Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

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ぱんつぁー・ふぉー!を試す(2) 聖グロリアーナ学園 vs 大洗女子学園

システムが飲み込めたところで実際にソロプレイ。
TVシリーズ冒頭の聖グロリアーナ女学院との練習試合の後半戦の大洗市街を扱ったシナリオ。TVシリーズでは1話冒頭の荒地での戦いの後、両チームの戦車が大洗市街になだれ込み、市街地でボコボコと戦車戦をはじめて、こんなことがこの世界では許されるのか!と違った意味で衝撃を与えた、あの戦いだ。

 

 

両軍の戦力

双方の戦力は劇中と同じ。
大洗女子学園がⅣ号戦車D型、Ⅲ号突撃砲、八九式中戦車の3両。カードによっては38(t)戦車の履帯修理が完了し援軍として登場する。*1
聖グロリアーナ学園は、チャーチル1両に随伴のマチルダⅡが4両という編成。

性能を比較すると、Ⅳ号戦車D型は大戦初期のタイプなので、まだ短砲身で威力は弱く装甲も九七式中戦車程度しかない。
Ⅲ号突撃砲は大洗女子学園最強の75ミリ長砲身を装備しているため威力もあり装甲値もそこそこある。本当であれば車高が低いためサイズ修正でマイナス修正がつくところ、この試合の時には旗指し物を立ていたため逆にプラス修正になっているというオチはあるが。
八九式は砲威力が決定的に弱く装甲値も高くはない(程度としてはⅣ号戦車より若干薄い)。それよりも、この車輌の最大の弱点は速度が遅いことだろう(移動力2)。速度が遅いためオトリ役にも、相手の弱い車輛を狙う役割にも使えない、残念な車輛になっている。なお、移動力の件は実車の性能からするとこの数値だとしても若干ゲタをはかせてもらっている感もある。
仮に八九式中戦車でチャーチルやマチルダⅡを撃破しようとすると、カードやキャラによる修正を抜きにすると、側面か後面に対して距離1ヘックスか2ヘックスのところから射撃を行って、それでも撃破率3%以下、またはよくても9%といったレートになる。接近する八九式中戦車に対して、両車が都合よく側面や背面をさらすとは思えないし、第一接近する過程で先に射撃を受けて撃破される確率が高いのではないか。

一方の聖グロリアーナ学園は歩兵戦車の系譜を引く、マチルダⅡとチャーチルだ。もともとの設計思想が、歩兵に随行できる速度ということなので遅いが(移動力2)、防御力にかけては、マチルダⅡでさえ、側面や後面装甲値でも大洗女子学園のどの車輌の前面装甲値よりも大きいという堅物な代物。

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大洗女子の作戦

勝利条件は相手の殲滅。
劇中ではマチルダ1両は路地に隠れたⅢ号突撃砲による不意打ち、マチルダ3両については、Ⅳ号戦車の運動性能を生かしたアクロバティックともいえる動きを駆使して撃破した。その後、チャーチルに挑み、Ⅳ号戦車は履帯が外れるような機動を行い、チャーチルの側面に回り込み射撃を行うが一瞬撃破が遅れて敗北する。
大洗女子にとっての実質戦力はⅣ号中戦車とⅢ号突撃砲の2両。仮に38(t)が間に合ったとしても37mm砲は非力すぎる。まして、聖グロリアーナ学園の車輌の防御力はただでさえ高く、Ⅳ号戦車からだとしても、側面・後面への射撃でなければ撃破の難易度がぐんとあがる。
幸いなのは、マチルダⅡの砲威力が弱い点か。弱いといっても、側面や背面からだと十分に撃破されかねない、そういう強さだ。
チャーチルやマチルダⅡに対して移動力が高い(とはいえ、2に対して3)のは利点だが、やすやすと後背位置をとれるほどの差はない。
後背位置をとるような機動ができるとすると挟み撃ちしかない!
まぁ数が少ないほうが挟撃できるというのはよほどの状況だろうが

