Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

大河ドラマ「太平記」9話「宿命の子」:”父のように迷うな!赦しがあれば天下を取れ!”

週刊「太平記」です。

 

前回までのあらすじ

結婚のお祝いをしてやるよ、というので新婚夫婦で宴会に行ってみたら、社長の前で、おべっか遣いの同僚に絡まれて昔の女の話を持ち出された。空気を読んだ賢婦が助け舟を出すが、悪ノリした社長に絡まれ、誰も止めることができない。閉口しているところに今度は実力派の常務が登場。
宴会にあわせて社長が仕組んでいた常務追い落とし計画は、さきほどのおべっか遣いにより事前に常務側の知るところとなっており見事に失敗。社長は狂乱し、宴は大騒動になった・・。
おべっか遣いは二人に言う「この会社は終わりだ・・」
お前が言うな、というところ

正確には次の記事をご参照ください・・

yuishika.hatenablog.com

昨日の月と今日の月

騒動により田楽の宴に呼ばれていた人々が散り散りと逃げる中、足利高氏は登子(沢口靖子)の手を引き、屋敷の外に逃れた。
宴の席で高氏を狙ってきた刺客が二人を追って姿を表す。刺客の面がとれ、”石”(柳葉敏郎)とわかる。
「・・お父もお母も三河の足利党に焼き討ちされて殺された。誰がやったかわからないから、棟梁のお前を殺る!

「誰がやったかわからないから、棟梁のお前を・・」という”石”の言い草は、かなりめちゃくちゃ。前々から口にしていたので知ってはいたがとんだ因縁付け。
あげくはこの因縁に無関係の藤夜叉まで巻き込んでいるのでたちが悪い。

三河の足利党?なにかの間違えではないか?」
「足利党がやった!おまけに都で藤夜叉に手をつけた!!一夜の慰み者にした!藤夜叉はワシの妹じゃ!ワシの妹がどんなに辛い目にあったかお前にわかるか!」

登子のほうに向かい
「聞け!我主のムコはワシの妹を慰み者にしおったのじゃ!!!
もの問いたげに高氏の顔を見る登子。
警邏の侍達が駆けつけ、”石”は逃げ去る。

侍達が駆け去り二人だけになったところで、高氏が登子に言う。
あの男が申したこと、藤夜叉という女性のことじゃが、あれは真の話じゃ。・・いずれ言わねばならぬと思うておうたが。・・ワシは都でおうたその白拍子を・・・白拍子を・・・ただの遊びゴコロじゃのうて・・・
顔を伏せる登子。水たまりに映る満月を見て登子は口を開く・・。
「大きな月だこと。ほら、水の面に・・。」
意外な反応に、あわてて視線を登子が見る月に遣る高氏。
ほがらかに登子が高氏に笑いかけ
「そこからは見えませんか?美しゅうございますのに・・。」
登子は水面の月から、空の月を見上げる
「登子・・」
登子は、昨日の月がどのようであったか、満ちていたのか、欠けていたのか、存じません。・・また、知りたいともつゆ思いません。・・今日の月、明日の月がこのように美しければ、それでよいのでございます。・・
と高氏の顔を見る。
「・・きれいな月だこと。・・」

またもや沢口靖子が美しい名場面となった・・

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「兄上!」
足利直義高嶋政伸)が郎党を連れ駆け寄ってくる。
「おぅ!直義ではないか!」
高氏の口調は、登子の意外な反応に安心したのかどこかしらおっとりとしていたが、直義はそれどころではなかった。
「父上が・・父上のご様子がおかしいんです。すぐお帰りを」
田楽の宴に出かけた高氏・登子の帰りが遅いのではないかと心配していた貞氏が倒れた、という。

貞氏倒れる

高氏が戻ると、貞氏の寝所には医者、妻清子(藤村志保)、そして足利家執事の高師重(辻萬長)らが詰めていた。
清子によれば、婚儀の宴や一族の会議が続いていたための疲れではないかと言う。

高師重は高氏を部屋の外に連れ出し、清子も直義にも言っていないことだがと前置きした上で、
「・・大殿は息の道にただならぬ病があるとの医師の見立てにございます。・・もはや・・」と告げる。

意識が戻った貞氏が高氏に語る。
「・・近頃、よく夢を見る。我が父、家時の夢を。
父上が北条の咎めを受けて自害された時、ワシはまだ元服前であった。
・・父上は自害された時、こう申された。
足利家は源氏の嫡流、北条に悪政あればこれを討ち、天下を取って民の苦しみを和らげるのが勤めなり。故に武家の棟梁と申す。しかるに不肖家時、悲しいかな徳なく才乏しく、北条の術を受けわずかに家名を守るため、死に行くのみ。この無念がわかるか?
無念がわかるなら、父に代わって天下を取れ。その方にできぬなら、その子に取らせよ。・・・
そう申されて、その遺言を血でお書きになり、置文としてワシに預けられた。
そうしてワシの目の前で、腹を切り裂かれた・・」
息をのむ高氏。
「・・この40年、それとの戦いであった。・・
何度も思った。何故、何故、源氏の棟梁として生まれたのか?
そこから引き下がることができぬ。ワシもそなたも・・
しかるにこの貞氏、悲しいかな徳なく才とぼしく、わずかに家名を守って、この病じゃ・・
高氏、後を頼む。父のように迷うな。神仏の赦しがあれば天下を取れ。そして、それが道と思ったら、弓を取れ!」 

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貞氏父、高氏からすると祖父にあたる足利家時の自害理由についてはウィキによれば3つの説があげられており、定説がない模様。
ひとつ目の説は、このドラマの冒頭に描かれた安達泰盛の乱(霜月騒動)に一族縁者が関係したことによるとしているので、ドラマとしてはこの説に拠っているのだろうと思われる。
またドラマ内でもとりあげられた血で書かれ「天下を取れ」と記されたとされる置文については、置文そのものの存在はあったものの、目にしたとされる時期が異なるため挙兵の理由ではなく、また内容も異なるのではないかと記述されている。

「師重!皆に伝えよ、今日よりこの高氏が足利の主じゃ。父家時の置文を高氏に見せよ」

高師重は貞氏の引退に伴い執事職も嫡子高師直に引き継ぎたいと言う。
その新たな執事職となった高師直柄本明)は置文を高氏に捧げ持つが、高氏は
「・・今は読まずにおこう。いずれ、読まねばならぬ時がこよう。それまで預け置く」
「承知つかまつりましてございます」

さぁ次の怪物、高師直が登場。
後世様々悪役として脚色されていく人物だが、少なくとも直義と対立し観応の擾乱の原因となり、その後の悲劇につながっていく件は史実通りだろう。今後このあたりがどのように描かれていくのか楽しみである。

置文を見ずに部屋を出た高氏を待ちかねた直義が捕まえる。
「兄上、師重達と何をひそひそやっておられるのじゃ?父上のご容態はいかがなのじゃ。この直義には誰も何も教えてはくれぬ。いざとなっては次男なんてつまらんものよ。ほったらかしじゃ!兄上!」
「許せ、師重に明日まで口止めされておるのじゃ。」
「相当お悪いのか?」
「今日明日というわけではないが・・」

貞氏寝所の控えの間での清子と登子の会話が切れ切れに聞こえてくるのを見ながら、高氏が直義に言う。
「直義、北条は先が見えたやもしれぬ。今日、宴の騒ぎでそう思うた。赤橋守時殿ひとりではもはや・・。万に一つ、我らが立たねばならぬ時、登子が哀れぞ。
お主が登子を嫌う気持ちはようわかっているが、登子を姉と思うて心に掛けてやってはくれぬか?頼む。

数日後、家督相続の件が一族に知らされ、高氏が上総三河2カ国の守護、17カ国34の領地の主となり、鎌倉御家人中最大級の大名となった。

幕府割る

幕府は北条高時片岡鶴太郎)の処遇を巡り割れていた。
高時は早々と執権職を投げ出し屋敷に蟄居し、一方で長崎円喜フランキー堺)側は高時の企てを明らかにせよ、と間にたつ金沢貞顕児玉清)に食ってかかる。
「執権殿においては、東慶寺に蟄居し、・・長崎殿のお怒りの解ける日を心待ちにしているとのこと・・」と報告する金沢貞顕に対して、長崎円喜・高資(西岡徳馬)が口々に攻め立て、いきり立つ。
「金沢殿、御辺はそのような戯言を訊くために東慶寺に参られたのか?」
「そもそも、北条家に長年仕えた父上を主たる太守が暗殺なされようと致されたのか?開いた口が塞がらぬとはこのことよ!」
金沢殿、ワシはのぅ、次の執権職は御辺に、と思うておるのじゃ。そこのところをよーくお考えになり、もそっときちんとこちらの意図をあちらに伝えてもらいたいのじゃがのぅ・・
平身低頭の金沢貞顕、最後は泣きが入る・・。
「その議、身に余る栄華なれど、覚海尼殿にあらせられてはそれがしを『裏切り者よ!』と罵られ、話もなにも・・・

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ここでドラマでは、長崎円喜暗殺未遂事件と、北条高時の隠棲、また金沢貞顕の短期間の執権職就任といった事件の前後関係と顛末を変えている。また足利尊氏と登子の婚儀と、貞氏から高氏への家督相続が1326年に起こったことにされており、今回のエピソードの最後に登場する1331年元弘の乱と若干タイムラグがあることになる。

史実では高時は病気のため執権職を辞め出家する(1326年、24歳の時)。高時の後継を巡り長崎円喜派と北条家内の他の派閥間での争いが発生し、中継ぎ的に長崎円喜側が擁立したのが金沢貞顕。ただし反長崎円喜側の安達氏などの要人が次々と出家したことにより、金沢貞顕は在任10日にて辞任し、赤橋守時に代わっている(以上、嘉暦の騒動、1326年)。
史実の長崎円喜・高資暗殺未遂は1331年と伝わる。未遂とはいってもそのような謀議があったという段階だった模様で、ドラマのように実力行使の末の失敗ということでもなかった様子。この時、高時の関与が疑われたが赦してもらい、高時側近らが罰せられたとされている。
なお鎌倉幕府の滅亡は1333年なのでさらに数年後のこととなる。

覚海尼は高時の母親。
少し前のエピソードで高時が、「難しい議は全部、円喜と母御前が考えてくれる」と言っていた人物だ。
長崎円喜側に対し、覚海尼サイドが推していたのは高時の弟にあたる北条泰家。覚海尼からすると自分の子への継承ということになる。

まぁこのあたりの北条一族や鎌倉幕府内の内訌をきちんとやろうとすると北条某という人物を多数登場させる必要があるなど登場人物も数倍になるだろうし、複雑すぎてドラマにならないだろうからばっさりと省略されたということだろう。

ja.wikipedia.org

 

東慶寺
座敷の下座に座る3人の男に覚海尼(沢たまき)が叱責する。
「・・何故、長崎に弱みを握られるようなことをなされた!

