Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「BATTLEMIST」(Fantasy Fight Games)を対戦する

 

最近ユーロゲームづいているのですが、意図したものではありません。マルチプレイゲームとなるとユーロゲーム要素が多い作品が自ずと増えたといったところでしょうか。

今回プレイした作品は1998年に発売された「BATTLEMIST」(Fantasy Fight Games)というファンタジー世界を舞台にしたマルチプレイヤーズゲームです。

 

 

善悪中立の各エレメントをもった複数の種族が生息するファンタジー世界。プレイヤーは魔法を使うことができる種族の長となります(たぶん)。軍隊を集め、領土を広げ、生産力を高めます。町を興し、都市を発展させ、国力を増進させます。兵士を雇ったり町や都市を興したりするには資源が必要です。兵士や町・都市には維持コストも必要となります。六角形のタイルを組み合わせることにより構成されるマップには、平地・森林・山岳地帯があるのですが、地勢によって算出する資源が異なります。各兵種のバランスがとれた軍隊を整備するにはバランス良く資源を獲得できなければなりません。

国力増進・領土拡張の動きとは独立して、英雄ユニットを使ってクエストをこなしていきながら、モンスター討伐やアーティファクトを探索するというプレイが平行して実施されます。


プレイヤーが争うのは、自分の魔法力を表す「星」を獲得していくこと。
「星」を獲得するには、

  • 英雄キャラが行う「クエスト」の報酬として入手する
  • 資源を貯めて購入する
  • 他勢力を征服することで他勢力が集めた「星」を奪う。

といった方法があり、5個の「星」を集めたプレイヤーが勝者となります。



冒頭のマップ作成が最重要なプロセスだった

マップは六角形の大きなタイルをつなげて作っていきます。最初に各プレイヤーにランダムに複数枚の地形タイルと、自種族の本拠地を表すタイルが配られ、初期配置としてテーブル上に配置された3枚のタイルにつながるようにタイルを置いていきます。

 

このプロセスできちんと考えた配置をしていかないとプレイ内容に大きな影響を与えます。

タイルには、平地・森林・山岳・荒地があるのですが出現頻度が順に小さくなり、またそこから得られる資源の種類が異なります。順に食料・木材・鉄が得られる資源となり、荒地は不毛の地となります。各資源は兵の募集と維持、町や都市の建設と維持に必要となります。出現頻度が低い「山岳」から獲得できる「鉄」が資源としては最も価値があるものになります。一方「鉄」は町や都市の建設と維持、騎兵の雇用と維持に必要となります。

 

タイルの配置にはいくつかのルールがあるのですが、中でも各タイルの辺それぞれにつけられた4色いずれかのマーキングに合う辺にしかタイルを配置することできないというルールが最も影響が大きいものになります。好き勝手に並べることができないです。

 

本拠地が守りやすい場所にあること、それぞれの種類の地形にまんべんなく近い場所にあること、可能であれば他プレイヤーの本拠地から遠い後背地を抱えていると理想的です。
タイルを順番に配置する関係から、どのタイミングで本拠地を決めるのか、仮に良い地形を創出しても他プレイヤーの本拠地が先に配置されてしまうと元も子もありませんから。

 

プレイを開始してはっきりわかるのですが、マップを作り、本拠地を定めるという一連の過程はゲームの勝敗に大きく関係します。

 

写真では紺色に見えるタイルが「山岳」、濃い緑が「森林」、通常の緑は「平地」。
右奥の赤枠タイルがドワーフ族の本拠地でした。

 

白熱する戦闘ルール

兵士には歩兵・弓兵・騎兵があります。兵の雇用と維持にはそれぞれ必要となる資源があるのですが、歩兵<弓兵<騎兵の順に必要コストが増大します。特に騎兵の雇用と維持には産出量が少ない「鉄」が必要となります。

各タイルに配置できる戦力は3つの兵種合計で10戦力。1回の戦闘に参加できる戦力は最大 歩兵3、弓兵2、騎兵2となります。

戦闘ルールはそれなりに凝っていて、まず弓兵の射撃、騎兵による戦闘、歩兵による戦闘をそれぞれ実施し1回の戦闘ラウンドになります。弓兵や騎兵がいない歩兵だけの部隊の場合、弓兵射撃や騎兵戦闘に対しては一方的に損害を受けることになります。逆に、弓兵だけ・騎兵だけという部隊は許されず、かならず歩兵が部隊に含まれる必要があります。と、効率的に戦闘を進めるには3兵科バランスよく配置された諸兵科連合タイプの部隊が有利となっています。

3兵種の威力は6つの種族によってそれぞれ異なります。例えば、エルフ族は弓兵射撃が得意(相手ユニットを敗走させたり除去したりする確率が高い)です。
1回戦闘がはじまると途中の退却はなく、どちらかが全滅するまで続けます。



話が前後しますが、エルフ、ドワーフ、騎士(人間)、オーク、などなどと3つのエレメントに属する6つの種族が登場します。エレメント同士の対立やエレメントが同じであれば友好関係にあるといったルールもないため、エレメント自体の効果はあまりありません。6つの種族はそれぞれ特徴・特殊能力・兵種毎の強さなど細かく設定されています。

 

魔法とモンスター

魔法は各プレイヤーの「星」を使うことにより発動できます。特定の資源を獲得する、戦闘時に効果など複数のものが用意されています。使った「星」は次のターンに復活するため、毎ターン自分が持っている「星」分の魔法を使うのが効率的と言えるでしょう。

 

町と都市の建設

タイル上に町や都市が建設されるとその土地から得られる資源量は倍になります。町や都市の建設、さらに維持にはコストが生じます。町からさらに建設コストを支払うと都市になるのですが、町と都市とではその土地での防御戦闘が起きたときの防御効果が異なります。また森に都市を建設できるのはエルフ族のみ、同様に山に都市を建設できるのはドワーフ族のみになります。

 

英雄とクエス

ここまで書いたマップ上の支配を巡るシステムの他、英雄とクエストがルールとして組み込まれています。英雄はコストを払うことで配置できるのですが、別途用意されたクエストカードの指示に従い、マップ上を自由に(その土地がどの勢力の支配下におかれているか気にすることなく)移動していく、一種の”おつかい”ゲームになっています。クエストカードによっては行き先でモンスター討伐を行うことになり、また運が良ければ「星」を獲得することができます。

あとにも書いていますが、この英雄とクエストのシステムが、タイルを巡る土地の争奪のシステムと遊離していているように感じました。



プレイしてみた

担当はランダムにカードを引き、ドワーフ族に決定。ドワーフ族の特殊能力としては、「山岳」の地形に都市を建設できること。他の種族は「山岳」のタイルにはいると即移動終了なのですが、ドワーフは踏破できます。いずれも「山岳」タイルの出現頻度が低いだけに機会が少ないかもしれません。

兵の強さも種族によって異なるのですが、ドワーフは普通でしょうか(例えば、エルフ族は弓兵が他種族に比べて強いなど特色がある)。

「星」の獲得手段としては資源を貯めて購入することができる(ただし購入価額は保有する「星」の数によりコストが増加する)ことを考えると、一定の土地を確保できれば、あまり他勢力と争わずにいたほうがよいと判断しました。

隣接したエルフ族と緩く友好関係を結びつつ、後背地を含めエリアをしっかり確保します。平地が多いため「食料」の調達は良いのですが、「木材」と「鉄」はそれぞれ1エリアしかないため多くはないです。

兵士ユニットとは別に「英雄」ユニットも雇用します。「英雄」は兵士たちとは全く別に、クエストカードとして与えられる情報に沿って、全土を探索するのです。「英雄」は敵プレイヤーがいるエリアでも問題なく入ったり通過したりできます。

エルフ族がオーク族、人間族が悪魔族と全面的な戦争にはいる中、国力の増強(蓄財)に励みます。オーク族は種族の特殊能力により荒地より兵士を生み出すことができるのですが、本拠地近くに「山岳」がなかったことから、「鉄」の確保量が最低限(本拠地からの確保と、魔法を使った資源採取)になったこと、隣国エルフ族との戦闘発生エリアがエルフ族が得意とする「森」地形だったことなどから、エルフ族に

 

終了時の状況。
青色ユニットは人類(騎士)、赤色がドワーフ族、黄色がエルフ族。


感想戦

コンポーネントは古いです。マーカーやユニットはもっとわかりやすく、使い勝手よくすることができそうです。各種族の兵士マーカーは兵種毎にあるのですが、この区別がつきづらい。

自勢力の生産力・維持コストなども毎回計算するのは面倒なので(特に後半、兵士がかなりの数になり、マップ上のあちこちに分散されて配置されるようになった時)、それらを表すプレイヤーカードのようなものがあったほうがよいでしょう。

 

一度形勢が傾き始めると大逆転は難しい?

