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ASLSK シナリオS74 IRON FIST をプレイする(1)シナリオ訳出・背景等

先ごろ発売されたアドバンスドスコードリーダー スターターキット(Advanced Squad Leader Starter Kit)シリーズの拡張キット#2より、シナリオS74になります。
「隠蔽」配置が適用されるシナリオですので本来はソロプレイに適当ではないのですが、シナリオの設定が上海事変ということで興味があったので、試しプレイになります。

yuishika.hatenablog.com

 

なお今回はシナリオカードの訳出とシナリオ背景を紹介します。

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ASL SCENARIO S74 IRON FIST

中国、上海、1937年8月17日

上海でリトル東京として知られているその地域は、上海での戦闘の最初の週にすぐに中国軍に包囲され日本の飛び地のようになっていた。この地域には黄浦江に沿って日本海軍の水交社やドック地区が含まれていた。中国軍はこの飛び地を一掃する機会として捉え、この要塞化された地域に対し損害を顧みずに軍隊を無尽蔵に投入した。中国軍の動きに対して日本軍は巨大な圧力を感じ、副司令官の長谷川清は日本の最高司令部に増援の派遣を依頼した。中国はこの好機を逃さないようにドイツ軍事顧問団に支援を依頼した。顧問団は第87師団に新計画として「IRON FIST(鉄の拳)」作戦を考案したが、これは第1次世界大戦後期にドイツが用いた突撃歩兵を用いた浸透戦術、つまり特別に訓練された部隊が砲撃の背後に素早く追随する形で前進し、防御の隙間に素早く進入する、を用いたものであった。

勝利条件

中国軍はゲーム終了時にマップkのM1の建物を支配下に置くこと。

バランス調整

日本軍: 戦闘序列に92式重装甲車(Type 92B Combat Car)を1台追加する

中国軍: シナリオ特別ルール1の3番目の文章の内容を無効化する(kM1建物の+4TEM)

シナリオ特別ルール

  1. 「隠蔽(8.3)」は有効である。林と建物は隠蔽地形とする。マップk M1の建物のヘックスはすべて+4の地形修正値(TEM)を持つ。
  2. 日本軍の隠匿配置(8.1.8.5)は無効である
  3. 第1ターン以降、日本軍の帰還(recall)状態にないAFVは移動するためにはDR≦8をださなければならない。移動フェイズの開始時点において隣接しているAFVはそれぞれ-1のDRMを受ける。AFVがDRに失敗した場合、車輌は移動できず機動状態(Motion)にあった場合は直ちに停止する必要がある。
  4.  中国軍の5-3-7/2-2-7分隊のみが決死隊(8.5.2)として指定できる。また狂暴化状態にない場合は不意打ち(Ambush)チェックにおいて-1のdrmを受けることができる。
  5. カップの中に3個の釘付け(Pin)カウンター、2個のDM(士気阻喪)カウンター、また6個の釘付けでもDMでもないカウンターをいれる。第1ターン以降、中国軍は盤外配置(Offboard Setup)において、1個以上の分隊(MMC)を含む日本軍スタックそれぞれについて1個のカウンターを引く。釘付け(Pin)カウンターが引かれた場合、そのスタック上に置き、隠蔽カウンターを除去する。士気阻喪(DM)カウンターが引かれた場合、そのスタック内にいるすべての分隊(MMC)についてステップ減少(Step Reduction)状態にし、釘付け(Pin)カウンターを置き、隠蔽カウンターを除去する。他のカウンターが引かれた場合は、効果無しとする。いったんすべての釘付け(Pin)カウンター、士気阻喪(DM)カウンターが引かれるか、1個以上のMMCを含む全てのスタックについて引かれるた場合、止める。釘付け(Pin)カウンターが置かれたスタックに含まれるすべてのMMCはシナリオを釘付け状態から開始する。SMCの場合、この釘付けまたは士気阻喪カウンターが置かれたことによる影響を受けない。

