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大河ドラマ「太平記」4話「帝ご謀叛」:派手な場面はなく陰謀渦巻く暗い展開。セリフの情報量が多く聞き逃がせない見逃せない

別サイトから移転してきた関係で順番がバラバラになっています。
大河ドラマ太平記」第4話「帝ご謀叛」です。 

前回までのあらすじ

窮屈な鎌倉を脱し京都にやってきた足利尊氏真田広之)と腹心の一色右馬介大地康雄)。お上りさん状態の高氏は、さっそく朝廷方の日野俊基榎木孝明)の勧誘に会い、連れて行かれたのが近江国の守護で後に婆娑羅大名と呼ばれる佐々木道誉陣内孝則)の屋敷。
道誉に勧められるままに飲んでいると酔いつぶれてしまい、挙げ句は踊っていた白拍子の少女藤夜叉(宮沢りえ)と一夜をともにしてしまう。これも道誉の差し金、罠、ハニートラップといったところだろう

ところが翌朝高氏が目覚めた時には少女どころか、屋敷には誰もいなくなっており、屋敷の外、都大路には六波羅の赤い旗が多数立ち並びただならぬ状況になっていた・・。
高氏19歳の秋。

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正中の変

正中の変は1324年10月と伝えられている。
後醍醐天皇による幕府転覆の企てが事前に六波羅の知るところとなり、六波羅側の軍勢が宮方の美濃国御家人土岐頼兼父子らを襲ったというもの。ウィキによれば四条あたりで”激しい市街戦”が発生したとあるが、ドラマでは宮方の武将たちの館を六波羅の軍勢が急襲し、一方的に捕縛か殺されたように描写されている。

朝臣では日野資朝日野俊基榎木孝明)が囚われ、後に鎌倉幕府の沙汰により、日野資朝佐渡島流し日野俊基は蟄居謹慎となった。後醍醐天皇は釈明書が受けいれられ赦される。

前夜来行方知らずだった高氏が半ば平然と半ば疲れた顔で、伯父上杉憲房藤木悠)の館に戻るとすぐさま一色右馬介が駆け寄り、「今までいずこに?・・右馬介は命が縮む心地でございましたぞ」と言い、継いで「・・六波羅は今、血眼になって日野の行方を追っています。よもや若殿は日野と・・?」と訊く。
「そうか、日野殿は逃げおおせられたか・・。」
六波羅が探し回っている謀叛人の肩を持つような発言に驚く右馬介。気にせず続ける高氏。
日野殿がおやりになさろうとしたこと、この高氏にはようわかる。日野殿は、この腐りきった世を変えようとなされているのじゃ。日野殿にはなんとしても逃げていただけねばならぬ。」
「口が過ぎますぞ!・・よろしゅうございますか。六波羅に、若殿が日野とお会いになっていたと密告をしたものがございます。さきほどそのお咎めがあり、上杉様が急ぎ六波羅に出向かれました。その様子では追って若殿に直々にお召があるのは必定と思われます。

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佐々木道誉

変の前夜、高氏に饗応を供した佐々木道誉は異変を予知し、いち早く都を抜け出し自領の近江にもどっていた。花夜叉(樋口可南子)一座一行も同行していた

どうも眠りこけていた高氏を残し、藤夜叉も含め夜半のうちに京を出ていたということなのだろう。

道誉が花夜叉に訊く。
「誰に文を書いておる?」
「隠れ家におわす日野俊基様に恋文を」
「おもとは日野様びいきじゃからの。されどあの御方はもはや詮無きお方。これまでよ。文などよせよせ。」
「あれほど日野様日野様と仰せられていたではござりませぬか」
「・・日野様はいささか目立ちすぎた。もはや手に負えぬ。
手に負えぬ故、鎌倉にお引渡しになったのでござりますか?
「引き渡す?この判官が?」
「殿様はもともと執権北条高時公ご寵愛の御小姓、鎌倉とは縁深きお方でござりましょう?日野様や土岐様にお近づきになったのも、足利高氏様をあのようにお試しになったのも、みな・・・
最後まで口にしない花夜叉、
「そうでなければ此度の六波羅の見事な動きは説きませぬ。」
「おもとも不思議な白拍子よのぅ」
花夜叉に見透かされみるみる不機嫌になる道誉。

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同じ頃、”石”(柳葉敏郎)は一生懸命文字を綴る藤夜叉(宮沢りえ)に声をかける
「誰に文を書いておる?足利高氏様への恋文か?あの御方はもはや詮無きお方。文などよせよせ。」

