Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

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「戦車戦」(HJ)を試す(2)シナリオ4「デブレツェン」

手軽にできる戦術級ゲームということなので派手にたくさんユニットが登場するシナリオを選んでみました。
シナリオ4「デブレツェン」、両軍であわせて83両(ソ連軍55両、ドイツ軍28両)の戦車・自走砲が登場するというシナリオです。他にも防御側のドイツ軍には対戦車砲や輸送車両、また両軍に歩兵が登場します。

マップの形はへんてこで、ソ連軍は本隊の他、増援が時間差で3方向あわせて4箇所から登場します。ドイツ軍装甲部隊は末期戦の通り陸続と登場するソ連軍戦車の大群の前に右往左往することになりそうです。

 

yuishika.hatenablog.com

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シナリオ背景

シナリオの説明では1944年10月14日という日付になっています。
デブレツェンブダペストの東方約200キロに位置するハンガリー第2の都市。
他のゲームでデブレツェンがマップ上に載っているものがないか探したのですが見つけられなかったです。同じホビージャパンの「Bitter End」ではマップ外でした。

デブレツェンの戦い」はウィキにも記事があるのですが説明がいまひとつ要領を得ません。

ja.wikipedia.org

 

歴史群像」2012年10月号の山崎雅弘氏の記事「プダペスト包囲戦」にこの戦いの顛末が少し触れられています。

・・ソ連軍は、ハンガリー東部で突出した戦線を守るドイツ第8軍とその両翼を包囲すべく、マリノフスキーの第2ウクライナ方面軍に南からハンガリー中部のデブレツェンに向かわせた。・・
 イッサ・プリ-エフ中将に率いられた第6親衛戦車軍所属の機械化騎兵集団(第2、第4新鋭騎兵軍団と第7機械化軍団)は、10月9日に交通の要衝デブレツェンを脅かす位置へと進出し、翌10月10日には第2ウクライナ方面軍左翼のソ連ルーマニア軍が、ハンガリー東部を北から南へ縦断するように流れるティサ河(タイス河)でいくつかの橋頭堡を確保した。
 一方、ヒトラーはドイツ南方軍集団司令官フリースナーに対し、ハンガリー東部からの撤退を禁じるのと同時に、装甲部隊による大規模な反撃を同地で行うように命じた。10月10日、ドイツ第6軍の再建部隊として編入されていた第1と第13の二個装甲師団が、プリ-エフの機械化騎兵集団に両翼から挟撃作戦を開始、デブレツェンにおける戦車戦の幕が切って落とされた。
 比較的平坦な地形のデブレツェン周辺では、続々と到着する両軍の戦車部隊が入り乱れる形で戦線が目まぐるしく変化し、どちらが優勢なのか判断の難しい局面が続いた。
 10月20日ソ連軍はようやくデブレツェンの街を占領し、・・

 

ブダペスト包囲戦

ブダペスト包囲戦

 

大戦末期、ソ連軍の攻勢の中で起こったハンガリーの政変(ASLでも登場する矢十字党が政権をとる)から、ブダペスト包囲戦まで描いてありおもしろい記事です。MMP社からOCSの「Hungarian Rapsody」も出るところですし。

 

 

マップ・勝利条件

3枚のマップを使います。
勝利条件は右下のマップの市街地中央部広場の占拠。攻撃側になるソ連軍はまさに損害を顧みず前進せよ、ということになるでしょう。

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ドイツ軍は大きく2つのグループからなります。
上方のマップ2枚に初期配置される装甲部隊と、市街地防衛のために1ターン目に登場する歩兵部隊です。

装甲部隊は、ティーガーⅠやパンターまで擁し全部で40ユニット弱あるのですが、そのうち15ユニット以上を最前線になる上方左手のマップに配置する必要があります。
歩兵部隊は市街地マップの左手から登場するのですが、3ターン目には同じ方向からソ連軍の第3梯団が登場しますので、すぐさま防衛のために移動しながら配備につく必要があります。この防衛部隊は対戦車装備としてはマーダー、Ⅲ突を2両ずつに75ミリ対戦車砲2門を擁しています。

対するソ連軍はマップ最左端から1ターン目に登場する戦車部隊(第1梯団)。中でも最凶戦車のJSⅡを6両も擁しています。また後述しますが、このゲームではT34/85やSU100も決して侮れない強さを持っています。
ソ連軍の増援は登場ターンにダイスを振り、1D6により半分の確率で登場します。
登場できなかった場合は繰り越したターン数毎にダイス修正+1がはいりますので、少なくとも数ターン内には出揃うことになるでしょう。
ドイツ軍装甲部隊を上下から挟み込むように登場する、第2梯団と第4梯団、さらに勝利条件の市街地近くに直接登場する第3梯団とまさに続々と登場することになります。

ドイツ軍としてはソ連軍の第1梯団を押し留めつつも、あまりかまけているとソ連軍の増援部隊に挟撃されかねません。さらには市街地マップ近くに登場するソ連部隊はそこそこ強力なので、防衛の歩兵部隊を救援に向かわなけれなならないでしょう。

いくつかの選択ルールを採用しています。

 

