Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「GUADALAJARA」(MMP)を試す(2/3)ゲームの紹介

スペイン内戦を題材にした作戦級ゲーム、MMP社のStandard Combat シリーズから、「GUADALAJARA」を試してみた。

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国際旅団の兵士写真。ファシズムからスペインを守るという大義名分のもと世界中から義勇兵として参加してきた男たち。国別出身者ごとに大隊が編成されたことから、このゲームの中でも国際旅団のユニットは国別に国旗があしらわれたデザインになっている。
イタリア人義勇兵で構成されたガルバルディ大隊は、グアダラハラの戦いでイタリア遠征軍相手に勝利した際に、ムッソリーニが派遣したイタリア正規軍の兵士たちに共和国軍に加わるように誘ったという。
ちなみに国際旅団に参加した日本人が戦死者1名の他数人はいたと伝わっているが詳細は不明。戦前日本から遠く欧州で義勇兵になるというのは留学・遊学などで現地に渡っている人たちだけではないかなと思うと、非常にレア。
集まった義勇兵の純粋な思いとはうらはらに国際旅団自体の実態はソ連の傀儡組織と言われており、戦争が進むにつれその正体を現し、最後のほうは共和国でもその存在を持て余したという。
NHKの傑作ドキュメンタリー「映像の世紀」の中では、国際旅団に参加した兵士たちはパスポートをとりあげられていたため、部隊の解散後、母国に帰るに帰れなくなったと一節触れられていたが、フランコ政権下のスペインでどうしたのだろう、と思うと暗澹としてしまう。

 

スタンダードコンバットシリーズ(SCS)の紹介

スタンダードコンバットシリーズは、簡単な共通ルールをベースに「経験者から初心者まで、素早く覚えることができ、シンプルにプレイを楽しむことができる」とうたい様々な戦場を扱ってきた連作ゲーム。ウォーゲーム経験者であれば標準的な(クラシカルともいう)ウォーゲームのルールのからアレンジされている部分だけを確認すればすぐにプレイできる。ルールブック冒頭から「ルールをざっと読んだら、何よりユニットを並べて楽しんで欲しい」と書いてある。
デザイナーズノートでも、「夕方にビールとプレッツェルを片手に、じゃあやろうか、的なノリではじめることができる気楽なゲーム」だ、と言っている。

特徴的なルールとしてはZOCの制約が弱い点がある。敵ZOCに入る際に+2移動力を消費するが、その追加移動力を消費できれば敵ZOCから敵ZOCへの移動も可能である。また戦闘結果による後退時の敵ZOCの影響、補給線に与える影響なども通常のゲーム感覚とは異なる。

最もユニークな点は、戦闘力比を計算する際の計算方法だ。通常のゲームのように戦闘比率の計算時の端数処理が防御側に有利になるように切り下げまたは切り上げを行うのではなく、四捨五入を行う。正確にいうと、攻撃側の数字と防御側の数字を比べて小さい方の数字でもう一方の数字を割った後、四捨五入を行うことになる。
この計算方法自体は、同じMMP社からリリースされているOCS(オペレーションコンバットシリーズ)でも採用されている。*1

他にはオーバーラン攻撃、「移動」「戦闘」を行った後にさらに一部のユニットに認められている「突破移動」といったルールもあるが、複雑なものではない。

「GUADALAJARA」の紹介

マドリッドを奪取し、スペイン内戦を速やかに終結させることを最終目的として、イタリア正規軍からなる遠征軍(CTV)がグアダラハラに向けて開始した作戦を描いた。共和国軍の予想外の厳しい抵抗により作戦は失敗に終わり、ナショナリスト派は首都占領を諦め、勝利を宣言するために国全体を占領するという長い道のりを歩まざるを得なくなった。

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実際の地図にゲームの範囲をあてはめると上図のようになる(地図上の青い四角の枠、ただし精緻な範囲ではないので目安)。

ムッソリーニ率いるイタリア遠征軍やフランコ将軍率いるナショナリスト軍はゲームマップの右側(北東方面)より侵攻を開始し、ゲームマップを右から左に走る幹線道路を突破し、グアダラハラ(緑の蛍光ペンで示した町)を目指す。グアダラハラの先には、首都マドリッドがあるという位置関係だ。地図を見てわかる通り、ゲームタイトルになっている戦いの名称となったグアダラハラの町は、ゲームマップ上には登場しない。

マドリッドからグアダラハラの町までの距離は約50キロ。
東京から北東方面に50キロの距離と言えば、茨城県牛久あたりになる。ゲームスタート時のイタリア遠征軍・ナショナリスト軍の前線はグアダラハラから北東に50キロ程度のラインになる。牛久から北東50キロを言えば、水戸あたりだろうか。
例えると、水戸から侵攻してきたイタリア軍ナショナリスト軍に対して、牛久の少し先あたりで共和国軍が迎撃したという戦いといえるかもしれない。 

1ターン=1日
1ヘックス=1キロ
1ユニット=中隊~大隊(主力は大隊規模)

シナリオは4種類
ナショナリスト派の侵攻にはじまり共和国軍の反撃までの11日間を扱うキャンペーンゲームから、戦役の一部だけを扱うショートシナリオあわせて4シナリオが用意されている。

ユニット数は多くはないが、スペイン内戦の複雑な内情を反映して主義主張や出身母体毎に編成された部隊は多彩でそれぞれの出自毎に色分けされているためユニットがカラフル。
ナショナリスト派は、ナショナリスト軍(Spanish Nationalist Army)、ファランヘ党軍(ファランジスト/Falangist)、カルロス主義派軍(カルロス民兵:Carlism)、イタリア遠征軍、イタリア義勇兵

共和国側は、人民共和国軍、共産党軍、無政府主義者軍(イベリア・アナーキスト連盟:CNT・FAI)、国際旅団などなど。

 

「GUADALAJARA」専用ルール

専用ルールがけっこうしっかりと用意されている。基本ルールだけであれば難易度は初級クラスだが、専用ルールを適用すると中級クラスに足がかかるといった印象(OCSが中級の上だとすると、本ゲームは10段階の4とか?)

ルール量も多く、煩雑であったため、専用ルール部分は自家製和訳を作るハメになってしまった(ソロをするぞ!と宣言してから時間を要したのはこれが理由。読む分にはいいが、プレイ中などに後からルールを参照する際に、標準ルールと専用ルールが別個になっているのは、記述箇所を探したり、細かい適用条件や、ダイスの目の修正値などを探すのが面倒だったりする)。

 

専用ルールの中でも目を引くのは、戦車、装甲ユニットに関するルール。
デザインノート言うところの「・・・未発達な戦術や隊形、低い機械的信頼性、貧弱な装甲と武装、経験不足な乗員・・」といった事を背景に、”残念な”ルールが用意されている。
対戦車戦闘に不慣れだったり、有効な対戦車兵器を保有していなかった当時の軍隊を表すため、装甲ユニットが参加する戦闘にダイスの目修正がつく一方で、無限軌道を装備しているクセに不整地走行が苦手で道路上にいない場合は機動力を十分に発揮できなかったり、戦闘に参加後には特別に故障チェックを行う必要があったり(修理は可能)といったルールが並ぶ。装甲車両を有する部隊は通常の歩兵のような戦闘ユニットと異なり、戦闘力/攻撃力を持たず、歩兵ユニット等と(必ず)いっしょに戦闘に参加することでダイス修正を行うことができるという存在として扱われる。単独で戦闘を起こすことはできない。

このゲームに登場する戦車の大部分は、イタリア軍が持ち込んだC.V.33(後にL3と改名)になるが、ゲーム内でも表現されているように、弱武装・弱装甲・前方のみの射界など実戦において問題が多い車体であった。 

「CV33 ガルパン」の画像検索結果

ja.wikipedia.org

 

 

 

他にも追加されるルールとしては、航空支援(直協支援/水平爆撃/交通妨害)、砲撃支援、火炎放射器装備部隊、部隊の再編、突破部隊の指定、トラック輸送、また国別、軍隊別のルールも用意されている。特にイタリア軍は異郷の地への遠征軍ということもあり有数の戦力を誇りながらも様々な制約が課せられている。

 

プレイ

キャンペーンシナリオを選んだ。

勝利条件はポイント制。地図内にかなりの数の村があるのだが、重要度が高い村には点数がついており(1~5ポイント)、占領した村のポイントの合算で比較する。
30ポイントでドロー、46ポイントを超えるとナショナリスト派の勝利だ。
史実に照らせばナショナリスト党は前半進撃し、後半共和国軍の反撃にあうことを考えると、前半戦でどれだけ多くの村を占拠できるかにかかっているということだろう。村の平均ポイントが2~3ポイントだとすると、目安として10を超える村々を占領していく必要があるということだろうか。

初期配置

初期配置位置は一線部隊は、連隊単位でおおよそ決まっており、指定されたヘックスから1~5ヘックス以内に配置というパターンが多い。マップは欧州内ということもあって、かなり多くの道路や鉄道が走っている。

専用ルールにより補給ルートとして道路ヘックスから大きく外れることができないため、進行ルートは道路を中心としたものにならざるを得ない。
戦車は上記のとおり様々制約を設けられており、移動においても不整地走行が苦手という性能にすぎないため(もとより、トラックなどの装輪/自動車化ユニットは不整地走行は苦手)、進行ルートは道路・鉄道に沿ったものにならざるを得ないことになる。

 

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*1:なぜ切り上げ・切り下げではなく四捨五入かという理由もデザイナーズノートに記述があるが、なかなか頷ける理由であった。

「KOREA -Forgotten War-」OCS(MMP)を対戦する (2/2)

朝鮮戦争を扱ったOCSの中の一作「KOREA -Foggoten War-」を対戦しました。取り上げたのは開戦から最初の3ヶ月を扱ったシナリオです。1950年6月25日、北朝鮮軍は全軍で38度線を超え、侵攻を開始します。

OCS Korea second edition box cover

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第2ターン/北朝鮮

毎ターン両プレイヤーはダイスを振りイニシアティブを決めます。
今回大きな目を出したのは国連軍でしたが、国連軍は後攻を選びます。

天候は良好。航空機も出撃できます。
ただ開戦時、韓国軍は観測機や練習機しか保有していなかったため、実質航空戦力はありませんでした。一方の北朝鮮軍にはソ連からの譲られたレシプロの戦闘機Yakや、襲撃機Il-2(イリューシン2)があわせて200機ばかりあったといいます。いずれも第二次世界大戦中は東部戦線で名を馳せた名機です。

 

西部戦線/ソウル・仁川方面

北朝鮮軍は南下しソウル前面に押し寄せます。中でも2個戦車大隊はソウル東方で漢江を渡河し、ソウル南方で鉄道を塞ぎ、ソウルに集結していた韓国軍を包囲しかかります。

韓国軍は仁川を補給源として使うことができるため、ソウル-仁川の連絡線を確保できれば*1 後方を遮断されたとしても籠城を決め込むことが可能です。ただ最大の問題は、北朝鮮軍がソウルを包囲したまま主力を南下させた場合に対抗できるだけの部隊が戦線にないのです。
北朝鮮軍による迂回包囲は予想できたことですが、前のターンでの戦力集中が裏目に出ました。

中央戦線/春川・洪川方面

春川を落とした北朝鮮軍は南下し、そのまま洪川を攻撃します。

戦闘ユニットは攻撃を行う際に必要な「SP」を消費するためには、司令部ユニット固有の支給範囲内に位置する必要があります。
裏を返せば司令部ユニットの位置からその司令部ユニットの支給範囲(=指揮範囲)内にあるヘックスが、戦闘ユニットにとって最大到達点になるのです。
司令部ユニットが前線に近ければ近いほど、戦闘ユニットは遠くまで到達することができます(当然、戦闘ユニットは、見合うだけの移動力を持っている必要があります)。