”石”が藤夜叉に言っている言葉が、さきほど道誉が花夜叉に掛けていた言い方をそっくり真似ているのが可笑しい。

「おもとも不思議なおなごよの。白拍子の身で足利様に恋をするとは。
・・京のあの一夜から、お主の顔には足利高氏様と書いてあるわ。・・好きになったか?」
「わからない。でも花夜叉様に言われたの。好きかもしれないと思ったら文をお書き、そうすれば、気持ちがようわかる。うまく書けたら、あの御方に届けてやろう・・。
でも何を書けばよいのかわからない。変なお方だったもの・・
おっしゃられることが突拍子もなくて、間が抜けていて・・
でも笑うと水のようにきれいな目で、こんなにやさしい顔があるんだ、って。
そう、笑いながら、小さな声で最後におっしゃった。『舞は見事でした』って。
でも、それだけ・・あとは・・たった一夜で。
・・だからあんなお方に文を書くのはやめた。何もないもの。たった一夜の事だもの・・

「それでよい。・・お主がワシの敵の足利を好きにならででよかったわ」

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最初に宮沢りえの演技を見た時にもう少しどうにかならなかったのかと思ったものだが、こうしてセリフをたどって二度三度と見る内に、そんなに悪くもないんじゃない、と思うようになってきた。
薄幸の藤夜叉という女性を演じるに演技力や魅力が足りないのではないかと思っていたのだが、これはこれで違った魅力を出しているのではないかと(まぁ、足りないとは思うけどね)。

この場面、彼女は懸命に文を書いていて一夜だけの恋人の顔や言ったことを思い出しているだが、でも結局文を出さないと決心してしまう。
後のエピソードでも高氏に浜辺で待っていて欲しいとまで言われていても、仕方ないからとその約束を寸前のところで反故にしてしまう。

両方とも、”石”がなにかと邪魔をしているのは確かだが、この藤夜叉という女性は大事なところの寸前ですーっと身を引いてしまう、遠慮してしまうところがあって、その儚い雰囲気を一生懸命にあらわしているように感じている。
そう見ていくと、今後もこの宮沢りえ演じる藤夜叉を見ていきたいと思うようになっている。
ただ”石”、お前はダメだ。

 

六波羅の詮議

右馬介の予想通り高氏は六波羅の詮議の席に呼ばれていた。六波羅探題北方の北条範貞(鶴田忍)の詰問を受ける高氏。
「淀の津で謀叛人日野俊基と御辺の姿を見たと申すものがいる以上、こうしてお訊ねする他はござらぬ」
「されば、重ね重ね申し上げておりまする。淀の津など参った覚えもなく、日野俊基と申されるお方にお会いした覚えもござりませぬ。」
「はて・・日野殿と親しゅうお話をなされていたのは醍醐寺の下人もしかと見ております・・」
「いくら申されても会わぬものを会うたとは申されませぬ。」
白状しない高氏に、六波羅側は証人を呼ぼうとするが高氏が押し止める。
「お待ちくだされ、
某が都に参ったのは3日前。醍醐寺の下人がなにゆえ、それがしの顔を見知ったるか。何故、某を足利高氏と判じたるか?」
醍醐寺で名乗られたのを聞き及んだのでござりましょう。」
「謀叛人日野俊基と会うのにわざわざおのれの名を名乗るものがござりましょうや?足利高氏、さほどのうつけではござらぬ!」

右馬介の話では高氏が日野俊基と会っていたとする密告があったということだったが、醍醐寺の後に立ち寄った淀の津の事まで知られているとすると、まぁ密告は佐々木道誉からなされたということ。ただこの時点、高氏はまだ道誉の裏切りには気づいていない。

 

鎌倉への波紋

京都からの早馬により鎌倉にも高氏詮議の件は伝わっていた。
足利屋敷では、話を受けた貞氏(緒形拳)が妻清子に苛立たしげに言う。
子というものは不思議なものだ。手元にいても遠くにいても親を刺す