城介と呼んでいることからすると、秋田城介の官位を持った安達時顕の模様。
安達時顕は覚海尼の出身である外戚一族で、長崎一派とは対立している派閥にある。もう少し言えば、さきほどの足利家時切腹の原因になったとされていた霜月騒動で滅せられた安達一族、安達泰盛は実父にあたる。

なんと濃密で複雑な血縁関係を取り結んでいたことなのでしょう。
叱責の内容から察するに、長崎円喜暗殺の手立てはこの辺りが仕組んだということなのだろう。ただ田楽の宴で、高時も企てそのものを認識していたようなので、どちらがどう関わったのかはよくわからない。


闇討ちを掛けるのも下なり、討ち漏らすのも下の下じゃ!
ひたすら平伏する男たち。
縁側で菓子をつまんでいた高時が言う
「母上、城介を叱りたもうな。この高時が父上ほどの名執権で無い故、城介も心を痛めて長崎を除こうとしたのじゃ」
「何を申される。そなたは立派な執権ぞ。この母が父上に負けぬ立派な執権にしてみせようぞ。
よいか、金沢ごときに執権職を渡してはならぬ。仮に渡すことあらば、その執権にまつりごとはさせぬ。この得宗のみで幕府を動かしてみせよう。皆にそうつたえてくりゃれ!」

ナレーションで、翌年執権職を継いだ金沢貞顕が1ヶ月で執権職を辞任、その後、赤橋守時が就任し、鎌倉幕府の最後の執権職となったことが説明される。

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伊賀の国

ナレーションで奥州の乱が広がり各所で悪党と呼ばれるグループによる放火略奪がつづていることが語られる。
”石”は、伊賀の国で勢力を伸ばしていた悪党服部小六の配下に参じており、略奪品を抱え、藤夜叉が暮らす伊賀に戻ってきた。藤夜叉(宮沢りえ)は高氏の子を生み、静かに暮らしていた。
藤夜叉は”石”に荒事は止めて、一座に戻ったほうがよいというが、”石”は聞く耳をもたない。
藤夜叉の住む家に出入りする具足師”龍斎”がちょうど訊ね来ているところだった。
龍斎は、一色右馬介大地康雄)が身分をやつした姿で、藤夜叉母子を見守る一方で楠木正成や朝廷方の行動の監視を行い、その情報は逐次高氏に届けられていた。

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普通の娘姿の宮沢りえは悪くはなかった。初期のセリフのたどたどしさも消えかかっていて(まぁ、依然ダメなのだが)マシになったような印象。
だが”石”は登場するととたんに場が白けるのでダメだ。

幕府兵を都に送る

京都の政情が再び不安定になっていた。
延暦寺後醍醐天皇片岡孝夫/現片岡仁左衛門)の子にて武に優れた護良親王堤大二郎)が入り、僧兵を従え鍛錬に励んでいる姿が描かれる。
延暦寺や文観(麿赤兒)がいる醍醐寺では鎌倉幕府調伏の祈祷が行われていたが、これが後醍醐天皇側近吉田定房の密告により鎌倉に漏れた(1331年)

幕府では都への出兵の是非について執権を前に協議が行われる。
出兵すべしという長崎高資の報告に対し、執権赤橋守時が訊く。
「軍を送ってどうなされるおつもりか?」
「しれたこと、帝を捕らえ、日野俊基、文観らの首をはねる」答える長崎高資
帝に罪を咎める件は恐れ多いと僧形の二階堂道蘊(北九州男)が意見し、守時も二階堂に同意する。
もともと朝廷内の皇統を巡る持明院派と大覚寺派との対立が原因で幕府が下手に口をはさんだが故の不満ではないかと守時は言う。さらに、持明院派からは幕府高官に金品が流れているため、幕府側の肩入れが一方に寄っているのではないかと。

「笑止な、赤橋殿は執権であろう、ならばその力で持明院でも大覚寺でもお決めになればよろしかろう」鼻で笑う長崎高資
「長崎殿の仰せられる通りじゃ。ご自分でなんでもお決めになれば良い」評定衆のひとりが唱和する。
「それをさせぬのは誰ぞ。執権の居ぬところで、勝手に事を決めておるのは誰ぞ。みな長崎殿の館に集まり、この守時には何の相談もない。そうではないか、長崎殿?
怒気をはらんだ声で応える守時。
円喜が答える。
ならば執権殿、御辺もわが館に参られればよいのじゃ。ははは
評定衆の中からも含み笑いが漏れる・・。
「帝の事は改めて処し奉るとして、ともかく、2名あまりの奉行を付け、都に兵を送るべきと存ずるが、いかがでござろう。」
なぜか長崎円喜の言葉に平伏する評定衆たち・・。 

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感想

自分には徳も、才もなかったので決断できなかった、だがお前は躊躇するな、という父貞氏のシーンがドラマティック。
今回も夜や暗い室内のシーンが多くさらっと見ると非常にジミな回であったように思う。
いよいよ次回より、元弘の乱にはいる模様なので期待したい。

俳優のほうでは、まぁこれまでのレギュラーメンバーはいずれもよかった(除く、宮沢りえ柳葉敏郎)。
貞氏パパ(緒形拳)はそろそろ退場の様子だがその最後の時までしっかり活躍してもらいたいものだ。
今回なんといっても迫力だったのが、沢たまき演じる覚海尼。大の名のある侍3人をしかりつける様子は圧巻。まぁその時の北条高時片岡鶴太郎)の気だるげな演技もよかったね。

 

yuishika.hatenablog.com

 

 

「戦車戦」(HJ)を試す(2)シナリオ4「デブレツェン」

手軽にできる戦術級ゲームということなので派手にたくさんユニットが登場するシナリオを選んでみました。
シナリオ4「デブレツェン」、両軍であわせて83両(ソ連軍55両、ドイツ軍28両)の戦車・自走砲が登場するというシナリオです。他にも防御側のドイツ軍には対戦車砲や輸送車両、また両軍に歩兵が登場します。

マップの形はへんてこで、ソ連軍は本隊の他、増援が時間差で3方向あわせて4箇所から登場します。ドイツ軍装甲部隊は末期戦の通り陸続と登場するソ連軍戦車の大群の前に右往左往することになりそうです。

 

yuishika.hatenablog.com

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シナリオ背景

シナリオの説明では1944年10月14日という日付になっています。
デブレツェンブダペストの東方約200キロに位置するハンガリー第2の都市。
他のゲームでデブレツェンがマップ上に載っているものがないか探したのですが見つけられなかったです。同じホビージャパンの「Bitter End」ではマップ外でした。

デブレツェンの戦い」はウィキにも記事があるのですが説明がいまひとつ要領を得ません。

ja.wikipedia.org

 

歴史群像」2012年10月号の山崎雅弘氏の記事「プダペスト包囲戦」にこの戦いの顛末が少し触れられています。

・・ソ連軍は、ハンガリー東部で突出した戦線を守るドイツ第8軍とその両翼を包囲すべく、マリノフスキーの第2ウクライナ方面軍に南からハンガリー中部のデブレツェンに向かわせた。・・
 イッサ・プリ-エフ中将に率いられた第6親衛戦車軍所属の機械化騎兵集団(第2、第4新鋭騎兵軍団と第7機械化軍団)は、10月9日に交通の要衝デブレツェンを脅かす位置へと進出し、翌10月10日には第2ウクライナ方面軍左翼のソ連ルーマニア軍が、ハンガリー東部を北から南へ縦断するように流れるティサ河(タイス河)でいくつかの橋頭堡を確保した。
 一方、ヒトラーはドイツ南方軍集団司令官フリースナーに対し、ハンガリー東部からの撤退を禁じるのと同時に、装甲部隊による大規模な反撃を同地で行うように命じた。10月10日、ドイツ第6軍の再建部隊として編入されていた第1と第13の二個装甲師団が、プリ-エフの機械化騎兵集団に両翼から挟撃作戦を開始、デブレツェンにおける戦車戦の幕が切って落とされた。
 比較的平坦な地形のデブレツェン周辺では、続々と到着する両軍の戦車部隊が入り乱れる形で戦線が目まぐるしく変化し、どちらが優勢なのか判断の難しい局面が続いた。
 10月20日ソ連軍はようやくデブレツェンの街を占領し、・・

 

ブダペスト包囲戦

ブダペスト包囲戦

 

大戦末期、ソ連軍の攻勢の中で起こったハンガリーの政変(ASLでも登場する矢十字党が政権をとる)から、ブダペスト包囲戦まで描いてありおもしろい記事です。MMP社からOCSの「Hungarian Rapsody」も出るところですし。

 

 

マップ・勝利条件

3枚のマップを使います。
勝利条件は右下のマップの市街地中央部広場の占拠。攻撃側になるソ連軍はまさに損害を顧みず前進せよ、ということになるでしょう。

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ドイツ軍は大きく2つのグループからなります。
上方のマップ2枚に初期配置される装甲部隊と、市街地防衛のために1ターン目に登場する歩兵部隊です。

装甲部隊は、ティーガーⅠやパンターまで擁し全部で40ユニット弱あるのですが、そのうち15ユニット以上を最前線になる上方左手のマップに配置する必要があります。
歩兵部隊は市街地マップの左手から登場するのですが、3ターン目には同じ方向からソ連軍の第3梯団が登場しますので、すぐさま防衛のために移動しながら配備につく必要があります。この防衛部隊は対戦車装備としてはマーダー、Ⅲ突を2両ずつに75ミリ対戦車砲2門を擁しています。

対するソ連軍はマップ最左端から1ターン目に登場する戦車部隊(第1梯団)。中でも最凶戦車のJSⅡを6両も擁しています。また後述しますが、このゲームではT34/85やSU100も決して侮れない強さを持っています。
ソ連軍の増援は登場ターンにダイスを振り、1D6により半分の確率で登場します。
登場できなかった場合は繰り越したターン数毎にダイス修正+1がはいりますので、少なくとも数ターン内には出揃うことになるでしょう。
ドイツ軍装甲部隊を上下から挟み込むように登場する、第2梯団と第4梯団、さらに勝利条件の市街地近くに直接登場する第3梯団とまさに続々と登場することになります。

ドイツ軍としてはソ連軍の第1梯団を押し留めつつも、あまりかまけているとソ連軍の増援部隊に挟撃されかねません。さらには市街地マップ近くに登場するソ連部隊はそこそこ強力なので、防衛の歩兵部隊を救援に向かわなけれなならないでしょう。

いくつかの選択ルールを採用しています。

 

第1ターン

イニシアティブはドイツ軍。移動フェイズでは後手を取り、進撃してくるソ連戦車に臨機射撃で攻撃します。
ドイツ軍はソ連第1梯団のJSⅡを止めるべくティガーやパンターの多くを上方左側のマップに集中的に配置しています。
ソ連軍は進行方向に対し、中央から右翼にかけてに足が遅いJSⅡを集中的に配置し、両翼にT34/85やSU85、SU100を配置し前進します。
先鋒のパンターが射撃をしようとするのですが、すぐに気づきます(というか事前に確認しておけ、というところですが)。
パンターの75ミリ砲やティガーⅠの88ミリ砲では4ヘックス(280メートル)以内に接近しないとJSⅡの正面装甲を撃ち抜けないのです。逆にJSⅡの122ミリ砲は20ヘックス内であれば三分の一の確率でドイツ軍主力の2車輌を打ち抜けます。少なくとも10ヘックス内ではこの確率が半分になります。
計算違いでした。一般的に機動力のソ連戦車に、砲力、特に長距離戦で有利なドイツ戦車という定石ではなかったのです。

代わりにドイツ軍は随伴のT34/85や自走砲を狙います。
ところがここでも思い違いを起こします。T34/85やSU100の正面装甲値もけっこう高いのです。数値的にはティガーⅠ、パンターと同じ数値です(側面や後面装甲レベルは両ドイツ車輌より低い)。少なくとも両車輌ともⅣ号戦車H型より優秀なのです。
やられメカと思っていたら予想外に強かった、といったところでしょうか。
計算違いはⅣ号戦車は近接しないと対抗し得ないという点、またティーガーパンタークラス、または対戦車砲による長距離射撃が効果がない点です。