現時点、侵攻側である北朝鮮軍は、司令部ユニットを安全にどこまで進出できるかを測り、さらにその支給範囲内でどこまで戦闘ユニットを進出できるかを測ります。

韓国軍にとって、北朝鮮軍がどこまで来るのかは最大の問題です。

 

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第2ターン/国連軍

中央方面/ソウル・仁川方面

仮にソウル籠城とした場合も正面の北朝鮮軍を押し止めるだけの戦力はなく、戦線を突破されるのは時間の問題であると予想し、国連軍はソウル放棄を決定します。
ちょうど日本の熊本から仁川経由で到着したばかりのアメリカ陸軍第24師団スミス支隊(大隊規模)と韓国軍の1個連隊を殿としてソウル市街ヘックスに残し、主力はソウル南方に進出していた北朝鮮軍戦車のうち1ユニットに攻撃を集中させます。ソウルに補給物資(SP)を残しても北朝鮮に鹵獲されるだけですので、全力で攻撃します。

砲兵部隊の猛烈な砲撃の後、ここまで防御一辺倒だった韓国軍がはじめて攻勢を行います。北朝鮮の戦車大隊1個を除去し、ソウル包囲網の一端をこじ開けたのでした。

スミス支隊(Task Force Smith)は北朝鮮軍の侵攻後はじめて半島に派遣されたアメリカ軍部隊。九州に駐屯していた第24師団の所属。兵力は2個中隊規模で空輸の関係で無反動砲や迫撃砲などの大隊所属砲兵器の携行は半分に減らされた(このあたり、アメリカ軍のガダルカナル島への上陸に即応して派遣された一木支隊にも事情が通じる印象)。

7月5日、水原南方の烏山にて北朝鮮軍の先鋒と不期遭遇戦となった。T-34/85に対し無反動砲もバズーカー砲もあまり有効ではなく突破され、歩兵部隊に迂回包囲されそうになったことから、兵員の1/3近くを失いつつ後退した。

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中央戦線/洪川方面

両翼から迂回してきた北朝鮮軍を避けるように後退しつつ反撃。初期の戦力をほぼ維持したままで後退できているので良しとしましょう。

第3ターン/国連軍

このターン、イニシアティブは国連軍がとりました。イニシアティブをとったプレイヤーは先攻/後攻を選ぶことができるのですが、今ターンは先攻をとります。
ここは選択の余地はなく、前のターンでこじ開けたソウル包囲網から可能な限り多くのユニットを包囲網の外へ逃がすのです。

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第3ターン/北朝鮮

ソウル陥落。
スミス支隊も最後までソウル市街にて抵抗したが壊滅(除去)されます。周辺に残っていた韓国軍の残余ユニットもあらかた掃討され、北朝鮮軍の本隊は漢江を超え、南侵の道をとります。

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第4ターン

先攻は国連軍。
国連軍にとっては、北朝鮮軍がソウルと漢江を超えた後、地形としては防御に適した地形は少なく、どこに拠って守るべきなのか迷います。北朝鮮軍に補給物資を消費させるため攻撃をさせては少しずつ後退するのが理想だと思われますので、そのような防御地点を複数箇所、想定しおくべきなのでしょう。

このターン前後あたりからアメリカ軍の増援が本格的に配備されるようになります。ところがこの増援も日本から輸送してくるには、「SP」を輸送するために使っているインフラを使う必要があります。つまり、増援を運べばその分、「SP」の輸送が減るのです。またこのターンから輸送機が配備され、海上輸送に加え、空輸による輸送が本格化します。空軍も登場します。

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この頃になると北朝鮮軍は初期のターンでやったような補給ポイント使い放題というような正面攻撃ではなく、例えば戦車大隊の機動性を生かした迂回による連絡線の切断と包囲といった動きを多くとるようになってきました。
こうなると部隊数や機動力に劣る国連軍、こと現在の主力である韓国軍は弱いです。ユニットの配置、位置取りが重要になってきますが、ZOCで敵ユニットの移動を留めることができない点が問題になってきます。

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今回は時間切れにより第4ターン終了にてエンドとなりました。
マップを見返すと、韓国軍とアメリカ軍増援(まだ1~2個連隊程度)が天安に集結しつつありますが、一方で北朝鮮軍の先鋒は天安の東方、忠州との間の連絡線を遮断する地点まで進出し、一挙に勝利条件都市の大田を伺いそうな勢いです。

以前にプレイした「KOREAN WAR」(エポック/サンセットゲームズ)のプレイ感覚と比較すると、ソウルが落ちたとはいえ国連軍側は戦力を温存したまま、撤退できた印象です。北朝鮮軍は歩兵部隊の損害は少ないものの、先のソウル包囲突破において4個しかない虎の子(再編できない)戦車大隊の1個を失っています。北朝鮮軍がこの後も多用するであろう迂回包囲作戦を遂行していくためには、移動力に優れた戦車大隊の損失は大きいと言えるかもしれません。
また北朝鮮軍にとってのボトルネックは「SP」になるかもしれません。ここまでのような消費はできなくなる可能性が高いのです。今後は攻勢作戦を発起する前に休止状態が必要なことになるのかもしれません。

 

感想

非常に面白いゲームでした。
両プレイヤーともOCS初ゲームだったのですが、指導監修のYさんのおかげで大外れすることなく進行させることができました。

今回は4ターンとほんの少しかじっただけですが、ゲームシステムとしても、またそれを用いた戦場としても研究しがいのあるゲームと感じました。

 

戦闘正面は広くなく、ユニット数も多くない戦場のため作戦がたてやすく、それでいて劇的な展開を見せるという点で、朝鮮戦争はよい題材だと思います。

いかにして北朝鮮は2ターンでソウルを落とすのか?(落とせるのか?)
その後の侵攻計画。史実を同じ様に釜山占拠を目指すべきなのか?
(今回のシナリオの北朝鮮軍の勝利条件では、ソウルと大田を占領した段階で持久にはいるという手は有効か??)

一方の韓国軍は、少ない兵力でいかに守るのか?
理想的な遅滞行動をどうとっていくのか・・。
史実では釜山円陣まで追い込まれた国連軍は、仁川に逆上陸を敢行することで大逆転を図るわけですが、戦況次第とはいえ、作戦選択をフリーハンドで与えられた場合、どのような防衛計画・反抗計画を立て得るのか・・。挑戦しがいのあるテーマだと思います。

またOCSの補給ルール、戦闘ルールの習熟は必須でしょう。
再戦したいゲームとなりました。

 

 

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*1:OCSにおける、ZOCと補給線のルールとして、味方ユニットが存在するヘックスは補給線の確認において、敵ZOCの効果を打ち消すことができます。韓国軍はソウル-仁川の間に1本のラインを作れれば、北朝鮮軍ユニットのZOCにはいっていても補給線は通じていると判定されることになります。

「KOREA -Forgotten War-」OCS(MMP)を対戦する (1/2)【修正】

MultiMan Publishing社の製品ラインナップにはいくつかのシリーズ作品がありますが、本作はOperational Combat Series(以降、OCS)の中の一作で、朝鮮戦争の開戦から休戦交渉がはじまるまでの最初の1年間を扱っています。

OCS Korea second edition box cover

 

特徴的な補給ルール

OCSのルールの中でも補給に関するルールは独特です。デザイナーズノートを見ると、補給ルールのデザインコンセプトとして3点があげられています。

  1. 集積ができるようにすること
  2. 距離によって影響を受けつつも補給を運んで消費できるようにすること
  3. それほどややこしくない、ペーパーワークを必要としない程度のプレイアビリティでできること

 

次のサイトに和訳掲載されている「1st エディション デザイナーズノート」より抜粋。
OCSをプレイするなら必見のサイトです

ocs.memo.wiki

ゲームの中では「SP」(サプライポイント)と呼ばれる補給物資を運び、前線近くや戦線の後方に蓄積する必要があります。

「SP」は燃料や弾薬を現しており、車両を有する部隊(移動タイプが装軌または装輪のユニット。徒歩ユニットは含まれない)が移動する場合、砲兵部隊が砲撃を行う場合、また戦闘ユニットが戦闘を行う場合(これは攻撃側だけではなく防御側ユニットにおいても)、「SP」を消費します。消費できなければ攻撃を発起できないといったペナルティが課せられます。

補給源からの輸送方法は、海上輸送、鉄道輸送、空輸、車両による輸送から駄馬・荷馬車等による輸送まで各国軍隊のロジスティックス事情により異なる手段が用意されています。
前線において十分すぎるほどの補給があることはなく、攻勢作戦の前には消費を抑え、物資を蓄積しなければならないでしょう。

今回の「KOREA」において緒戦の北朝鮮はさすがに補給物資を備えた状態で開戦しますが、これも攻勢作戦を数度発動すると使い切ってしまうくらいの量です。節約して計画的に使っていくか、その後の攻勢作戦前には物資を貯めるか必要となります。ちなみに北朝鮮軍が使うことができる輸送手段は、鉄道輸送、トラック輸送、馬車です。
韓国軍は開始時においてはソウルやいくつかの拠点に物資を蓄積していますがこれらも、防衛戦闘の中に使い切ってしまうか、北朝鮮軍に集積地を占領されて接収されてしまう可能性があります。
その後は国連軍が持ってくる補給物資に頼ることになります。その国連軍の補給源は日本本土になります。日本本土から海上輸送を利用して釜山などの港湾に運び、港湾からは鉄道かトラックによって輸送されることになります(輸送機が配備された後は空輸もできるようになる)。国連軍の補給も無尽蔵ではなく、海上輸送や鉄道輸送の輸送量制限により制約され続けていきます。

補給を物資の輸送としてデザインされたゲームは以前からありましたが(例えば、北アフリカ戦線を扱った作品とか・・)、このOCSの補給システムは、クセがあるとは言え、デザインコンセプトの3番目の項目に記述されているようにプレイアビリティを保った上でのシステムになっているように感じました。

 

シナリオの紹介

選んだシナリオはシナリオ2「Invention of South Korea(韓国への侵略)」、北朝鮮による奇襲に始まる開戦から最初の3ヶ月間を扱ったものです。史実と照らし合わせると6月末のソウル陥落、7月韓国軍戦線の崩壊と国連軍の参戦、8月の釜山攻防戦・9月下旬の仁川逆上陸・国連軍のソウル奪還までの時期になります。
1ターンは3日 4日と3日が交互に現れる(2ターンで1週間)、全11 29ターン。
1ヘックス=5マイル(8キロ)
ユニットは大隊~師団単位。師団ユニットは連隊単位のユニットに分派可能。

北朝鮮軍は38度線を超えて侵攻し、地図内のソウル、大田、大邸の3都市を占領することが勝利条件となります。

(訂正)
北朝鮮軍の勝利条件はゲーム終了時にソウルと大田を確保していること。国連軍の勝利条件はソウル、大田、大邸の確保です。
史実では、北朝鮮軍は38度線を超えて侵攻し、6月28日ソウル、7月21日大田を陥落させ、8月には釜山を目指した攻防が開始されます。その後、9月15日に国連軍は仁川に逆上陸を果たし、9月28日にソウルを奪還します。
このシナリオはちょうど、エポック/サンセットゲームズの「KOREAN WAR」がゲーム化している期間に相当するシナリオと言うことができます。

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朝鮮半島の中は半島の西側から中央部を中心に鉄道網・道路網が整備されている。問題は東海岸で鉄道が十分に敷設されていないため、補給路の設定に工夫が必要となる。

