ガールズアンドパンツァーをテーマにしたシミュレーションボードゲーム「ぱんつぁー・ふぉー!」(以降、1作目)に続く2作目の「ぱんつぁー・ふぉー2」(以降、本作)も見てみようと思う。
1作目はTVシリーズ+OVAで描かれた各試合を扱っていたが、本作のテーマは劇場版だ。劇場版冒頭のエキシビション戦は1作目の追加シナリオというスタイルで収録されているが、メインはもちろん大学選抜チームとの試合になる。1チーム30台の戦車が登場するだけに1作目のように1台毎のオペレーションではスピード感があわないということだろう、チーム戦を扱うため新たなルールが採用されている。
■ エリア制の採用、カードドリブンアクションの廃止
車輛ユニットは前作と同じデザインを用いており、1両=1ユニットの仕様は継承されている。同じデザインになっているため、本作に登場するパーシングやセンチュリオンを1作目の自作シナリオに登場させることも可能となっている。
キャラユニットは仕様が変更になり、中隊長、副隊長になっていた各校キャプテンクラスまでが新デザインで収録されている。なお映画新登場キャラ(例えば聖グロリアーナ女学院のローズヒップ)は1作目デザイン版のユニットも同梱されている。
見た目が一番変わっているのはマップだ。1作目ではヘックス方式を採用していたが、本作ではエリア方式になっている。新規マップは、大学選抜チーム戦前半の舞台となった丘陵地帯マップと、後半の廃遊園地マップ。エリア方式になったことに伴い、移動・戦闘などの各ルールが変更になった。
カードの見た目は1作目と同じ。ただ使われ方はかなり変更になった。1作目では、カードドリブン方式でアクションからイベントまでいろいろとカードを用いてコントロールしていた感があったが、本作ではイベントカードとしての使い方に限定された。
ルールとしての一番の変更点はカードを用いたアクションのコントロールを止めたこと。1作目では移動や射撃を行おうとしても、「移動」カード、「射撃」カードがなければ目の前に敵車輛が登場したとしても何の行動も行うことができなかったが、この制限がなくなった。
各プレイヤーは自分のターンの際に「移動」「射撃」「再編成」「カードアクション」のどれかひとつの行動を行うことができる。「移動」と「射撃」は基本同じターンではできない点は1作目と同じだが、それでもカードによる行動の縛りがない点は大きい。
■ 大規模戦車戦を扱う新ルール…「小隊」ルール、「指揮官」ルール
車輛は「小隊」と呼ばれるチームを組むことができ、行動は「小隊」単位に行うこととなった。1個小隊は最大4両からなり、「移動」や「射撃」は小隊単位で行う。さらにユニット化された各キャラには指揮能力が付与され、このキャラに率いられた「小隊」が移動する場合には、能力に応じ複数の「小隊」を同時に動かすことができる。
例えば、劇中でも「中隊長」に任命されていたケイや西住まほの指揮能力は「3」であるため、同じエリアにいる3個までの小隊を同時に移動させることができる。大隊長の西住みほは合計4個小隊、台数にして最大16台を同時に動かすことができることになる。
1作目のキャラユニットはその車輛が行う射撃や移動やその他の行動に対して値やダイスの目の修正を行うことができたが、使用回数に制限があり、ゲームを通して1回か多くても2回しか発動できなかった。ほとんどの能力は搭乗した車輛にしか作用しないといった仕様もあり、なかなか使いどころが難しく、キャラっぽさというのを感じることが少なかった。
本作ではキャラユニット自体は減ったものの、「指揮官」ルールのため、「カチューシャ」指揮下の小隊や、「西住まほ」指揮下の中隊といった認識を持ち続けづることができるし、キャラによる修正効果の使用制限もなくなったため、キャラ効果が目立つようになった。
移動についてはカードドリブンの廃止に加え、マップがエリア制になったことによる変化もある。