貞氏は幕府に参内し、内管領長崎円喜フランキー堺)に釈明する。
「長崎殿、お聞き及びのことと存ずるが、京において高氏、六波羅殿より詮議を受けたる由。真に面目次第もござらん。お指図を受けるべく参上仕りました。
あくまで北条家に伏する姿勢を崩さず、疑いの目を向けられまいとする身を小さくする貞氏。
長崎円喜は「何事かと思えば、そのようなこと。讃岐殿も心労が絶えませんな。よもやお子が宮方につきて鎌倉に謀叛いたそうなどとは誰も思いもよらぬこと。・・のう連署殿」と笑みをたたえつつ、傍らにいた連署金沢貞顕児玉清)に話しを振る。

内管領”は鎌倉幕府の執権北条氏の宗家である得宗家の執事にあたり、北条家の家政を執る私的な役職に過ぎなかったが、長崎円喜・高資父子は執権の後見人として政務を処理し権勢を振るっていた。貞氏が執権北条高時ではなく、実務を握っていた長崎円喜の元に赴いたのもこの理由による。
連署”は”執権”に次ぐ幕府内のナンバー2の役職にあたる。この役職もまた、長崎円喜の息がかかっているため、金沢貞顕自身はその実、長崎円喜に頭はあがらない。金沢貞顕は北条一族の一人で、その名字は地名の金沢文庫に残る。
金沢貞顕足利貞氏の本妻の兄にあたり、この二人は義理の兄弟ということになる。貞氏の本妻の件は1話にて書いたので省略。
金沢貞顕は、御家人最大の足利家の懐柔のため常に足利家側も配慮した仕振りをこの後も継続していく。

話を振られたのですかさず足利家ヨイショをはじめる金沢貞顕演じる児玉清の風貌もあいまってホント良い人
「足利殿とこの金沢貞顕は縁続き、高氏殿も幼い頃よりよう存じあげておりますれば、構えてそのようなことは・・」
連署殿もそう申されておりまする。大事あるまい、ご案じなさるな。
上機嫌で応対する長崎円喜
「そのように申していただければ、この上もない。執権殿にもよしなにお伝えくださいまするよう。」
「うむ」
機嫌の良いまま立ち去る円喜。残った金沢貞顕が貞氏に声をかける。
「某も案じておったのじゃ。長崎殿がああ申されれば、ひとまず安堵よ。上首尾上首尾」
「口添えかたじけない」厳しい表情を崩さない貞氏。
「なんの、御事との仲じゃ。・・しかし高氏殿は真に日野俊基と関わり合いはあるまいの?」

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二人はまだ知らない。高氏の処遇について長崎円喜に考えがあった事を・・、終始上機嫌だった訳を・・。

「しかし高氏殿は真に日野俊基とかかわり合いはあるまいの。・・日野俊基はまずい。日野一人であればどうということはないが、日野の後ろにおわす方がただならぬお方。それだけに事が大きい。六波羅を襲い比叡山南で兵を挙げる謀叛の企ては、まぎれものう帝より出たことよ。帝の謀叛じゃ。
「帝のご謀反?」
思わず金沢貞顕に訊き返す貞氏。

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朝廷の事情

朝廷では後醍醐天皇片岡孝夫/現・片岡仁左衛門)の前で、公家達が対応を協議中。
鎌倉に対して実質的な詫び状を送ろうとする意見に対して、天皇が苦言を呈する。
「幕府に対して二心はない。朕は偽りを言わぬ。これは詫び状ではないか?かかる文を関東に送るのか?・・・北条の者共は鬼の首をとったかのように勝ち誇るであろう。」
若い公家からも「帝が武家に詫び状を送るなど前例に無き事。北条の者共はこれをよいことに帝のご退位を迫るやもしれません。さすれば、帝のご退位を望む持明院共を利するところ・・」と、朝廷内にある皇統の対立を再燃させかねないという意見が出る。
「すでに鎌倉では帝にご出家をお勧め奉るとか、恐れ多くも島へお流し奉るべしとか、聞き捨てならぬ論もあるやに聞き及んでおりまする。今出来得る限りの手をうつべきときかと・・」
「左様、あくまで朝廷の威を失わず、しかも日野俊基らの謀叛には何ら帝はご関知無しとする」別の若手公卿が主張に、
「朕のために矢面に立つ日野俊基を見捨てよ、というか?」
帝の問いに黙って平伏する公家たち。

後醍醐天皇は人払いをして乳父にて腹心の吉田定房垂水悟郎)だけを残す。
定房は帝の問いに答える。北条を倒し政を朝廷に復するは誰もが思っていることだが、中には時を待たねばならないことがある、と説く。今はその時ではないと
朕には六波羅を抑える兵すらない。・・時至らず、か・・。鎌倉に詫び状を・・。
日野俊基を見殺しにのう・・
と帝は落胆する様子を見せる。