 

初期配置 

初期配置はヒストリカルな配置が決まっています。
北朝鮮軍が38度線北側に軍隊を集結させているのに対し、韓国軍は38度線付近の主要都市に連隊単位のユニットが分散されて配置されているだけです。戦力が大きい師団ユニットも見えますが、配下の連隊を付近の拠点に分派しているため、これらも実態としては連隊規模の部隊にすぎません。

北朝鮮軍には戦車大隊があります。「KOREAN WAR」でも登場し特別ルール(韓国軍ユニットのZOCをすり抜けることができる)が与えられていたあの部隊です。また戦力的には小さいものの驚異的な移動力で韓国軍の後方をかき乱すオートバイ連隊もあります(この部隊もまた「KOREAN WAR」に登場していました)。一方の韓国軍は自動車化部隊としては装甲車の大隊が1個あるだけです。

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当時はきっちりと38度線に沿って国境が分けられていたため、韓国には西海岸の甕津半島(オンジン半島)に飛び地を持っていました(上記マップの左端あたり)。「KOREAN WAR」では史実にあわせてここにも歩兵連隊ユニットが1個配置されていましたが、本ゲームでは捨象されているようです。

 

当方は韓国軍、Dさんが北朝鮮軍を担当。二人ともOCS初プレイということで、Yさんのインスト&指導がつきました。

 

第1ターン/北朝鮮軍プレイヤー

1950年6月25日未明、北朝鮮軍は38度線を超えて侵攻を開始します。
天候は悪かったため空軍の出動はなかったのですが、砲兵部隊は全力攻撃です。

西部戦線(ソウル方面)

ソウルの前面にあたる開城、議政府付近に分散配置された韓国軍の2個師団分の連隊は強力な砲撃の援護の元、前進してきた北朝鮮の精鋭歩兵師団により文字通り粉砕されます。開城と議政府は北朝鮮軍に占拠され、前線はソウル間近に迫ります。

中央戦線(春川方面)

春川に韓国軍の構築陣地があり若干強化されています。
地形としてはいかにも山間部のように見えますが、緑色で表されている「Low Hill」ヘックスは、北朝鮮軍と韓国軍の大部分を占める”徒歩(Leg)”移動の部隊にとっては平地と同様の移動力消費となるので防御に適している訳ではありません。

春川とその東方に配置された連隊が攻撃され、韓国軍は洪川まで後退します。

東部戦線(東海岸方面)

山間部が迫っているため地形的な幅がなく、日本海に面した東海岸に沿った街道1本に沿った戦いになる場所です。東海岸沿岸は38度線から北側には鉄道が敷設されているのですが、南側は浦項付近までくだらないと鉄道はありません。その間はすっぽりと抜けた状態です。道路はあるので補給線は設定はできますが、司令部からの距離など制約がはいるため、部隊運用に注意を要する戦線と言えましょう。

史実では北朝鮮軍の海兵部隊が舟艇機動で韓国軍前線の背後に奇襲上陸などを仕掛けた戦線でもあります。「KOREAN WAR」では上陸作戦を行うことができる北朝鮮軍の海兵部隊ユニット(戦力としては小さい)が登場しますが、このゲームではよくわかりません。

北朝鮮軍は東海岸での攻勢はあきらめ守備隊だけを残し主力は西方向に転進させます。

 

史実では開戦4日目にあたる6月28日、北朝鮮軍はソウル市街に突入、あわてた韓国軍が漢江の橋を落として撤退しています。ゲームでいうと第1ターンの終わりか第2ターンにソウル占領したことになります。

OCSの戦闘システムでは攻撃を行うことができるタイミングとして1ターンの間に、移動途中の①”オーバーラン攻撃”、砲兵部隊や航空支援による②”砲爆撃”、③通常の戦闘フェイズでの攻撃、突破フェイズにおける移動セグメントでの④オーバーラン攻撃、また⑤戦闘セグメントでの攻撃があります。それぞれ実施できるユニット種類や条件に制約があるため、役割分担をする必要がありますが、戦闘システムをよく理解して、うまく計画すれば、2ターンでのソウル占領は十分にありえるのではないかと思いました。

またOCSのZOCルールは”弱ZOC”のため、敵ユニットに隣接するヘックスであってもZOCを打ち消して通り抜けることができます。通常のウォーゲームでの感覚でプレイしていると、やすやすと抜けられてしまいます。戦闘システムにおける複数回の攻撃手法と、この”弱ZOC”ルールをうまく組み合わせることで、韓国軍の戦線を突き崩すのです。

朝鮮戦争の開戦日は日本の書籍では、ウィキペディアでの記述を含めて6月25日となっていますが、ゲームでは6月26日となっています。現地時間6月25日、米国時間6月26日ということでしょう。

[2021/2/6 指摘により修正]
朝鮮戦争の開戦日は6月25日です(諸書籍・ウィキ等)。
アメリカ時間だとすると6月24日なのですが、ゲームではキャンペーンゲームの開始日は6月26日になっており、どうもあいません。
ゲームの設定が間違えているのではないかと思っています。

[2021/2 再修正]
OCSのデザインポリシーとして開戦日を起点に第1ターンが設定されている訳ではなく、OCSゲームが共通的に各ターンの日付を設定していることから、この「KOREA」では第1ターンが6月26日スタートとなった、とかなんとか・・。すみません何言っているかわからないですね。確認して正確に記述します。
ともあれ、ゲームの設定が間違えている訳ではなく、ポリシーに照らして確信犯的に、第1ターンのスタート日が決まっているということのようです。

 

第1ターン/韓国軍プレイヤー

韓国軍にできることは戦線の整理です。

西部戦線(ソウル・仁川方面)

ソウル近郊の部隊はソウル市街ヘックス中心に集め、ソウルにもっとも近い補給源である仁川港を奪われないよう、ソウルから西海岸までを部隊で埋めることにより戦線を張ります。
またソウルに備蓄されている多くの弾薬燃料から一部を、トラック部隊を使って後方に移動させます。

ソウルで戦線を構築するため、水原あたりの後方にいた部隊も北上させます。
ただ前線に兵力を集めすぎるのは、明らかに悪手で、北朝鮮軍の包囲殲滅作戦に乗ったも同然だったのです。

中央戦線(春川・洪川方面)、東部戦線(東海岸方面)

春川は占領されたため、次の拠点となる洪川に部隊を集めます。中央戦線は守備の拠り所となる地形があるため、守っては少し下がりという遅滞行動を行います。注意するのは、西部戦線側と同期をとって下がることでしょう。

東部戦線は北朝鮮軍の部隊が他方面に引き抜かれたため、攻勢はないと判断します。北朝鮮と異なり、韓国軍には他方面に転用できるような戦力はないのですが。

 

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実際のプレイにおける第1ターン終了時の写真です。この時は、ソウルに備蓄したかなりの補給物資とあわせ、わが軍は結構強力ではないか!と思っていたのです。

(つづく)

 

 

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朝鮮戦争(上) 血流の山河 (講談社文庫)

朝鮮戦争(上) 血流の山河 (講談社文庫)

  • 作者:芝豪
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: Kindle
 

 

「FRONT TOWARD ENEMY」(MMP)を対戦する

ベトナム戦争を扱った戦術級ゲーム「FRONT TOWARD ENEMY」(MMP)を対戦した。

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シナリオ概要

シナリオ1「SEARCH AND DESTROY」
村やジャングルに紛れたベトコン(南ベトナム解放民族戦線)を捜索殲滅するため、サーチ・アンド・デストロイ作戦が実施され、1個小隊規模のアメリカ軍部隊がベトコンの拠点があるとされた村々を襲撃した。

ダイスの結果により、当方はベトコンを担当。Rさんが米軍を担当した。

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全36ターン(1ターン=5分なので3時間)
勝利条件はポイント制。ベトコン側はアメリカ軍へ与えた損害、アメリカ軍はベトコンに与えた損害の他、隠匿された施設や補給品を発見・破壊すると得点になる。

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1行目はアメリカ軍、2行目はベトコンを構成するユニット。
3行目はベトコンが設置する施設(発見・破壊するとアメリカ軍の得点になる)

 

初期配置

初期配置でベトコンは、マップ内の村と村ヘックスから4ヘックス以内に配置。アメリカ軍は第1ターンに、マップ右端からヘリコプター搭乗状態で進入する。

ベトコンは背後にジャングルに覆われた丘(289高地)を抱えた中央と右側(北側)の村を配置場所として選択した。配置場所には選ばなかった左側(南側)の村は周囲の障害地形からも隔絶した平地の中にあるため、部隊の移動展開に問題があると判断した。
アメリカ軍は十分な機動ができないジャングルからではなく、村が面している平地側から来るのではないはと予想した。火力と射程に優れ、アウトレンジ攻撃が可能な平地側からであれば、近接戦闘がメインとなるジャングル内よりも、アメリカ兵にとって安全に戦闘ができると判断するのではないかと考えたのだ。

こうした判断により、兵力の配置は集落内のヘックスに集中させ、”裏山”に当たるジャングル側は、ジャングル内の移動経路になる「小路(Trail)」沿いに、いくぶんかの陣地(塹壕たこつぼ)と小路の合流点数カ所にブービートラップを仕掛けることで対応した(平地側は移動経路の限定ができないためブービートラップには不向きと判断していた)。
さらに中央と右側の村との兵力配置については均等配備するのはなく、中央側にはダミーユニット、民間人(村民)ユニット、また偽装施設を多く配置し、武装した主力は右側の規模が小さい村側に集中させた。

プレイ

マップ右端(北方向)に現れたアメリカ軍のヘリボーン部隊(ヘリ10機)が降下場所に選んだのは、ベトコン側の予想を外れた場所であった。
主力は中央の村から死角にあたるマップ下側のジャングル端にある平地に、また一部は289高地山頂部にわずかにある平地に降り立った。289高地山頂部はその後も、負傷兵を回収する救助ヘリの降下位置として、活用されていく。

ジャングルは基本的にLOS(Line of Sight:視線)を妨害し、隣接するヘックスしか見ることはできない。289高地山頂は麓の村やジャングルの中からは見えないため、安全にヘリの発着や乗員の乗降ができたのだ。

アメリカ軍が開けた平地側ではなく山間部の死角を降下場所に選んだのは、ベトコンによりヘリを攻撃されることを恐れたためであった。

歩兵ユニットの戦死または負傷によるポイントは3~4点(死体や負傷者を運び出せればポイント戻りがあり喪失するポイントを軽減できるため、損失ポイントは軽減可能)であるのに対し、ヘリを失うと一挙に10点を失う。さらにこのゲームの戦闘解決システムの性質上、貧弱なベトコンの火力であっても射程内であれば10%の確率でラッキーヒットが発生し、損害判定を行うことになるため、撃墜される可能性があった。

降機したアメリカ軍部隊はジャングルの中に入りジャングル内の小路を通って村に接近していった。

ジャングルの必要移動力は1ヘックスあたり2移動力、小路は1移動力。
だが289高地のジャングルのほとんどが等高線がはいった傾斜地にあたるため、等高線を超える移動には追加の移動力が必要となり、小路を通ったとしても下手すると1ヘックス程度しか動くことができない。

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濃灰色がベトコン、明灰色がアメリカ軍。ジャングルや村の中に位置しているため、両軍とも「隠蔽状態(Concealed)」マーカーが載っているので、何がなにかわからなくなっている。ベトコンの「隠蔽状態」マーカーの半分近くは、ダミーや民間人ユニットなので、実態があるスタックは見た目ほど多くはない。
マップ左端に、第1ターンのランダムイベントで登場したコブラ2機と初期配置のUH-1ホッグ2機が、ベトコンが姿を現すとすぐに集中攻撃を浴びせるべく空中待機中。ただこれらのヘリも長くは滞空できず帰還することになる。

