりですので、ゲームとしての奥深さ、ゲームシステムの限界を見極めた訳ではありません。ぜひまたプレイしたい作品です。

(終わり)

 

yuishika.hatenablog.com

第一次世界大戦終了後の欧州を舞台に社会民主主義共産主義全体主義が争うという「ワイマール」と同じ時代を異なるアプローチで扱った政治ゲームです。扱う範囲はドイツ・イタリアをはじめ東欧・中欧の国々ですが、東欧・中欧は派生的な扱いで、中心はドイツとイタリアになります。国会選挙・大統領選挙、ドイツの都市や地方での暴力を伴う政治運動など本作に似た要素が多々あります。また本作では扱われなかった、社会階層毎の支持も描かれています。また外交や経済の描写はさらにシリアスな印象でした。
一方でプレイアビリティはひどく悪く、1回目のプレイ時には1ターンで丸一日要したという伝説のゲームです。さすがに2回目のプレイ時には数ターン進めることはできましたが、わかりにくいルールブック、ルールブックでは触れられず、マップ上のガイダンスやイベントカードにしか書かれていない情報が多々あるなどプレイアビリティについては本作の真逆のような作品でした。
それでも2回もプレイしたのは底知れない不思議な魅力を感じたからかもしれません。

 

 

 

 

*1:ドイツ共産党はターンの終わりに配置された「評議会」毎に勝利ポイントを得ることができ、政権政党の中央党は逆に「評議会」がマップ上にない場合、勝利ポイントを得ることができます。

*2:1919年1月5日から1月12日にかけてスパルタクス団と呼ばれる共産主義者によって主導された、ドイツ・ワイマール共和国政府に対する武装蜂起事件である。保守化した社会民主党は、軍の一部や右派の義勇兵を組織して革命運動の鎮圧に努め、激しい弾圧を行い、ローザ=ルクセンブルク、カール=リープクネヒトは殺害され、革命を達成することは出来なかった。

*3:なお、社会民主党と国民人民党とは主義が異なるため連立することはできません。

*4:かわりに政権から降りた後も警察ユニットは自由に動員できることになっています。警察や軍といった階層からの支持が厚かったということだったのかもしれません。

*5:あとで判明しましたが、都市部に配置されているマーカーの処理が間違えているものがあります(「社会不安」が同じ都市に2個存在する等)。

「ワイマール:民主主義の戦い」(ホビージャパン)を対戦する(1/2)ゲームの紹介

「ワイマール:民主主義の戦い」(ホビージャパン)を対戦しました。
第一次世界大戦の敗戦国ドイツに樹立されたワイマール憲法下の共和国を舞台に、主要政党を操るというマルチプレイの政治ゲームです。

 

写真は日本語版ではなくオリジナル版

 

 

ゲームの紹介

プレイヤーは4人、当時の主要政党として、ドイツ社会民主党中道左派政党)、中央党(保守政党)、ドイツ共産党(左派政党)、ドイツ国民人民党(右派政党)のいずれかを担当します*1
ナチスこと国民社会主義ドイツ労働者党(右派政党)はノンプレイヤー勢力として登場し、プレイヤーが操作する政党のアクションやイベントの結果として、政治や社会への影響を増していく存在という扱いです*2
ゲームは1918年11月のドイツ革命で第一次世界大戦終結した直後から始まり、ヒトラーが首相に就任しナチスが政権を奪取した1933年までの14年を扱っています。全6ターンですので1ターンは2.5年弱といったところでしょうか*3
 

マップ全景。
右上にある半円形に椅子が並んだ場所に政党駒が並び支持状況を表す。
その真下にある大きな十字が「世論トラック」。
マップの左上はドイツの主要都市が並び、それぞれに地方での政党支持状況を表すため、政党駒を配置するボックスが用意されている。都市では、プレイヤー政党のアクションの結果、「デモ」「ストライキ」「暴動」などが発生し、「貧困」や「社会不安」(まれに「繁栄」といった良いステータスもある)といったマーカーが配置される。
下辺部分では、外交状態のステータス(シルクハット形のマーカー)や、経済状況(工場形のマーカー)のステータスを表す
 

ゲームのシーケンス

基本的なゲームシステムはカードドリブンです。
ターン内のシーケンスは次の手順で進行します。
 
  1. 共和国フェイズ
  2. 政策フェイズ
  3. 衝動フェイズ*4
  4. 政治フェイズ
 
「共和国フェイズ」ではターン毎の必須のイベントが発生します。
「政策フェイズ」では各党はそのターンの政策を選び「政策カード」を提示します。
「衝動フェイズ」はこのゲームシーケンスの中心にあたり、ここで各プレイヤーは5枚+αのアクションカードを手札として入手し、順番にカードを1枚ずつ解決します。各プレイヤーが手札をすべて使いきったところでフェイズは終了します。
「政治フェイズ」では、勝利ポイントや支持状況など精算を行います。
 