地形・地勢により自分の本拠地の近くに他プレイヤーから干渉を受けにくい後背地を大きく確保できていて(+バランス良く資源が確保できていて)、序盤にそれらの土地を領土とすることにより、経済は安定し、多くの軍勢を雇うことができます。いずれかのプレイヤーがそこまでいくと、なかなか他勢力が大勢を挽回することは難しいシステムに感じました。

戦闘システムも一度の戦闘に参加させることができるユニット数に上限があるため、一見バランスが取れているように見えても、どちらかが全滅するまで戦闘が続くというルールにより、結局予備部隊を多く抱えたほうが有理です(ひとつのエリアのスタック制限が最大10戦力という上限はありますが)。

兵士の雇用にそれなりにコストを要するため、一度戦闘に敗北すると再建するのにそれなりの時間とコストを要するのです。いずれかの勢力が頭抜けた状態にならないようにお互いに牽制して出る杭は打たれる方式でいくことになるでしょう。

 

最初のマップ作成と自勢力の本拠地の場所取りは非常に重要になります。プレイ開始前から息が抜けないゲームといっていいかもしれません。

 

英雄とクエストは、「星」を獲得する手段のひとつではありますが、領土争いとは隔離された状況で行われれうことから、ゲームから遊離しているように感じました。

(了)

「エルドリッチホラー(ELDRITCH HORROR)」(アークライトゲームズ)をプレイする【少し改訂】

クトゥルー神話をテーマに、1920年代の世界を舞台にした協力ゲーム「エルドリッチホラー」(アークライトゲームズ)をプレイしました。
ゲームマスターのいないTRPGといったゲームで、緻密に構成されたキャラ・シナリオ・イベント・魔法や各種アイテムなどが破綻なく組み込まれている点は感心しました。
「おつかい」ゲームになりがちなシチュエーションですが、重層的に組み上げられた世界設定やシチュエーション、1920年代の雰囲気もよく、「おつかい」感、やらされ感も薄かった点もよかったです。

クトゥルーはともかくユーロゲームについては門外漢のためシステムについて申し上げるところはありませんが、十分に楽しめました。

 

 

プレイヤーは操作するキャラをひとり選びます。今回ランダムに選んだのは「ダイアナ・スタンリー」さん。カードを見ると贖い(あがない)のカルティスト(カルト信者)ということらしいです。知識があるので詠唱なんか強いです。それでいて筋力もそこそこあったりします。また今回使いまくった能力が、「カルト信者がいるエリアについて、カルト信者を操ってモンスターを倒せる」だそうです。

 

 

なおキャラは基本ゲームで12人、拡張モジュールを追加すると+8人となります。今回は強キャラを引いたようです。

 

(補足訂正 2023/01/09)基本セットの他、多数発売されているエキスパンションセットをいれると操作できる登場キャラは50人を超えるそうです。

 

1920年代、移動は鉄道と船便がメインです。空間移動の能力を得ると世界中どこにでも行くことができるようになったりします。
お船旅の場合、航海途中に襲われることがあるため、海上で移動を終わらせることはできるだけ避けたほうがよいそうです。

各プレイヤーが操作するキャラを決めると、「エイシェントワン」と呼ばれる今回のラスボスを決めます。ラスボスによってシナリオが異なる訳です。今回エイシェントワンとして、アザトースが選ばれました。


世界のどこかでゲートが開くと、そこからモンスターが湧き出てきます。プレイヤーは旅を続けながらモンスターを倒し、ゲートを閉じていく必要があります。最終的には、「エイシェントワン」を封印するための条件を充足させていく必要があります。
ただ世界は刻々と破滅に向けて進んでいます。破滅を迎える前に世界を救う必要があるのです。

手順は次の3つからなります。

  • アクションフェイズ・・・移動・休息・アイテム獲得などのアクションを実施
  • 遭遇フェイズ・・・モンスターと戦う、遭遇カードを解決
  • 神話フェイズ・・・イベントの実施

それぞれのフェイズの場面によって使うカードが細かく設定されていますので、必要に応じて処理が行われます。

 

暗くてよくわかりませんが、一番手前におかれたユニットスタンドがダイアナさんです。その右上に見えるのが、クトゥルフといえば切っても切り離せないアーカムです。ダイアナさんは、ローマに開いたゲートを閉じに行く前に、アーカムに立ち寄り、有用な詠唱のひとつでも獲得しようと考えます。

 

ダイアナさんは、ローマでカルト信者を抱えたモンスターを退治した後、ロンドンを経て東京に移動しています。今回のプレイではなかったのですが、東京では海軍陸戦隊とか陸軍の軍人などが登場することもあるようです。
その後もカルト信者を抱えたモンスターがゲートから現れると、飛んでいっては退治していきます。

各地でキャラが活動をする中、破滅トラックとされるタイムリミットが迫っていきます。ひとつゲートを閉じても、新たなゲートが次々と開いていきます。

 

今回は手練の他プレイヤーの活躍により世界中のゲートは閉じられ、またアザトースも封印できたのでした。

 

感想

クトゥルー神話の世界観をもとに緻密に組み上げられたシステムに、キャラ・シナリオ、膨大な種類のカード類から破綻なく組み上げられたストーリーを楽しむことができました。「おつかい」ゲームに陥ることなく、それでいて達成感のあるゲームとなっていて感心しました(やり込めばそのあたりの底も見えてしまうのかもしれませんが)。

積みゲーがなければこの世界をやりこんで楽しんでもいいな、という印象です。もっともプレイにあたっては人数を集める必要がある点は若干ハードル高いかな。

(了)

 

 

「NEW WORLD」(AH)を対戦する

15世紀から18世紀の新大陸発見と開拓の時代を扱ったアバロンヒル社製「NEW WORLD」を対戦しました。
こんなゲーム知らないなとBGGを確認すると1990年発表の作品でした。

 

 

 

ゲームの紹介

 

一見どこの地図か?という雰囲気ですが、北米大陸を北側から見た図になります。
今回は3人プレイだったため、使うのは北米大陸と中米までで、南米大陸は対象外となります。
六角形の大きなヘックスが配置されていますが、これがひとつのエリアを表します。
この時点でマップ上に配置されているのは、原住民のユニットになります(弓矢のイラストが記載されています)。

エリアの枠が黄色や茶色などがありますが、これは後に紹介する住民の生存チェックに用いられるリスク度になり、緑色→黄緑→黄色→茶色というように生存リスクが高くなっていきます(損害が出やすくなる)。

