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ASL SK#4 PTOを試す(2) ケレン味満載の日本軍ルール

■ 久々に登場した日本軍モジュール

本作の目玉は日本軍とアメリ海兵隊が登場すること。

日本軍ユニットとアメリ海兵隊ユニットはASL*1のコアモジュール*2のひとつである「Rising Sun」*3にて扱われているのですが、長らく在庫切れ状態で入手は著しく困難でした。

ASLとASL SK(スターターキット)のユニットやマーカーやマップは共通で、適用されるルールが異なるだけです。このため、日本軍ユニットを今回のSK#4のモジュールから入手できることになり、ASLのシナリオに登場させて使うことができるようになるのです。

ちょうど折から上映されている戦車映画では日本戦車が活躍しているようですし、また「Rising Sun」の再販が見えない以上、ASLファンとしては買う以外の選択肢はないといってよいのではないでしょうか。

 

■ 日本軍の特徴

ASLの魅力として戦場で発生する様々な事象を細かにルール化している点がありますが、ゲームとしての演出としてかなりケレン味のある演出・味付けをしている部分があります。各国軍隊や国民性といった特有の事情をルール化した国別の特別ルールもそのひとつです。

 

緑色ユニットがアメリカ軍、黄色ユニットは日本軍です。
兵士の絵が描かれている分隊ユニットの大きく3つ並んだ数字は、左から”火力”ー”射程”ー”士気”になります。
例えばアメリカ軍ユニットの左上端にあるユニットが7-6-8なのに対し、日本軍側の左上端のユニットは4-4-8と、火力においても射程においてもアメリカ軍ユニットが日本軍ユニットの能力を大きく凌駕しているのがわかると思います。

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今回の日本軍ですが、かなり変わった軍隊になっています。

 

(1)「混乱」が起こりにくい

(2) 白兵戦が強く、凄惨なものになる

(3) バンザイ突撃(Banzai Charge)

(4) 指揮官の精神支配(?)が強いです

(5) やはり精神主義なのか?装備は劣る?

 

(1)「混乱」が起こりにくい

最大の特徴と言っていいかもしれません。

通常の国の軍隊は射撃を受けてモラルチェックに失敗すると「混乱」ということになり、戦闘継続ができなくなり近場の遮蔽物まで自動的に退却してしまいます。これはイタリア軍レベルの兵から、アメリカ軍やドイツ軍の誇る武装親衛隊でも同様です。

ところが日本軍の場合、この「混乱」が起こりにくい、他国とは全くことなる仕掛けになっています。
モラルチェックと同じようなダイスを振るのですが、チェックに失敗しても「混乱」は発生せず、代わりに戦力を減らしてその場で戦闘を継続します。退却はしません。

 

見方を変えると他国兵の場合は、いったん逃げたとしても退却した兵士を回復することができれば元の完全戦力になって復帰することが可能なのですが、日本兵の場合は戦力減少していますので、完全戦力に戻ることはないことになります。

 日本兵は逃げずに戦い続けるのです。まさに退却を許さない「死守」という言葉がぴったりの軍隊として描かれています。
  

(2)白兵戦が強く、凄惨なものになる

白兵戦でも日本兵はいろいろな特典&性格が加えられています

日本兵は不意打ち(不意打ちチェックでのダイス修正)を起こしやすくなり、白兵戦の戦闘結果表として特別なものを使うことで相手を殲滅しやすくなり(日本軍側も損害を受ける確率が高くなります)、さらには白兵戦時には有利になるダイス修正が入る・・という内容になっています。まさに肉を切らせて骨を断つを地で行くような印象です。

  

(3) バンザイ突撃

バンザイ突撃も当然ルール化されています。
通常のシミュレーションゲームの移動と同様にASLにおいても通常の移動はスタック単位(またはユニット単位)に行います。

いったんバンザイ突撃が宣言されると、隣接した複数ヘックスにいる日本兵ユニットが目標とした敵に向かってそれぞれ同時に移動を開始します。(あわせて移動力の増加や士気向上、モラルチェックの免除、近接戦闘などバンザイ突撃を再現するためのルールが適用されます)。

複数ヘックスに存在する複数のスタックによる同時移動&攻撃なんて、「ハイキュー!」でいうところの、「シンクロ攻撃」とでもいうのでしょうか。

なおバンザイ突撃に類似したルールとしてはソ連軍や中国軍が行うことができる「人海戦術」(Human Wave)があります。

 

  

(4) 指揮官の精神支配(?)が強いです

通常の国の兵士の場合、「混乱」した兵士を回復すれば完全戦力に戻ることができると書きましたが、実は「混乱」した兵士を回復するのは少々大変だったりします。特に「混乱」した直後は「士気動揺」状態(DM状態)として士気が大幅に落ちているため、なかなか回復することができないのです。

ところが日本軍指揮官とスタックしている日本兵はこの「士気動揺」状態が起こらないというルールになっています。(1)で書いたようにそもそも日本兵は「混乱」状態自体が起こりにくくなっているのに加えて、「混乱」したとしても直後の士気動揺は発生しません。