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吉田定房タカ派の若い公家の意見に引きずられないようにやんわりと帝に説く。穏健派と言うことなのだろう。
後の元弘の乱(1331年)の際に吉田定房は討幕の謀を幕府に密告し、その結果後醍醐帝は隠岐島島流しとなっている。

 

捕縛

日野俊基は粗末な身なりに身をやつし京都市中の貧家に隠れているところに”石”が花夜叉の手紙を届けに来る。だがすでに六波羅の追手が現れていた。
別の隠れ家に移動するように促す”石”に俊基は言う
「お気持ちだけうれしくいただきます、と花夜叉様へお伝え下さい。・・身共は逃げるつもりも毛頭ござらぬ。・・(処罰されるのは)身共一人であればそれで良い。いずれ別の者が北条を倒しましょう。そうなると必ず、良い世の中になる」
良い世の中って、どういう世の中なんですか?
米を作るものが家を焼かれずに済む世の中です。母親が子を残して殺されることの無い、穏やかな世です。糸を紡ぎたいものが紡ぐことができる世です。
まじまじと俊基の顔を見る”石”。
そこに薬売りを装った六波羅密偵が戸外で口上を述べ始め、俊基は立ち上がる。
「なにか、ワシにできることはございませんぬか?」
”石”があわてて訊く。
願えればこれを河内の楠木正成殿にお渡しいただきたい」と俊基は造りが豪奢な短刀を”石”に差し出す。
「これが日野俊基でございます、とお渡し願えるかの。・・そう伝えていただければ、全ておわかりいただけるはず。」
外に出た俊基が六波羅密偵たちに取り巻かれそのまま連れ去られるのを、”石”は見送った。

六波羅探題。上機嫌な北条則貞の見送りを受け探題から出る高氏。
「足利殿、もはや京に長居は御無用ぞ。謀叛人日野俊基もさきほど我が手のものが捕らえたとのことじゃ。心置きのうお帰りなされよ。」

探題の門外には右馬介らが待っており、そこで馬上で縄をかけられひきたれらていく日野俊基の姿を目にすることになった。

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追い出されるように京を出た高氏と右馬介は藤沢の手前まで戻っていた。

「鎌倉へ戻り、また将軍の御座所に相勤めるか?朝、格子戸を開け、蹴鞠をし、執権殿や長崎殿の顔色を伺い、汲々として・・
都を見る前なら・・
日野殿に会い、帝を拝し、淀の津を見る前なら、執権殿の顔色も伺ごうたやもしれぬ。長崎殿の顔色も・・。
右馬介、いかが致せばよい?ワシは都を見てしもうたぞ。
都で白拍子に会うた。佐々木判官殿の屋敷で一夜だけ・・
朝、目を覚ますと、煙のように消えていた・・。それだけのことよ。
だが、白拍子の顔と名がこの頭から消えぬのだ。藤夜叉というその白拍子舞が、一夜の事よ、と消えてはくれぬのだ。
日野殿も、淀の津も、此度の騒動も何もかもこの頭から消えぬのだ。
教えてくれー。右馬介。いかがいたせばよいのじゃ。

高氏はここまであまり自分の心情を口にしてこなかっただけに、この長ゼリフは印象的。

そこへ武者に率いられた兵達が高氏一行を取り巻き、そのまま鎌倉侍所に連行されることとなる。

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長崎円喜の深謀

執権北条高時片岡鶴太郎)を前にして一連の対応について報告を行う、長崎円喜、その子高資(西岡徳馬)、金沢貞顕

詮議・密議・協議のシーンが続いたこのエピソードにおいてもここからの応対が白眉と言ってもよい丁々発止のやりとりになっている。
本来、内管領は北条家の家臣に過ぎないのだが、執権自体も内管領の意向に背くことが難しい状態になっているのが伺い知れる。
また享楽的な高時の言動とそれを演じる片岡鶴太郎の演技も見どころ。

「・・幕府より奉行2名を遣わし、帝ご謀反の真偽を入念に質させんと存じまするが」
長崎円喜
「それは良い。その議は許す。
・・して、奉行を送り、帝ご謀叛と判明せしときはいかがいたす?」高時は訊く。
「関東より軍を差し向け、帝の退位を迫ります。」勢いよく答える長崎高資