このターン、数々の思い違いをはねのけてドイツ軍のダイスは冴え渡ります。
ソ連軍左翼の車輌6両を撃破したのです。
このターンの損害は以下の通りとなります。

  • T34/85  2両   
  • SU85  4両   
  • SU100  1両

ドイツ軍の移動では前衛で突出していたパンターを下げつつ、臨機射撃を行っていないティーガー等を前進させます。
写真には出ていませんが、右下の市街地マップの左端にドイツ軍の歩兵部隊が登場しています。

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第2ターン

イニシアティブはドイツ軍。+2のダイス修正は大きいです。
ドイツ軍は、攻撃フェイズは先手、移動フェイズは後手を選びます。
ソ連軍の増援はまだ登場しませんので、第1梯団のみです。

ソ連軍は前進を優先させます。
後から思えばターン数もあるためJSⅡについてはドイツ車輌に対して徹底的にアウトレンジでの攻撃を行っておけばよかったですね。

このターンの損害(ソ連軍)

  • T34/85 1両
  • SU100 1両

 

第3ターン

イニシアティブはドイツ軍、射撃フェイズは先手・移動フェイズは後手を選びます。

このターンよりソ連軍の増援が到着してきますが、増援チェックの結果は、マップ上方から登場する第2梯団、市街地マップ左手から登場する第3梯団とも失敗です。

このターン、移動途中に側面をさらしたJS2に対してのパンターからの攻撃が成功し、JS2 1両をようやく破壊します。
ドイツ軍はJS2を破壊するには近接射撃しかないということで遮二無二前進します。JS2の主砲も火を吹き、ティーガーⅠ、パンターに損害がでます。

このターンの両軍の損害

ソ連

  • T34/85 3両
  • JS2 1両

ドイツ軍

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第4ターン

イニシアティブはドイツ軍。射撃は先手、移動は後手をとります。
ソ連軍の増援チェックで第4梯団が現れます。
ただこの第4梯団はT34/76 10両からなります。
第4梯団はマップ3枚の接合点近くに登場させ、守備していたⅢ号突撃砲や対戦車砲陣地を攻撃します。オーバーランを絡ませることにより簡単に抜けると考えたのですが、シビアに損害が続出します。
付近の車輌も含め臨機射撃で出鼻をくじかれ、オーバーラン時には対象となった車輌の防御射撃(オーバーランの際には、攻撃側・防御側双方がゼロ距離で同時に射撃を行って解決する)を受けることなったのです。

ドイツ軍装甲部隊主力とソ連軍第1梯団との射撃戦は続いています。
このターンのソ連軍の損害

  • T34/76 7両
  • T34/85 2両
  • JSⅡ Ⅰ両

ドイツ軍の損害

 

第5ターン

イニシアティグはドイツ軍。
ソ連軍の増援はマップ上方から第2梯団が登場です。
第2梯団は強力なT34/85が含まれるため注意が必要。まだ防衛戦からの距離があるため、撃破は運次第といったところです。

ソ連軍第1梯団前面はドイツ軍の主力ティガーやパンターの近接によりJS2 が立て続けに撃破されます。
第4梯団のT34/76の残余は混戦の中で全車両失われます。
どの方面においても、イニシアティブにより終始有利なポジションからの射撃に徹したドイツ軍が先行します。

ソ連軍の損害

  • SU85 1両
  • T34/85 1両
  • T34/76 3両 (これにより第4梯団全滅)
  • JS2 2両

ドイツ軍の損害

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(つづく・・たぶん)

 

yuishika.hatenablog.com

 

「戦車戦」(HJ)を試す

このところドラマの記事ばかり書いていてそろそろゲームを取り上げたいなと思っているところ、6月以降のゲーム会に向けて準備している2つのゲームがいずれも難物でして、なかなか記事化できないので、急遽本作をとりあげることにしました。

ホビージャパンオリジナルゲームの第1弾だったと思われる「戦車戦」です。初期まだ隔月刊時代のタクテクスにはたくさん広告が出ていた覚えがあります。その割にはあまりこのゲーム自体をとりあげた記事は読んで覚えがないのですよね。
戦術級ゲームとしては、先に「スコードリーダー」に行っていたため本作は未プレイでした。

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コンポーネント

丹精な仕上がりのハードマップです。
きちんと中芯の厚紙の上に皮革風の仕上がりがしてある、当時のアバロンヒル社のゲームによくあった仕様です。
ユニットの仕上がりもよく、ノーコーディングなのですが印字もきれいで、車輌の上面図が細かく記述されています。

ただマップ内のヘックスとユニットが若干小さめです。
ツクダホビーのゲームもそうだったのですが当時はこれが普通サイズだったんですかね?

登場ユニットとスケール

1ヘックス=70メートル、1ターン=3分、1ユニット=1両、1門、1個分隊
登場ユニットは車輌、歩兵分隊、対戦車砲

1944年から1945年の東部戦線末期をとりあげています。両軍の登場車輌は次の通り。

ドイツ軍

ソ連

  • T34/75
  • T34/85
  • JS2     ※ IS-2
  • SU76
  • SU100

他に両軍に、対戦車砲、輸送車両(ハーフトラック、トラック)、歩兵分隊が登場します。

ゲームシステム

進め方

  1. イニシアティブの決定
  2. 直接射撃:第1プレイヤー、第2プレイヤー
  3. 移動:第1プレイヤー、第2プレイヤー
  4. 間接射撃
  5. ターン更新

イニシアティブは両プレイヤーがダイスを振り大きい値を出した方が直接射撃フェイズ、移動フェイズそれぞれについて先手・後手を決めます。
シナリオによりイニシアティブのダイスの目の修正値が定められています。基本このゲームのダイスは1D6です。

移動と射撃フェイズそれぞれについて先手・後手を決めるという点は注意です。イニシアティブを取るか否かはかなりゲームの行方を左右します。

射撃解決

射撃には装甲目標に対するAP弾射撃と非装甲目標に対するHE弾射撃に分かれます。
AP弾、HE弾とありますがそれ以外の特殊砲弾が登場するわけではないです。

車輌には前面/側面/後面それぞれに装甲レベルが定められています。

各車両の主砲には、距離に応じて貫通力と破壊判定の際の数値が与えられています。
当然距離が離れるほど貫通力も破壊判定の数値も弱くなります。

 

  1. 目標までの距離に応じた貫通力を表で確認する
  2. 目標ユニットの向きに応じた装甲レベルと貫通力を比べて貫通できるか確認する
  3. 貫通する場合、破壊判定の数値を確認し、ダイスにより破壊判定を行う

戦車を扱うゲームでよくあるのは、①命中判定 があって、②破壊判定 があるというシステム(さらにはこの間に”命中箇所判定”がはいるゲームもある)ですが、本ゲームはこの命中判定と破壊判定をダイス1回で済ませるようになっています。

なおこのゲームには弾薬切れ、致命的命中のような異例な処理、また機関銃などの副武装は登場しません。

移動と射撃の関係でいうと、射撃時に射撃時の状態(=移動状態)を宣言することにより同じターンのうちに射撃と移動を同時に行うことも可能です。射撃を行いつつ移動する場合は当然、不利なダイス修正がはいります。

 

  • 完全停止射撃
  • 一時停止射撃
  • 行進間射撃

 

HE弾射撃

目標が歩兵分隊、トラック、対戦車砲といった非装甲目標の場合はHE弾射撃として解決されますが詳細は省略します。

その他

  • 移動途中に相手のユニットがいるヘックスに入るオーバーランが可能
  • スタック制限は車輌2ユニット、歩兵4ユニット
  • 森、建物、陣地にいるユニットは”発見”されるまで攻撃されない。
  • 歩兵は同一ヘックスにいる装甲ユニットに対して、歩兵突撃戦闘を行うことができる(パンツァーファウスト非装備の歩兵分隊が装甲ユニットを攻撃することができる唯一の手段)
  • 直接射撃フェイズに射撃を行わず、移動フェイズで未移動のユニットは相手側の移動中に”臨機射撃”を行うことができる

 

印象

全体のルールは非常に簡単です。戦術級の経験があればひととおり聞けばすぐにプレイにはいることができます。ルールは簡単なので戦術級初心者にインスト即プレイも可能でしょう。

それでいて、移動状態に応じた射撃(射撃と移動の同時実施)やオーバーラン、臨機射撃などもスマートに取り込まれている点は感心しました。

ガルパンを題材に戦車戦を扱った「ぱんつぁー・ふぉー!」も多分に初心者向けだったのですが、戦車戦のシミュレーションという点では本ゲームのほうがバランスが取れているように感じました。

 

 

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本ゲームはダイスの解決が6面ダイス1個によっているため、数値の処理がばっさりとしており、ダイスの結果に依存する部分が大きい印象です。車輌の性能も同様にばっさりと整理されています(詳細は次の記事で書きます)。

 

 

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大河ドラマ「太平記」8話「妖霊星」:後味の悪いエピソード。せめてもの救いは登子か?

前回までのストーリー

佐々木道誉陣内孝則)に軟禁されていた藤夜叉(宮沢りえ)が”石”(柳葉敏郎)と一色右馬介大地康雄)率いる黒装束による意図せぬ連携プレイで佐々木屋敷から救出されたところで足利高氏真田広之)と劇的な再会を果たす。
「そいつから離れろ!」と藤夜叉を止めようとする”石”(柳葉敏郎)。
「明日の晩、またここに来てほしい。考えがある」と高氏は藤夜叉に告げる。 

右馬介はともかくその他のキャスティングは放映当時全盛を極めたトレンディードラマといってもおかしくないですよね。

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冒頭ナレーション

第14代執権北条高時片岡鶴太郎)の代になりその土台が揺らぎはじめていた。
原因のひとつが北条家家臣にすぎなかった長崎円喜フランキー堺)と長崎高資西岡徳馬)父子に政治権力が集中しすぎ、御家人達の不満が爆発寸前のところまでたまってきていたことにあった。
幕府を立て直そうと赤橋守時勝野洋)らを中心に反長崎勢力の結集がはかられていた。赤橋守時が足利家との婚儀をすすめたのもそのひとつである。
高時自身も自分をないがしろにする長崎父子への憎しみをつのらせ、密かに暗殺計画をねっていた・・

最後の一節で驚くような事にさらりと触れる>長崎円喜暗殺計画

 

高氏の覚悟

高氏は、藤夜叉との約束の場所へ馬を飛ばす。
そこへ騎乗の右馬介が現れる。
「右馬介、何用じゃ?」
「若殿こそ、いずこに参られます?」
藤夜叉に会いに参る
「会うてどうなさいまする?」
しばしの沈黙の後、答える高氏、
「いっしょに都にはいけぬ。北条の姫君を娶る、そう申すのじゃ。・・それで文句あるまい・・。さりとて子はワシの子ぞ。なんとしても引き取りたい。母子ともに手元におきたい。
手をついて拝み倒してでも側室として迎え入れたいという高氏に、右馬介が言う。
藤夜叉殿は約束の場所にはおいでになさいませぬぞ。
監視のため置いていた配下の者から報告があったという。
「・・さきほど旅のお姿で突如、府内をお立ちになったとのことでございます・・」
「何!」
もはや、鎌倉を後にされてございます
「右馬介!!」叫ぶ高氏。
予想外の行動であったため、右馬介の手の者も行く先を確かめることができなかった、という。