政治をテーマにしたゲームならではの手続きとして、ターン中のアクションやイベントの結果として、政党駒という支持状況を表すユニットが増減します。最終的にはマップ右上の国会エリアにある24マスの中に収まるように各党のユニットが調整され、それがターンの活動の結果としての政党支持状況となります。
支持状況の結果によって政権交代が起きる可能性があります。
24マスの過半数に政党駒が置かれるとその政党は単独で政権政党となります。過半数に届かないが最も多くの議席を獲得した政党は第2位以下の政党と連立を呼びかけ、連立政権とすることもできます。主義主張に隔たりがあるため政党によって組むことができない組み合わせもあります。結果、どの政党とも連立できない場合や、連立したとしても合計の議席数が過半数に達しない場合などは、少数与党の状態となり政治は不安定化します*5

政策フェイズ・・・政策の決定
各政党は独自の目標(政策/理念)を持ち、その達成のために様々な手段を講じることになります。各党には「政策カード」がそれぞれ4枚くばられており、毎ターンの「政策フェイズ」にて、このうちの1枚を選びます。選ばれた政策はそのターンにおける党の活動方針や目標として扱われます。
「政策カード」の内容は党によって異なり、選んだカードによっては、デッキへカードが追加されたり、各党が保有する準軍事組織のユニットが増強されたりします。
なお「政策カード」は捨て札などにはならず、使いまわしをしますので、何度も同じ政策が登場することになります。
選んだ「政策カード」によりそのターンの活動がある程度定まることからも、ゲームに慣れていないプレイヤーへのよいガイダンスにもなるでしょう。
 
今回担当したドイツ共産党の場合、4枚の「政策カード」のうち2枚は穏健な協調路線の内容だったのですが、残り2枚は強硬なアクションをともなう(代わりにデッキへのカード追加や準軍事組織ユニットの追加を伴う)内容になっていました。追加になるカードは強力なのですが、一方で地道に点を稼ぐ内容ではないので、穏健路線から過激路線、またはその逆のタイミングは判断を要するところかもしれません。

衝動フェイズ・・・各種アクションの実施
衝動フェイズで使うカードには2種類あるのですが、いずれの種類のカードにもアクションポイントとイベントが書かれています。
アクションカードの種類のひとつは、アクションポイントの使用に加えて、記載されたイベントは必ず発生する「タイムラインカード」*6です。「タイムラインカード」は各プレイヤー共通で、登場するイベントはシリアスな種類、つまりはあまり発生させたくない種類の内容が多いように感じました。
もう一種類は、「政党カード」で、カードに記載されたアクションポイントを使うか、イベントを発生するかのどちらかを選びます。「政党カード」は担当する政党によって個別のデッキが用意されています。
各ターン、プレイヤーは「タイムラインカード」を2枚、「政党カード」を3枚+α配られ、そのターンの中ですべてのカードを使い切る必要があります。必ずイベントの発生が伴い、あまりうれしくないイベントが多い「タイムラインカード」をどのタイミングで使うのかは悩みどころになるでしょう。
 
カードに書かれたアクションポイントを使う対象は2種類あります。ひとつは、政治レベルの争いとして討論を行うことで、もうひとつは、各都市でなんらかの活動、アクションを起こすことです。
 
衝動フェイズにおけるアクション①・・・政治レベルの争い

マップの右側に用意された世論トラックという十字型のグラフ上に、吹き出しの形をしたそれぞれ論点を表すマーカーを置いて状況を表します。
論点には、経済・メディア・治安・外交・貧困などの常設のテーマから、イベント等で臨時に発生する論点もあります*7。プレイヤーはカードに表記されているアクションポイント(カードにより1~5点)を使うことで、論点マーカーの位置を上下左右に移動させることができます。衝動フェイズの終了時に論点マーカーが自分の陣営の色が塗られたエリア内に存在するとその論点について自分の政党に有利に決着させたことになり、論点のテーマによって、各種の特典を得たり、民衆からの支持を得ることができます。 

例えば「貧困」という論点について議論した結果、自分の政党のエリアに持ち込むと、マップ上にある「貧困」マーカーを1枚取り除くか、議会で1議席得ることができます。政権政党の場合は前者、野党の場合は後者を選ぶのではないでしょうか。
「外交」の論点を獲得した場合は、「外交アクション」を実施するか、1勝利ポイントを得ることができます。なお、「外交アクション」は政権政党のみが実施できます。

 