UH-1の輸送タイプは通称「スリッグ」。7名の兵が搭乗可能。よってこのシナリオでは1個小隊相当分の兵を運ぶため8機が登場している。輸送タイプのヘリは、搭乗した兵を降ろすとすぐに退避していく。同じUH-1にガンポットを装備した、ガンシップ型のUH-1の通称は「ホッグ」だ。なお輸送タイプのUH-1も、映画などで見るように、乗降口に機関銃を装備しているのである程度の火力は持っている(この乗降口に搭載した機関銃を”サガミマウント”と言うらしい。余談)

第1ターン

ランダムイベントでアメリカ軍側に攻撃ヘリコブラ」2機が支援に登場するが、発見されたベトコンユニットが存在しないため、何もできないまま空中待機。
ここでベトコンユニットが移動や戦闘といった存在を暴露されるような行動を行うと、待機中のUH-1のガンシップ型「ホッグ」2機とあわせて攻撃してくることは必至だ。実態としては影響は少ないものの、ベトコンは空中から動きを封じられた格好となった。

ランダムイベントは毎ターン1回発生する。イベントはアメリカ軍向けまたはベトコン向けどちらかにあたり、支援攻撃を得る、援軍を得るといった良いイベントと、指揮ができなくなるなどのペナルティイベントがある。また一定割合でイベントなしが発生することもある。

第2ターン

ジャングル内を前進するアメリカ軍の1ファイアチームがブービートラップに掛かり、1名負傷。

第3ターン

ここまで沈黙を守っていたベトコン側で最長射程をもつ狙撃兵が、最長距離でアメリカ軍を狙撃するも外れる。

もともと火力が弱いベトコンユニットは目標がジャングルなどの防御地形にいると、地形修正がはいるため、どうかすると修正後の射撃値がマイナスがとなることが少なくない。とはいえダイスを振って「1」の場合は必ず成功というルールがあるため、最低でも必ず10%の成功率は残っている(逆のパターンで、ダイスの結果「10」の場合は、必ず失敗扱いとなる)。

この射撃、外したこと自体は予想された結果だったが、その後、この狙撃兵は空中にいたヘリに集中攻撃を受け、負傷後、さらに戦死してしまう。

もうひとつこのターン、アメリカ軍の前線観測班チーム(FO:Foward Obsserver)が村を見下ろす位置に前進したことで支援砲撃を呼び出すことができるようになる。

アメリカ軍はどのシナリオでもデフォルトで支援砲撃の呼び出しが可能であり(ここが物量で圧倒するアメリカ軍たる所以)、呼び出した際に呼び出しの成否と呼び出された砲種類また砲撃がはじまるまでの時間(ターン数)をダイスで決める。なお北ベトナム軍は、ランダムイベントとして支援砲撃の権利を得ることができるが、そもそもランダムイベントでそのイベントを引き当てる確率が低い上に、呼び出した際の成否チェックの成功確率が低いため、実際に支援砲撃を得られる確率は非常に低いと言わざるを得ない。

第4ターン

アメリカ軍主力がジャングル内にベトコンが設けた未確認状態の施設マーカー(白地に赤い?マークがあるマーカー)のあるヘックスに進入し、捜索を開始する。

各ユニットは練度値(Troop Quality)を持っており様々な成否チェックに用いられる。施設があるヘックスでの捜索チェック、また発見後の破壊チェックについてもこの練度を用いて判定される。

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 アメリカ兵のファイアチームはおおよそこの練度は4、一方のベトコン兵は3が多い。このゲームのわかりやすいのは、ダイスの判定の際に10面ダイスを使うため、それぞれの数値はそのまま、アメリカ兵の成功率は40%とすぐにわかることだ。

2ヶ所目のブービートラップが爆発し、アメリカ軍に負傷者が発生する。ジャングル内でベトコンとアメリカ軍との射撃戦が発生しはじめた。

ジャングル内では隣接ヘックスまでしか射線が通らないため隣接ヘックス同士での射撃戦となる

ジャングルの隣接ヘックス同士でアメリカのファイアチームと、ベトコンが打ち合いを始めた場合、それぞれの射撃値は「3」と「1」となり、それぞれ30%と10%の確率で相手に損害を与えることができるようになる。
見てわかるように、まともに射撃戦を行った場合、ベトコンが撃ち負けるのは必定。

第5ターン&以降のターン

アメリカ軍によるベトコン施設捜索は1ヘックスずつ「捜索」。施設ユニットの半分はダミーですが、本物を発見した際にはその後、「破壊」チェックです。アメリカ兵でも成功率は40%(=練度値)ですのでかなり手間取っている。

この頃になると「砲撃支援」が次々と着弾しはじめる。アメリカ兵といえどもファイアチームの火力はたかがしれているので、まとめて複数ヘックスに対してファイアチームの火力以上の火力での打撃を与えることができる支援砲撃は非常に有効だ。ベトコンユニットの中には民間人(村民 )ユニットもまぎれているため、リスクを見込んだ上での砲撃となる(民間人に死傷者が発生した場合は、アメリカ軍側にペナルティがつく)。

プレイ途中、「砲撃支援」の手順の適用を間違えていることを気づいた。
ASL(アドバンスドスコードリーダー)ユーザーからすると、「臨機射撃」を行う際、また「突撃移動」を行う際に練度チェックを行うのも忘れがちだ。
「臨機射撃」の手順自体はASLよりもわかりやすく実行できるが、射撃の際に練度チェックに成功しないと臨機射撃ができない。ただでさえ練度が「3」しかないベトコン兵にはつらい。

ベトコンは村内に置いていた兵力をジャングル内に送り込みはじめる。
あわせて前線で負傷した兵を回収し、トンネルより脱出させる

負傷兵や死体をマップ外に出すとポイントが戻ることは書いたが、その手段としてアメリカ軍はヘリでの脱出か盤端から連れ出す。ベトコンはトンネル経由か盤端経由となる。悩ましいのはヘリで脱出させる場合を除き、負傷兵や死体を連れ出す際には連れ出したチームもまたゲームから退場してしまうことになるのだ

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赤丸地点は、今回のゲームを通して最大の激戦地となったジャングル内の小路(trail)の交差点。ベトコンの拠点がある北側の村につながる小路である。。もともとはベトコンが設けたたこつぼ(Foxhall)があったが、写真は、アメリカ軍の支援砲撃により一度アメリカ軍の手に落ち、ベトコンが奪還するべく包囲した場面。その後、ベトコンに奪還され、アメリカ軍の射撃チームは負傷兵を抱えて後退した。その後もアメリカ軍の支援砲撃にさらされ続けた。

 

1ヘックスずつ攻略したアメリカ軍が歩ををすすめる中、14、5ターン進んだところで時間切れ終了。

 

感想戦

ASLユーザーが忘れがちなルール

ゲーム中、いくつかのルールの見落としや適用漏れがあった。ASLではいずれもチェックは不要なこともあり、「機会射撃」と「突撃移動」に連動チェックが必要な点は見落としがち。
とはいえ全体にはルールはシンプル。とりわけダイスが10面ダイスのため修正値と確率がわかりやすい点、また射撃解決のシーケンスもシンプルでよかった。

非対称な軍隊による戦闘

シナリオについては冒頭ヘリが多数登場するなど派手な展開を見せるものの、その後の展開は結構地味だ。アメリカ軍は1ヘックスずつ地歩を進めながら、捜索を行っていく。ベトコンが攻撃してきても、火力が弱いため損害を受ける確率は高くない。恐れるのはむしろ、ブービートラップや民間人への誤射か。

一方のベトナム軍はけっこう苦しいように感じた。なによりもアメリカ軍は敵の死傷による他、ベトコン施設の発見・破壊でもポイントを得ることができる。一方のベトコン側はアメリカ兵の死傷のみでしかポイントを稼げない。ヘリの撃墜は高得点だが、登場シーンは限られている。ベトコンの勝ち筋がわかりづらい。

アメリカ軍の攻め方

今回Rさんはアメリカ軍をジャングルそばに降下させジャングル経由で侵攻したが、平地側から派手な力押しもできたのではないかというのもありかなとおもう。平地側から観測チームに観測させて、どしどし地上支援を繰り返し、姿を現したベトコンにはヘリの対地支援や機関銃チームの銃撃を集中させるのだ・・。今後アメリカ軍を担当したら試してみよう。

 

 

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クレイモアの実物の写真。思ったよりサイズが小さい。
「FRONT TOWARD ENEMY」というのは実際にクレイモアに書いてある但し書きであることがわかる。

 

 

【図解】ベトナム戦争

【図解】ベトナム戦争

  • 発売日: 2019/11/01
  • メディア: 大型本
 

 

 

 

 

「GUADALAJARA」(MMP)を試す(1/3)背景

年末年始で重いゲームが続いたため、軽めのゲームとしてMMP社のStandard Combat シリーズから、スペイン内戦(スペイン市民戦争)を扱った「GUADALAJARA」を開けてみました。

Higher resolution image of the box.

 

グアダラハラの戦い

スペイン内戦ははっきり言って疎いです。
ゲームとしてはアドバンスド大戦略の最初の数シナリオがスペイン内戦だったなぁ・・といったくらい。むしろピカソゲルニカや、ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」、写真家のキャパといったスペイン内戦に直接または間接に影響されて生まれた芸術・文芸作品の印象のほうが強いかもしれません。

ja.wikipedia.org

 

グアダラハラはスペイン中部の都市、1940年当時の人口が20000人あまり(現在でも80000人程度)ということなので決して大きな街ではありません。グアダラハラの戦いは、1937年3月8日から23日にかけて行われ、最終的には人民共和国軍が反乱軍(ナショナリスト軍)とイタリアのスペイン遠征軍に対して勝利した戦闘になります。例によって日本語ウィキはないため、英語版から要約して紹介します。

en.wikipedia.org

 

グアダラハラの戦い(1937年3月8日~23日)は、スペイン内戦中に人民共和国軍(EPR)がマドリッドを包囲しようとしたイタリア軍と反乱軍(ナショナリスト軍)に勝利した戦闘。反乱軍側の主力はイタリア軍のスペイン遠征軍(CTV)だった。
戦いは3月8日にイタリアの攻勢で始まるが11日に中止された。3月12日から14日にイタリア軍は反乱軍(ナショナリスト軍)の支援を得て攻勢を再開するが、これも頓挫した。3月15日、共和国軍の反撃が計画され、18日から23日にかけて実行に移され成功した。

背景

マドリッドへの第3次攻撃が失敗に終わった後、スペインのナショナリスト軍のフランシスコ・フランコ将軍は、首都周辺で挟み撃ちをを目的とした第4次攻撃を継続することを決定した。Jarama川の戦いで勝利を収めたとはいえ、ナショナリスト軍は疲弊しており、作戦を遂行できる状態ではなかった。イタリア軍はMalaga占領後、楽観的で、Jaramaで人民共和国軍が受けた大損害を考慮すると、簡単に勝利を収めることができると考えていた。イタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニはこの作戦を支持し、イタリア軍の部隊をこの作戦に投入することにした。