夜の暗い中、馬上の二人というシーンで前後関係がよくわからないところがあるが、右馬介は夜半に馬を出した高氏を追ってきたというところだろうか。

突如、馬を駆け出させる高氏。
約束の海岸で辺りを探すが、人の姿はなく、波の音ばかりであった。
「藤夜叉・・ワシをおいて・・。右馬介、藤夜叉の行方を追うてくれ・・藤夜叉を見失のうてはならぬ。藤夜叉の子は高氏の子ぞ。」

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場面が変わって、小舟の上に藤夜叉と櫓を操る”石”。
本当にいいんだな?自分で決めたことだぞ。後になって、ワシのようなうるさいヤツがいたから足利に会えなかったと泣き言言うな。・・兄弟にあんなやつの事で一生恨まれるのはかなわんからな・・」
藤夜叉の身の回りの世話をしながらくどくど言い込む”石”。
「感謝してるもの。うるさく言われなきゃ、会っていたかもしれない・・。
・・会っても同じことだもの。会わなきゃ忘れられるもの。時さえたてば・・。
淡々と気丈に答える藤夜叉。でも最後には涙をこぼしてしまう。
「漕いで漕いで漕ぎまくるぞ。我主を伊賀に届けたら急いで戻ってこねばならぬ」

努めて抑えようとしているものの、藤夜叉が高氏を選ばなかった事に”石”はうれしさを隠しきれていない、小物感いっぱいの様子。

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場面変わって足利屋敷。足利貞氏緒形拳)が右馬介から藤夜叉と”石”の行方についての報告を受け、貞氏は右馬介に言う。
「で、その二人は伊賀に向かったと申すのじゃな。・・伊賀と申せば河内の国と近いな。伊賀には楠木正成とその一党が出没しておると聞いている。楠木党は目が離せぬ。・・そちは伊賀へ参れ。高氏にはいずれ話しておく」

海辺のシーンでは右馬介は高氏に対して、藤夜叉の行く先はわからないと言っていたのだが、しっかりと確認できている模様。
高氏の従僕と言いながら、その実貞氏の方に忠実。
右馬介を派遣したというのは、藤夜叉ばかりではなく楠木党の監視も含めてということだろうか。ただ楠木党の活動範囲が河内ばかりか伊賀までとなるとかなり広範囲ということになる。
いくら河川を抑えていたとはいいながらも、そこまで勢力範囲は広かったのだろうか、と思う。伊賀といえば河内からすると反対側だからなぁ。 

婚儀

1ヶ月後、足利高氏と赤橋登子との婚儀が行われる。

ナレーションで語られるかまどの火の儀式が印象的。
赤橋家の庭竈の火が足利家に移され火を灯され、式がはじまる。夜に始まった式は夜昼なく三日続き、その間、移されてきた火が灯し続けられると。三枝成彰の叙情的な旋律もあいまって非常に美しいシーンにあがっている。
このかまどの火を巡る儀式はネットで調べたがよくわからなかった。

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結婚式のシーンでは満面の笑みの貞氏の一方、不服げに唇の端をぷるぷるさせている弟足利直義高嶋政伸)が可笑しい。

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数日越しの宴が終わり、二人だけになった寝所で高氏が新婦に話す。
「真の夫婦となる前に申しておきたい事がある。
・・この高氏が仮に北条家に弓を引き、そなたの兄をも敵とせねばならぬ時があったなら、そなたその時は何とするか?
登子はじっと見つめたまま返す。
「いつの日か、まことそのようなお心組みが高氏様にはおありなのでございますか?
あるとしたら
登子はじっと真正面から見つめる視線を外さず、そのようなことがあろうがなかろうが、
「・・高氏様のご一生はそのまま登子の一生となるばかりのこと。」と気丈に答える。
「・・でも・・辛ろうございまする。」と涙をためる。

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これまで、沢口靖子はきれいだとは思うがそこまで魅力のある女優とは思っていなかった。が、今回のこのシーンは、単なる美しい人形ではないという凄まじいものがあった。それにしてもあそこまでじっと見つめられると並の男なら思わず視線を外したくなるってものじゃないかな。

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高氏の発した問いは新婦には酷な質問。
高氏も正直すぎるというか、まだ数度しか会ってなくどこまで信用できるかわからない登子に謀叛の可能性を否定しないというのはどうなんだ、とは思う。
仮に登子が言わなかったにしても、登子が実家から連れてきた侍女の中に赤橋家に注進するものがいてもおかしくないよね。

侍所の牢内に囚われていた際の赤橋守時との会話のシーンでも感じたが、高氏は一番大事な部分、信念の部分については嘘は言えないという性格に描いてあるように感じる。佐々木屋敷の宴会の際には佐々木道誉からの問いに答えなかったが、少なくとも嘘は言っていない。

その後、雰囲気を変えようと高氏は酔っ払った直義を連れ出し「足利家の蹴鞠を見せる」と夜中にも関わらず、蹴鞠を始める。家臣が手燭を持ち寄り、明かりを照らす中、母清子は「高氏をよろしゅう」と登子の手をとる。
父貞氏もその様子を眺めていたが、不意に瘧のように汗が吹き出し手燭を落としてしまう。

貞氏のシーンは今後病床につくという伏線だろうが唐突で少々意味不明。
今回のエピソードは全体に照明が暗いシーンが多くシーンとしてもストーリーとしてもわかりづらい場面が少なくなかった印象。

 

日野俊基の釈放

足利家・赤橋家の婚儀の翌日、鎌倉で虜囚の日野俊基が無罪となり釈放される。
髪や髭が伸び放題で、足元がふらつくような俊基は花夜叉一座の逗留場所に収容され身なりを整え、元のきりっとした人物に戻る。

そこへ伊賀から”石”がもどってき、花夜叉が”石”に問い詰める。
藤夜叉をどこにやった?佐々木屋敷では藤夜叉がさらわれたと大騒ぎだ、と。

急ぎ京に戻るという俊基に対して、花夜叉は佐々木判官殿が密かにお会いしたいと言ってきていると伝えるが、俊基はよしておきましょう、と断る。

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はっきりとは描かれていないが日野俊基六波羅に売ったのは佐々木道誉だった模様で、いわば道誉は幕府側と朝廷側と両方に内通していた。日野俊基がこの事にどこまで認識があるかはよくわからない。道誉が幕府に情報を出しているという件については、花夜叉は気づいていたが、その事を俊基に伝えているかどうかは不明。花夜叉は日野俊基に好意的なのは確かだが、道誉の愛妾という可能性もあるからなぁ・・ポジションがよくわからない。

”石”は俊基に、俊基が捕縛される前に預かっていた短刀を楠木正成に渡したと報告する。
楠木正成様はのんびりしたお方で、その点、弟正季様は・・と直情径行の正季のほうをほめそやす”石”に対し、日野俊基は急に口を閉ざし身支度を急ぐ。

表面的なところでしか人を見ることができない”石”にはこれ以上深い話をしても仕方ないと俊基は思ったんだろうな、という印象。

俊基の出立を見送った後、”石”は伊賀から来た吉次という新入りに声をかけられる。
楠木正季から”石”の事は聞いており、長崎円喜を幕府の祝宴の席で暗殺するので、それを手伝ってほしいという依頼だった。その祝宴の主賓は足利高氏と聞き、”石”は承諾する。

眉を落とし気味で白塗りの吉次はかなり不気味な容貌だが声ですぐにわかる、豊川悦司だ!
この一連の花夜叉一座での一連のやりとりはわかりづらかった。
話の展開で必要なものを一箇所にぶちこんだらこうなった、という印象。ただ改めて”石”の小物感が浮き彫りになった。

 

高時乱心

幕府柳営内に諸官が集まり中央に北条高時、また主賓の足利高氏・登子夫妻が招かれている。二人にとっては諸大名への顔見世ということで婚礼儀式の最後になるイベントであった。

高時が告げる。
皆、思う様飲むがよい。今日は高時が、一族、足利高氏・登子に馳走いたす。皆の者には二人の披露でもあるぞ。皆で祝うてやれ。

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「いやぁめでたき限りじゃ、足利殿が加われば、北条一族は盤石の重みでまつりごとににむかうことができます。」と金沢貞顕児玉清)。
さらには赤橋守時勝野洋)が一族を連れ
「ムコ殿、赤橋の一族は後ろに控えておりますので後ほど名乗りをあげさせまするが、まずは一献」

そこに離れた席から声がかかる。佐々木判官こと佐々木道誉だ。
「・・かかる大輪の見事な花を手にいれるためには、さぞや野に咲く花のひとつふたつ泣かせて枯らせて打ち捨てたもうこともござったであろうな・・」
応じたのは高時。
判官、それは聞き捨てならぬ。野に咲く花とは何の例えぞ?
「それがしがお答えいたすより、当のムコ殿にお聞きあそばされてはいかがかと
「下にも」
高時は高氏のほうを向き、
これムコ殿、泣かせて枯らせた花とは何の例えぞ?
足利殿、執権殿がお訊ねぞ。お答えせねば無礼であろう」と追い打ちをかける道誉。
高時の気に入りの道誉の発言に高時の質問のため、誰も口をはさめないでいる・・。

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佐々木道誉は高氏より9つほど年上。
北条高時の御相伴衆ということで愛顧を受けた後、高氏挙兵後、高氏配下にはいり室町幕府設立に寄与すること大、その後の室町幕府内の内訌も生き延び、最終的には高氏よりもかなり長生きすることになるんですよねぇ。憎まれっ子世にはばかるというのか、今までのところも何度となく高氏を振り回し、今回もつくづくとイヤなヤツ!

助け舟を出しのは登子。
「殿、登子は疲れましてございまする。そろそろ」

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そうか、と二人して席を立とうとすると、
「こら、虫食い瓜、なぜ動く?」と高時。
「登子が戻りたがっております故」
「登子が?・・ひゃっ、この男、虫食い瓜に似もやらず、中身は甘いぞ
高時のからかいに周囲から追従笑いが起こる。
「あははは・・さては閨急ぎか?」高時は赦す様子もない。
「これは・・きついおからかいを・・」絶句する高氏。

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「判官、足利殿は閨急ぎじゃ
これはしたり」目を剥いて応じる道誉。
したり、したり

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追従笑いが大きくなる中、からかい嵩じての侮辱に色を失う高氏と登子。近くでは金沢貞顕赤橋守時が困惑している。

一連の高時と道誉による掛け合いのような高氏に対するからかいはその節をつけたような言い方も含めてかなり面白かった。
こんな絡まれ方をした高氏からするとたまったものではなかったと思うが。
この程度のからかいは、高時とその取り巻き衆の中では始終起こっている酒席での戯言だったのかもしれないし、道誉はともかく高時からすると宴を盛り上げる話のネタ程度であったのだろう。
が、生真面目な高氏は思うところ大であっただろうし、深窓の令嬢であった登子にも同様であったのではないか。

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ちょうどその時、各所の燭が消され中央の舞台に手槍を持った10人ほどの踊り手が登場する。暗くなった室内でやや席が騒がしくなる中、仕方なく再び腰を下ろす高氏と登子。

そこへ長崎円喜が遅参して登場。
めでたい席に遅れたことを咎める高時に
「恐れがましき事なれど、奇っ怪なる噂を耳に入れ、その詮議に手間取りましてございまする・・。この長崎円喜を刺すために伊賀より参った曲者がこの宴の中に潜みおるとの不思議な沙汰にございまする

