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ASL SK#4 PTOを対戦する(2)シナリオS67 「BESIEGED」

 シナリオS67 「BESIEGED」

アドバンスドスコードリーダー スターターキット#4の2戦目。相手を変えて、同じくSK#4の「シナリオS67  BESIEGED」です。

1944年3月北ビルマが舞台。

日本軍に包囲された(?)*1アメリカ軍部隊が、日本軍の警戒線を破り友軍部隊と連絡線をとるというシチュエーションで、アメリカ軍は一定ポイント数の部隊を盤外に脱出&連絡線となる山間の道路を最後まで確保すれば勝利、日本軍はそれを阻止するというシナリオです。

 

■ 前段の話

シナリオ説明を読んでいて最初、ビルマアメリカ軍がいたのか?と思ったのですが、中国軍と協同するために1000人弱の規模のアメリカ軍部隊が北ビルマに侵入し、活動をしていたようです。

それがこのシナリオに登場する第5307混成部隊、通称”Merrill's Marauders”(メリル挺身隊)です。この部隊については日本語の情報はほとんどなかったので、英文Wikiの記事を参照しています。

 

さすがのアメリカ軍も重装備は持ち込めなかったため軽歩兵装備のみの装備、また、山間の移動も駄馬などに頼ったようです。インパール作戦時の日本軍を笑うことはできないですね。いずれにせよ徹底した機械化と物量戦を得意とするアメリカ軍にしては珍しい状況といえるのではないでしょうか。

とはいえ、補給が定かではない敵奥地に進出して戦うという状況は冒険心あふれるアメリカ人が好みそうなシチュエーションではあります。

どうやって北ビルマに侵入したのかというルートはいまひとつよくわからかったです。同じくビルマのインド寄りの地域ではイギリス軍が、日本軍の防御の手が回っていない山間の町に対して空挺降下し、占拠、空中補給で補給線をつないでいくという、兵力も機動力も不足し制空権がない日本軍からすると、非常に歯がゆく、いやらしい作戦を実施していたので、アメリカ軍も同じように中緬国境から陸ないし空から浸透したってところでしょうか。

 

対する日本軍は久留米を本拠地とする第18師団。ビルマ系の戦記を読むときに外せない「国軍最強」をうたっていた「菊」兵団です。

なぜ「国軍最強」だったのかの種明かしはWIKIにありましたので、興味があればご参照ください。

シナリオに登場する歩兵第114連隊はその隷下の部隊で炭鉱夫あがりの屈強の兵士だったということです(筑豊や三池の炭鉱があるからなぁ)。今回のシナリオの日本軍歩兵分隊の一部がエリート分隊になっているのはこうした背景を踏まえたものかもしれません。

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これは北ビルマのミイトキーナの周辺図だけど本シナリオもこんなところが舞台と思われます
地図では見切れていますが地図の右端から少し東にいくと中緬国境です

 

■ プレイ

マップは1枚のマップのさらに半分にしたハーフサイズ。

ジャングルの面積が広くくねくねと湾曲した道路は、歩行者が歩くことができる程度の幅のものだったのだろうと思われます。この小道(道路)はいかにも山間部の道路らしく起伏のある地形で見通しもよくありません。

アメリカ軍はこの山間の小道の確保して、反対側の盤端から一定ポイントの部隊を脱出させ、かつこつゲーム終了時にこの小道に日本軍が隣接しない状態にしておく必要があります

 

当方は日本軍を担当、にしさんがアメリカ軍を担当です

 

■ 日本軍の構想

1個分隊あたりの火力が1.5倍のアメリカ軍と正面から撃ち合っても歩が悪いです。
しかも日本軍の部隊数は5分隊半、一方のアメリカ軍は9分隊もいます。よって日本軍はアメリカ軍が通り過ぎるまでジャングル内に潜み、アメリカ軍部隊をやり過ごした後で、道路に隣接するように進出してアメリカ軍の勝利条件を阻むことを目指します。(勝利条件にかこつけた姑息な手ですが)

この最後に実施する道路への接近を想定した”タッチダウン部隊”を含み日本軍中央部から左翼に広がるジャングル内に部隊を点在させます。ジャングルの中に潜んでいればアメリカ軍もなかなか接近できないであろう・・・と。

 

支援火器として50ミリ小型迫撃砲(重擲弾筒)1門とMMG1丁がありますが、こちらは日本軍右翼側にある開豁地の防備にあてます。

 

■ プレイ開始

ゲームがはじまるとアメリカ軍は予想に反して日本軍正面のジャングル内にずかずか侵入してきます。

ジャングル内は移動も不自由、LOS(視点)が通らないため隣接ヘックスに射撃するのがせいぜいです。またこのマップの大部分を覆う”深い”ジャングル”だとスタック数の制限もきつくなります。なのでてっきり道路に沿って進撃してくると想定していました。

 

一方で日本軍の右翼については、想定通り盤端にあるジャングルの切れ間にある開豁地(平地)を利用して、ハイスタックのアメリカ軍が急速歩で進撃してきます。支援火器チームが射撃の機会をうかがいます。