一部のエリアには、肥沃な土地(植民人口によるポイントが高い)、金山、また現地の文明(中米のマヤ文明)が存在するエリアがあります。

 

ブラッディな展開

プレイヤーは最大6人。イギリス、フランス、オランダ、スペイン、ポルトガルといった新大陸進出を図った国々が登場します。国による能力や地力の差はありません。他の新大陸開拓系ゲームのようにキャラが登場する訳ではないです。

船を仕立て艦隊を構成し、さらに兵士を雇います。船の建造、船の維持(2ターン目以降)、兵士の募集には費用を要します。船には行き便には兵士と開拓民(開拓民のユニット数は固定数かダイスの目によって決まる)を搭乗させ、帰り便には金を積んで帰還することになりますが、行きも帰りもそれぞれ遭難チェックが行われます。

兵士にしろ開拓民にしろユニットは派手になくなっていくので予備も含めて考えたほうがよさそうです。

各ターンはおおよそ次のような手順で進みます。

  1. 生産・雇用
  2. どこに行くのかをプロットする
  3. 行き便の船の遭難チェック
  4. 陸上移動
  5. 戦闘(VS原住民、VS他プレイヤー)
  6. 原住民叛乱チェック
  7. 生存チェック
  8. 帰り便の船の遭難チェック
  9. 精算(資金の獲得等)

 

勝利条件は3人ゲームの場合は、いずれかのプレイヤーが5エリアを植民状態にすることになります。植民状態とは、エリアにおいて開拓民ユニットが4ユニット以上存在し、敵対勢力が存在しない場合を指します。

3人ゲームの場合のマップ内にあるエリアは合計13しかありませんので、中立エリアがなくなるかなくならないうちに、熾烈な争いが始まることは容易に想像できます。

 

プロットシート。1度の航海で艦隊は3箇所に寄港することができる。それぞれの寄港先と乗降する兵士や開拓民のユニット数を記録する。

 

遭難チェック

船は行き先を決めるとその海域毎に定められた数の個数の6面ダイスを振り、「1」が出た数の回数分の「損害チェック」を行います。1回の損害チェックでは最大2隻の船を失うことがあり、船を失わないまでも乗客(兵士・開拓民)ユニットが除去されることもあります。

海域毎に定められたダイスの数は、欧州から近い、北米東岸であれば3個、カリブ海沿岸、ハドソン湾経由であれば4個と穏やかなのですが、南米(今回のプレイでは使わない)や、北米の西海岸まで行こうとするとチェックするダイスの数が、北米西海岸では11個と増えていきます。

遭難チェックは行き便だけではなく、帰りの便にも適用されます。特に帰りの便は金を載せている場合があるため、損害は甚大です。

 

船は最大6隻(12隻)運用可能。安全圏と思われた北大西洋航路でも4隻中、3隻沈むなど派手に沈むこともある。

 

戦闘

戦闘はVS原住民、VS他プレイヤー勢力とがありますが、基本は同一です。

攻撃側は兵士ユニットがいる限りダイスを振ります。奇数が出れば攻撃側のユニット1個除去、偶数がでれば防御側ユニット1個を除去、さらに6の場合は防御側ユニット2個が除去されるというシンプルなものです。生き残り続けている限り何度でも攻撃を行うことができます。
奇数か偶数かで戦闘結果が決まるというシステムは初めてですが、意外とどちらかが連続して出るなど目が傾くことがあり、圧倒的に有利と思われた戦闘があっとういう間に逆転されることも珍しくありません。

 

原住民叛乱チェック

原住民ユニットが残っているエリアで兵士ユニットが少なくなると叛乱が起こり、兵士ユニットや開拓民ユニットが除去されることがあります。

 

生存チェック

戦闘や叛乱を切り抜けても毎ターン、各エリアで生存チェックを行い、一定の兵士や開拓民ユニットが除去されることがあります。

エリアによって生存のリスクは異なり、峻険な地形や猖獗の地はリスクが高く一定の損害が発生しえます。

そのエリアを植民地化するには常に開拓民ユニット最低4個を保有し続けなければならないのですが、生存チェックの結果開拓民ユニットの数が4個を割り込んだ場合、その権利を失います(植民地化していることによるポイント獲得ができなくなる)。

 

金山と金

金は金山から採れるのですが、金を採るには金山を発見する必要があります。金山を探すのは「山師」、さらに金を採掘にするには「鉱夫」が必要です。さらに採掘した金は母国に持ち帰ってはじめて資金にすることができるのですが、このためには船で持ち帰る、船がつける海岸までは陸上を移動させる必要があります。

北米西海岸沿いのエリアには金山が少なくなくあるのですが、船で持ち帰ろうとすると西海岸まで船をもっていかなければならず、遭難リスクが高まります。一方で陸路を東海岸まで移動させる方法もあるのですが、これは今度は他プレイヤーの奪取される懸念があるなど、いずれもリスクへの対処が必要となっています。

なお金山は一度開山されても、毎ターン閉山チェックが行われ閉山してしまうこともあります。

 

人がバタバタと倒れていく・・

ここまで説明したとおり随所でユニットが除去される可能性があります。遭難で船ごと沈み、原住民との戦闘で大損害をくらう懸念、何よりもそのエリアが平穏になったとしても生存チェックで失う・・と二重三重に死の危険が設定されているのです。このため、絶えず母国から人を投入し続けなければならない、ということになってしまいます。
こうした様相が新大陸開拓の本質をどこまで突いているのかはわかりませんが、大局的にはこういうことだったのかな、という印象もありますね。

 

 

今回のプレイの最終局面。

 

 

感想戦

正しいことがもとめられる最近の風潮の中ではなかなか再販などは難しいだろうな、という印象です。巨大ヘックスのためプレイ前は大味な展開を想像したものの、この大きさがゆえに他プレイヤーとの競合が起きやすく、またプレイ時間の短縮化にも寄与しているということなのでしょう。ただやはりゲームとしてのパッケージングは古臭い印象を受けたのも確か。
今回は赤色プレイヤーが5つのエリアのうち4つを取ったことにより終了としています。手練のプレイヤー間であれば、初手の段階から白熱しそうです。

(了)

 

 

 

 

「FLASHPOINT SOUTH CHINA SEA」(GMT)を対戦する

ウクライナ戦争の陰に隠れてここのところ目立たないのですが、中国によって現在進行中の南シナ海への海洋進出、その周辺諸国への影響力を巡る米中の確執を扱った「FLASHPOINT SOUTH CHINA SEA」(GMT)を対戦しました。

カードドリブンのわかりやすい構成で1時間程度と手軽にプレイでき、ユーロゲーム系プレイヤーにも受け入れやすいと思われる、好ゲームにしあがっていました。

 

 

 

 

南シナ海を描いたマップには、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイインドネシアの5カ国が配置されています。各国については、青と赤で描かれたアメリカと中国それぞれについて経済的影響力と外交的影響力の2つのパタメーターが描かれています。
国とは別に係争地として北から「スカボロー礁(Scarborough shoal)」「西沙諸島(Paracel Islands)」「南沙諸島(Splatly Islands)」の競合エリアが海上に配置されています。これらの海上の係争地に対しては、中国は「埋め立て(CP)」、対するアメリカは「航海の自由作戦(FONOP:Freedom of Navigation OPeration)」がパラメータとして表示されています。

 

マップ上部には、両国の緊張レベルが穏当な状態から危機的状況まで4段階で表示されています。「危機的状況」からさらにエスカレーションした状態(戦争状態)はありません。戦争状態を扱うことはこのゲームの主題ではないということでしょう。緊張度が「高」から「危機的状況」になるとさらにエスカレーションするような強硬な施策を取れないということになります。

 

航行の自由作戦

 