イタリア軍指揮官マリオ・ロアッタ将軍は、マドリードの防衛陣を北東から包囲することを計画した。Jarama川でナショナリスト軍の「マドリッド」軍団と合流した後、マドリッドへの攻撃を開始した。攻撃の主力はイタリア軍が担った。ナショナリスト軍の「ソリア」師団も参加していたが、最初の5日間の戦闘では何の役割も果たさなかった。
メインの攻撃はGuadalajaraとAlcala de Henaresとの間の25キロの間で始まった。この地域には幹線道路が5本通っており前進するのに適していた。このうち3つの道路はGuadalajaraに通じており、同地も戦場となることが予想された。
ナショナリスト軍の戦力は兵力 35,000 人、砲222 門、L3/33 戦車と L3/35 戦車 108 台、装甲車 32 台、自動車 3,685 台、フィアット CR.32 戦闘機 60 機であった。イタリアの戦車と装甲車は「Tank and Armoured Cars Group」(Agrupación de carros de asalto y autos blindados)として組織された。イタリアの航空機は「レジオナリア空軍」(Aviazione Legionaria)として組織された。
Guadalajara地域における人民共和国軍は、ラカル大佐の下にあった人民共和軍第12師団だけであった。彼の指揮下には 1 万人の兵士がいたが、装備はライフル 5,900丁、機関銃 85丁、砲 15門であった。T-26軽戦車1個中隊も派遣されていた。人民共和軍は反乱軍の次の攻勢は南から来ると確信していたため、Guadalajara地域は平穏な戦線と考えられており、陣地構築は行われていなかった。

File:Mapa de la batalla de Guadalajara.png

ナショナリスト軍:青矢印、イタリア派遣軍:薄紫矢印、共和国軍:赤紫矢印

 

イタリア軍の攻勢

3月8日

30分間の砲撃と航空支援の後、イタリア軍は第50共和国旅団に対して前進を開始した。豆戦車(タンケッテ:Tankette)を先頭に共和国軍の防衛陣を突破したが、霧とみぞれで視界が 100 メートル(110 ヤード)まで低下したため、攻撃速度は鈍化した。それでもイタリア軍はMirabueno、Alaminos、Castejonの町を含む10~12キロの地域を確保し、共和国軍の司令部は後退することとなった。共和国軍司令部は、歩兵と戦車中隊の増援を要請した。

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イタリア軍の豆戦車 

3月9日

ナショナリスト軍は人民共和党軍陣地への攻撃を継続した。主な攻撃は戦車で行われたが、貧弱な装備と見通しの悪さでたびたび攻撃は停滞した。人民共和党軍第50旅団は戦闘を止め離脱した。正午頃、イタリア軍の前進は第11国際旅団(the XI International Brigade)によって阻止された(エドガー・アンドレ大隊、 テールマン大隊、パリ共産党大隊からなり、主にドイツ、フランス、バルカン諸国からの兵士が参加していた)。
イタリア軍はこの日、15~18kmの地域とAlmadrones、Cogollor、Masegosoの町を占領した。夕方、イタリア軍の先頭はBrihuegaの近郊に到着し、共和国軍のラインの突破が拡大するのを待つためにそこで停止した。攻勢の停止は電撃作戦の方針と相容れないものであったが、 兵士たちには休息が必要だったのだ。
この日の共和国軍は第11国際旅団、砲兵隊2個、第12師団第49旅団の歩兵中隊2個で構成されていた。彼らの戦力は兵力1,850人、小銃1,600丁、機関銃34丁、砲6門、戦車5両であった。その日の終わりには、エンリケ・ジュラード・バルリオ大佐の元、Torijaのマドリッド-サラゴサ道路で、中央にリスター第11師団、左翼に第12師団、右翼に第14師団を配置した第4軍団を編成されるなど、多くの援軍が到着し始めていた。

3月10日

共和国軍は新たな援軍を受けた。イタリア人とポーランド人からなる第12国際旅団(ヤロスワフ・ダブロフスキ大隊とジュゼッペ・ガリバルディ大隊の2個大隊)、砲兵隊3個、戦車大隊1個であった。共和国軍の兵力は4,350人、迫撃砲8門、野砲16門、軽戦車26両であった。
午前中、イタリア軍は準備砲撃と航空支援から第11国際旅団への攻撃を開始したが、成功せずに終わった。その時点で、26,000 人の兵士、900 丁の機関銃、130 台の軽戦車、多数の砲兵部隊が戦闘に投入されていた。ナショナリスト軍は、MiralrioとBrihuegaの町を確保するが、後者の町はほぼ無抵抗で占領された。
ナショナリスト軍による第11、第12国際旅団に対する攻撃は午後中続いたが、それでも成功することはなかった。Torijaでは共和国軍側のイタリア人部隊ガリバルディ大隊との遭遇戦が発生した。小競り合いの間、ガリバルディ大隊のイタリア人はナショナリスト軍の兵士に対し共和党に加わるように勧めた。攻撃は夕方には停止され、ナショナリスト側のイタリア軍部隊は防御陣地を構築した。
その日の終わりに、ラカルは公式には健康上の理由で指揮官を辞任したが、おそらくはジュラードの下につかされたことに対する憤りからであった。第 12 師団の指揮権はイタリア人の共産主義者ニノ・ナネッティに与えられた。

3月11日

イタリア軍は第11、第12国際旅団の陣地への前進を成功させ、国際旅団は幹線道路をたどり退却を余儀なくされた。イタリア軍の前衛はTorijaの町の3キロ手前で停止した。ナショナリスト軍の「ソリア」師団がHitaとTorre del Burgoの町を占領した。

共和国軍の反撃

3月12日

リステルの指揮下にあった共和国軍は午前中に再配置し、正午に反撃を開始した。Albacete飛行場には、スペイン共和国空軍の戦闘機「チャト」(Chato: ソ連製の単座複葉戦闘機I-15の愛称)と「ラタ」(Rata: ソ連製単座単葉戦闘機I-16の愛称)が100機近く、カティウスカ爆撃機ソ連製軽爆撃機ツポレフSBの愛称。共和国軍が使用していたが、後のフランコ政権下でも接収後の同機種を1950年頃まで使用し続けた)の2個中隊が配備されていた。イタリア軍団空軍の航空機が水浸しの空港に着陸していたのに対し、アルバセテ飛行場にはコンクリートの滑走路が確保されていたため、共和国空軍はこの問題を抱えていなかった。
イタリア軍の陣地を空爆した後、T-26 と BT-5 の軽戦車に支えられた共和国軍歩兵がイタリア軍の陣地を攻撃した。ロアッタ将軍は機動部隊を移動し反撃しようとしたが、泥濘地形の中で少なくない数の戦車が擱座するか、対地攻撃機の容易な目標となったことで失われた。共和国軍の進撃はTrijuequeに到達した。イタリアの反撃は失われた地形を取り戻すことができなかった。

画像

I-15

3月13日

共和国軍のTrijuequeとCasa del Cabo、Palacio de Ibarraへの反撃が開始され、ある程度の成功を収めた。計画では、リステル指揮下の第11師団と全装甲部隊をZaragoza街道に集中させ、メラ指揮下の第14師団はTajuna川を渡ってBrihuegaを攻撃するというものであった。イタリア軍は、スペイン軍の総司令官バローゾ大佐から警告を受けていたが、この助言を無視した。メラは川を渡ることに失敗しそうになったが、地元のCNTのメンバーはどこに浮橋を設置すべきかをアドバイスした。

3月14日~17日

3月14日、共和国軍の歩兵隊のほとんどが休息し、その間に空軍は攻撃を成功させた。国際旅団はPalacio de Ibarraを占領した。その後、共和党は軍勢を再配置して集結させた。
共和国軍はこの時点で兵約20,000人、迫撃砲17門、野砲28門、軽戦車60両、航空機70機を有していた。
一方のイタリア軍とスペインのナショナリスト軍の戦力は、兵約45,000人、迫撃砲70門、野砲200門、軽戦車(L3タンクレット)80両、航空機50機を数えた。

3月18日

未明にメラ率いる第14師団はTajuna川を橋を用いて渡河した。激しいみぞれが攻撃を遅らせたが、昼過ぎには共和国空軍の活動を可能にするほどに回復した。13:30頃、ジュラドは攻撃命令を出した。リステル指揮下の共和国軍はイタリアのリットリオ師団(イタリア軍の中では間違いなく最高の部隊)に苦戦するが、第14師団がBriguegaを包囲しかかると、イタリア軍はパニックに陥って退却した。残りのイタリア兵は第11国際旅団によって一掃された。共和国軍の陣地に対するイタリア軍の反撃は失敗した。リットリオ師団の活動により、イタリア軍は組織的な撤退を行うことができ、大惨事を免れた。

3月19日~23日

共和国軍はGajanejosとVillaviciosa de Tajunaを奪還した。フランコが予備兵力を供出してLedancaとHontanaresの間の防衛線を確保したため、反撃は最終的にLedancaとHontanaresとの間で阻止された。

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グアダラハラ付近のナショナリスト

顛末

グアダラハラの戦いは共和国軍の重要な戦略的勝利として世界中で注目を浴びた。ハーバート・マシューズはニューヨーク・タイムズ紙に、「グアダラハラにおけるファシストの敗北は、ナポレオンにとってのバイレンでの敗北と同じとなった。」と寄稿した(1808年、スペインのバイレンの戦いにおいてナポレオン軍が降伏した戦いを指す)。イギリスのマスコミは「カポレットの再来」(カポレットは第1次世界大戦でイタリア軍が大敗した戦い)と呼び、イギリスの元首相デビット・ロイド・ジョージは「イタリアの撤退」と書いたため、ムッソリーニを激怒させた。

イタリア遠征軍は約3000人の兵士(一方のスペインのナショナリスト軍の損害はわずかだった)、相当数の豆戦車を失った。さらに共和国軍は、砲35門、機関銃85丁、車両67両を含む大量の物資と装備を鹵獲した。戦略的には、共和国軍の勝利によりマドリッドの包囲は阻止され、首都で決定的な勝利を得ることで共和国軍を壊滅さえるというフランコ将軍の野望を砕くこととなった。フランコ将軍は首都奪取をあきらめ、北方の地域から共和党の勢力圏を削いでいく戦略に転向した。・・・

イタリアの敗因

イギリスの歴史家ポール・プレストンはイタリアの敗因についていくつかの要因を特定している。

  • 共和国軍の粘り強さ。マラガにおける共和国軍兵は、機械化された戦列に対して対抗ができずに簡単にパニックに陥ったが、マドリードを守る組織化された共和国軍兵は質的に全く異なった。
  • 大雪やみぞれに対しイタリア軍が準備できていなかった(多くは植民地時代の軍服装備だった)
  • イタリア空軍に舗装された滑走路がなく、遠征軍の航空機は泥だらけの飛行場で身動きができなくなり、共和国軍の対地攻撃の餌食となった
  • ナショナリスト軍の戦闘参加が3月9日にずれ、その戦いぶりも活発でないなど、ナショナリスト軍の全体的な不作為があった。
  • 固定の機関銃装備しかないイタリア軍の豆戦車に対し、回転砲塔を備えたソ連製T-26は優位であった。
  • 共和国軍の反撃に備えた配備をしなかったイタリア軍司令官ロアッタの判断ミス

 

イタリアの攻勢が最低限の成功にとどまったことは、装甲部隊に適さない不利な地形環境において装甲部隊の集中投入による攻勢は、首尾一貫した歩兵の防御に対しては脆弱であることを示していた。
フランス陸軍参謀本部は、フランス陸軍の従来からの戦術ドクトリンに照らし合わせ、機械化された部隊は近代戦の決定的な要素ではないとの結論に達し、ドクトリンを形成した。ただしこの参謀本部の結論に対して、シャルル・ド・ゴールは反対の立場をとった。
ドイツ軍は、グアダラハラの失敗は指導力と計画性の産物であると結論づけたことにより、装甲部隊の扱いについてフランス陸軍とは異なる結論を導き出した。
戦闘中にイタリア遠征軍のの司令部で観戦していたドイツ軍参謀は、イタリア軍の戦闘態度を称賛している。

 

 背景の説明だけで字数が使ってしまったので今回はここまで。次回はSCSの紹介とプレイ状況を書きます。

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(つづく)

 

 

yuishika.hatenablog.com

 

 

スペイン内戦――1936-1939 (上)

スペイン内戦――1936-1939 (上)

 
スペイン内戦――1936-1939 (下)

スペイン内戦――1936-1939 (下)

 
スペイン戦争―ファシズムと人民戦線 (中公文庫)

スペイン戦争―ファシズムと人民戦線 (中公文庫)

  • 作者:斉藤 孝
  • 発売日: 1989/09/01
  • メディア: 文庫
 

 

「NEVSKY」(GMT)を対戦する

周囲では、2019年もしくは2020年のベストゲームではないかという話さえ聞こえてくる「NEVSKY」(GMT)を対戦しました。*1
副題が”Teutons and Rus in Collision 1240-1242"とあり、1240年から1242年のチュートン騎士団ドイツ騎士団)とロシア(ノヴゴロド大公国)との戦いというかなりマイナーな戦いを扱っています。

 

対戦ゲームの顛末は、結果から言うとやり直しを含め2回プレイしたのですが、コテンパンにやられてしまいました。我がチュートン騎士団自慢の重装騎兵は長篠の戦いの武田騎馬軍団よろしくことごとく討ち取られてしまったのでした。

 

 

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Nevskyとは何者ぞ?

