Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

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大河ドラマ「太平記」2話「芽生え」を見る

 執権北条高時片岡鶴太郎)主催の「犬合わせ」(闘犬)の場であくびをして退屈そうな顔を見せていた、というそれだけの理由で大勢の御家人や町方の人々が見る前で恥辱を味合わせられた足利高氏真田広之)。
屋敷にもどると弟直義(高嶋政伸)が北条一族から高氏が嫁をもらうという縁談話に騒いでいる。父貞氏(緒形拳)、母清子(藤村志保)に訊くと体よくかわされ、代わりに赤橋家から借りていた歌集を返しにいってほしいと頼まれる。
行った先の赤橋家では当主赤橋守時の妹登子(沢口靖子)が応対に現れた。

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あらすじ

赤橋登子との出会い

応対にあたってのは赤橋守時勝野洋)の妹で後に高氏の正室となる赤橋登子であった。登子の美貌に気圧されたような高氏に対して、登子は高氏に対しての興味津々の風で臆することなく、歌とりわけ恋の歌について訊いてくる。
しどろもどろになりながらも答える高氏。
あげくは高氏も登子に興味が湧いたのか、「ワタクシメもその歌集を読んでみようか」とまで言い、返しに行ったはずの歌集を返却せずに自分が読むと借りてくる始末。

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沢口靖子です。
今とあまり印象が変わらないのも見事。ただ演技のほうも・・・なのでどこか人形のようなんですよね。
まぁこの後に登場する宮沢りえに比べると全然ましなのですが

赤橋家は北条一族に連なる名家。当主守時はこの回では登場しないが後に重要な役回りで高氏の前に現れることになる。もう少し言うと、鎌倉幕府最期の執権でもある。

赤橋家から屋敷にもどると、犬合わせの場での件を伝わり聞いた直義が激怒中。
許せん!北条の奴原よ

日野俊基との出会い

翌日、将軍御座所にいつもどおりに出仕した高氏は同僚の宍戸知家(六平直政)から「世渡り上手」だの「これで北条の嫁でももらえば安泰」だのと言葉をかけられるが、無言を通す。

足利高氏は無口で自分の思いをなかなか出さない人物として描かれている。感情も思いも全て口に出すキャラとして描かれる直義と対照的。高氏のこの性格のため見ているほうは高氏の本音をなかなか知ることができない。
面白いのは、この回の登子や後の藤夜叉(宮沢りえ)と初めて言葉を交わす場面など女性に対する際の高氏の態度や話し方が、奥手ぽくて良い。

帰宅途上、鎌倉の通りで僧や尼に率いられた念仏踊り時宗)の集団が長崎円喜フランキー堺)の行列と出会い、長崎方の供回りが傍若無人に僧・尼に斬りかかるところに出くわす。あまりの無法ぶりに止めにはいった高氏が、長崎方の家来衆に取り囲まれたところを、通りすがりの山伏が助ける。

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山伏と高氏が難を逃れた松原で、山伏は高氏に対して「ぜひ京都に」と誘う。
山伏は身をやつして全国の有力御家人を行脚し討幕を説いて回っていた朝廷方の日野俊基榎木孝明)だった。

このシーンで感心したのは鎌倉の通りが当然のことながら舗装などされていない道路で雨の日後などはかなりぬかるんだりしたのではないかということが想像できそうなセットになっていたこと。
この後にでてくる京都の大路と対比的に描写されていたと思う。

さて日野俊基、眼光鋭く身のこなしすばやい只者ではない雰囲気いっぱいに、榎木孝明が主人公かと見間違えるほどの様相で登場する。

高氏 追放

屋敷に戻ると、高氏が長崎円喜の行列といさかいを起こした件がすでに伝わっており、父貞氏が長崎屋敷にお詫びに行ったと聞く。
もどった父に高氏は「先に刀を抜いたのは長崎方だ」というが、父は耳を貸さず「いやなら出ていけ」と言い放つ。
この鎌倉にいたくないやつは出ていけばよい

直義は「兄者は戦下手じゃ」と笑う。今謝れば父上も赦してくれるはずと助言するが、高氏はせっかくの機会なので京都に行きたい、という。

 

翌日、貞氏は長崎円喜に、高氏を鎌倉から”所払い”(追放)したことを報告する。
貞氏が下がった後、円喜は足利はなかなか自分のところに靡かない、と周囲に嘆息してみせる。

鎌倉を出た高氏と一色右馬介大地康雄)は京都に向かう。
途中、花夜叉(樋口可南子)一座と出会う。一座にはいり”ましらの石”と呼ばれるようになった青年(柳葉敏郎)の絡みがあるが面白くないので割愛。またこの時、藤夜叉(宮沢りえ)は風邪で伏せていたということで高氏とは出会っていない。

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足利高氏の生誕地はどこかという議論があるらしく、このドラマの中では栃木の足利荘で生まれ育ち、今回の上京が初めての京都であるかのように描かれている。
最近の学説では母方の上杉家があった丹波が生誕地であり、足利荘には一歩も踏み入れたことさえないのではないかという説さえあるそうな。
丹波生まれの育ちであるとするとこの年が初めての京都というわけでもなかったかもしれなくなるので、この後の高氏の行動原理の一部が成り立たなくなってしまう。

感想

貞氏ひたすら忍従。
高氏には「いつまで長崎に頭を下げるのか」と詰め寄られるも、にべもなく出ていけと言われる高氏。
一方で直義は直情径行というか感情をすぐに表に出すタイプ。兄が帰宅するたびに、「北条の娘との結婚なぞ」と詰め寄ったり、犬合わせの恥辱に「許せん」と激怒したりと忙しい。
視聴者としてはこの後の高氏を知っているだけに、どのようなタイミング、理由また経緯をたどって、彼が叛意を持ちそれを明らかにするようになるのか、今後の大きなポイントとなるのであろう。

 

 

 

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中公文庫のこのシリーズはコンパクトに名作をまとめていておもしろいのだが、太平記さいとうたかをの絵のクセが強いので読めないでいる。