全3ターン。

各ターンの最初にプレイヤーには6枚のカードが配布されます。

 


各カードを使うことにより、アクションポイントを使うか、イベントを発動させる等のアクションを起こすことができます。

アクションポイントは基本、キューブの操作を行います。各国または競合エリアに配置するか、アメリカ・中国の中にある「政治工作(Political Warfare)」のポイント追加していきます。

イベントは発動条件があることが多いのですが、実際発生している様々な事件・現象になぞらえた様々なものが用意され、中には緊張レベルが悪化するイベントも少なくありません。

「中国漁船をインドネシア領海で爆破」
海上自衛隊が、合衆国軍艦を護衛する」
「中国、ユーラシア交易のため「一帯一路」構想を策定」
「中国の小切手外交」
・・・

故安倍首相もイベントカード(関係国首脳が登場するカードがあり、そこにはプーチン大統領や、台湾の蔡英文総統、北朝鮮金正恩などのカードもあります。)として登場し、両国の緊張状態を好きな位置に移動させることができます(緊張を高めることもできるし、融和させることも可能)。

 

中国による「埋め立て」、アメリカによる「航海の自由作戦」は緊張度を悪化させます。また一部の強硬なイベントについても緊張度の悪化が伴います。緊張度が「高」「危機的状況」で発動できないイベントがあるため、中国としては緊張度を抑えるように動きつつ、着実に後に残る「埋め立て」を進めていく必要があります。*1緊張度のコントロールに使われるのが前出の各国首脳カードということなのでしょう。アメリカは逆に首脳カードも含め緊張度を高めにコントロールしたほうが中国の動きを抑えることにつながるように感じました。安倍首相が発言することにより、中国の海洋進出の動きに対する牽制になっていた、といった状況なのでしょう。

 

終盤、中国は海上の競合エリアの埋め立てを進めます。一度実施すると翌ターンまで効果が残る「埋め立て」に対して、アメリカは一過性に終わってしまう「航行の自由作戦」は消極扱いとしてすすめた。一方で各国に対して、イベント等を通して影響力の強化を図り、着実に勝利ポイントを稼ぎます。
写真の直後、中国はベトナムに対して「政治工作(Political Warfare)」を発動し、ベトナムに対するアメリカの影響をすべて排除することに成功しますが、ポイントは及びませんでした。

 

感想戦

実際のモノはハードマップと美麗なカードで決して見劣りする訳ではないのですが、簡素に見えてしまうコンポーネントに写真写りの点で損をしている印象はあります。

プレイ時間は1時間程度。ルールもシンプルなのでインスト付きですぐに習得できます。

確かにカードプレイやキューブを使ったポイントの争奪はゲームっぽいテクニカルな側面はありますが、イベントの生々しさもあって、決して題材とプレイ内容が遊離したフレーバー、雰囲気だけ借りてきました、という類のゲームにはなっていない印象を受けました。

なによりも「今そこにある危機」をテーマにしたゲームとして十二分に楽しめます。

(了)

 

 

 

 

 

 

 

*1:「埋め立て」の実施結果は次のターンまで残るのに対し、「航海の自由作戦」はターンが終了するとクリアされます。一方で「埋め立て」は緊張度レベルが高くなるにつれてコストがあがるという仕掛けになっていますので、中国としては緊張度を抑えた状態で「埋め立て」をしたほうが効率が良いのです。また両勢力とも各国に及ぼした「経済的影響」についてもターンが終了すると1レベル自動的に落ちます。「緊張度」についてターンが終了した時点で自動的に1レベル落ちます。

「THE LAST HUNDRED YARDS」(GMT)をプレイする ー シナリオ1「On Their Own」

「LAST HUNDRED YARDS」(GMT)のルールの確認も兼ねてソロで復習をすることにしました。

 

ゲームシステム、またAARは次の記事で紹介しています。

 


 

 

シナリオ1「On Their Own」

1944年12月、バルジの戦いの最中。村を守るアメリカ軍1個小隊(3個分隊+1個機関銃チーム)に、2個小隊規模のドイツ軍歩兵が迫る。
勝利条件は、ドイツ軍が村の教会を含む5つの建物ヘックスの占拠、または損害許容値を超える損害を与えること。
制限時間はゲーム内時間で45分です。
小部隊同士の練習用シナリオです。マップ端から侵入するドイツ軍に対し、アメリカ軍が効率よく持久するかという内容になります。

 

ドイツ軍はマップ右端から侵入してきます。
アメリカ軍は秘匿配置されますので、ドイツ軍には配置がわからないようになります。
アメリカ軍はこのままだと3個分隊、1個機関銃班の4ユニット(+指揮官ユニット)しかありませんので、1個分隊を分割して2個班にします。ドイツ軍の侵攻に対して死角なく守るために少しだけでも数を増やしたものです。マップ左下側にある十字形の建物が勝利条件で占拠を求められる教会になります。
侵入するドイツ軍も、2個ある小隊のそれぞれの1個分隊は2個班に分割しています。こちらは偵察のために先導するユニットをつくったところでしょうか。


ドイツ軍は第2ターンから第4ターンにかけて続けざまにイニシアティブを失った。アメリカ軍はまだ秘匿状態(配置がわからない状態)であるため、アメリカ軍が秘匿状態を捨てて動き出さない限り、リアクションの仕様もないということになる。
かろうじて指揮官とスタックしたユニットのみが、限定リアクションとして活性化可能であるため、移動を行った。

イニシアティブは各ターンの最初に双方1D10にて決められます。イニシアティブの有無により自律的にアクションを起こすことができるユニット数が大きく変わってくるにもかかわらず、ここはダイス運が強く影響する仕様になっているのが面白いです。
シナリオによって修正値がつく場合もありますが、基本はダイス勝負になります。今回のシナリオは実はドイツ軍はイニシアティブ決定ダイスに+2の修正値を得ているのですが、それでも連続してイニシアティブを失いました。
相手がマップ上に登場しない段階でイニシアティブを失うと大変なことになることを実感できました。

秘匿状態(初期配置で配置場所が相手にわからない状態)、または隠蔽状態(隠蔽マーカー(ASLでいう「?」マーカーに該当)が載った状態)は敵ユニットの接近や、自らがアクションを行った場合に姿をあらわにすることになります。

 

17分経過時点。シナリオの制限時間の1/3の時間を消化した状態です。
写真ではマップ上に星マークがついたマーカーを載せたアメリカ軍スタックが配置されていますが、実際は、これらの星マークスタックはまだドイツ軍には発見されていません。
複数ターンにわたって足踏みが続いたドイツ軍ですが、前進のため、1個ユニットずつ分散しながら、開豁地(オープン地形)ヘックスを前進しました。

 

ドイツ軍が勝利条件になる建物を抑えていくには村の中央部に進出する必要がある。接近するには道路や原っぱなどの開豁地(オープン地形)ヘックスを移動していく必要があるが、それらの建物のどこかにはアメリカ軍部隊が存在するのは容易に想像できる。
ここは損害を顧みずに開豁地も前進するべきなのだろう。

ASL(アドバンスドスコードリーダー)で、開豁地(オープン地形)を移動中に攻撃を受けると通常の平地の地形修正「±0」ではなく、「-2」というペナルティが適用され、その結果として時としてスタックそのものが全部除去といった悲劇も起こり安くなっています。
ASLでは敵前では開豁地の移動は可能な限り避けるべきで、それでも実施する場合は、煙幕弾を展開する、匍匐前進など損害が出にくい移動を行うといった対策をとります。

今回、改めて射撃解決時の修正値を眺めていくと、本ゲームでは、敵前で開豁地を移動することによるペナルティは存在しないことがわかったのです。
つまり、開豁地を移動したとしてもペナルティはないことになります。もちろん森や建物といった地形と異なり、ペナルティもありませんが、プラス要素もないため、他の遮蔽地形を移動することに比べると損害は出やすいです。