13世紀のロシア、ノヴゴロド大公国の公を経てウラジーミル大公国の大公となる。中世ロシアの英雄として讃えられている、という人です。ゲームが取り扱っている時の年齢は21、22歳ということなので、こんなヒゲだるまであったかのかどうかはわかりません。

ja.wikipedia.org

全く知識がないところなので、このゲームに関係するところを抜き出すと、

  • 当時東欧はモンゴルの侵攻を受けている真っ最中の時代だったが、ノヴゴロド大公国は侵攻から免れていた。ところが騒乱に乗じて、キリスト教の版図を広げるという名目のもと、ドイツ騎士団スウェーデンはその領土を狙っていた(北方十字軍)。
  • ネフスキーは若干20歳だった1240年夏、侵攻してきたスウェーデン軍を寡兵でもって大勝し、勇名をロシア全土に轟かせる(ネヴァ河畔の戦い)。これをもって、「ネヴァ河の勝利者」という意味の「ネフスキー」と呼ばれることとなった(この名前は後世につけられたという説もある)。
  • 1240年冬、親ドイツの姿勢をとる国内の貴族と仲違いし、ノヴゴロドから追放されるが、その後、1241年に復帰し、逆に親ドイツ派の貴族たちを粛清し国論をドイツ対抗する反ドイツに統一する。
  • 1242年4月、ドイツ騎士団が侵攻してきたが、「氷上の決戦」(チュド湖上の戦い)で勝利する・・・(と、この1240年から1242年にかけての部分がゲームで扱われている)。

と続いていくのですが、一方で 

スウェーデンドイツ騎士団との戦い(ネヴァ河畔の戦い、氷上の決戦、・・(他いくつも並んでいる)・・)で勝利を収めたという記録は西欧カトリック勢力には一切なく、ロシア以外の歴史家からは、彼の戦功は疑問視されている。会戦はあったが戦闘はもっと小規模だったのではないかという説もある。

と締めてあります。*2

このゲームが直接関係すると思われる「氷上の決戦」については英語記事しかありませんので要所を紹介します。

 

en.wikipedia.org

概要

氷上の戦いは1942年4月5日、アレクサンドル・ネフスキー率いるノヴゴロド大公国とドルパット*3教区のヘルマン大司教率いるリヴォニア騎士団との間で戦われた。
北方十字軍における十字軍は、聖地のイスラム教徒と戦うのではなく、異教徒と東方正教キリスト教徒に向けられていた。この敗北のためノヴゴロド大公国や他のスラブの領土に対する十字軍の活動は終わりを迎えた。
1938年に公開されたセルゲイ・アイゼンシュテインの時代劇映画『アレクサンダー・ネフスキー』では、この出来事が劇的に描かれているが、実際の出来事からはかけ離れた戦闘のイメージを世間に広めることとなった。

背景

ドイツ騎士団は、スウェーデンやモンゴルによる侵略を受け劣勢にあるノヴゴロド大公国の弱点につけこみ、攻撃を開始し1240年秋には、Pskov、Izborsk、Koporyoを占領する。その年の始めにはペレスラヴェルに追放されていた若干20歳のアレクサンドル・ネフスキーは復帰し、PskovとKoporyoを奪還することに成功した。

戦闘

1242年4月5日、ネフスキーは自軍の戦力を過信気味の十字軍を凍った湖上に誘い込んだ。両軍の兵力については諸説あるが、控えめな見積もりでは、デンマークとドイツの騎士800人、チュートン騎士団100人、デンマーク人300人、ドイツ人400人、エストニア歩兵1000人を含め合計2600人。対する大公国側はネフスキーと彼の兄弟アンドレイの率いる1000人、さらにノヴゴロド民兵2000人、フィン・ウゴル族1400人、弓騎兵600人の合計5000人だった。

ドイツ騎士団と十字軍は凍結した湖を超えて突撃し、大公国軍の陣に到達する。そこで数が多いノヴゴロド民兵に捕捉されると突撃の勢いは鈍化し、凍った湖面上で激しい戦闘が行われた。2時間の戦闘後、ネフスキーは両翼の部隊に突入を命じた。凍った滑りやすい氷上での戦闘に疲労を重ねていたチュートン騎士団と十字軍は湖面の奥に押し込められ、さらに新たに投入されたノヴゴロド騎兵の出現にパニックに陥った。
チュートン騎士団と十字軍は湖の中で集結と再編成を試みるが、薄い氷が重装甲の重さで割れ、多くの騎士と兵士たちが溺れた」と言われているが、この氷が割れ溺死者が出たというイメージは1938年の映画による影響だという声がある。

影響

この戦いの結果、ドイツ騎士団の東方への拡大は阻止され、東方正教会と西のカトリックとの勢力圏を分ける境界線として、ナルヴァ河とペイブス湖を通るラインが確立した。十字軍による要衝Pskovの奪還は阻まれ、ネフスキーとノブゴロド大公国はロシアの領土を守ることに成功した。十字軍はその後それ以上の東方侵攻を企てることはなく、ネフスキーは1574年にロシア正教会で聖人として列聖された。

近年の研究では、戦いはしばしば描かれているほど重要でも大規模でないと言われている。ドイツ騎士団のほとんどがその時までにバルト海の他の場所で活動しており、大規模な損失を受けたという記録はないという点、またスウェーデンの記録にもこの戦闘に関する言及はないことから、衝突は大規模なものではなく、日常的に起こってきた多くの衝突のひとつに過ぎなかったのではないかという説だ。
またある学説では、キリスト教を保護するようにとの教皇勅書が1233年と1237年に発布されており、最初の勅書にはロシアについて明確に言及されている。また1238年6月、スウェーデンデンマークドイツ騎士団デンマーク王の肝いりで同盟を結び、大規模な騎士団を組成した。ところが1243年になるとノブゴロド大公国とドイツ騎士団は、ドイツ騎士団がロシアの土地に対するすべての主張を放棄するという条約を締結している。この期間内に勢力関係を変えるなんらかのものがあったのは確かではないかということだ。
当時の騎士は従者・射手・使用人など8~30人の戦闘員を擁していたことから、チュートン騎士団が被った損失は大きくとも数百ではないかという。

こちらの説明も史実性に疑問が示されていて、氷が割れてチュートン騎士団が大損害を受けるといったドラマティックなことは映画の中だけの話ではないかといった書きっぷりになっています。とはいえ、この頃の後、チュートン騎士団が東方への侵攻を止めたという史実から、なにかしらのものはあったのかもねということの模様。

ロシアと対峙しているのはチュートン騎士団は有名なので次の通り。
ドイツ騎士団というのが総称でチュートン騎士団はその一部かと思っていたら、ドイツ騎士団=チュートン騎士団とのことです。確認してみるものですね。

ja.wikipedia.org

 

ゲームの紹介

チュートン騎士団に代表されるキリスト教を信奉する側と、東方正教会ギリシャ正教)を奉じるノヴゴロド大公国との2陣営による戦争を扱っています。

期間は2年間、1ターンは1.5ヶ月相当(ゲームでは40日と書かれている)、キャンペーンは全16ターンになります。ロシアが舞台ということで1年の半分は冬になります。冬になると、活動可能量は減らされ、河川や港が凍結し、陸路は雪に覆われるため、運搬手段に制約が生じます。

 

プレイヤーを苦しめる3つの制約事項

両国はそれぞれ諸侯を動員して行軍させて戦闘をします。
ところがここで3つの制約に悩むことになります。

  • 動員期間
  • 糧秣
  • 補給線と運搬手段
諸侯の動員と「動員期間」

動員する諸侯とプレイヤーが操る主君は封建的な主従契約の関係にあります。各陣営はおおよそ2~3人から最大6~7人の諸侯を動員することができますが、諸侯はそれぞれ動員期間の定めがあり、その期間がすぎると自分の本拠地に帰国してしまいます。前線の重要拠点を守備していようが、敵の城塞を包囲中であろうがお構いなしです。諸侯によって異なりますが、だいたい2~6ターンが動員期間になります。動員期間を延長してもらうことは可能ですが、その際は報奨が必要です。徴税した資金か、略奪した宝物です。ただ報奨を使ったとしても1ターンずつしか延長してくれませんので、限界があります。一定期間がすぎれば再動員は可能となります。また動員中に十分な糧秣を与えなかったりすると諸侯は早めに帰国してしまうこともあります。
ゲーム中、諸侯の動員期間をにらんでローテーションを常に考えなければなりません。

糧秣と補給線と運搬手段

マップ上の諸侯とその軍団がなにかしらの行動を行うと基本的には糧秣を消費します。移動、戦闘、籠城といった行動です。糧秣を得るには、諸侯は自分の本拠地からの補給線をたどり「補給」してもらう、「徴発」する、または「略奪(荒廃)」する必要があります。
諸侯の部隊が移動する際には糧秣を持っていくのですが、糧秣を運搬するには運搬手段が必要です。運搬手段はさらに自分の本拠地との補給線を形成するために必須となります。遠隔地まで遠征するのであれば、長大な補給線を形成する必要があり、そのためには十分な運搬手段を確保する必要があります。

マップは拠点同士を結んだピアトゥピア様式で描かれていますが、陸路と水路があります。陸路を通る場合は荷馬車、水路であれば舟(Boat)を運搬手段として保有する必要があります。また海の場合は船(Ship)という手段もあります。
さらには、冬季になると、河川用の舟(Boat)と外洋用の船(Ship)は使えなくなり、代わりに水路・陸路ともそり(Sled)を使う必要が生じます。

既述の通り、長大な補給線のためにはそれだけの運搬能力が必要となります。またその遠征部隊の規模が大きい場合も必要となる運搬手段が増えます。糧秣を多めに前線にもっていこうとする場合も同じです。

動員期間の制約の中でどこまで増強するか?