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「何?そちを殺すものが・・?それはまた奇っ怪じゃのう」
円喜は高時ににじりより
「奇っ怪なのはそれだけではござりませぬ。そを命じたのは元をたどれば、太守、貴方様であるとのまたまた不思議な沙汰にございまする
「まことに故なき沙汰にて一笑に付し、参上仕ってござりまする」
「ふふふふ・・・そりゃまた不思議な沙汰よの」やっと答える高時。

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槍の踊り手が燭台を消すと暗闇の中、高氏を槍が襲うがすぐに短刀で返す。
その時、「長崎殿が!」と叫びが起こり、長崎円喜と似た色の装束の者が倒れているのがわかる。それもすぐに「長崎殿ではないぞ」と声もあがる。
再び明かりがともされる中、長崎円喜が無傷のままいるのがわかると突然高時が叫びだす。
ワシじゃないぞ、ワシじゃないぞ。そこの曲者!!曲者じゃ!
高時は刀を抜き、周囲に振り回しはじめた。

全員席をたち騒然とする中、長崎円喜はさきほどまでの笑みを無くし供を連れそのまま下がっていく。
立ち尽くす高氏と登子の傍らに佐々木道誉が近寄り
愚かなことよ、おのが身内を斬るためにわざわざ伊賀の者を使うか?噂は都に筒抜けじゃ。・・北条は割れた、先は見えたぞ。」と言い残し立ち去っていく。

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舞台で刀を振り回していた高時は幻影を見、昏倒する。

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・・・天下まさに乱れんとする時、妖霊星という星が砕けて災いをなす・・と。その妖霊星の歌を高氏を聴いた。登子も、というナレーションで幕を閉じる。

サブタイトルになっている「妖霊星」はこの最後のナレーションでとってつけたような説明が付されているが、原典となっている「太平記」の中に妖霊星は登場している。北条高時が彗星を見て喜ぶ一方、彗星が亡国の兆しであるというエピソードだ。

 

感想

なんとも感じが悪い、後味が悪いエピソードだった。

小物なほうから行くと”石”。
足利憎しの一念で、高氏と藤夜叉を離間させ、浅薄な人物月旦で日野俊基を苦笑させ、あげくは吉次の企みの片棒をかついでどさくさにまぎれて高氏に斬りかかる始末。加えて全てにおいて無自覚という・・。
この「太平記」の視聴前、藤夜叉を遠ざけたのは誰かと思っていたが、意外なところでこの”石”だったのか、と今のところは思っている。

2番目は佐々木道誉
この男も大概なところがある。
路傍の花に例えて藤夜叉の件をにおわせると、その後席をたつ高氏夫妻をからかい侮辱するきっかけを作る。その上、北条高時による長崎円喜暗殺計画を円喜サイドに伝えた節がある。
これまでも幕府と朝廷側と双方に通じ、正中の変では日野俊基六波羅に告発し、足利高氏の京都での行動を讒言したのも道誉だし、なにかと騒ぎを起す火種を作っていく。

3番目は長崎円喜だろうが、今回は登場場面も少なかった。
ただ最後の場面で高時を煽り、乱心のきっかけをつくったのは長崎円喜だろう。

 

 

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大河ドラマ「太平記」3話「風雲児」:いろいろ役者が揃い始めた回。藤夜叉との件は宮沢りえがもう少しなんとかならなかったものか。周囲を喰いまくる演技の榎木孝明

公開しているブログの引っ越しに伴い内容を若干改訂しています。
3~6話の記事の掲載順序がバラバラになっていますがご容赦ください。
前エピソードの記事は次になります。

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あらすじ

京の都と後醍醐天皇日野俊基

鎌倉を出奔した足利高氏真田広之)とその腹心の一色右馬介大地康雄)は京都在所の伯父上杉憲房藤木悠)の屋敷に逗留していた。
上杉家は母清子の実家にあたる。

伯父の退屈な話の後、京の街に出た二人は鎌倉とは比べ物にならない賑わいと人の多さに驚きつつ、米を量り売りに群がる人々を見つける。米不作の中、米の値段の暴騰を止めるため幕府の反対を民のためと押し切って天皇が商人から米を集め、値段を固定した上で売っているという話を聞く。
今の帝は令名ただならぬお方と・・」と右馬介が評判を聞いてくる。
闘犬や田楽踊りにうつつをぬかしているようであれば、北条執権殿は先がありませぬな」と笑う右馬介。

鎌倉に比べると京都市中は大路も広く、行き交う人々も多くにぎやかに描写される。ことさら人々の着ているものが華やかなで色とりどりで、質実剛健を絵に書いたような鎌倉とは大違いである。

雑踏の中で右馬介とはぐれた高氏は、鎌倉で出会った山伏に教えられた醍醐寺を訪ねる。寺院ではちょうどお忍びで行幸していた後醍醐天皇片岡孝夫:現片岡仁左衛門)の姿を目にする。天皇の取り巻きの貴族や僧(文観:麿赤兒・・ウィキを見て驚いた大森南朋の父親とのこと。知らなんだ)に見つかり正体を誰何されているところに、かの山伏こと日野俊基榎木孝明)が現れる。

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片岡孝夫の登場シーンはセリフもない短時間でかつ高氏視点なので遠景での登場でしかないのだが、神々しいばかりの存在感は際立っていて、圧倒された。

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日野俊基は高氏に、帝は「詮無き話を致すために」この寺に時折行幸すると言う。
「詮無き話?」
「・・我らは鎌倉殿を北条殿を討ちたいのです。この10年、北条一族なかんずく得宗家の専横は目を覆うものがある。・・それらを討ってまつりごとをたださなけれなばならない・・。」
思わぬ話に高氏は落ち着きがなくなる。

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日野俊基はそんな高氏に構わず、じっと目を見据え話を続ける。
「・・北条が己の栄華のためによろずの民をないがしろにし、人としての誇りを奪い去ったということです。その事は足利殿にも心当たりがおありのはず」

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このまま日野俊基が主人公でいいんじゃないの、と言っていいほどの場面。周囲を完全に食って見応えがある。

日野俊基は北条と戦う同志を探すため諸国の御家人を密かに訪ね歩く中で、新田義貞から、源氏が動けば天下が動く、源氏を動かすには足利を動かす必要があると言われた、という。足利殿が動かねば、北条は叩けない・・と。
「その事は新田殿のみならず、諸国で言われました。ことに畿内の楠木殿ははっきり言われた。足利殿のお気持ちはいかがか?と
「楠木殿?」
楠木正成殿です。無位無官の河内の住人。御辺はご存知ないだろうが畿内随一の武士と身共はにらんでおります。
・・足利殿、御辺の立場、足利家の立場は重々存じ上げております。なれど一度だけ、この日野俊基にたばかられたと思うて、その楠木正成なるものにお会いになりませぬか?いかがです。よろしければこれよりすぐに案内仕ります」

グイグイ迫って煽りまくる日野俊基に高氏はたじたじとなり、「此処は鎌倉にあらず、京の都じゃ。よろず夢語りと思うて」と最期は押し切られる。

淀の津

高氏と日野俊基は連れ立って京都南部郊外にあり当時の物流の拠点であった淀の津に向かう。
淀の津では、土佐の一条家から興福寺に献上された木材に対して、収容しようとする興福寺の一党と、借金のカタに取り立てたい北条方の商人とが小競り合いを起こそうとしていた。
木材を積んだ舟が到着し周囲が騒然とする中、淀の津一帯を治める地の有力者として楠木一族の楠木正季赤井英和)が登場し、「船荷も蔵も楠木のものなので、北条だろうが手は触れさせぬ」と大音声で周囲を圧する。北条は出ていけ、という声が高まる中、北条方の商人一行が追い払われる。
楠木正季日野俊基がいるのを見つけ、六波羅の透破がうようよしているので気をつけろと告げる。日野俊基は後ろを振り返りつつ人混みの中にまぎれ立ち去ろうとする。

俊基の後を追おうとする高氏の袖を引くものがいる。馬を連れた右馬介だった。
六波羅日野俊基を追っており、「周囲を六波羅のものが取り囲んでいる」と高氏に告る。
日野俊基六波羅の手のものに取り囲まれたところを高氏は馬を駆り、日野俊基を助けあげる。

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淀の津は木津川、宇治川桂川三川合流地点、淀川の起点にあたり、山陽・南海両郷の諸国貨物の奈良・京都への陸揚港として栄えた、とある。巨椋池あたりとの地理的関係はよくわからない。

佐々木屋敷

夜、京都市中は警邏の六波羅の兵が満ちており、あちこちに篝火が焚かれている。
二人は目立たぬように、日野俊基に案内されるまま近江守護の佐々木高氏こと佐々木道誉陣内孝則)の屋敷に向かう。
「佐々木判官も志を同じゅうするもの。同心のひとりです。」日野俊基は高氏に言う。

佐々木屋敷には主の佐々木道誉が派手な出で立ちで待っていた。

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後の婆娑羅大名だけあって、佐々木道誉は異様な出で立ちで登場する。身につけた着物の左右の二身はそれぞれ違う色合いで派手派手しい。

黙ったままの高氏に対し、道誉はまくしたてる。
「足利殿、・・北条殿の世はもはや末かと見透かされる。高時公御一代と申し上げたいところじゃが、ここ数年も心もとない。
・・畿内の諸大名に帝より北条を倒せと内々の綸旨がでておる。鎌倉は何も知らぬ。
・・足利殿、覚悟めされよ。古い大地にしがみついて生きおおせる世ではござらぬ」

日野俊基六波羅の動きが不穏なので四条に戻り様子を見たいと告げ、
「足利殿は身共が思うた通りのお方じゃ。見参かない、うれしく候、また他日。」と佐々木屋敷を後にする。
高氏は残り、道誉に促されるまま宴席に呼ばれる。

「舞なぞ見ながら、婆娑羅にお話しいたそうぞ。ははは」
宴がはじまるとさっそく、隣に座った道誉は高氏ににじりより、
「これにはばかることは何もござらぬ。胸のうちをお聞かせたまえ。鎌倉をいかがおぼしめす」と訊いてくる。
「何分、京の都に来たばかり。なにもかもはじめてのことばかりにて」
言葉を選びながら慎重に答えを返す高氏。
「違う違う、御辺の心はさにあらず。ご真意を漏らし給え
「それがしはまだ曹司の身、部屋住みにて父貞氏の命を受ける身なれば、かようなことは」
「これはまたあっぱれなおとぼけぶりよ、ははは」

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藤夜叉

やがて中央で美しい少女、白拍子藤夜叉(宮沢りえ)の舞がはじまる。
「藤夜叉、これへ」舞が終わったところで、花夜叉に招かれて高氏の前に進み出る藤夜叉。

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「御殿様、本日はご機嫌うるわしゅう」たどたどしく高氏に挨拶する藤夜叉。
見惚れたように藤夜叉の顔を見たまま、声を無くしている高氏。
「なんぞ声をかけておやりなされ。機嫌を損ねたと案じて泣き出すやもしれぬ」
隣で佐々木道誉が笑う・・。

本当は藤夜叉の美しさに見惚れて声を無くしているというシーンなのだと思うが、残念ながら視聴者の多大な脳内補完が必要な状態になっている。
宮沢りえの演技があまりにも・・なためである。
何度も書いているように、藤夜叉との出会いは高氏にとってのこの後の行動原理のひとつにもなるような女性だし、また一方でその反動として人生を狂わすような事態も引き起こす運命の女性なのだが、残念ながらというか致命的に宮沢りえの演技からはそれを感じられない。


夜半、酔いつぶれた高氏がふと目を覚ますと傍らに白拍子の装いを解いた藤夜叉が座っていた。
「・・いかがいたした」高氏の問いにほほえみ返す藤夜叉。
「あまりお酒は強くはござりませぬな。みなさまおやすみになられてございます」
「屋敷にもどらねば・・」起き上がる高氏。
「夜が明けねば門は開きませぬ。今宵はお守りいたすように仰せつかっております」
燭台の火が陰ったので伸ばした高氏の手に藤夜叉の手が触れ合って、思わず抱き寄せる高氏。

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ニートラップ!