衝動フェイズにおけるアクション②・・・街頭レベルの争い

主要都市での支持基盤の確保マップの左側はベルリンをはじめドイツの主要都市11か所が描かれています。
それぞれの都市には影響力を表す政党駒を置くボックスが2~5個用意され、各党がどれだけ影響を与えているかを表します(=支持されているかどうか)。

アクション種類により必要ポイントは異なるのですが、アクションカードに記載しているポイント(論点マーカーの移動に使うポイントと同じもの)を使い、アクションを発動させます。

実施できるアクションは政党毎に異なり、例えば、ストライキ・デモ・暴動・政変といった反政府的な行動も用意され、一部の政党はそれぞれが有していた準軍事組織の動員も可能になっています*8

政権側は反政府の準軍事組織に対抗するために、警察や軍隊を動員し、デモや暴動などへの対抗アクションを行うことになります。

 

ドイツ共産党のプレイヤーのプレイエイド。アクションポイントを使うアクション内容がまとめられている。発生させたアクションは基本、ダイス1個または2個によって成功チェックが行われる。
本作はこうしたエイドが充実しており、マップ上に記載されたガイダンスも含め、スムーズなプレイを助けてれて好印象。
余談だがドイツ共産党のカラーがピンクなのは、ローザ・ルクセンブルクの名前由来?

 

政治フェイズ

プレイヤーが手札すべてを使用してしまうと衝動フェイズは終了し、そのターンの活動内容の精算を行う政治フェイズが開始されます。政治フェイズではそのターンの活動内容が総括され、勝利ポイントの獲得、支持状況、経済状況、外交、各都市やドイツ国全体の状況が変動します。

 

勝敗の決定

ゲームの勝敗は勝利ポイントの獲得数によるのですが、勝利ポイントの獲得方法は政党によって異なります

例えば、共産党は最終的には共産革命を目指している一方、右派政党とは犬猿の仲なので、都市にある「評議会(ソビエト」の数、また右派政党が起こす「政権」マーカーがマップ上に存在しないということで得点します。

中央党は、保守政党として共産革命を防ぎつつ、社会の安定を目指すことから、マップ上に「社会不安」マーカーが2か所以下の状態になっていること、また「評議会(ソビエト」が存在しないことの2つの条件が満たされている場合、それぞれで得点できます。

 

いくつかの条件下ではサドンデスが発生します。サドンデスが発生する場合としては

  • インフレ、経済封鎖、社会の不安定化といったドイツ国全体に関係する「脅威」が一定レベルに達すると、無政府状態に陥り、全プレイヤーは敗者になります。その時点での勝利ポイントで勝敗を決します。
  • ドイツ共産党(左派)か、ドイツ国民人民党(右派)が単独過半数議席を確保すると、共和国を転覆したとして、その政党が勝利します。
  • 共産党が都市に合計4か所の都市に「評議会(ソビエト)」マーカーを設置した場合、または国民人民党が合計4か所の都市に「政権」マーカーを設置した場合、共和国を転覆したとして、その政党がサドンデス勝利します*9
  • ナチス党の影響度合いが一定レベルを超えると、その時点でサドンデスとなり、全プレイヤーは敗者になります。ナチスによって政権が奪取され、民主主義が敗北したということになります。

こうしたサドンデスは発生しやすく、特にドイツ国の「脅威」については、政権政党になったプレイヤーは特にゲームの初期段階、反政府的な行動をとる政党への対応にかまけるのではなく、「脅威」にも十分に注意する必要があるでしょう(政権政党としての責任とも言えます)。

(つづく)

 

 

 

 

 

 

*1:( )内の分類は筆者が勝手に行ったものなので正確な描写ではないかもしれません。

*2:ナチス党の影響度は専用のマーカーで管理します

*3:ルールブックではターンではなく、ラウンドと呼んでいます

*4:原文(impulse?)を直訳したのでしょうが、変なので意訳してもよかったのではないでしょうかね

*5:後に述べるドイツ国が抱える「脅威」のひとつとして、「少数与党」というマーカーが用意されています

*6:和訳では「時系列カード」となっています

*7:イベント等から発生する論点を含め23種類の論点があります

*8:この時代の反政府運動は激しく、反政府系の政党を中心に武装した運動員、つまり準軍事組織を保有していました。歴史的にはナチス党が抱えていた突撃隊が有名ですがゲームでは、左派政党であるドイツ共産党は「赤色戦線戦士同盟」、中道左派政党のドイツ社会民主党は「黒赤金国旗団」、右派政党「ドイツ国家人民党」が複数の組織を、準軍事組織として「動員」(アクションの一種)することができます。

*9:両方について、ベルリンが対象の場合はベルリン+2か所の任意の都市に配置すると条件を満たす