諸侯は動員された初期状態で最低限の運搬手段と糧秣を保有しているのですが、遠征を発動するにあたっては不足ぎみのため増強する必要があります。では十二分に運搬能力を増強して、糧秣を貯めてから出征すればいいじゃないか、ということが考えられますがそれも簡単にはいきません。それぞれ増強したり蓄積したりする手段は限定され、かつ諸侯はそればかりをやっているわけにはいきません。なによりも動員期間が終わると諸侯はあっさり帰国します。運搬能力も糧秣も諸侯の固有のリソースのため、帰国とともに増強・蓄積した分はいったんクリアされるのです。再度、動員された際には出現位置も含め、初期状態から始める必要があります。

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コンパクトですが美しいマップです。ただ一部のシンボルのサイズが小さくで見落としてしまいがちです。左手がチュートン騎士団の領地、右手のオレンジ色の領域がロシア領です。都市の横に描かれたシンボルマークは対応した諸侯の本拠地を現します。本拠地から前線までの補給線を考えるとそれなりの運搬手段が必要となります。

 

戦闘ルール

諸侯はそれぞれ自分の軍団の兵力や保有している運搬手段や糧秣を表示するためのデッキをもっています。デッキ上には兵力の駒、諸侯が動員した部下にあたる騎士などを表示します。またカードによって得られるスキル(だいたいは戦闘を有利にする)を表示します。

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手前の黄土色のカードが動員されたチュートン騎士団の諸侯の戦力や保有する資源を表すデッキ。その中の木製駒が動員された兵力です。兵力を表す木製駒は兵種により色や形が異なります。このあたりのコンポーネントの美しい点もこのゲームの特徴ですね。諸侯の家紋のはいった円筒形の木製駒がマップ上にあり、位置を示しています。

 

戦闘ルールはけっこう凝っています。

戦闘には野戦、攻城戦(包囲)、攻城戦(強襲)とがあります。
兵種も多岐にわたっており、騎士、騎兵、軽騎兵、アジア騎兵、歩兵、民兵農奴兵が登場し、それぞれ打撃値や防御値が異なり、武装が異なります。戦闘解決は装備している武装により参加する部隊が異なり、射撃戦、騎兵突撃、歩兵突撃とすすみます。

戦闘では、本隊の他、左翼・右翼の部隊を配置する簡易戦術マップを用います。戦闘解決は基本1D6を用います。

 

プレイ

チュートン騎士団を担当、Yさんがロシアを担当しました。
結果は冒頭に書いたとおりさんさんたるものでした。

第1回目、南方戦線で国境の城塞に手こずり(主にダイスの目が悪かった)、北方でも進撃を図るものの、そうこうするうちに前線では糧秣が不足し(運搬手段が十分ではなかった)諸侯が次々と帰国することになるというローテーションの計画不足で破綻。

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黒の円筒がチュートン騎士団の諸侯、白がロシア。
南方(右手)のほう国境付近で3個駒が集結して、城塞を包囲中。突破したと思ったら軍役の期限から次々と諸侯が帰国してしまう事態に・・

 

第2回目、1回目の反省から輸送手段と糧秣をある程度貯めてから進撃を開始、国境の城塞もなんなく突破し、史実でも激戦地となったPISKOVにとりつくが・・。

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国境を突破した騎士団はPSKOVの街に包囲(写真)。ところが戦備を整えていたロシア軍本隊が首都付近(写真には写っていない)から急速進撃、PISKOV郊外で会戦となった。精鋭を自認するチュートン騎士団に対して、民兵農奴兵など数に勝るロシア軍はさらに弓兵装備の改良を実現するというカードにより射撃戦で有利に立った。騎士団の騎兵突撃も民兵農奴兵による人海戦術的な損失吸収により威力を鈍化され、騎士団は壊滅し、敗北した。

感想戦

直接的な敗因はチュートン騎士団側が冒頭に運搬手段と糧秣、さらには資金の確保にはしったため侵攻の初動が遅れ、PSKOV攻略時にロシア軍本隊が間に合うということにななりました。これについて、ロシア軍の軍備が整わないうちに侵攻する電撃戦が必要だったのではないかとYさん意見。
またあっさりとチュートン騎士団が敗北をした原因として、今回のPSKOV会戦に参加した騎士団側の諸侯が、部下である騎士をほとんど動員していなかったことが指摘されました。個々の戦力としては精鋭だとしても今回のようなロシア軍が十分な動員をもって民兵農奴兵を使った人海戦術を行うといかに精鋭であろうとも危ういということが証明されたということでしょう。

PSKOV攻略で手詰まりになるのであれば、PSKOVを迂回してその他の街や村へ焦土作戦(「略奪(荒廃)」を行う)をするのはどうかという意見については、地理的にはPSKOVの重要性は高く、これを迂回して奥地に補給線を通しながら侵攻をするのは難しいのではないかという意見、またPISKOV自体の勝利ポイントを考慮すると、同街を外すという選択肢は難しいのではないかという意見が出されています。

 

チュートン騎士団は全般に諸侯の軍役の期間が短く、初動の侵攻直後に即帰国という懸念が十分にあります。さらには資金の調達手段が徴税か略奪しかないため、これもまた軍役期間の延長などの阻害要因になっています(ロシアは貿易により資金を得るという手段があるのと、もともとロシア側の諸侯の軍役期間は騎士団側の諸侯よりも長いことが多いです)。

侵攻のため糧秣と運搬手段を確保しつつ、諸侯の部下の騎士たちを動員し軍備を整え、かつ短い軍役期間を前提として諸侯の動員のローテーション計画をたてるといったことがチュートン騎士団側のプレイヤーには要求されるでしょう。
目先の状況への対処だけではなく、数ターン先の状況を読みながらのプレイということで、本作はかなりタフな思考が要求されるように思います。こうしたあたりが、ベストゲームと喧伝される理由なのでしょうね。

 
 

 

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Teutonic Knight: 1190-1561 (Warrior)

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  • 作者:Nicolle, David
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ゲームの中身、コンポーネントは素晴らしいのにこの微妙なボックスアートはなんだろう?空から見下ろす兜をかぶったおっちゃんはどう見ても故人の雰囲気だよね。

*1:正確には2019年末頃リリースされた作品とのことです

*2:念のためウィキの英語記事をあたってみると、英語記事は日本語記事よりも全体に若干分量が多い。これらの疑問視されているネヴァ河畔の戦いについては、「・・・この想定の戦いについて、ロシア以外に言及している文献はない。」、氷上の決戦についても、「ロシアの歴史家が指摘するような数百の騎士の損失ではなく、もっと少ない損失だったのではないか」といった主旨の表現がなされており、日本語記事と主張を同じくしている。

*3:現タルトゥ:エストニアの第2の都市。Dorpatはドイツ語古称

「FRONT TOWARD ENEMY」(MMP)を試す

「FRONT TOWARD ENEMY」(MMP)を対戦をするべく準備しています(以降、FTE)。ベトナム戦争の陸戦を題材に1ユニット=チーム(班)単位として小隊~中隊規模の小規模戦闘を扱った戦術級ゲームです。

 



ゲームの紹介

ゲームの内容はコマンドマガジン150号に今回の対戦相手でもある旅団長さん自らが書かれたレビュー記事が出ていますのでぜひ参照してください。

commandmagazine.jp

コマンドマガジン第150号: 冬戦争

コマンドマガジン第150号: 冬戦争

 

Kindle Unlimitedを利用されている方であれば電子版が読み放題の対象になっていますね

 

簡単に

1ターン=5分、1ヘックス=50メートルというスケールはアドバンスド・スコードリーダー(以降、ASL)に近いですが1ユニットはチーム(4名)となっています。また指揮官ユニットは1~2名の指揮チーム。支援火器や砲兵器(迫撃砲)も火器チームとして登場します。車両1両単位になっています。

ASLのスケール

1ユニット=基本は分隊単位(10名~15名程度)、最小単位として半個分隊(5名程度)に分割可能、指揮官等は1名

車両1両、支援火器、砲兵器は1門毎に独立

1ヘックス=40メートル

1ターン=2分

汎用性を重視し細かな兵器が登場するASLとは異なり、FTEの戦場と登場兵器は限定的です。アメリカ軍は通常のファイアチームの他、機関銃チーム、また81ミリ迫撃砲装備のチーム、あとは指揮官チームだけです。車両も兵員輸送用のM113のみ。
第二次世界大戦を扱ったゲームとの違いとしてはヘリコプターの存在は特徴的です。

一方の北ベトナム軍/ベトコンは、ファイアチームの他は機関銃チーム、迫撃砲チーム、57ミリの無反動砲装チームが登場します。

ベトナム戦争ぽいアイテムやルールとしては、ヘリの他、民間人ユニット、主にベトコンの秘密施設(トンネルとか)、ボックスアートにもなっているクレイモアなどがあります。また勝利条件はポイント制なのですが、アメリカ軍は負傷者や死者を後送することでポイントを得ることができるようになっています。後送のためには、前線のチームが装甲車やヘリの場所、またはマップ外まで運んでいく必要があるのですが、前線の戦力が落ちることになり、悩みどころとなります。

マップはASLのような汎用マップを組み合わせるのではなく、大きなマップの一部分をシナリオに応じて用いるというスタイルになっています。
小さな集落や水田などが点在するものの、多くはジャングルという地形です。
ジャングルではLOS(視線)は限定され、当然戦闘距離は短くなります。視界がきかないところでは、隠蔽配置や隠蔽移動が多用されます。ASLの太平洋戦域のシナリオでもそうだったように、本ゲームでも隠蔽がきってもきりはなせない戦場を舞台にしているのです。まさに「プラートーン」などのベトナム戦争映画で描かれた世界です。

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練習用シナリオの初期配置。アメリカ軍1個分隊(2個チーム+指揮官)は北ベトナム軍が配置されたジャングルを抜け左手に抜ける必要がある

 

ASLを経験した戦術級猛者であればルールは難しくはないでしょう。
戦術級初めてという人でも、ルールの汎用性とともにマニアックな詳細化を追求して複雑な多層構造物のようになっているASLよりは、テーマを絞っている分、シンプルに構築されていてあまり敷居も高くなく、楽しめるように思います。FTEは新しいゲーム(2019年リリース)ではありますが、先日プレイした「LAST HUNDRED YARDS」(こちらも2019年リリース)のようなラディカルな要素も少なく、ルールも遥かに読みやすいです。

 

基本的なルール

チットプルによるランダム・アクティベイト(活性化)

基本システムはチットによってアクティベイトしていくスタイルで、各ユニットはひとつのターン内に1回活性化できる権利があります。両軍与えられたチットを引き終わるとそのターンは終了します。両軍の状況・能力などによって与えられているチットの数がシナリオによって異なります。チットの中にはイベントチットが混入してあり、それを引くとイベントが発生することになります。

扱いやすい射撃解決ルール 

射撃にあたっては、地形、隠蔽状態、ユニットの状態、射程(近接射撃・遠距離射撃)、複数ユニットによる射撃などなどにより、ノーマル状態から射撃が目標に対して効果を及ぼしたかの判定するダイスの目に修正が施されるのですが、この構造がわかりやすく好感がもてました。ダイスについても10面体ダイスを用いるため、様々な修正後の最終的な成功確率が感覚的にわかりやすい点もよいです。

ASLを悪く言うつもりはないのですが、ASLの場合、歩兵射撃の解決の際、「火力値の修正」、「ダイスの目に対する修正」、効果を与えた際の目標の「士気チェックへの修正」と幾重にも修正ポイントがあり、ダイスも6面ダイス2個の合算値を用いるため成功確率もわかりにくいです(ASLプレイヤーは6面ダイスの合算値の出る確率くらい諳んじている!と言われそうですが)。