翌朝、高氏が目を覚ますと藤夜叉どころか誰もいない。それどころか、高塀の外では多数の旗指し物があがっており、多数の騎馬や兵がゆく姿が見えた。
抱えていた疼痛も消えてしまうほどに目を瞠る高氏。
1324年、4000の六波羅の兵が一斉に公家や朝廷派の武家を襲った、正中の変であった。

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ja.wikipedia.org

感想

後醍醐天皇にはじまり日野俊基楠木正季佐々木道誉と顔見世興行のように派手派手しくドラマが展開する。シメは藤夜叉だ。
高氏は終始無言のシーンが多く、日野俊基佐々木道誉などにひたすら圧倒されている。
この京都滞在とそこで会った人々の事はこの後の高氏の人生に大きな影響を与えるだけにそれぞれの人物については相応の説得力のある演技が求められる。
その点、セリフこそなかったものの片岡孝夫(現片岡仁左衛門)の後醍醐天皇榎木孝明の演じる日野俊基はすばらしかった。ことさら榎木孝明は他を圧倒していたように思う。
佐々木道誉役の陣内孝則はセリフまわしが声を張り上げっぱなしの一本調子だったのが気になったが、それでも不遜で何をしでかすのかわからない不気味さをたたえた人物像はそれはそれで説得力があったように思う。

楠木正季を演じた赤井英和は”浪速のロッキー”と呼ばれたボクサーから俳優業に転身をして数年といったキャリアの頃。「兄者の声が小さい分、ワシは声が大きい」とか言っていたが、まぁ可もなく不可もなくといったところ。今後に期待。

藤夜叉の件は前記の通りだ。

ここでいくつか。
一色右馬介六波羅の武者にも顔見知りがいた一方で、日野俊基の顔も知っているという(高氏から「なぜ知っている」と訊かれて、「後ほど」と答えをにごしていた)シーンもあるなど、幾分謎な部分がある人物のように見える。

藤夜叉を高氏の寝所にやったのは誰の指示か、という点。やはり佐々木道誉だよな?

 

 

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大河ドラマ「太平記」7話「悲恋」:幕府に尽くして身をたてるか、謀叛か、または夢の国への逃避行か?

前回までのストーリー

赤橋家との縁談が進む中、佐々木道誉陣内孝則)は高氏に「藤夜叉(宮沢りえ)に子ができた」とささやく。藤夜叉に会えるように手引しましょう、と。

思い悩む高氏は腹心の一色右馬介大地康雄)に思いを明かす・・
このまま大人たちの思惑のまま北条一族との政略結婚に乗ってよいのか?
共に幕府を正していこうという赤橋守時勝野洋)からの誘いは魅力的だ。
一方で都で見た新しい動き、日野俊基榎木孝明)から聞いた新しい世への強い期待を感じている。都で感じた思いを確かめるためにもそこで出会った白拍子に会いたい、と

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開幕

1325年正月、奥州で発生した安藤季長らによる乱の鎮圧がうまくいかず逆に打ち負かされた北条一族の敗残軍が鎌倉にもどってくる場面から始まる。

安藤氏の乱 - Wikipedia

奥州で起こった、有力御家人安藤一族における家督争いがそのうち反幕府の謀叛の動きとなったということで通奏低音のようにここのところのエピソードの裏で動いている。

長崎円喜の足利屋敷訪問

佐々木道誉からの「(藤夜叉と)引き合わせましょう」という囁きを反芻しながら高氏が考え込む中、右馬介が長崎円喜フランキー堺)の足利屋敷への来訪を告げに来る。
高氏は藤夜叉の件は誰まで知っているのかと右馬介に訊ねる。大殿(足利貞氏緒形拳)までだ、と答え右馬介は大殿から「よろず右馬介に任せる」と言われている旨、近く赤橋家との御縁があるため無益なことは慎むようにと言われたと伝える。
白拍子の君は居所も突き止めておりますれば、この右馬介がよきに取り計らいまする。都でのことは過ぎたこと、もはや後戻りできぬとお覚悟なされよ

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忠実な従僕として主人の不始末の処理もしましょう、という右馬介。
ただ見ようによっては、前日高氏が語った思いの告白はなんだったのか、というくらいに高氏の悩みどころをあっさり無視していて可笑しくもある。

そこへ大騒ぎの直義(高嶋政伸)がはいってきて「北条、何するものぞ、叩き切ってやる!」と息巻く。「兄者も迎えに立つことなど出るものじゃありませんぞ!」
何も言わないまま立ち上がる高氏に直義が追い打ちをかける。
「そうやってずるずると・・憎き長崎円喜に頭を下げ、北条の娘を嫁にとり、そうやって兄上は北条に取り込まれておゆきになるのじゃ!
高氏に立ち去られ、残された右馬介に言う。
「なあに、あのくらい申し上げねばおわかりにならないのじゃ。どこかのんびりしておいでじゃからの!」

史実では軍事畑を高氏、政務畑を直義が担ったということだがドラマでは静の高氏、動の直義といった史実とは逆の性格付けがなされているように見える(この後、変わっていくのかもしれないが)。

高嶋政伸の演技は上手いので見ていても安心感がある。
余談だが、高嶋政伸大河ドラマといえば「真田丸」での北条氏政役での怪演が印象深い。北条違いだが、白粉の顔や汁かけ飯をかきこむ姿は登場回数が少ないにも関わらず記憶に残る演技であったと思う。

長崎円喜の異例の訪問を受け、上座に円喜を迎え、下座の板の間に貞氏はじめ家中の重臣が並ぶ。
長崎円喜は機嫌よく口を開く。
「今日まかりこしたのは他でもない、御当家御嫡子と赤橋家姫御前のことでござる。
・・赤橋家から嫁をとるということは北条家の中にはいられるということ、かかる良き話は早く成就させよと執権殿が並々ならぬ力のいれようでな・・」

つい数ヶ月前まで高氏を投獄し足利家自体を取り潰しまでいこうと画策したことはなかったことのように上機嫌に続ける。

「あらためて御当家に御異存なきか否かあらためて確かめるように命じられて罷り越した次第」
するどい視線を投げかけながら訊ねる
「この議、御異存ありませぬな いかが!?」
貞氏、応える。
「身に余る幸せと、執権殿にお伝えください」
それを聞くや相好を崩す円喜。
「いやぁ、これはめでたきことよ、いやぁ、めでたいめでたい」

と突然、大仰な動きをはたと止め、口調を改める。
「これで我が北条家は今後、足利殿を兄とも弟とも思うてまつりごとを行っていくのだが、・・奥州に兵を出していただけぬか、6000ばかりほど。
足利殿は北条家のお身内となられた大大名、他の大名に範をお示しいただけるものと

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訪問の本意がここに来てようやく現れる。しかも先に縁談の話を先に取り上げ、さんざんに足利を持ち上げておいて、出兵の話を断りづらくするなど、さすが幕府を牛耳る最大の政治家の片鱗を見せたといったところだろう。

「それだけの人数になると(動員に)2月かかるか3月かかるか」
せめてもの抵抗をみせる貞氏。
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「やむをえまい。お待ちもうそう。なにはさておき、めだきことが先ぞ。
足利家の嫁取りじゃ、赤橋の姫御前との儀、さだめしお似合いであろう。いやぁ、めだたしめでたし」
憮然とした貞氏には目もくれず強引に話をまとめてしまう長崎円喜

これまでも何度も書いたようにフランキー堺の演技はいくらでもみたくなる。

長崎円喜が辞去した後、板の間に残った貞氏と高氏。
「長崎殿は勝手なお方じゃ。安東殿を乱に走らせたのは長崎殿のまずい裁きの故、それを足利に始末させようとは」
「何故、お断りなされませぬ?」高氏が訊く。
「北条の身内と言われては・・」
「さらば身内になるのは無しとするのがよろしいかと」
高氏は貞氏に突っかかるように早口で言う。
それがしの嫁取りは無しといたしましょう
「そうも行くまい」
「なに故?」
立ち上がる貞氏に高氏は声をあげる
何故でございまする?

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藤夜叉と高氏

佐々木道誉の屋敷奥に軟禁状態にある藤夜叉の元に”石”(柳葉敏郎)が忍び込んで現れる。
「もう一度、(高氏に)お会いして好きという気持ちが本当か確かめてみたい。・・もしかして、あの方はおなかの子のことを喜んでくださるかもしれない」という藤夜叉に対し、”石”は思いとどまらせようとする。
「無駄だ。会うても無駄だ。足利殿は北条の嫁をとる。足利はよせ、だいたい北条の天下がいつまで続くと思う?・・相手が悪い・・
”石”は河内で楠木という偉い武家の方に会い、幕府を倒す相談にくわえてもらっていると得意げに話すが、藤夜叉はそんなことには興味はない。高氏の縁談の件を聞いてから心ここにあらず。
「石、ここを出たい。いても仕方ないもの。連れて逃げて
藤夜叉も気を変えた。
「良いのか?」”石”の問いに藤夜叉はうなずく。

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屋敷の中は警戒厳重であちこちに篝火が焚かれ衛士が見回っている。
部屋を出た二人もすぐに見つかり、取り囲まれる。
と、突然現れる黒装束に頭巾で顔を隠し武装した男たちの一団。屋敷を取り囲む高塀を安安と乗り越えて藤夜叉と”石”を守るように、屋敷方の衛士たちと切り結び始める。

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黒装束の男たちは高塀を超えるように藤夜叉を手助けする。が、高塀を超えた先にも屋敷方の衛士が追ってくる。”石”も衛士への対応で手がいっぱいになり、ひとりになった藤夜叉の元に現れたのは騎乗の高氏。
互いに驚く中、高氏は馬上に藤夜叉を招く。「乗れ、しかとつかまれよ」。

”石”が藤夜叉を連れ出したのと、右馬介率いる黒装束救出チームが現れたのと、藤夜叉に会うために高氏本人が佐々木屋敷を訪れたのはそれぞれ別々に動いていたはずだがちょうどタイミングがあったということだろう。
または屋敷内で”石”と藤夜叉にかけられた誰何の声に集まったといったことかもしれない。まぁこは突っ込まないとして、右馬介の黒装束軍団は少々驚いた。

高氏は馬上に藤夜叉を抱えたまま鎌倉の町を抜け、ひとしきり離れた海岸に至る。
「子がいるというのは誠か?」
黙ってうなずく藤夜叉。

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そなたを引き取る。足利に引き取る。・・そのつもりでいた・・
「ではどうして北条の姫君を?どうして?・・ここが鎌倉だからですか?京都に行けばまた初めてお会いした時の御殿様にもどられますか?」

うーん、それを聞いちゃダメだろうという藤夜叉の問いに黙ったままの高氏。

「あの夜のことが忘れられませぬ。あの夜からずずっと眠っていたような気がします。良い夢を見てずーっと。夢の覚めぬうちに都へ戻りたい・・いますぐいっしょに参りましょう・・藤夜叉は高氏様が嫁を娶られるのをみとうございません。・・その後、お情けでお側に置かれるのもいやです。そういうお情けなら、いただかぬほうが良いです・・
藤夜叉を抱き寄せる高氏。
「ワシがいっしょに行けぬともうしたら、子はどうする?」
一人で育てまする
「わかった。今すぐには行けぬが、明日もう一度ここに来てくれ。都に行けるかわからぬが、おもとを一人にはせぬ。決してひとりにはせぬ。・・都への思いは同じぞ・・ワシに考えがある」

