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「TONKIN -The First Indochina War-」(LEGION WARGAMES)を対戦する(2)クセのあるルールに苦闘する話

ベトナムによるフランスからの独立戦争である第一次インドシナ戦争を扱った「TONKIN -The First Indochina War-」(LEGION WARGAMES)を対戦しました。

yuishika.hatenablog.com

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今回のプレイでは重要なルールの取り違えなどがありましたのであくまでご参考程度で・・

 

AAR

フランス軍を担当。
ゲームの初期段階ではまだベトミン勢力は弱く、勢力を集め始めるところからシナリオはスタートするものだと勝手に考えていましたが、全くの逆でした。
シナリオがスタートする1950年10月時点で、ベトミン総司令部は各地の部隊に「各戦線に出撃し、敵の攻撃を粉砕せよ」と総攻撃命令を発しています。いわばクライマックスからはじまるゲームだったのです。

ベトミンは史実と同様に、北東部の中越国境近くにあるフランス軍拠点、カオバンからランソンにかけてを狙っていました。

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初期配置状態

赤色系のユニットがベトミン。青系か白系ユニットがフランス軍
点在している白いユニットはフランス軍の陣地であり補給源になるヘックス。
赤系のユニットがハノイや海側の平地周辺にも点在しているがこれはティオドアンと呼ばれるベトミンの民兵ユニット(1-9)。個々のユニットでは最弱だが、補充兵となるし集結するとそれなりにはなるので煩わしい。さらに言うとティオドアンは自給自足、現地調達ができるということなのか補給を考慮する必要がないためどこにでも存在できる!

最初の主戦場となったのは、マップ右上、中越国境付近のフランス軍拠点ランソンからカオバンに至るルート。2つの拠点間のルートを遮るように赤いベトミンユニットと黒のベトミン陣地が見える。

 

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初期配置状態のアップ。紅河デルタ地帯においてもフランス軍は拠点を抑えているだけで、他はベトミンが跋扈しているのがわかる。
説明をしていなかったが、ベトミンプレイヤーはフランス軍スタックの中身を見ることができるが、フランス軍プレイヤーはベトミンのスタックの中身を確認することができない。この後、北東部に集結してきたベトミン部隊のスタックは、ティオドアン民兵ユニットのスタックと思っていたのが、実は訓練された正規軍ユニット(6-9)だったのは攻撃がはじまってはじめてわかった事だった。

 

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第1ターン(1950年10月)

ベトミンは紅河デルタ地帯(平地)に点在していたティオドアン(1-9)を一斉に荒地やジャングルの中に引き上げさせた。ジャングルでは優位に立てるベトミンも、平地ではフランス軍による強力なオーバーランを食らうことを懸念したのだ。

フランス軍ラオス奥地まで広がるフランス軍拠点に十分な補給ができていないことに気づき、一部拠点からの撤退、また一部は航空輸送にてSDユニットを送り込んだ。
この時点では東北地方におけるベトミンの意図を把握できていなかった。

 

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第2ターン(1950年11月)

ベトミンはジャングルの中での優位な移動力と、ジャングルヘックスに対してフランス軍ユニットのZoCが及ばないことを利用した「ダブル移動」とを最大限活用してあっという間にランソン周辺に部隊を集結させた。
通常の作戦級ゲームと同じ様に戦線があるものと想定していたが、ジャングルに対してZoC効果がないフランス軍には戦線はなく、後方として手薄になっていたランソンをベトミンが包囲してきたのだ。
しかも包囲に参加した部隊はティオドアンとは大きく異る最強クラスの正規部隊(6-9)であった。
ベトミンによる数度の攻撃の後、ランソンは陥落し初期配置状態により集積されていたフランス軍のSDが失われた。

 

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第4~5ターン(1950年12月~1951年1月)

ランソンの失陥により以北にいたフランス軍部隊はカオバンに逃げ込む。
補給線を絶たれているため、カオバンの部隊に対しては空輸-空中投下により補給が行われた。
ジャングル地帯にあってはフランス軍は道路以外ではほぼ移動できない一方で、ジャングルの中でも素早く移動することが可能なベトミンと機動力が違いすぎた。

ランソンの失陥によりフランス軍は以南の海岸地帯まで大きく防衛線を下げざるを得なかった。

 

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第6~7ターン(1951年2月~3月)

東北地帯をほぼ抑えたベトミンが次に狙ったのがハノイ西部の山岳地帯にあるギアン(Nghia Lo)からナサン(Na san)にかけての地帯。東北地帯と同じ様にフランス軍が苦手とする荒地やジャングルに覆われた地域だ。
また東北地帯と異なりこちらはフランス軍自体が手薄であった・・。

ここにきてベトミンはオペレーションのひとつである「道路破壊」を多用してフランス軍の増援の移動を妨げ、また補給線を切ってきた。フランス軍も「道路補修」と戦線の整理を行うが追いつかない・・。

数度の戦闘後、ギアン、続いてナサンを失いフランス軍が投了した。

 

史実考証

1950年9月、ベトミン総司令部は総攻撃の発動を宣言し、それまでのゲリラ戦主体、時折正規軍による攻撃という戦闘スタイルから、正規軍主体の作戦に変えていきます。最初の激戦地となったのは今回のAARでも戦闘が発生した、北東部になります。