 

開豁地も構わず前進せよ、というのは正解だったようでアメリカ軍は数にまさるドイツ軍に押しまくられる状態になりました。

 

 

感想戦

LHYにおける歩兵戦闘のクセや傾向が読めてきました。

開豁地を移動するペナルティはないので、気にせずに前進してよい。
機関銃には特別な能力はなく、射程が長いだけの歩兵分隊という存在になっているため、恐れる必要はない。

1ターンの中で移動や射撃を行うことができるのは1回限りのため、防御側はどの敵に対して射撃を行うのかを判別する必要がある。ASLのように射撃後も何度も防御射撃を行うことができる仕組みにはなっていない。攻撃側は防御側に早く射撃をすることを促すように行動し、目標となる防御側のスタックが射撃をしてしまった後で、攻撃するという戦術をとることができるようになるのではないか。
全体に小火器による射撃の効果が弱いため、白兵戦に頼った作戦を取る必要があるかもしれない。まさにタイトル通りの”最後の100ヤード”勝負ということなのかもしれない。

 

もう1シナリオ程度挑戦する予定だったが、今日はこのあたりで

 

(了)

 

 

「THE LAST HUNDRED YARDS」(GMT)を対戦する【2戦目】(2/2)

2戦目は西部戦線を扱ったシリーズ1作目から車両が登場するシナリオを選択。「THE LAST HUNDRED YARDS」(以降、LHY)の車両ルールは歩兵中心の戦術級ゲームということから、オーバーランや近接戦闘(歩兵と車両との白兵戦)などがルール化されています。もちろん戦車同士の戦闘や、戦闘車両と対戦車砲といった戦闘も扱うのですが、全体にはシンプルに組み上げられています。

 

 


 

 

ルール紹介

車両ルール

車両はASLと同じくユニットは1両単位。
車両ユニットに表記される情報は歩兵ユニットに近いです。
攻撃系は左側の上から、「対戦車戦闘値」「白兵戦戦闘値(近接戦闘値)」「小火器戦闘値」の3種類。防御系の数値として、右下に「正面防御力」と「側面・後背防御力」となっています。移動力の記載がないのは、ゲーム中、装甲車両、また非装甲車両はそれぞれ移動力が一律に決まっているからです。戦場での移動速度というのは車両によってあまり差がでないという整理なのでしょう。
ちなみに歩兵ユニット(ドイツ兵)はこちら。

左側の数値は上から「対戦車戦闘値」「白兵戦戦闘値(近接戦闘値)」「小火器戦闘値」と車両ユニットを同じですが、右下は「cohesion(統率値)」とASLでいうところの士気値のような数値になっています。

LHY独特の「アクション-リアクションシステム」の中で、車両は歩兵ユニットのように相手の活動を視認しなければアクションを起こせないわけではありません。非イニシアティブプレイヤーについて車両ユニット、敵のアクションを視認せずにアクションの実施が可能になっています。
ただし車両の活動は相手のリアクションを呼び起こすことになりますので、むやみに走り回っていると余計な敵ユニットを活性化させてしまうかもしれません。

マップ上にいる車両は機動中なのか、停車状態にあるのかは明確に区別されます。ターンの区切りに、あるヘックスに車両ユニットが配置されていたとして、その車両は移動途中にヘックスにいるのか、停車しているのかを区別しているということになります。

対戦車戦闘(対戦車射撃)の解決は、判定に用いる結果表は異なるのですが手順としては歩兵戦闘と同じ手順を踏みます。結果は効果があったかなかったか、効果としてはショック状態や破壊などがあります。

参考:

戦術級ゲームにおける戦車戦の戦闘解決の方法はゲームによって特色があります。
LHYでの対戦車戦闘の戦闘解決は、1回のダイスで決まります。判定には距離や車体の向き、機動中/停車中の差など複数の修正が加わります。砲弾による差異はなく、対歩兵戦闘に使われる榴弾を用いる射撃は考慮されていません。
ASLや「OLD SHOOL TACTICAL」の場合は、命中判定と、命中した場合の損害判定の2回の判定から成り立っています。同じ車体を使った車輌でも、短砲身のⅣ号戦車と、長砲身の車輌とでは命中率が異なってきます。射撃を行う際に使う砲弾でも異なる解決を行います。
さらに凝った対戦車線を扱う、いずれも戦車戦闘をメインテーマとする「タイガーⅠ」シリーズ(ツクダ)や「PANZER」シリーズ(GMT)といった作品では、①命中判定 ②命中箇所判定 ③破壊判定といったように戦闘解決のシーケンスが複雑になっていきます。ただこの種類の作品になると、「タイガーⅠ」シリーズは歩兵は登場しませんし、「PANZER」シリーズの歩兵は付け足しのような扱いです。

 

タイムラプス

LHYのシナリオにはターン数の定めはなく、代わりに45分や60分といったゲーム内時間の制限が定められています。

各ターンが終了すると、10面ダイスを振りそのターンに何分(2~5分)消費したのかを決めます。シナリオで設定された時間を使い切ったところでシナリオは終了となります。このためシナリオのターン数は可変ということになります。

参考:
ASL(Advanced Squad Leader)のシナリオでは通常のシナリオではターン数が決められていますが、OST(Old School Tactical)のシナリオは最終ターンにダイスを振って一定の目が出ると延長戦として2ターン程度ターンが追加になるという仕掛けがありました。

 

AAR ミッション7「Sickle(鎌)」

1944年8月、補給不足から進撃が止まったアメリカ第3軍に対してドイツ軍が反撃を行ったというシナリオです。攻撃側がドイツ軍、防御側がアメリカ軍というシナリオにあたります。アメリカ軍を担当。

勝利条件はゲーム終了時に、川に架かる橋(2箇所にある)か、浅瀬(盤面の12という数字の記載箇所の左上あたりに川を横切る薄い茶色の部分:1箇所)のヘックスに隣接しているか2ヘックス以内にいることが必要とあります。
こうした、最終ターンにある地点の占拠が要求されるタイプの勝利条件の場合、最終ターンに登場して勝利条件を満たすように動くというタッチダウンができるので、直感的には防御側にあたるアメリカ軍有利のように感じました。

 

攻撃側になるドイツ軍はマップ右側から侵攻。2個歩兵小隊に機関銃班、さらに四号戦車4台。
アメリカ軍はマップ12に隠蔽配置。1個歩兵小隊に、M36が1両、57ミリ対戦車砲、対戦車チーム(バズーカー砲装備)。
マップの広さやユニットの数からすると、ASLというよりはASLSK(ASLスターターキット)のシナリオ規模ですね。

 

アメリカ軍の初期配置。マップ右端から、下側の丘陵に57ミリ対戦車砲。ASLでの経験則からは57ミリ対戦車砲は非力な部類の砲なのでどこまで効果があるかは不明。接近する戦車を撃った後、後退する想定だったが・・。
同じくマップ右上の丘陵に支援砲撃の要請のために指揮官と機関銃班を配置。LHYの機関銃は歩兵ユニットの火力強化版という性格に過ぎず、ASLの機関銃のようにROFが回るといった凶悪な性格は与えられていない。
アメリカ軍唯一の装甲車両となるM-36は街道沿いの建物の連なった最初のヘックスに配置。
歩兵1個小隊(3個分隊)はそれぞれドイツ軍の立場からすると籠もられるといやだなと思うような場所に配置。最後に左端に1個対戦車班ユニットを配置。最後のタッチダウン担当です。
なおここまで挙げた配置は初期状態では隠蔽状態(盤面には登場しない)、かつIP(タコツボのような簡易陣地)にいることになります。