対する高時はゆっくりとした口調で下問する。
「それはいかがかのぅ?迫るまでは及ぶまい。うーん、及ばん、及ばん。
思うてもみぃ?朝廷に謀叛があったとて、帝に兵はおらぬ。なにができる?
軍を差し向ければ金がかかる、帝が退位すれば次の帝を選ばねばなるまい。
・・面倒よのぉ・・」
「ご案じなされますな。」長崎円喜は高時の口調にあわせるようにゆっくりと応える。
「面倒な議はこの円喜が考えまする。」
「この高時が14で執権についた時から、面倒は円喜がずーっと考えてくれた。円覚寺におわす母御前もそうじゃ。母御前と円喜はワシの恩人よ。」応ずる高時。
「ははーっ、ありがたきお言葉。」芝居がかったように大仰に平伏する円喜を白白と見る長崎高資

「さりながらその面倒の上に、足利の小セガレを捕らえて騒動に致す。いかに円喜とて面倒がすぎぬか?由来、高時は騒々しいのが大のキライじゃ。」

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思わぬ方向に高時の話がとんだということか複雑な表情を見せる長崎円喜。そっと円喜の表情を伺う金沢貞顕の様子から、事前に金沢貞顕から高時に対して、足利高氏捕縛の件に何かしら請願があり、それを受けた高時による遠回しの意見につながったのが想像される。

「・・あーぁ、そっとできぬのか?もっとそっと」と高時。
長崎円喜さすがに一筋縄ではいかない。淡々と説き始める。
「幕府がこれまで150年、曲がりなりにも世を平らかに治めて来られたのは何故でござりましょうか。・・大きな敵を作らぬよう、公平に人を遇したこと・・。」
声を大きくして、
「それでも敵ができるようなら、大きくなる前に早めに潰してきたこと。
足利がここまで勢力を大きくしてきたのはなぜか?これまで北条が潰してきた有力御家人の残党を所領に匿い養ってきたからだと説明する円喜。
「それは何故?」思わず訊ねる高時。
「わかりませぬ。・・だが此度の事でそれがわかるやもしれませぬ。」
笑みをたたえ答える円喜。

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高氏捕縛の件は足利屋敷にも届く。愕然とする貞氏。
高氏は侍所に連れゆかれた、侍所の周りは幾重にも兵がとりまき近づけない、次々にはいる報告に、「馬を引け!」叫ぶ貞氏。
牢内の高氏のシーンで終了。

感想

顔見世興行的な華やかさがあった前回から打って変わって、正中の変を受けた朝廷・鎌倉方また足利家といった各所での影響が描かれる。冒頭の出兵シーン以外、派手な場面はなく各所各人の思惑・陰謀渦巻く暗いストーリーが展開される。が、情報量は多く、セリフ一言一句まで見逃せない・聴き逃がせない内容であった。
(こりゃあ、普通の視聴者はついていけないのではないかと心配になる・・)

  • 佐々木道誉の鎌倉・宮方への二股掛けと裏切り、高氏を巻き込んだ真意
  • 足利が武士の棟梁と世にいわれ、また鎌倉方が鵜の目鷹の目で足利家を監視し続ける訳。(1話冒頭の足利家に庇護を求める武家のエピソードにもつながる)
  • 皇統をめぐる朝廷自体の内紛。決して一枚岩ではない朝廷と、後醍醐天皇の立場
  • 北条家内管領として実質的に北条家を牛耳る長崎円喜の謀
  • 高氏の疑惑をネタに足利家の真意を試そうとする長崎円喜
  • どこまで本気かわからない執権北条高時のセリフと円喜との鞘当て

 これが例えば戦国時代や幕末が舞台であったならその後の顛末も想像がつくのだが、鎌倉末期から南北朝時代には馴染みがないため、ひとつひとつの展開が新鮮だ。

「争い事は嫌いじゃ」「なるだけ事を荒立てないでおけ」、と独特のイントネーションで話す片岡鶴太郎北条高時 役)。1話の闘犬のシーンもそうだったが、どこまでが本音なのかわからない不気味さをたたえ好演。
対するフランキー堺長崎円喜 役)も顔は笑っていても目は笑っていないという典型。
足利の小倅の件は不問にしろという北条高時に対して、長崎円喜は反論し、長年の足利の疑惑とここが足利を追い込む好機とまで言う。主従とは言え、単に世襲で継いできただけの関係なので、お互い相手にスキを見せると食ってしまわんとするような関係が垣間見える。