車両が登場するといっても大口径砲を搭載した戦車が登場するわけでもないので、戦車戦闘関係のルールは不要ですし、機関銃はもとより迫撃砲なども対歩兵戦闘に用いられるため歩兵の射撃ルールの中で取り扱われているなど、全体にルールの所要量が少ない点も特徴的です。

ルールがあっさりしていると言っても決して過度に簡略化しているとか、見劣りするということではありません。前述のとおりテーマを絞り、ゲーム化範囲を選ぶことでシンプルになるものだと感心したのです。

 

次回は練習シナリオを用いながら実際に動かしてみます。

 

ご参考

近年の作品でラディカルなシステムを採用した戦術級ゲーム(+ルールが読みにくい)
LAST HUNDRED YARDS

yuishika.hatenablog.com

 

アドバンスド・スコードリーダー スターターキット(Advanced Squad Leader Starter Kit:ASL SK)で太平洋戦域を舞台にした#4 Pacific Theater Operation
残念ながら汎用マップなので本ゲームのようなジャングル感は薄い・・

yuishika.hatenablog.com

 

これも比較的新しい戦術級ゲーム。ゲームシステムは本システムよりも難易度は低い
OLD SCHOOL TACTICAL

yuishika.hatenablog.com

 

 

 

 

(つづく)

 

 

yuishika.hatenablog.com

 

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「THEIR FINEST HOUR」(GDW)[おまけ1]登場する航空ユニット

「THEIR FINEST HOUR」の紹介記事にも書いたとおり、航空ユニットについては機種別にユニット化されており、サブタイプまで細分化されていたりする。途中まで書いていたので、おまけとして掲載。

yuishika.hatenablog.com

 

 

 

航空ユニットの数値

  • 左上:航空攻撃力
  • 右上:航空防御力
  • 左下:爆撃力(数字がひとつの場合は戦術爆撃力、ふたつある場合はふたつ目は戦略爆撃力)
  • 右下:移動力(航続距離)

 

ドイツ軍の機体

戦闘機

メッサーシュミットBf109E

f:id:yuishika:20201224221848p:plainドイツの主力戦闘機。高速による一撃離脱戦法を得意とする。多数の生産型があるが本機は名発動機”DB601”を搭載した本格生産型。航続距離(移動力)が短い。1人乗り、20ミリ機銃☓2、7.92ミリ機銃☓2

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メッサーシュミットBf109D

f:id:yuishika:20201224221918p:plain”DB601”搭載前の機体(次のE型よりDB601が搭載された)。当時はすでにDB601 の搭載が見えていたが生産を急ぐために搭載前型として生産されたもの。スペイン市民戦争で活躍。1人乗り、7.92ミリ機銃☓2(後に同4丁に増強)

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メッサーシュミットBf110C

f:id:yuishika:20201224222023p:plain戦間期1930年代に各国で夢想され盛んに開発された双発戦闘機のドイツ版。ゲーリング元帥から「駆逐機」と命名されるが、バトル・オブ・ブリテンでは惨敗し、単発戦闘機に比べて大きく重い双発戦闘機は空中機動において単発機に抗し得ないことを証明した。が、その後は機体に余裕があったことから機首に電探を搭載するなど様々な改造版がでてきたところは好き。双発、2人乗り、20ミリ機銃☓2、7.92ミリ機銃☓4

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夜間戦闘機

メッサーシュミットBf110D

f:id:yuishika:20201224222131p:plain一般的にはD型は、ノルウェー侵攻を想定して開発された、搭載燃料を増やした航続距離延伸版と言われているが、このゲームでは夜戦版という位置づけになっている。夜戦仕様のD型はあるようだが、航続距離がここまで極端にC型と異なるのかはよくわからない。

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ユンカースJu88C

f:id:yuishika:20201224222614p:plainA-4型をベースに開発された戦闘機仕様。爆撃機タイプより乗員が1名減り3人乗りになっている(爆撃手が不要?)。さらに同じC型でも細かく仕様が異なるサブタイプがあるようでそれぞれ武装が異なる。C型の最初の型は、20ミリ機銃☓1、7.92ミリ機銃☓3。

f:id:yuishika:20210323111455j:plain

爆撃機

ハインケルHe111H

f:id:yuishika:20201224222233p:plain1937年の就役当時では戦闘機を凌ぐ高速だったが、バトル・オブ・ブリテン時には優位性は失われていた。バトル・オブ・ブリテン時の双発爆撃機隊の中核機。防御武装の貧弱さをつかれて、少なくない損害を出している(このあたりの記述は参照する本やデータにより書き方は様々。損害は少なかったと言っているものもある)。双発、5人乗り、爆弾搭載量2.5トン

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ハインケルHe111P

f:id:yuishika:20201224222313p:plainアルファベットが後なのですが、こちらのほうがH型より先に生産された機体の模様(どうもP型というのはある型の本格生産前に生産される生産前型のようだが、よくわからない)。

ヘンシェルHs123A

f:id:yuishika:20201224222419p:plain 複葉・固定脚の急降下爆撃機。スペイン内戦において近接支援に使われはじめるが、Ju87の配備が進むと交代していった。

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ユンカースJu88A

f:id:yuishika:20201224222516p:plain乗員4名を全て機種に配置した細身の特異なスタイルの高速爆撃機。He111とともに爆撃機隊の中核であった。こちらもバトル・オブ・ブリテン時には速度の優位性は失われており少なくない損害を出した。
4人乗り、爆弾搭載量2トン。

f:id:yuishika:20210323112128j:plain

ユンカースJu87B

f:id:yuishika:20201224222816p:plain地上部隊と密接に連携した攻撃を行った電撃戦で一世を風靡するものの、バトル・オブ・ブリテンは純然たる航空戦であったため、緒戦において低速弱武装の弱点をつかれ大損害を受けた。
2人乗り、爆弾搭載量700キロ。

f:id:yuishika:20210323112425j:plain

ユンカースJu87R

f:id:yuishika:20201224222854p:plainノルウェー侵攻を想定してB型をベースに開発された航続距離延伸版の機体。搭載燃料の増強などを行ったため、運動性能や武装などにおいてB型より制約がでているということだが、ゲーム内の性能は航続距離を除き、同一となっている。 

 

あとで気づいたが爆撃機Do-17が登場してないな、と(2021/2/4 追記)

 

イギリス軍の機体

戦闘機

スピットファイアMk.1

f:id:yuishika:20201224223810p:plainマリーンエンジンを搭載したスピットファイア最初の生産型。ドイツのフランス侵攻時は温存され、バトル・オブ・ブリテンで本格的に投入された。高速・高機動性・重武装で、Me109に対抗した。Me109ほどではないが、航続距離が短いのが玉にキズ。1人乗り、7.7ミリ機銃8丁。

ハリケーンMk.1

f:id:yuishika:20201224223844p:plainスピットファイアと同時期に開発され、同じマリーンエンジンを搭載しているにも関わらず性能はかなり劣後していた機体。それでもイギリスが本機を採用したのはバトル・オブ・ブリテンが迫っておりいたためと言われている。Bf109相手の空中戦はもっぱらスピットファイアに任せ、ハリケーン爆撃機迎撃を行った。
1人乗り、7.7ミリ機銃8丁。

画像

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夜間戦闘機 

ボールトンポール・ディファイアント

f:id:yuishika:20201224223957p:plain不格好な事で知られる戦闘機。単発2人乗りだが固定射撃兵装の代わりに7.7ミリ機銃4丁の動力旋回銃塔が後部座席の後ろに抱えている。来襲した敵爆撃機に対して横や下から撃ち込もうというコンセプト。
実際は爆撃機が単体で来る訳ではなく、戦闘機も随伴してくるため手も足も出なくなった。フランス戦でその欠点が露呈し、バトル・オブ・ブリテンの時期には夜間戦闘機として使われることが多かった。
銃座の中から脱出することが難しいことから、被撃墜時の銃手の死傷率が高かったと伝わる。

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ブリストルブレニムMk.1F

f:id:yuishika:20201224223459p:plain元は小型旅客機だが高速性を買われて爆撃機となり夜間戦闘機型Mk.1 Fとして製造された。レーダ搭載。双発、3人乗り。7.7ミリ機銃5丁

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ブリストルブレニムMk.4

f:id:yuishika:20201224223615p:plain ブレニムMk.1Fの改良型。エンジンと武装が強化された。3人乗り、7.7ミリ機銃☓5

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ブレニムの写真を見るとMk.ⅠとMk.Ⅳとで機首のデザインが違うようにみえるんですよね。イギリス機は奥が深い。(追記 2021/9/15)

 

爆撃機・夜間爆撃機雷撃機

フェアリー・バトル

f:id:yuishika:20201224223308p:plainイギリス空軍における最初の低翼単葉引き込み脚の軽爆撃機第二次世界大戦開戦時には旧式化しており損害も多かったため、1940年後半には前線からは退き始めていた。 3人乗り、爆弾搭載量450キロ。なお名称は、フェアリー社のバトルという機種名。

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ブリストル・ボーフォート

f:id:yuishika:20201224223402p:plain中翼双発の雷撃機。機体はブリストルブレニムを基に設計された。性能的に成功した雷撃機とは言い難く、活動域は地中海や中東に移していった。4人乗り、爆弾680キロまたは魚雷1本。

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ブリストルブレニムMK.4

f:id:yuishika:20201224223536p:plainブレニムMk.1のエンジンと武装強化版。イギリス空軍の主力軽爆撃機。戦闘機に対する速度的優位性はなく、防御武装も貧弱であったため損害が増大したが、軽快な運動性を生かして後継機としてダグラス ボストンやモスキートが配備されるまで活躍した。3人乗り、7.7ミリ機銃☓5、爆弾搭載量600キロ。 

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ハンドレページ・ハンプデン(ハムデン)

f:id:yuishika:20201224224039p:plain第二次世界大戦初期に使用された双発爆撃機。1939年12月頃には昼間爆撃の任務から外され夜間爆撃等に用いられた。乗員4名、爆弾搭載量1.8トン。

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ヴィッカース・ウェリントン

f:id:yuishika:20201224224127p:plain第二次世界大戦初期から使用された双発爆撃機。1939年12月頃には昼間爆撃の損害が多発したため夜間爆撃を主任務とした。1943年頃には爆撃任務からは外されるが、同時代のハンプデン、ホイットレーより長く、大戦を通して使用され続けた。乗員6名、爆弾搭載量2トン

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アームストロング・ホイットワース・ホイットレーMk.1

f:id:yuishika:20201224224218p:plain全金属製の大型の双発機。直線的な胴体の機首と尾部の動力式の銃座を持っていた。第二次世界大戦開始時のイギリス空軍において、ハンプデン、ウェリントンと並ぶ主力爆撃機として活躍したが、性能の関係で作戦は主として夜間に限られていた。 Mk.1は第二次世界大戦が始まった頃にはすでに第一線舞台からほとんど姿を消していた。

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アームストロング・ホイットワース・ホイットレーMk.5

f:id:yuishika:20201224224352p:plainホイットレーの主生産型。機体の設計は戦間期に属するが、発動機はマリーンエンジンを搭載(マリーンエンジンの万能ぶり!)した機体。1940年3月以降、爆撃任務を担う。5人乗り、爆弾搭載量3トン!

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マーチン・メリーランド(?)

f:id:yuishika:20201224224416p:plainアメリカ陸軍で不採用になった機体だが(この時の番号がXA-22)、その後、イギリスに「メリーランド」の名称で輸出された。ウィキによれば東地中海地域で用いられたとあるが、本土へ配備された部隊もあったということだろう。
3人乗り、爆弾搭載量900キロ

※ ユニットにあるA-22で探してあたったのはこれなのだが確証はない。

 

 

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