第1ターン

イニシアティブはドイツ軍。移動フェイズでは後手を取り、進撃してくるソ連戦車に臨機射撃で攻撃します。
ドイツ軍はソ連第1梯団のJSⅡを止めるべくティガーやパンターの多くを上方左側のマップに集中的に配置しています。
ソ連軍は進行方向に対し、中央から右翼にかけてに足が遅いJSⅡを集中的に配置し、両翼にT34/85やSU85、SU100を配置し前進します。
先鋒のパンターが射撃をしようとするのですが、すぐに気づきます(というか事前に確認しておけ、というところですが)。
パンターの75ミリ砲やティガーⅠの88ミリ砲では4ヘックス(280メートル)以内に接近しないとJSⅡの正面装甲を撃ち抜けないのです。逆にJSⅡの122ミリ砲は20ヘックス内であれば三分の一の確率でドイツ軍主力の2車輌を打ち抜けます。少なくとも10ヘックス内ではこの確率が半分になります。
計算違いでした。一般的に機動力のソ連戦車に、砲力、特に長距離戦で有利なドイツ戦車という定石ではなかったのです。

代わりにドイツ軍は随伴のT34/85や自走砲を狙います。
ところがここでも思い違いを起こします。T34/85やSU100の正面装甲値もけっこう高いのです。数値的にはティガーⅠ、パンターと同じ数値です(側面や後面装甲レベルは両ドイツ車輌より低い)。少なくとも両車輌ともⅣ号戦車H型より優秀なのです。
やられメカと思っていたら予想外に強かった、といったところでしょうか。
計算違いはⅣ号戦車は近接しないと対抗し得ないという点、またティーガーパンタークラス、または対戦車砲による長距離射撃が効果がない点です。

このターン、数々の思い違いをはねのけてドイツ軍のダイスは冴え渡ります。
ソ連軍左翼の車輌6両を撃破したのです。
このターンの損害は以下の通りとなります。

  • T34/85  2両   
  • SU85  4両   
  • SU100  1両

ドイツ軍の移動では前衛で突出していたパンターを下げつつ、臨機射撃を行っていないティーガー等を前進させます。
写真には出ていませんが、右下の市街地マップの左端にドイツ軍の歩兵部隊が登場しています。

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第2ターン

イニシアティブはドイツ軍。+2のダイス修正は大きいです。
ドイツ軍は、攻撃フェイズは先手、移動フェイズは後手を選びます。
ソ連軍の増援はまだ登場しませんので、第1梯団のみです。

ソ連軍は前進を優先させます。
後から思えばターン数もあるためJSⅡについてはドイツ車輌に対して徹底的にアウトレンジでの攻撃を行っておけばよかったですね。

このターンの損害(ソ連軍)

  • T34/85 1両
  • SU100 1両

 

第3ターン

イニシアティブはドイツ軍、射撃フェイズは先手・移動フェイズは後手を選びます。

このターンよりソ連軍の増援が到着してきますが、増援チェックの結果は、マップ上方から登場する第2梯団、市街地マップ左手から登場する第3梯団とも失敗です。

このターン、移動途中に側面をさらしたJS2に対してのパンターからの攻撃が成功し、JS2 1両をようやく破壊します。
ドイツ軍はJS2を破壊するには近接射撃しかないということで遮二無二前進します。JS2の主砲も火を吹き、ティーガーⅠ、パンターに損害がでます。

このターンの両軍の損害

ソ連

  • T34/85 3両
  • JS2 1両

ドイツ軍

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第4ターン

イニシアティブはドイツ軍。射撃は先手、移動は後手をとります。
ソ連軍の増援チェックで第4梯団が現れます。
ただこの第4梯団はT34/76 10両からなります。
第4梯団はマップ3枚の接合点近くに登場させ、守備していたⅢ号突撃砲や対戦車砲陣地を攻撃します。オーバーランを絡ませることにより簡単に抜けると考えたのですが、シビアに損害が続出します。
付近の車輌も含め臨機射撃で出鼻をくじかれ、オーバーラン時には対象となった車輌の防御射撃(オーバーランの際には、攻撃側・防御側双方がゼロ距離で同時に射撃を行って解決する)を受けることなったのです。

ドイツ軍装甲部隊主力とソ連軍第1梯団との射撃戦は続いています。
このターンのソ連軍の損害

  • T34/76 7両
  • T34/85 2両
  • JSⅡ Ⅰ両

ドイツ軍の損害

 

第5ターン

イニシアティグはドイツ軍。
ソ連軍の増援はマップ上方から第2梯団が登場です。
第2梯団は強力なT34/85が含まれるため注意が必要。まだ防衛戦からの距離があるため、撃破は運次第といったところです。

ソ連軍第1梯団前面はドイツ軍の主力ティガーやパンターの近接によりJS2 が立て続けに撃破されます。
第4梯団のT34/76の残余は混戦の中で全車両失われます。
どの方面においても、イニシアティブにより終始有利なポジションからの射撃に徹したドイツ軍が先行します。

ソ連軍の損害

  • SU85 1両
  • T34/85 1両
  • T34/76 3両 (これにより第4梯団全滅)
  • JS2 2両

ドイツ軍の損害

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(つづく・・たぶん)

 

yuishika.hatenablog.com