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歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「EUROPA UNIVERSALIS」(AEGIR GAMES)を対戦する(1/2)

 

大航海時代からフランス革命までの欧州史を扱ったマルチプレイヤーゲーム「EUROPA UNIVERSALIS」(AEGIR GAMES)を対戦しました。最大6人までのマルチプレイヤーゲームですが、今回は5人でのプレイとなっています。

マップは欧州全体をカバーしているのですが、シナリオによって使う範囲や登場する国家も異なるようで、今回は1444年にはじまる「地中海の覇権」といったタイトルの5人シナリオです。

オスマン・トルコにより東ローマ帝国が滅ぼされたのが1453年、大航海時代のはじまりによりアメリカ大陸が発見されたのが1492年ですね。ただし今回のシナリオには南北アメリカは登場しません。
15世紀ということは、世界の中心が地中海から他大陸につながる大洋に広がり、人類の技術や社会の最先端がイスラム圏から、西欧諸国に変わる転換点を扱ったとも言えるかもしれません。

 

先日プレイした、「帝国の興亡 EMPIRES OF THE MIDDLE AGES」(SPI/ホビージャパン)が扱った時代範囲がフランク王国の建国(771年)からビザンティン帝国の滅亡(1465年)まででしたので、本作はくしくも同作に続く時代を描いているといったところでしょうか。

 

ゲームに話を戻すと、本ゲームはもともとボードゲームだったものがPCゲーム化され、PCゲームが今回、Kickstarter作品としてボードゲームの世界にもどってきたとのことです。
今回のプレイ感として、プレイヤーがプレイ中に気を配って置かなければならない範囲がかなり広い印象を受けました。PCゲームを元にするため、管理しなければならない情報範囲が広いのかなという印象もあります。

いずれにせよスムーズなプレイのためには、ゲームシステムへ習熟、各種カード内容を理解し、プレイヤーへのインストを含めたリードができるプレイヤーないしリーダーが必要でしょう。

 

 

 

ゲームの全景です。
ハードマップに大小各種そろった木駒。軍隊と艦隊は3Dユニットと豪奢なコンポーネントです。プレイヤーシートも凝っています。

今回プレイした5人シナリオは1444年からの地中海の覇権を巡る争いで、西側からスペイン(黄色)、フランス(青)、ベネチア(赤)、マムルーク朝(紫)、オスマン・トルコ(緑)が登場します。イギリスや神聖ローマ帝国などは登場せず、マップの北側は使用しません。
北欧から北アフリカまでがメインマップ上にあり、南北アメリカ、アフリカ周辺、インドからアジア、オセアニアはサブマップで扱われます。

 

 

PCゲーム由来?の情報量

基本システムは、各国、「統治アクション」「外交アクション」「軍事アクション」の大きく3種類に分類されているアクションの中からひとつを選び、順番に実施していくことになります。

各ターン毎に複数枚のイベントカードが場にオープンにされ、各プレイヤーはアクションを実施することを通して、イベントのいずれかを1回ずつそのターンに実施(イベントを起こす?)しなければなりません。全てのプレイヤーがイベントを実施するまでターンは終了せず、何度もアクションを実施する順番が回ってくることになります。

アクションを実施するには、トークンや資金が必要なことが多いため、限られたリソースの中で、どのイベントを実施するのか計画立てていく必要があります。

資金はターンの頭に国力に応じて収入として獲得でき、またターンの途中のアクションンの結果(「外交アクション」の中の「貿易アクション」など)として獲得する術が提供されているのですが、トークンはターンの冒頭に、その国の「君主」+「顧問(アドバイザー)」の能力以外に獲得する手段が(ほぼ)ありません。能力が低い「君主」や「顧問」しかいない国家は起こすことができるアクションとその回数に制約があることになります。

 

ゲームの勝敗は獲得した勝利ポイントによって競うのですが、勝利ポイントの獲得手段が複数あります。ゲームを通してポイントを細かく数ポイントずつ獲得していき、最終的に獲得した勝利ポイントの総合計を競います。

勝利ポイントの獲得には、主だったものだけで次の3種類があり、カードとしてそれぞれ、場に複数枚ずつ開示されています。プレイヤーはそれらの条件を満たした際に宣言をすることでカードにある勝利ポイントを獲得します。