 

アメリカ軍頼みのM-36。
対戦車戦闘値は圧倒(Ⅳ号戦車の5に対して8)しているが、防御力はⅣ号戦車にやや劣るため、撃ち合いになると撃破される懸念は十分にある。一撃目で確実に相手を仕留める必要がある(戦闘解決は同時解決のため、相互に撃ち合った場合、同時に損害が適用されることになる)。

 

対戦車値3の57ミリ対戦車砲。Ⅳ号戦車相手だと本来は横や後ろから撃ちたいところですが、今回のマップは前線が狭いのでそういうポジション取りができないですね。

 

右側の丘陵地の上にいる対戦車砲(☆マークが載っているスタック)は、1回程度Ⅳ号戦車に射撃するがいずれも効果無し。丘陵地の浅瀬を渡ってドイツ歩兵があがってきて、このまま居座るか(戦闘不能になるのは時間の問題)、撤退するか迷っている図。実を言うとこの丘陵地のふもとに浅瀬があることを見逃していて、これほど急にドイツ軍に迫られることを予想していなかった。

左側の丘陵地にいた指揮官+機関銃チーム(☆マークが載っているスタック)もあまり戦果はなく、支援砲撃は1~2回働いたものの、その後、呼び出すのを忘れていました!
戦車砲チームよりは長持ちはしたものの、その後、ふもとからⅣ号戦車や歩兵に迫られてやがて、村のほうに落ち延びていくことになります。

ASLで軽機関銃以上の機関銃や対戦車砲のような火砲には「ROF」というナンバーが与えられており、戦闘解決時にダイスの1個がROF以下の目であった場合、そのまま2回目の攻撃ができるという性能が与えられている。ROF以下の目を出す限り、回数は無制限に射撃でき、ゲーム中、発生した場合は俗に「ROFが回った」と言ったりする。中でも機関銃は”ROFが回りやすい”設定になっており、時として何度も機関銃による射撃が続くという凶悪な状況が起きたりする。
前段が長くなったが、LHYの機関銃班にはASLのROFのような凶悪な性能は与えられていない。歩兵ユニットの火力強化版(ただし人数が少ないので白兵戦は弱いよ)というユニットになっている。

川岸の土手に潜んでいたアメリカ軍歩兵分隊(上にタコツボのマーカーを載せている)は、浅瀬を渡河しようとするドイツ兵に射撃した(上に若葉色地に「2」という数値を載せたスタック)。

 

右側の丘陵地では対戦車砲が牽引トラックに引かれて逃げ出しています。ドイツ歩兵にかなり接近したのですが、攻撃をかいくぐったようです。

ASLでは対戦車砲や機関銃などは砲火器のユニットとその操作を行う操作班とが別ユニットで用意されていましたが、LHYでは同一のユニットになっており、対戦車砲のユニットは操作班を含んだ扱いになっています。
LHYは火砲を牽引するトラックの扱いがユニークです。
ASLで火砲を移動させる場合は、火砲のところまで車両(トラック)ユニットをもってきて、牽引させる必要があるのですが、LHYは火砲を牽引して移動したい時にその場にトラックユニットが登場するのです。使わない時にはいったんマップ上から取り除き、移動の際に登場するというものです。たしかにASLのように常時、牽引トラックのユニットがマップ上にあるのも自然ですが、使わない時にはトラックのユニットって持て余してしまうんですよね・・。歩兵の移動に使おうと考えても、中途半端にしか使えないなど。

左側の丘陵地も、指揮官+機関銃チームは稜線沿いに建物があったヘックスに退避しています。その近くにいるドイツ歩兵から「ヒーロー」(鉄十字章のマーカー)が発生しています。戦闘結果の判定時に稀に現れ、ASLの狂暴兵と同じく無条件に敵に突入していく兵になります。

川岸の土手にいる歩兵分隊はいやらしくドイツ歩兵を近づけずに持久しています。

マップの一番奥に横に並んでいるのが4両のⅣ号戦車。

 

中盤から終盤にかけての展開。
この時点までにM36はⅣ号戦車2両を撃破。90ミリ砲の威力を見せつけていたが、ここに来て左側の丘陵地を迂回してきたⅣ号戦車がM36の側面を捉え、一方正面にはもう1両のドイツ戦車が射撃してきた。さらには近接してきたドイツ歩兵の近接戦闘(白兵戦)を仕掛けられたため、アメリカ軍は近場にいた半個分隊を白兵戦に投じた!

絶対絶命の状態であったアメリカ軍戦車は、混乱状態に陥るものの撃破は免れ、側背にまわってきたⅣ号戦車を逆に撃破し、さらにドイツ歩兵による近接攻撃を斥けるという離れ業を見せた。

LHYの車輌は、ASLの車輌ユニットのように常にユニットの向きで厳密にどこを向いているのかという管理をされる訳ではない。移動した直後や射撃を行った場合、その方向が正面として扱われる。また今回のように敵ユニットから異なった方向から射撃を受けた場合は、正面と後面とが区別される。車輌の場合は防御力に大きな影響がある。融通性をもたせたルールと言って良い

 

終盤、タイムラプスシステムによりシナリオで定められた時間を使い切った段階。橋梁2箇所は優にアメリカ軍が抑えた状態。

本日の1戦目のシナリオをもそうだったが攻撃側は時間制約が厳しい。攻撃側はもっと積極的に、損害を顧みずに進撃しろ、ということなのだろう。

今回、1両しかないM36の目が良く、ドイツ軍の攻撃をぎりぎりのところで交わし続けたが、アメリカ軍からするとこのM36 がいなければドイツ軍にどう対抗するかわからないというところはある。

 

久々にプレイしたLHYだがルールがかなりクリアになってきた。シナリオ規模も小規模なのでプレイしやすく、またルールも重くないのも良い。また機会があればプレイしたい(VASSALモジュールもあるのでソロも含め)

同じく新興の戦術級ゲームである「OLD SCHOOL TACTICAL」(Flying Pig Games)を対戦した際は、プレイ後に未消化感があったが本ゲームについて言えばプレイ後感覚も悪くなかった。

 

(了)

 

 

 

 

「THE LAST HUNDRED YARDS」(GMT)を対戦する【2戦目】(1/2)

「THE LAST HUNDRED YARDS」(GMT)(以降、LHY)を対戦しました。前回対戦はちょうど2年前だったのですが、その間、シリーズ第2作(西部戦線 空挺部隊)、第3作(ソロモン戦域)、シナリオ集がリリースされ、さらに第4作として東部戦線ものが発売予定ラインナップにあがっているという人気シリーズになりました。

アドバンスド・スコードリーダー(以降、ASL)をはじめ多くの古典的戦術級ゲームでは野球のイニングのように攻守立場を変えてターンを進めていく「I Go You Go」方式をとっています。その後の戦術級ゲームでは新しい要素としてイニシアティブやカードドリブン、コマンド統制と様々な概念がシステムに取り込まれていますが、本作はさながらリアクションシステムというようなシステムになっています。

詳しくはシステムを紹介した過去記事を参照してください。各ターンでイニシアティブをとった側のプレイヤーが自由にアクションを行うことができるのに対し、非イニシアティブプレイヤー側は、自分のユニットの視界内で敵ユニットが移動や戦闘を行うのを視認できた時のみ、リアクションとしてアクションを行うことができるというシステムです。イニシアティブを取った側と取っていない側の手続きが非対象であることが特徴と言えます。

 

 