さらには日本軍指揮官とスタックしている日本兵の士気には「+1」ボーナスまでつくのです。日本兵の精神力は世界一といっていいかもしれません。

ただ逆にこの”精神支配力”が強い指揮官自体がモラルチェックに失敗した場合、部下の兵士達が動揺し、能力ダウンを発生される可能性がある、というデメリットもあります。

 日本軍指揮官と同じような特典(+デメリット)を持っているユニットとしては他国ではソ連軍の政治局員(コミッサール)ユニットがあります。
デザイナーからすると日本軍の下士官・士官クラスというのは悪名高い共産党政治局員のような狂信性を帯びていると見えているのかもしれませんね。

なおソ連軍には(1)に書いたような”「混乱」が起こりにくい”という特性はありませんので、(4)の部分のみが適用されます。

 

 

(5) やはり精神主義なのか?装備は劣る?

 ユニット写真のところに書いたとおり他国の同クラスの部隊に比べると日本兵ユニットは火力も射程も劣ります。写真にあるアメリカ軍海兵隊の一線部隊と比べた日には歴然とした性能差があります。*4(まぁこの海兵隊ユニット、ASLに登場した各国兵ユニットの中では最強クラスなのですが)

また他国兵の場合、通常の歩兵分隊が中機関銃以上の歩兵支援兵器をなんのペナルティを伴わず使用できるのですが、日本軍の場合、中機関銃以上のMMG*5・HMG*6ATR*7を通常の歩兵分隊が使うと性能劣化のペナルティがつきます。え?日本兵は機械音痴なのか?

と、いう謎ルールです。でも、小型迫撃砲はペナルティなしに使うことができます。なんだろう・・装備率とかそういうのが関係しているのか?

 

(記事最後に訂正文を追加しました)

 

 

ASL SKではこんなところなのですが、ASL本家では他にもいろいろ日本軍特別ルールがあります。 

「ハラキリ」(捕虜になりにくい)、捕虜の粛清を行う「無慈悲」。
さらには「対戦車ヒーロー」、「DCヒーロー」(爆弾勇士といったところでしょうか)あたりになると涙なしには・・・

 

日本軍装備はまた気が向いたら・・
ASLらしくけっこうマイナーというかかなり細かいところまで抑えてきていますよ

 

 

 

(訂正・追加します)

日本軍の主力重機関銃であった92式重機関銃は構造が複雑で完動状態を維持するためには頻繁なメンテナンスが必要であったということ。装備は大隊に配置された機関銃中隊に配備されていた。配備数だけをみれば歩兵小隊1個あたり機関銃1丁(機関銃1個小隊が操作)割り当てられていたということなので、他国の編成にもひけをとらないように見えます。
が、やはりメンテナンスが複雑で・・・というところがあって、MMG以上の操作は操作班が行い、通常の歩兵分隊が行う場合はペナルティということだったのだと理解しました。

”謎ルール”とか書いてすみません。

 

なお小型迫撃砲にはペナルティがない点についても解消。

こちらは50ミリの89式重擲弾筒あたりを想定したユニットだと思われます。
日本軍の歩兵小隊は4個分隊からなり、1個は軽機関銃装備の機関銃分隊、1個はこの重擲弾筒3門を装備した擲弾筒分隊、残りは小銃装備だったということ。
このような編成だからこそ、SKの日本軍の戦闘序列に頻繁にこの50ミリ迫撃砲が登場し、かつそれらを通常の歩兵分隊が扱うことができるというのはよく理解できます。
一般の兵士からすると大隊装備であった重機関銃よりも自分のところの小隊で装備している重擲弾筒のほうがよほど馴染み深い装備だったといったところでしょうか。

(以上、追加終わり)

 

 

*1:アドバンスドスコードリーダー

*2:ASLシリーズのパッケージで、国別にプレイに必要なマップ、ユニット、シナリオなどが提供される。毎作プレオーダー数を踏まえた一定ロッドしか作ってないようでいったん在庫切れや絶版になると5~10年越しに再販を待つ必要がある模様。コアモジュール以外のパッケージとしては歴史的な戦いを扱ったヒストリカルモジュールや定期的に刊行されているアクションパックなどがあります

*3:太平洋戦線を扱うコアモジュール。現在のシリーズ構成の中では日本軍、中国軍、アメリ海兵隊が登場する唯一の太平洋戦争を扱ったパッケージになっている。発売元のMMP社のサイトを見るとこれまた「Temporary Out of Stock」状態で現状、オークションなどで入手するしかない

*4:厳密に言うとドイツ・イギリス・ソ連などのライフル装備分隊とは火力の差はありません。ただ射程はドイツ・イギリスの分隊より短いです。そういう意味ではソ連兵に近いですね。蛇足ですがアメリカ兵はセミオートマチックの自動小銃を装備しているということで強力な火力と射程をあわせもっているということのようです

*5:中機関銃

*6:重機関銃。とここまで書いて中機関銃と重機関銃の違いはなんだ?は別の機会に

*7:対戦車ライフル