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その場に現れる”石”。追手を振り切り、馬で逃れた二人を追って来ることができたらしい。
足利の言うことなど聞くでないぞ。・・そんなやつから離れよ。
藤夜叉に叫ぶ。
「明日、ここで」と言い立ち去る高氏。

トレンディードラマ張りの三角関係の場面!?
うーん、藤夜叉はいろいろ言っちゃいけないようなことを言っているような気がする。この辺りが伏線になってこの後の高氏の藤夜叉とその子に対する扱いになっているのかなぁ、まぁそこは登子も少し絡んできそうな気もするが。
もしかするとバブル期という時代背景があっての脚本という線もあるかなぁ?
いずれにせよ、もう少し様子を見ることにしましょう

 

3つの覚悟

夜半、屋敷に戻ると高氏はちょうど屋敷を辞してきた新田義貞萩原健一)と言葉を交わす。
「それがしも奥州の戦に兵を出しまする。・・我らは貧乏御家人ゆえ、これより急ぎ、新田の荘に帰り、田畑を売っていくさ備えをしなければなりませぬ・・

奥で地図を前に一人考え込む貞氏の元に向かい、新田義貞の話の内容を確認する高氏。
「・・奥州征伐の名の元に集められた軍勢が奥州勢と合流すれば、相当の数になるであろう」
それが鎌倉に反転し、鎌倉に攻め上ったらば・・」それを新田義貞が言ったのではと訊く高氏。
「口に出しては言わん。・・こちらの腹をさぐりに来たのであろう」
「父上のお心は?そのつもりで長崎殿の催促をお受けに?お聞かせ願いとうございまする。その議を知らずして、北条の姫君を娶るわけには参りませぬ。・・」
貞氏に挑むように訊く高氏。

ついさきほどまで藤夜叉相手にへろへろになっていた男には見えない(笑)

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高氏はもはや我慢なりませぬ。・・父上の真意をお聞かせください。その次第によっては高氏にも覚悟がございまする
覚悟とはどの覚悟だ?北条と戦する覚悟か?
戦をするには兵を集めなければならない。そのために北条を欺かなければならない、と諄々に諭すように話す貞氏。
赤橋登子殿を嫁にとる覚悟か?・・
それとも、戦を捨て、家を捨て、どこぞの白拍子と夢のごとく生きていく、その覚悟か?

貞氏パパは全てをお見通しと言わんばかり。目が泳ぐ高氏。
このシーンが今回のエピソードの最大の見どころかな。

どの覚悟だ!!」とダメ押しの貞氏による一喝。

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再びゆっくりした語調に戻り・・
「覚悟は難しい・・いずれ覚悟しよう、此度こそ、此度こそとやってきて、未だに覚悟がつかぬ・・。」
足利一門の棟梁として数千の兵、家族もいれると万余に影響を与える、と。失敗すれば殺すことになる。
それよりも赤橋殿と力をあわせて幕府を正せるのであれば・・と、貞氏は言う。
「赤橋登子殿は救いの神だ」
「幕府を正すことができますか?」
「わからん。ただやってみる価値はある。足利一門全ての命がかかっている。今わかっていることは、ワシもお主も足利の棟梁として生を受けたということだ。そしてそこから逃れることはできぬ。」

 

終幕

幕府。長崎円喜の前に、赤橋守時金沢貞顕児玉清)が並ぶ。
二人は円喜に対して足利他への軍勢の動員を避けるように進言していたところだった。
集められた軍勢が万が一、奥州安藤勢とあわせて鎌倉に向かってくるリスクを考える必要がある、と。
「足利殿に限り、よもやとは思いますれども、この関東に源氏の大軍を集めまするのはいかがかと・・」と金沢貞顕
「そもそも奥州の乱は北条の手落ちにて火をつけたようなもの。いかに苦しゅうとも北条の手で鎮めるのが理と存じまする赤橋守時も同調する。
長崎円喜は、自分が訊いたのは「足利殿の寝返りがあるか?ということだ」と守時に返すが、二人の意思が固いと見た長崎円喜は、動員の件は無しとすると裁決した。
ままならぬ奥州よのぉ」悔しげに大声を上げて立ち去る円喜。

自屋敷に戻った赤橋守時は妹登子に婚儀の日取りが決まった、と告げる。
「同じ鎌倉の中じゃが、随分遠いところにやるような気がする。つらいことがあるやもしれぬ。よいか?」
「覚悟の上でございまする」
この鎌倉を戦から守るのはそなたとこの守時になるやもしれぬ。頼むぞ、登子」

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その夜、藤夜叉との約束の場所に馬を駆る高氏のシーンで終了。

 

感想

いみじくも劇中に貞氏が言ったように、高氏の前には3つの道がある。
北条家を助け幕府を正していく道、北条家に弓を引き謀叛を起す、幕府の外から世の中を変える道。
3つ目は天下国家の事ではなく私事にかまける道。ただ3番めの道は都での思い出につながりこれは高氏にとっては日野俊基の思いにつながっている道かもしれない。

結果的に高氏は1番目の道を選び、その後、2番目の道に転じていく。

このエピソードの時点で高氏はずっと3番めの道に囚われ煩悶し続けている訳だが、どうも演者の問題でこの3番目の道がそれほど魅力的に見えないという演出上の問題を抱えている。端的に言うと、身を捨つるほどの恋に見えないのだ。

敷かれたレールのまま政略結婚に乗って立身出世を遂げるでもなく、これまでの屈辱を跳ね返すように味方を募って謀叛を起すのではない第三の道が魅力的に見えないことには、この物語の主人公たる高氏の煩悶も理解できないし、ドラマが成立し得ない。 

この後のドラマの構造からすると、煩悶の末、高氏は藤夜叉とその子を遠ざけるように行動していく訳でそのしっぺ返しを将来受けることになるという大きな仕掛けになるのだが、現時点で第三の道がしっかりと魅力的に描かれないことにはこの壮大なしっぺ返しのドラマ自体も威力が薄いものになってしまう、というドラマ構造上の問題にもつながっているように感じる。
この太平記私本太平記)において藤夜叉の存在は高氏の人生にずっと影を落とし続ける重要な役割なのだが、現在のところ残念ながら宮沢りえの演技は全く満たしていない。心優しき視聴者は足りない部分を脳内補完しながら見ているのかもしれないが、私本太平記という物語の重要な構造にかかる部分だけに、この役者の力量不足は致命的な欠陥のように現時点感じている。

なお赤橋登子役の沢口靖子も上手じゃないのだが、登子は上記のようなドラマの構造に影響を与えるような役柄でもないため重要度は高くない。

 

 続きは

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大河ドラマ「太平記」2話「芽生え」を見る

 執権北条高時片岡鶴太郎)主催の「犬合わせ」(闘犬)の場であくびをして退屈そうな顔を見せていた、というそれだけの理由で大勢の御家人や町方の人々が見る前で恥辱を味合わせられた足利高氏真田広之)。
屋敷にもどると弟直義(高嶋政伸)が北条一族から高氏が嫁をもらうという縁談話に騒いでいる。父貞氏(緒形拳)、母清子(藤村志保)に訊くと体よくかわされ、代わりに赤橋家から借りていた歌集を返しにいってほしいと頼まれる。
行った先の赤橋家では当主赤橋守時の妹登子(沢口靖子)が応対に現れた。

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あらすじ

赤橋登子との出会い

応対にあたってのは赤橋守時勝野洋)の妹で後に高氏の正室となる赤橋登子であった。登子の美貌に気圧されたような高氏に対して、登子は高氏に対しての興味津々の風で臆することなく、歌とりわけ恋の歌について訊いてくる。
しどろもどろになりながらも答える高氏。
あげくは高氏も登子に興味が湧いたのか、「ワタクシメもその歌集を読んでみようか」とまで言い、返しに行ったはずの歌集を返却せずに自分が読むと借りてくる始末。

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沢口靖子です。
今とあまり印象が変わらないのも見事。ただ演技のほうも・・・なのでどこか人形のようなんですよね。
まぁこの後に登場する宮沢りえに比べると全然ましなのですが

赤橋家は北条一族に連なる名家。当主守時はこの回では登場しないが後に重要な役回りで高氏の前に現れることになる。もう少し言うと、鎌倉幕府最期の執権でもある。

赤橋家から屋敷にもどると、犬合わせの場での件を伝わり聞いた直義が激怒中。
許せん!北条の奴原よ

日野俊基との出会い

翌日、将軍御座所にいつもどおりに出仕した高氏は同僚の宍戸知家(六平直政)から「世渡り上手」だの「これで北条の嫁でももらえば安泰」だのと言葉をかけられるが、無言を通す。

足利高氏は無口で自分の思いをなかなか出さない人物として描かれている。感情も思いも全て口に出すキャラとして描かれる直義と対照的。高氏のこの性格のため見ているほうは高氏の本音をなかなか知ることができない。
面白いのは、この回の登子や後の藤夜叉(宮沢りえ)と初めて言葉を交わす場面など女性に対する際の高氏の態度や話し方が、奥手ぽくて良い。

帰宅途上、鎌倉の通りで僧や尼に率いられた念仏踊り時宗)の集団が長崎円喜フランキー堺)の行列と出会い、長崎方の供回りが傍若無人に僧・尼に斬りかかるところに出くわす。あまりの無法ぶりに止めにはいった高氏が、長崎方の家来衆に取り囲まれたところを、通りすがりの山伏が助ける。

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山伏と高氏が難を逃れた松原で、山伏は高氏に対して「ぜひ京都に」と誘う。
山伏は身をやつして全国の有力御家人を行脚し討幕を説いて回っていた朝廷方の日野俊基榎木孝明)だった。

このシーンで感心したのは鎌倉の通りが当然のことながら舗装などされていない道路で雨の日後などはかなりぬかるんだりしたのではないかということが想像できそうなセットになっていたこと。
この後にでてくる京都の大路と対比的に描写されていたと思う。

さて日野俊基、眼光鋭く身のこなしすばやい只者ではない雰囲気いっぱいに、榎木孝明が主人公かと見間違えるほどの様相で登場する。

高氏 追放

屋敷に戻ると、高氏が長崎円喜の行列といさかいを起こした件がすでに伝わっており、父貞氏が長崎屋敷にお詫びに行ったと聞く。
もどった父に高氏は「先に刀を抜いたのは長崎方だ」というが、父は耳を貸さず「いやなら出ていけ」と言い放つ。
この鎌倉にいたくないやつは出ていけばよい

直義は「兄者は戦下手じゃ」と笑う。今謝れば父上も赦してくれるはずと助言するが、高氏はせっかくの機会なので京都に行きたい、という。

 

翌日、貞氏は長崎円喜に、高氏を鎌倉から”所払い”(追放)したことを報告する。
貞氏が下がった後、円喜は足利はなかなか自分のところに靡かない、と周囲に嘆息してみせる。

鎌倉を出た高氏と一色右馬介大地康雄)は京都に向かう。
途中、花夜叉(樋口可南子)一座と出会う。一座にはいり”ましらの石”と呼ばれるようになった青年(柳葉敏郎)の絡みがあるが面白くないので割愛。またこの時、藤夜叉(宮沢りえ)は風邪で伏せていたということで高氏とは出会っていない。