顛末

砲撃の解除に伴い中国軍の突撃歩兵は前進し猫のように器用に部隊間の間隙をすり抜け、日本軍の部隊間の連絡と配置を混乱させた。だが日本軍は虎の子の装甲車を伝統的な海軍陸戦隊と組み合わせて投入した。中国軍は犠牲を払ったにも関わらず大突破は実現できないまま、日本軍の援軍が到着した。張志忠将軍とドイツ軍事顧問団は自分達の窓が閉ざされたことを悟った。

マップ

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中央の赤丸内の建物が勝利条件の建物になります。
中国軍はマップ上端より進入。日本軍は上側のマップのヘックス番号4から下側全体にかけて配置できます。
日本軍は8.5個分隊。マップの広さに比べると数は多くはないです(スターターキットのシナリオ全般に言えますが)。中国軍は、日本軍より火力が高いエリート分隊8個に、一般兵分隊12個です。
日本軍側に装甲車が2両、中国軍には爆薬がありますがそれ以外は通常の各種機関銃が支援火器になります。

 

シナリオの背景

1937年7月北京郊外盧溝橋にて発生した日中両国の衝突は政府や参謀本部の方針を違えて現地部隊主導で拡大していく中、同年8月に発生したのが第二次上海事変です。
第二次上海事変における軍事的な衝突は8月13日に始まっていますが、本シナリオはその直後8月17日を舞台にしています。

シナリオカード冒頭の状況説明に登場する長谷川清は当時現地に派遣されていた第三艦隊司令官で、各軍艦の陸戦隊と鎮守府から派遣された特別陸戦隊を束ねていた人物です。日本海軍陸戦隊4千人あまりに対して中国国民党軍が上海周辺に集めた軍勢は20万人とも言われています。またその精鋭部隊はドイツから派遣されていた軍事顧問団の指導を仰いでおり、その装備もドイツ式のものでした。この点は本シナリオの戦闘序列で中国軍エリート部隊の基本能力が日本軍のエリート部隊より火力において優れた数値にあらわれています。

長谷川艦隊司令官は状況を海軍軍令部(当時まだ大本営は組成されていませんでした。シナリオカードに登場する日本の最高司令部は海軍軍令部と読みました)に報告し、陸軍師団の動員に繋がりますが実際に陸軍部隊が現地に投入されるのは8月23日からになります。その際、また例によって逐次投入という悪弊を見せるのですがこれはまた別の話ですね。

 

シナリオについて

シナリオ特別ルールについて

今回ユニークな特別ルールが付けられています。特別ルール5です。
釘付けや士気阻喪などのカウンターからチットを作ってそれを持って日本軍のスタックに適用するというものです。中国軍が取った浸透戦術による日本軍の初期の動揺を表現するためのルールですが、チット引きによってかなり影響があるのと隠蔽もはがれることを考えると、初期配置時のスタックについて考慮する必要がありますね。

特別ルール3は日本軍の装甲車の機動に関する制限です。これが日本軍の装甲車の機械的信頼性の問題なのか、実際の運用上の制約等を反映した問題なのか、または特別ルール5と同様に中国軍の攻撃への反応に起因するのかはよくわからないです。いずれにせよ日本軍は装甲車を縦横無尽に機動させるというよりは、固定砲台のような使い方をせざるをえないのかもしれません。

日本軍に登場する92式重装甲車(Type92B)には車輌固有のルールがついています。

  • Type92BはBMGとCMGのどちらかのMGが先に射撃をした際、その攻撃とそのフェイズの残りの攻撃において、先に射撃を行ったMGが主砲と見なされる
  • 両方のMGが同じ射撃グループとして射撃を行う場合は、所有者はそのフェイズにおいてどちらの機関銃を主砲とみなすのかを宣言しておく必要がある。その宣言は行われなかった場合は、主砲はランダムに決められる。
  • Type92Bは両方の機関銃装備が使用不能にならない限り、主砲使用不能による帰還(Disabled MA Recall)(7.10)の対象にはならない
  • Type92BのBMGが対AFV戦闘において命中となった場合、AP To Kill Tableでは12.7ミリの欄を用いて判定する。

     ※ ここの欄は後で修正・補足します。

 

 

日中戦争全史 上巻

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