 

ここでまたもや想定ミス。

日本兵が強靭な精神力を持つというルールになっているという話は別記事に書きましたが、「射撃戦」のときはまさにこの精神力が生きるのですが、「白兵戦」においては相手を除去するかしないかの2つの結果しかないため、精神力云々はまったく関係がないことを実感しました。火力比によるサイの目勝負になります。

前述のとおりアメリカ軍分隊の火力は日本軍分隊の1.5倍ですのでもとよりアメリカ兵有利なのです。

アメリカ兵によりジャングル奥地に潜ませていた”タッチダウン部隊”が次々と捕捉され、運が悪いことに2個分隊連続で白兵戦により除去されます。(「感想戦」に書いたとおり、白兵戦のダイスへの日本兵修正を忘れていたという点はあります)。とたんにこの地域の戦力バランスが悪化。有効な反撃ができないまま、日本軍中央・左翼部隊は自らを犠牲にした遅滞戦術をとらざるを得なくなります。

 

逆に右翼ではサイの目が日本軍有利に転がります。

MMG保有の日本軍スタックがアメリカ軍の何度もの接近・近接攻撃さらには白兵戦を跳ね返します。(日本軍分隊がMMGを使った際のペナルティは気づいた時点から適用しました)

 

 

いろいろあって最終盤、

もともと部隊数が少ないシナリオですので、消耗戦の結果、わずかに残った日本歩兵1.5分隊が盤端近くまで逃げます。この時には日本軍の指揮官は2人とも除去済。

アメリカ軍は勝利条件に必要なポイント数分の分隊を脱出させたところで、部隊数が減り盤端の防御が弱くなります。最終ターン、その間隙をぬって、生き残った日本兵たちは道路に突進します。道路に隣接することによりアメリカ軍の勝利条件成就を阻み、ゲームセットとなりました。 

 

 

■ 感想戦

いろいろルールの適用漏れや取り違えが発生。

大きなところでは日本軍のMMG・HMG・ATRは操作班が操作する必要があり、普通の歩兵分隊が操作する場合は故障しやすくROFの発生確率も下がる、というルール。

日本軍指揮官による士気のボーナスルール、両方が関係しますが、遮蔽物ヘックスでの士気回復チェック時のボーナス修正なども漏らしてた(とても基本なんですが)。

白兵戦も格闘戦(H to H)で処理するところまでは対応していたのですが、これも日本軍ボーナスを未反映でした。プレイヤーターンにおける任意ユニットの自己回復あたりも怪しい・・・など。

 

両軍とも部隊数が少なく、戦闘を重ねるにつれて残った分隊数自体が少なくなり、最後は両方ともカツカツの中でのポイントの読み合いみたいになってしまいました。
また部隊を脱出させないといけないアメリカ軍側は有力部隊を脱出させてしまうととたんに盤上の戦力が弱くなり・・とぶっきらぼうな勝利条件があまりよい印象を受けなかったのも事実です。

日本軍側に残っていた分隊が最後のフェーズで連絡線の道路に突進し、アメリカ軍の勝利条件を阻んだっていうのも、テクニックの話であってぜんぜん気持ちの良い勝ち方ではないですね。

 

 

■ 後段の話

先に出したメリル挺身隊に関する英文WIKIだけではこのシナリオが描いている1944年3月の状況の記載はなかったので、いまひとつよくわかりませんでした。

 

後日談ではありますが、このメリル挺身隊と歩兵第114連隊との因縁はその後も続き、有名なミートキイナ(ミイトキーナと表記している場合もある)の戦いにつながります。

 

1944年5月、アメリカ・中国の連合軍は日本軍の飛行場がおかれたミートキイナを急襲・包囲します。攻撃側がメリル挺身隊+中国軍、防御側が歩兵第114連隊を中心とした守備隊です。

当初は善戦していた日本軍ですが、アメリカ軍の物量戦(このころには増強されていたようです)や兵力不足によりじり貧になっていきます。

 

このあたりでまたぞろ出てくるのが、日本陸軍の宿痾ともいうべき、参謀の専横専断、師団レベルと軍レベルの意見相違などなど。

かつかつの中で持久する守備隊に対して最後は死守命令が出されます。

死守命令を出したのは、辻正信。

またこいつか!

どこぞの国では死守命令を出すのは、総統閣下か同志だったりするわけですが、日本においては参謀殿が死守命令を出します。

 

8月、日本軍守備隊の司令官水上少将は自分の自決と引き換えに死守命令を破り部隊に包囲網からの脱出を命じます・・・。

まぁビルマ戦記を読んでいく際にいろいろ出てくる胸糞悪くなるエピソードのひとつといえるでしょう。

 

*1:表題が包囲なので包囲されているというシチュエーションなんだと思うのですが、前段・後段で書いているとおりそのあたりの史実情報がないため裏はとれてないです。ただアメリカ軍が包囲されているっていうことですよね?