北東部のフランス軍拠点カオバンは中越国境に最も近い拠点としてフランスによるベトナム再占領以来保持されていましたが、ランソンからカオバンに至る補給路はたびたびベトミンの待ち伏せ攻撃を受け、1950年にはその補給は空輸に頼るようになっていました。
同年9月にはフランス軍はカオバンの維持を諦め、10月にかけてカオバン駐留部隊の撤退を始めます。撤退の支援のため数個大隊の精鋭落下傘部隊を送り込みますが、撤退部隊とともにベトミン軍に包囲攻撃され、作戦に参加した6000人の兵士と民間人のうち脱出が成功し撤退できたのは700人のみであったとされています。

カオバンでの敗北に続き、同じ10月中にはパニック状態の中でランソンが放棄されます。

フランス本国はこうした拠点の失陥と全滅に近い敗北に驚き、第二次大戦における名将と言われていたラトル将軍をベトナムに赴任させます。ラトル将軍はフランス軍の防衛線を大きく後退させ、立て直しを図りました。

ベトミンは各所で攻勢に出て、1950年末時点でフランス軍の戦線はハノイ・ハイフォン・ナムデン三角地帯にまで押し込められます。

なお今回のプレイでも戦闘が行われたナサンは、南北を結ぶ重要な交通路にある拠点として両軍によって数年に渡り、取った取られたを繰り返した場所です。史実でも一度撤退したフランス軍が取り返し、さらにベトミンがそれを攻撃するということがこの後繰り返されているようです。

 

感想戦

かなりクセがあるゲームシステムです。

ウォーゲームの常識で理解しようとすると見落としがち、ミスリードしがちなルールがあります。
確かにルールに書いてなければその制限や条件はないというのが正しいルールブックの読み方ですが、書いてなければ常識的に解釈しようとしますよね・・。間違えやすいところなので逆に注意してほしかったなぁ・・。

と何のことを言っているのかというと、下記の「取り違えたルールの例」にリストアップした1と2のルールです。

2についてはたしかに作戦フェイズ中に活動を行ったユニットは、同じ作戦フェイズ中にそれ以上の活動を行えないという文言はルール上、一言も書いてないです。また活動を実施したユニットに乗せる「活動済」のようなマーカーがなかったことも事実です(ただしこの手のマーカーがないゲームも少なくないですよね)。
正解は、”同一の作戦フェイズ内において作戦ポイントがある限り、同じユニット(またはヘックス)が何度もオペレーションを実施することが可能”でした。

1について、「1ターンに使用済にできるSD(物資集積所)ユニットは1個のみ」というルールは完全な見落としです。OCSにおけるSP(補給ポイント)ユニットのイメージがあったため、攻撃を行いたい場所がマップ上に複数か所あるとすると、それぞれの場所でそれぞれ近くにもってきたSDユニットを”使用”するのかと思っていました。ましてOCSのSPユニットと異なり、本ゲームのSDユニットの効果範囲は3ヘックスとかなり極小な範囲でしか効果がないこと、また1ターンに1~2個しかSDユニットの補充がないことから、1度作戦行動を起こすと、数ターンに渡って補給がたまるのを待つということが必要なのかと解釈していたのです。

プレイ後にルールブックを再度読み直して気づき、そういう解釈であっているの?と思い、BGGのフォーラムでの記事を探してデザイナーのKim Kangerが回答しているのを見てようやく納得した次第です。

実相は攻撃を行う箇所を渡り歩くように、ひとつのSDユニットが移動していく、ということのようです。このSDユニットって何なの?と思うと、若干滑稽な印象がないではないです。 (が、この解釈はまた新たな疑問を生んでおり(リスト6)、現在確認中です)。

 

・・と、何かとクセのあるルールがあちこちに複雑に組み込まれていて、デザイナーの意図がどのように表されているのか、非常に興味深いゲームと言えるのではないでしょうか。
他にもいろいろ言いたいこともあったのですが、いったんはここまで。

 

再戦候補のゲームのひとつです。

 

ご参考:今回のプレイで取り違えたり見落としたルールの例:

  1. 適用間違い: 
    1ターンに「使用済」にできるSD(物資集積所)ユニットは1個のみ
  2. 適用間違い: 
    作戦ポイントがある限り、同じターンの中で同一ユニット/ヘックスが何度もオペレーションを実施することができる
  3. 適用漏れ:
    戦闘終了後、戦闘に参加した両軍のユニットは「混乱(DR)チェック」を実施しなければならない(適用を漏らしがちなルール)
  4. 明確化:
    陣地(Trench)構築を実施した際はすぐに「使用済」のSDユニットを除去する(SDユニットと、Trenchユニット3個を交換するイメージ
  5. 明確化:
    オペレーションの種類により「使用済」となるSDユニットとの間で求められる位置関係が異なる(「攻撃」「砲撃」以外はSDユニットの場所に関わらず発動可能 等)
  6. 確認中:
    トラック輸送の仕様について現在BGGにて確認中。想定の通りだとするとまた印象が変わる可能性があります。

  

(了)