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足利高氏の生誕地はどこかという議論があるらしく、このドラマの中では栃木の足利荘で生まれ育ち、今回の上京が初めての京都であるかのように描かれている。
最近の学説では母方の上杉家があった丹波が生誕地であり、足利荘には一歩も踏み入れたことさえないのではないかという説さえあるそうな。
丹波生まれの育ちであるとするとこの年が初めての京都というわけでもなかったかもしれなくなるので、この後の高氏の行動原理の一部が成り立たなくなってしまう。

感想

貞氏ひたすら忍従。
高氏には「いつまで長崎に頭を下げるのか」と詰め寄られるも、にべもなく出ていけと言われる高氏。
一方で直義は直情径行というか感情をすぐに表に出すタイプ。兄が帰宅するたびに、「北条の娘との結婚なぞ」と詰め寄ったり、犬合わせの恥辱に「許せん」と激怒したりと忙しい。
視聴者としてはこの後の高氏を知っているだけに、どのようなタイミング、理由また経緯をたどって、彼が叛意を持ちそれを明らかにするようになるのか、今後の大きなポイントとなるのであろう。

 

 

 

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私本太平記 01 あしかが帖

私本太平記 01 あしかが帖

 

Kindleで無償配布されている原作小説。全13巻で読み応えがあります。

将軍・執権・連署: 鎌倉幕府権力を考える

将軍・執権・連署: 鎌倉幕府権力を考える

  • 発売日: 2018/02/09
  • メディア: 単行本
 

中公文庫のこのシリーズはコンパクトに名作をまとめていておもしろいのだが、太平記さいとうたかをの絵のクセが強いので読めないでいる。

大河ドラマ「太平記」1話「父と子」を見る

吉川英治原作「私本太平記」を原作に1991年に放映されたNHK大河ドラマ太平記」を見た。
もともとは音楽を担当している三枝成彰の劇伴でも聞こうかといった軽い気持ちで見始めたのだが、思いの外はまってしまった。本記事は別のブログで書いていたが歴史テーマということなのでこちらのブログに引っ越ししてきた次第。

主人公足利尊氏真田広之。当然のことながらかなり若い。
30年前の作品だけに出演している俳優・女優が一巡していて中には物故されている人も少なくないので今から見るとかなり新鮮に感じられる。
当時の番宣ポスターでは武者装束で床几に座った真田広之を中心に左右に宮沢りえ後藤久美子がたったものがあるが、宮沢りえ白拍子藤夜叉役、後藤久美子は後半南朝側の北畠顕家という美少年役で登場する。当時の目玉だったのだろう。

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あらすじ

源氏の棟梁と幕府・北条家の支配体制

鎌倉時代末期1285年(元寇は1281年)、有力御家人安達泰盛内管領平頼綱との対立が激化し、頼綱方の急襲を受け安達一族郎党は討ち滅ぼされる“霜月騒動”が冒頭に描写される。
ちなみに足利尊氏の生年は1305年。
足利家は鎌倉幕府においては源氏将軍家一門と縁戚関係にあり、源氏将軍家滅亡後は源氏を束ねる有力御家人として幕府・北条家から重用される一方、警戒されていた。

ドラマは霜月騒動後も続く北条による残党狩りの中で訴追を受けた吉見一族のさらにその一族であった塩屋氏一族郎党が女子供も連れ足利荘に難を逃れようと救けを求めてきたところからはじまる。
屋敷にいた尊氏の父、足利貞氏緒形拳)は、源氏の棟梁と見込んで助けを求めた彼らを見過ごせず塩屋一族を屋敷内に匿う。
すぐさま屋敷を北条方の追手が囲み、屋敷内には「戦うべし!」という声があがる。
今の足利家には北条と戦う力はございません・・」軽挙を諌める筆頭家老格の執事高師氏。
ならば、いつになったら我らは北条と戦える?・・無念とは思わぬか
貞氏は、塩屋一族を門の外、北条方の兵が満ちた中に送り出すように命じる。
塩屋一族は我らの最期を見届けて欲しいと言い残し、女子供も含め門外に打って出る。
門は閉じられ殺戮がおこる。

ドラマ冒頭からかなりシリアスなシーン、武将同士が戦う合戦ではなく幼子もいる女子供を含む人々が殺されるというショッキングな場面だ。
この後も足利貞氏は足利家当主として幕府・北条氏に陰に陽に警戒され続け、それごとに耐え忍んでいくのだがこの事件は足利家がおかれた立場を印象づけるシーンとなった

この時、貞氏はひょんなことで門外に出るのが遅れた子どもを一人、そのまま留置き生かした。が、これも幕府に知られることとなる。

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足利貞氏は鎌倉に戻り幕府へ出仕し、執権の元に伺候したのだが、いたのは北条家の前内管領長崎円喜フランキー堺)だった。
長崎円喜は貞氏を質す。

「(先の事件の際に)子どもをひとりお助けではないか?」
「これは詮議か?」
「なにを恐れ多いことを、足利殿は幕府開闢の頼朝公のご姻戚・・」
では、と立ち上がる貞氏
「待たれよ!まだ執権殿への挨拶を受けておらぬぞ」
「ワシは執権殿名代にして、円喜にあらず!控えよ」
威圧するように大声をあげる長崎円喜

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源頼朝にはじまる源氏将軍家の血が絶え、幕府の実権は執権であった北条家が握ったのは有名な話だが、実はその北条家自体も、「内管領」と呼ばれた筆頭家老格の家により実権を握られていたという二重三重の構造にあった。長崎円喜は前内管領にあたり、現在の執権北条高時内管領には円喜の子長崎高資西岡徳馬)が就任していた。
実態として北条家ひいては鎌倉幕府の実権はこの長崎父子に握られていたという。

幕府を牛耳る当代一の実力者、狡猾で抜け目のない人物をフランキー堺が好演している。顔は笑っていても目は全然わらってなく、するどくすわっているという演技はなかなかに難しいと思う。
これに対してじっと耐え忍ぶ貞氏を演じる緒形拳が応える。口数は多くはなくうちに秘めた思いも含めて表す演技もまた見どころ。

「さすがの足利殿にも、魔が差したということもあるかもしれぬ。子どもを救けられませんでしたか」
「そのようなものは知りませぬ」貞氏はきっぱり言い切った。

執権の間から辞した後、貞氏正室の兄であり北条家一族の金沢貞顕児玉清)と話す貞氏。その視線の先には自分の正妻の後ろ姿があったが・・。

足利貞氏の正妻は、なにかしらの理由があって貞氏とは不仲で実家?に帰っている様子が伺えるが、このドラマ内ではこれ以上は語られない。どうもこの後も登場しない模様だ。この場面の際に実兄である金沢貞顕もしょうがないといったことを言うだけでそれ以上のセリフはなかったように思う。
足利尊氏・直義兄弟は側室の上杉清子との子であり、正妻(名前は伝わっていないしドラマ内でも登場しない)とは長子である足利高義がいる。足利高義は尊氏より8つ年上だが、20のときに早逝している。ただこの時点は7、8歳であったと思われるが、ドラマ内では足利高義自体が登場しない。

金沢貞顕は北条家の一族に連なる人物で、この後も足利家縁戚として足利家を助けるように動く人物。この時は”連署”と呼ばれる役職にあり、幕府の中では”執権”につぎNO.2の地位にある偉い人。だが、後の回では貞顕を連署にしたのは長崎円喜で円喜のやることには口出しできないと告白するシーンがある。
後に幕府内の権力抗争の中で10日間だけ執権の地位につくことになったという。ウィキには次のような人物だったと評され、そのままに児玉清が演じている。

優秀な人物ではあったが、革新的な思考や武断的な手腕には乏しく、気配り・調整によって政権を維持する人物であった。成熟期に入った組織の運営をすることの難しさを知る者であれば、「おまえの苦労はよくわかる」と共感のもてる史料が多い

 

高氏の少年時代

この後ドラマは足利荘での少年時代の足利高氏・直義、また新田義貞が登場し、先の塩屋一族から救けられた少年が成人した一色右馬介大地康雄)が足利・新田の喧嘩の仲裁にはいるというシーンがはいる。
同じ頃、村落で村を焼かれ母親を殺されたという少年が、旅芸人の花夜叉(樋口可南子)の一座に拾われていた。後に”石”と呼ばれるようになるが、この時に村を焼き母親を殺したのが足利一族に連なる武士団ということで、足利憎しの思いをずっと抱えていく。またこの花夜叉一座の中には同じ年頃で”藤夜叉”もいた。

花夜叉一座、藤夜叉、また一色右馬介は原作にも登場する架空のキャラクターだが、”石”はさらにドラマオリジナルキャラクター。
一色右馬介はこの後、足利高氏の従僕として常に高氏に付き従い活動していくことになる。ただこれを大地康雄があっているかというと少々イメージが違うように思う。大地康雄をあてることでユーモラスな雰囲気を出そうとしていたのかもしれないがいまひとつしっくりこない印象。

 

幕府への出仕と犬合わせでの恥辱

元服した高氏は幕府に出仕するようになっていた。
ある日、執権北条高時片岡鶴太郎)が主催する犬合わせ(闘犬)の会が催される。
後の回のセリフにあるが、高時は、争い事が嫌い、政務も嫌いで、難しい議は全て長崎円喜と母御前に任せ、自分は田楽(踊り)と犬が大好きと公言するような人物。
次々と催される闘犬に手を打ち歓声をあげながらも高時は会場の周囲に座る御家人やその子弟をねめまわす中で、退屈そうにあくびをした高氏の姿を見つける。
自分の好きなものを侮辱したように感じたのか、高時は細い目でにらみつけながら、甲高い声で命じる
「あれはたれぞ?」
「足利殿の御曹司でございます」
「あやつに横綱をひかせよ」

最も強い犬の手綱をひいて会場を一周せよということで高氏は悪戦苦闘するが、途中犬に噛まれ装束はちぎれ泥だらけとなる。

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この片岡鶴太郎北条高時は怪演といってよいかもしれない。
小狡そうな小さな目で見回し、甲高い声で命ずる様子は独特の雰囲気を醸している。

一方の高氏、駆けつけた右馬介にこの事は家のものには言うな、と口止めし、帰宅する。
鎌倉の足利屋敷に帰ると
「兄者、これはなんとしたことか」
と弟直義(高嶋政伸)がぶんむくれている。
「嫁取りのことでございます。北条の姫君を兄者の嫁に・・」

ワシは知らんと応える高氏が後ろを見ると右馬介は憮然としている。
どうも知っている模様。

「兄者!」と呼びかける高嶋政伸が直弟直義を好演。
醸し出す雰囲気、口数が少ない兄と対比的に声が大きく周囲を巻き込むおおらかな弟役を演じている(歴史上の役割では逆の性格のようにも見えなくもないが)。
この後、この二人のコンビが討幕に乗り出しさらには朝廷との戦いと突き進む様子が早く見たい。ただその先の悲劇もまた・・

奥にいた貞氏と母清子(藤村志保)の元に行くと、父からはひょうひょうとかわされ、母親からは「ではこの話は終わりにしましょう」と答えられる。
が、この本を赤橋様のところにかえしてきてほしいと、和歌集を渡される。

 

感想

芸達者が要所に配されて安心して見れた(除く、少年時代)。
中でも緒形拳フランキー堺片岡鶴太郎の3人についてはもっと見てみたいと思わせてくれた。

 

 

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私本太平記 01 あしかが帖

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