相手の行動を確認できなかったユニットはアクションを行うことができないということになります。
アクションを視認できなかったユニットについても指揮官ユニットとスタックしている場合や車両ユニットの場合は限定リアクションとしてアクションを実行することはできるのですが、イニシアティブプレイヤーのアクションに比べると、非イニシアティブプレイヤーのリアクションは移動力や内容が限定されるのです。

イニシアティブを取るか取られるかというのは、そのターンの活動内容を左右する重要な要素なのですが、これがまたあっさり、10面ダイス1個振りによって決まります。前ターンのイニシアティブプレイヤーは修正値が+1つくのですが、それでもイニシアティブの決定はかなりランダムに決まると言ってよいでしょう。

前回プレイ時はその特異なシステムのため、システム紹介にとどまってAARを十分に書くことはできませんでした。今回は少しは進歩したでしょうか・・。

 

 

 

第1戦

シリーズ3作目のシナリオを対戦。箱絵にあるようにソロモン諸島を舞台にしたシナリオです。アメリカ軍を担当。

日本軍勢力圏にあるジャングルの中に取り残された友軍を救うべく、1.5個小隊規模のアメリカ軍が海岸からジャングル奥に侵入する。損耗した友軍ユニットを捜索の上、発見した兵士を連れて元の海岸に戻るという内容。日本軍はすべて隠蔽配置される。また日本軍の半数は海兵隊が味方を救出した帰還途上にはじめて盤面に隠蔽配置される(行きがけにアメリカ軍が通ったヘックスにも隠蔽している可能性がある)。

マップは中央を川がのたうち、中央部はジャングルに覆われている。低い丘はあるものの、レベルを変えるまではないため、ジャングルに覆われた平坦に近い土地になる。ジャングルが途切れた場所以外は視界が効かない。川の両岸は谷のように落ち込んでいるが、対岸もジャングルで覆われているため、対岸より奥は見通すことができなという地形だ。

 

日本軍の特徴 ①- ニーモーター分隊

歩兵ユニットは火力が弱く、射程も短い、白兵戦値も高くない。士気(本ゲームではCohesion:結束値と呼ばれる)も普通だ。三八式歩兵銃装備だったことが大きい模様だ。ジャングル戦における火力の集中投下という点で日本軍は劣っていたという評価ということだろう。
ところが日本軍の小隊には必ずニーモーター分隊という部隊が登場する。八九式重擲弾筒、アメリカ側の通称”ニーモーター(膝撃ち迫撃砲)”だ。本ゲームでは、ASLと異なり支援火器(機関銃など)のユニットは分隊ユニットから独立せず、機関銃分隊といった支援火器を装備したチームとしてユニットになっているのだが、そのひとつとして日本軍にはニーモーターを装備した分隊が編成されている。アメリカ軍やドイツ軍にも迫撃砲は登場するのだが、こちらは砲撃支援として呼び出すようになっており、迫撃砲分隊が登場する訳ではない。

ニーモーター自体は50ミリ以下の小型迫撃砲という位置づけのため、威力が強い訳ではないが、ジャングル戦においては空中散布が発生するためジャングルの地形効果を打ち消すことができる。

 

日本軍の特徴②

日本軍の特別ルールは、ASLや下の記事で紹介した「OLD SCHOOL TACTICAL」(以降、OST)に比べると多くはない。LHYにおける日本軍ユニットの特性についてのルールはシンプルだ。「日本軍ユニットは混乱しない」とある。
日本軍は混乱しないという点で、ASL、OSTでも同様の扱いであった。通常の国の軍隊では、士気チェックに失敗すると「混乱」状態に陥るのだが、日本兵は「混乱」にはならないというのだ。
「混乱」状態に陥ったユニットは回復するまで能動的な戦闘は実施できない。一方「混乱」にならない日本軍は、戦力を減らしながらも戦闘を続けることになる。

 

追記(2022/10/29) 日本軍の特徴

リアクションを行う非車両ユニット(歩兵のことですが)は通常、2MPを持っているのですが必ず1ヘックス移動できます。一方、指揮官とスタックしている日本兵ユニットは必ず2ヘックス移動できます。2ヘックス移動できるということは、イニシアティブをとった側がアクションを行った時の移動距離と同じということになる。
いまひとつピンとこないところはあるが、日本兵は素早い?

 

 

次の記事は、「OLD SCHOOL TACTICAL」(Flying Pig Games)での日本軍ルールを、ASLのルールを引き合いに出しながら説明したものだ。

 


AAR

海兵隊の救援部隊は海岸からジャングル奥地へとすすむ2つの道路沿いに内地へはいっていく。日本軍の姿は全く見えない。小銃主体の日本兵の火力が弱いこと、海兵隊がエリート部隊であるため士気が高いことを念頭に置き、ジャングルを進むのではなく、道路を進む。周囲のジャングルから丸見えの状態なので、日本軍側に機関銃分隊などがあればひとたまりもないだろう。特にASLの感覚では、開豁地を堂々と歩くのは的になってください、と言っているようなものなので、オープン地形は避けたくなる。シナリオの総時間45分を考慮すると悠長なことは言っていられない。

 

右翼を進む分隊が奥地への見通しが効くポイントに到達した時、日本軍のニーモーター分隊日章旗マーカーが配置された場所)が射撃を開始した。火力は強力ではなく、小屋にはいったアメリカ軍は容易に回避することができた。射撃戦のためアメリカ軍は後続していた機関銃分隊を呼び寄せた。

序盤スムーズに機動していたアメリカ軍だが、ダイスの目が悪く中盤に来てイニシアティブをとれなくなり、機動が滞りはじめた。

 

左翼で先行していた分隊(半個分隊規模+指揮官ユニット)が制高点に移動しようとした時、そこは日本軍指揮官とスタックした分隊の急造陣地(IP)であった。

 

一時はアメリカ軍を押し返した日本軍であったが、後続のアメリカ軍が続々と集結する中、隣接ヘックス同士の射撃戦と、白兵戦によりアメリカ軍に圧倒された。

 

最終局面。アメリカ軍左翼は救護を待つアメリカ兵がいるエリアに到達するが、ここで時間切れ。シナリオの勝利のためには、中途半端にジャングルを通らずに道路をもっと大胆移動する必要があったということだろう。

 

(別シナリオに続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Nagashino 1575 & Shizugatake 1583」(SERIOUS HISTORICAL GAMES)を対戦する(2/2)

SERIOUS HISTORICAL GAMESによる表題ゲームを対戦した。

 

 

 

yuishika.hatenablog.com

 

 

 

長篠 1575

旗印は、黄色が織田軍、銀色は徳川軍、赤色は武田軍となっている。織田・徳川連合軍はマップ左側の川沿いに位置し、マップ右側に武田軍に包囲された長篠城が位置する。

勝利条件はゲーム終了時に長篠城を確保している側に20VP、あとはユニット除去によるポイントとなる。大名10VP、大将5VP、侍クラス2VP、足軽1VP。

織田・徳川連合軍を担当した。

 

 

史実では武田軍はマップ左の織田・徳川軍の馬防柵*1に殺到し壊滅する訳だが、ゲームの中で同じ轍を踏む必要はない。実際、織田・徳川連合軍の防衛線のエリアは、諸兵科連合効果を得ることができるようにユニットが配置されている。一方の武田軍は騎馬中心のユニット構成になっているため諸兵科連合効果は得られず、騎馬ユニットは鉄砲による防御射撃に対する対抗力が弱いこと、さらに中間ユニットの数が少ないため戦闘結果判定時にマイナス修正を被る状態になっている*2
さらに攻撃を行う際には、織田・徳川連合軍の戦線に沿って川が存在するため、騎馬突撃修正を得ることもできない。単体で騎乗の侍ユニットの戦闘力は強力だが、織田・徳川連合軍を攻撃しようとその前面に出ると史実同様に防御射撃により相応の損害を得ることは確実であった。