  • ミッション…各勢力毎に常時2つのテーマが与えられている。達成すると次のミッションが与えられる。例えばスペインの場合は、「アラゴン地方の併合」だったり「レコンキスタの成就」などがあった
  • マイルストーン…共通の場に常に4枚のカードが開示され各時代にあわせたエポックメイキングな事象・事件を発生させることで特典する。例えば「国王自らによる異教徒討伐」「新大陸の発見」
  • アイディア…社会・経済・技術・軍事などの領域での発見・発達などがカード化されている。常に9枚が開示されている。
  • イベント…勝利ポイントには直接関係ないことが多いが、プレイヤーは各ターンに一人1回イベントを発生させる必要がある。3枚が開示されており、記載された条件を満たすことにより、自分または他プレイヤーに様々な好影響・悪影響を及ぼす。

以上だけで常時18枚のカードが場札として開示されていることになります(ミッションカードは他勢力には秘匿されている)。プレイヤーは各種アクションを実施しながら、それぞれ異なった内容について状況を把握しておかなければなりません。

様々な要素にてポイントを重ねていくというシステムは重めのボードゲームで見かけますが、どの条件を達成すれば何が獲得できるのか、どのような内容があるのかを各プレイヤーが知っておくか、カードやイベント内容に通暁した人がいて、教えてあげるといったことが必要でしょう。

 

気になった要素としてはルールやカードの文章の書きぶりがあります。

実際のルールブックなのですが、一見してわかるように文中に多数のアイコンが埋め込まれています。これも一部のボードゲームに見られる記述方法ですが、本ゲームの場合、アイコン種類が40種類近くありかつ直感的にわかりにくい・区別がつかないため、常にアイコンリストを脇に置いて読んでいかなければなりません。マニュアルばかりではなく、カードの文面もこの調子なので、正直読み解きにくいです。

アイコンが多数使用されていることについては、シンボルが表している(例えば)「統治君主能力」(Administrative Monarch Power)という言葉を毎回4ポイントの文字でカードに書くのは大変だろう?という意見を外国の方からTwitter上でもらいました。多少読みにくても象形文字でコンパクトに表したほうがよいということなのでしょう。それはそれで一理あるのですが、読みにくいのはたしかです。日本語も象形文字の塊ではないかと言われそうではありますが。

アイコンが多数埋め込まれている弊害として、機械翻訳が使えないことがあります。さしものDeepLや、Google翻訳ではもちろんこうしたアイコンを訳する機能はありません。

 

文句ばかりを言ってもしょうがないのでよかったところを書きます。

「宣戦布告」から戦争に至るお作法がある

他プレイヤーが操る勢力だけではなく、自国の周辺にあるノンプレイヤーの勢力や都市に対して軍事行動を起こすためには「宣戦布告」が必要となります。「宣戦布告」を起こすためには大義名分が必要で、何が理由になるのかが定められています。理由・大義名分なく「宣戦布告」を行うとペナルティが課せられます。では大義名分がない状態では、戦争をはじめられないかというとそういう訳でもなく、大義名分を捏造するというアクションが別途用意されています。

戦争の実施にはそのプロセスもそうですが時間や資金などがかなり必要な仕掛けになっています。先の「帝国の興亡 EMPIRES OF THE MIDDLE AGES」でもそうだったのですが、戦争は決して割が良い手段ではないということでしょう。

 

宗教は大事な要素です。十字軍はもちろんローマ法王や推挙する枢機卿なども

「帝国の興亡 EMPIRES OF THE MIDDLE AGES」でも欧州において地域や国を治めるために宗教が重要であることが描かれていましたが、本作でも同様で国の宗教と異なる宗教を信奉する地域は常に叛乱のリスクを負っています。

 

今回、誰もそこまで十分な注意を払う余裕はなかったのですが、プレイの展開のためには「十字軍」「ローマ教皇枢機卿」といった要素は注意する必要がありそうです。枢機卿ローマ教皇を選出するための代議員のようなもので、キリスト教を信奉する国々は自国出身の枢機卿を多く排出することでローマ教皇の座を取り、宗教的にイニシアティブをとっていくという点についても考慮する必要がありそうです。
教皇により、十字軍の動員や、破門などが対応できるようです。

今回のシナリオにおいては対象外エリアだったのですが、ドイツが地域にはいると登場する「神聖ローマ帝国」も特別ルールがある国になります。

 

政略結婚もしっかりとルール化されています

また同盟の手段として結婚があります。欧州の王族間にあった複雑な親族関係も扱われるようです。

 

黄色はスペイン。
3Dのフィギュアは軍隊を表します。海上にあるのは船マーカー、またマルタ島あたりにいる人形のマーカーは商人です。商人マーカーや船マーカーがあるところでは「貿易」が発生することがあります。

 

(つづく)