1作目での移動は「移動」カードがなければ移動できないというカードによる制限を受け、マップがヘックス制であったことから移動した場合の移動距離は最大でも移動力と同じヘックス数までしかなかった(ほとんどの車輛は2~4移動力であったため、移動距離は最大2~4ヘックス)。さらには複数車輛の同時移動を許可する特殊カードを用いなければ1両ずつしか移動できないと、三重に制約があり、なかなか自由に動けないし、動いたとしても小さな単位でしか動けない印象があった。*1
これが本作では、カードによるアクションの制約がなくなり自由に移動を発起できるようになり、「小隊」移動により複数台の同時移動が特殊カードなどがなくとも可能となり、さらにマップがエリア制になったことにより1回の移動範囲がヘックス制の際に比べると飛躍的に大きくなった。こうした違いは大きい。劇中でも描かれてきたような、戦車対戦車の機動戦は本作のほうがその雰囲気をよく表しているように思う。*2
こうした結果、新ルールがどうだったかというと、かなり面白い仕上がりになっている。単に大規模戦車戦に適用したというだけではなく、1作目のルールにあった不満点が解消軽減された。カード頼み、運任せの要素が減ったことによりプレイヤーの意図する部隊運用ができるようになり、戦略性が増した。総合的にゲーム性も増した印象だ。
*1:通常、車両1ユニットが1~複数台単位になっている戦術級と呼ばれるゲームの場合、敵の車輛ユニットの動きに応じて、防御側は適宜に射撃を行うことができる。これを「臨機射撃(Oppotunity Fire)」と言ったりする。「臨機射撃」が組み込まれていないゲームでは何が起こるかというと、敵ユニットが防御側ユニットの前を行ったり来たりしたり、はたまた防御側ユニットへの攻撃を行うために接近していたりしても、防御側はタイミングよく射撃を行うことができず、いきなり目の前に敵ユニットが現れたりすることになる。敵ユニットは移動の終わりは森林ヘックスで移動を終わらせることで、こそこそ物陰に隠れながら接近する敵ユニットといった、非現実的な行動をとるようになる。
ただ「臨機射撃」のルールを組み込んだ場合、とたんにルールの難易度は上昇する。戦術級ゲームの代表作である「アドバンスドスコードリーダー」のルールが複雑な理由のひとつが、こうした「臨機射撃」のルールをさらに詳細化したことも原因になっているのではないかと思う。
話を1作目に戻そう。1作目は非シミュレーションウォーゲームユーザを取り込むためにも、ルールの複雑化は避け、当然のことながら「臨機射撃」の概念も対象外とした。その際に、「臨機射撃」の概念を導入しなくても、不自然がないように対策として、1回の移動にあたっての移動できる範囲を限定させたのではないかと思う。移動力を12として、1回の移動でいきなり12ヘックス移動して接近してくるのではなく、移動力を3とすることで、接近しているとしても1回あたり3ヘックスしか動けなくした。こうすることで、防御側は「臨機射撃」の概念がなくとも接近してくる敵ユニットに対して適宜、射撃を行うことができるようにになった。
敵ユニットがゆっくりか動かなければ、移動の途中で射撃を行う「臨機射撃」の概念がなくとも、防御側はタイミングの良い射撃を行うことができるということだ。ただゆっくりしか動かない(=1回の移動での移動範囲が小さい)ことにした影響として、せっかくの戦車戦にも関わらず、動きがちまちまとして戦車戦らしさのようなものが薄くなった、というのが1作目の印象だ
*2:1作目の移動ルールがアクションカードによる制約を受け、さらに動いたとしても小さな移動力により移動範囲が限定されているような印象を受けているが、これはこれでプロの軍隊での戦車を動かしているわけではなく、あくまで未熟な高校生が行っている操縦ということを表したのかなという印象もある。命令しても動いてくれなかったり、思ったように動いてくれない楊流を表現しているのではないか・・・と。現にTVシリーズでは、うさぎさんチームは聖グロリアーナ女学院戦の時には車輛を捨てて逃げ出しているし、その後の対戦相手においても(黒森峰女学院以外は)キャプテンの言うことを聞いていないという描写はよくでていたことも考えると、部活レベルでの戦車道では移動や射撃にムラがあるのではないか、と。