武田軍はマップ左側の野戦での攻勢をあきらめ、長篠城を包囲した部隊による強攻策を取った。結果、ピンゾロを2連続で出すなど最悪のダイス運により大損害を受けた。

 

織田・徳川連合軍は、武田軍が寄せてこない以上、こちらから寄せる理由もない。武田軍が陣取る林エリアの前に下手に飛び出したとことで、騎馬突撃の目標とされることは必至。
長篠城を確保している以上、損害を抑制していけばよい訳なので、ここは積極的に攻勢に出るのではなく、攻防中立姿勢から防御姿勢を継続すればよいと判断した。

ただそれでは面白くないので、マップ下側の武田軍の戦線が切れているあたりを、織田信忠の軍団で前進させてみてみようと考えた(織田信忠の軍は、増援のひとつとして登場する)。あわよくば、長篠城まで突出して長篠城への攻撃をそらすこともできるかもしれない(城エリアはスタック制限が厳しいため、信忠軍が入城することはできない)。

 

ターンを数回すことができたため、ここでいったんゲームを切り上げた。

 

賤ヶ岳 1583

長篠に比べると登場するユニットは少ない。
史実では政治的な多数派工作が続く中、対峙が続くのだが、本ゲームは秀吉が大垣城から「美濃大返し」を行い、柴田側の佐久間盛政の軍を襲った6月11日未明からはじまる。

柴田軍を担当。

 

マップ左側にあるのが余呉湖、右側は琵琶湖。
佐久間盛政の軍(柴田側)は余呉湖の東側(マップ上方)に位置している。マップ上方から秀吉軍の先鋒が到着したところからシナリオははじまる。余呉湖の西側(マップ左下)からは前田利家の軍(柴田側)、琵琶湖からは丹羽長秀の軍(秀吉側)がそれぞれ、ダイスの目により登場する。またやや遅れて、これもダイス判定によりマップ上方から秀吉軍の本隊の大部隊が登場する。
マップ右側で1エリアだけ茶色の部分が賤ヶ岳砦、その下の山中に位置しているのが、柴田勝家の軍となる。

 

勝利条件は、長篠と同じく、城(砦)を確保している側が20VP、それ以外はユニット除去によるポイントとなる。
柴田勝家の軍が、賤ヶ岳砦にとりついているが、地形効果が厳しいため単純に攻撃しても攻城側の損害が嵩む可能性が高い。

 

「美濃大返し」で突出してきた秀吉軍先鋒は、湖畔をいく佐久間盛政軍の側背を攻撃する。騎馬突撃のボーナスを利用することで佐久間軍は損害を受けるが、すぐさま諸兵科連合効果を使いつつ反撃を行った。秀吉軍先鋒を秀吉ユニット1ユニットを残すまで討ち果たすが、秀吉側の騎馬武者の騎馬突撃を再三受けることで相応に損害を得てしまっていた。

この時点でダイス判定によりマップ右側に丹羽長秀の軍が上陸、また秀吉軍本隊がマップ上方に登場した。柴田側の増援は前田利家軍の少数にとどまり、この時点でマップ上の戦力比で秀吉軍に圧倒されたため、投了した。

 

コンポーネントの事

武者や足軽のイラストがあしらわれたユニットは美しい。軍団の区別が家紋で行うしかなくわかりづらい。混戦状態になった場合、活性化時に見落としがでることが容易に想像できる。

大名・大将ユニットにかかれている名前が、氏ではなく名前のほうで書かれているので、ピンときにくい。さすがに織田信長武田勝頼、秀吉や家康クラスのメジャーなキャラは良くても、Tadatsuguとか、SadamasaとかMorimasaとか言われても、ピンとこないぞ(答えは、酒井忠次、奥平貞昌、佐久間盛政)。ユニットには名しか記載されていないため、それぞれのユニットの氏はルールブックを見るしかない。

またこれは完全に好みの問題だが、武田勢の大将クラスがほどんど一族衆(武田信廉武田信豊(つづりがNobuyotoと間違えている)、武田信実・・)になっていて、山県とか馬場とか内藤とかが登場しないのは寂しい。

 

マップは独得のデザインでよいのだが、高度差がわかりづらい。高度は地形効果修正の対象となることもあり、マップ内の要地を見極めるためにも直感的にわかるようにしてほしかった。

 

シナリオとルールについて

城(砦)を保持するだけで20VPを獲得できるのだが、城の奪取はなかなかに難しい。一方で、ユニット除去だけで20VPを獲得するのはかなり難しいのではないか。例えば侍・馬廻衆だけで20VPを獲得するためには相手より10ユニット多く、除去をさせなければならない。これはかなりハードルが高いように見える。相手のユニットのかなりの割合を除去させなければならないのだ。そう考えると、長篠にしろ、賤ヶ岳にしろゲームとしては成り立っていないように見える。

長篠のパートで説明したが、織田・徳川連合軍の防衛線は強力で、単純に武田軍が騎馬隊を突撃させてもかなりの損害を受ける可能性が高い。運がよければかろうじて防衛戦の一角を崩すことができるかもしれない。ただ、あえて攻撃を発動させる理由はないように見える。

賤ヶ岳についても秀吉軍の本隊が到着した時点で秀吉軍と柴田軍間の戦力差は圧倒的にになるため、もともと城(砦)を保有していない柴田軍にとってはとうてい勝ち目がある状態ではなくなる。

いずれのシナリオも作戦上の観点でできる工夫は限られる。マップ上で機動戦を行うことができる訳ではなく、自然、ゲームの展開は両軍が戦力を集中させた殴り合いとなる。

 

作戦面での面白みがない分、戦術面での部隊運用が面白いかというとこちらも厳しい。
諸兵科連合効果を得るために登場する「弓」足軽の存在や、「中間」の有無により発生する戦闘修正はどうなの?という印象だ。

これが異世界ファンタジー世界のゲームや西洋史や中国史のゲームであれば納得できたのかもしれないが、戦国テーマだけに目は厳しくなる。
諸兵科連合効果を得るために、前線の各エリアに万遍なく、「鉄砲」と「槍」と「弓」の各ユニットを分散、侍や馬廻衆がいるエリアの後方には中間ユニットを配置して、といったムーブを行うことが、いかにもゲーム的で必然性や説得力・納得感が弱く、それが故に作業となってしまう印象なのだ。

 

作戦級観点ではゲームバランスでも、史実再現性においても問題があり面白身を感じにくく、戦術級観点ではゲームシステムに束縛された不自然なムーブを行わざるをえないという、いずれの観点においてもゲームのカタルシスを得るポイントが違うように感じた。

今回いずれのシナリオも最後までプレイした訳ではなく、また戦闘のシーケンスも不明瞭な点もあるため、今後やり込んでいくことで違う印象になる可能性はある。
機会があればプレイしてもよいゲームだ。

 

戦国時代もので諸兵科連合効果をうまく取り込んだ作品として、「幸村外伝」があるように思う。「鉄砲」と「槍」と「騎馬」の各ユニットはそれぞれに特徴があり、それらの特徴を踏まえて配置しなければ、戦線を維持できないし、効率的に攻撃を行うことができなくなる仕掛けになっている。自然に前線に3種類のユニットを分散して配置することになり、諸兵科連合の状態となる。

 


(おわり)

 

 

 

 

 

 

*1:マップ上に馬防柵の絵は描いてあるが、馬防柵自身の地形効果や、陣地構築といったルールはない

*2:前記事で紹介した、侍と馬廻衆ユニットは中間ユニットが同一か隣接するエリアにいない場合、戦闘解決において「-1」の修正を得るというもの