聖グロリアーナ学園の作戦

大洗女子学園の戦力ではチャーチルはもとよりマチルダⅡの前面装甲をなかなか抜くことは難しいだろう。移動力こそ劣っているが数に勝る聖グロリアーナ学園の取り得る作戦はまさに力押し一択ではないか。
市街戦のため取り得る進撃路は特定される。その1本1本に車輌を配し、後ろをとられないように機動する。いずれかの進撃路を大洗女子学園がとったのならば、異なる進撃路を進む車輌が迂回して挟撃すればよい・・。
あとは地元の利で大洗女子学園だけが使える”路地移動”だけを注意すればよい(もっとも路地移動にはヘックスあたり2移動力必要なので、いきなり背面に現れる、といった機動は無理だ)。

プレイ

両軍アクションカードの縛りからジリジリとしか前進できず、双方が接近したところでにらみ合いになる。通常のアクションカードは「移動」か「射撃」かしかできないため、射撃をするために射撃位置に移動することはイコール相手に自分の身をさらすことになる。ここで相手側の手番で射撃されると万事休すだ。
敵が射撃カードを持っていないか、攻撃に失敗することを期待して姿を晒すのか。先に動いたほうが不利な状況だ。

それでもユニット数に勝る聖グロリアーナ学園の車輌が迂回しようとしたところで、大洗女子学園は後退し、港近くの広い駐車場に誘い込む。ここであれば、回り込むことによって側面からの攻撃が可能だ!
大洗女子学園のⅣ号戦車はカードによるボーナス移動力をもってマチルダⅡの側面に回り込み、近接した距離から射撃を行い、命中!
続く破壊判定は、失敗!!
移動ボーナス付きカードをためたうえでの渾身の一撃を弾かれ、大洗女子学園の継戦意欲が潰えたため、ここで終了とした…

感想戦

アクションカードの縛りはきつい。移動できない。接敵すらもできない。
1ターンのうちに使うことができるアクションカードは1枚なので、移動か、射撃かしかできないのは痛い。
敵車輌が近くなったということで、射撃位置まで移動するとそこで手番は終わる。相手側からすると目の前にのこのこ現れた車輌に、射撃カードがあれば射撃するだろう。相手側が射撃カードをもっていないか、持っていて射撃したとしても攻撃が失敗に終わるかを期待して姿を表すしかない。となると、両方とも先に動くのを嫌って睨み合ってしまう。手詰まりとなる。

また、市街戦は実質幅1ヘックスの道路ヘックスでしか戦えず、ルールでは敵車輌がいるヘックスへの進入もできないため、道路を占拠している敵車輌を後ろから攻撃するためには大きく迂回して後ろに回っていくしかなくなる。

(追記)
選択ルールで「すり抜け」というのがあり、敵戦車がいるヘックスにはいることができるのだが、移動力が1余分に必要で移動終了時には同じヘックスにいることはできないという縛りがあるので利用できる場面はこれまた限定されるという印象を受けた。移動を始める前に敵ユニットに隣接した位置にないといけないので、敵ユニットの射撃を回避できているというのが前提になる。

「移動」カードで移動を行っても動けるヘックス数が3ヘックスだけというのもいただけない。聖グロリアーナ学園に至っては2ヘックスだ。本シナリオの初期配置で双方15ヘックス程度は離れているので、双方1台のみ突出させたとしても接敵までに3ターン要する。実際は複数台の車輛を交代で動かすであろうし、「移動」カードが”潤沢に”手札にあるとは限らない。となれば、接敵して射撃戦が始まるまでになんとまぁ時間がかかることか。
こういった状況では、相手に対して有効射撃を行う可能性が非常に低い、八九式中戦車などに「移動」カードを費やそうという気にもならず、自然、前線から取り残されてしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

*1:援軍登場という場面があったっけ?と作品を見返したところ、1両だけ残ったⅣ号戦車が追い詰められた時に横合いから滑り込んでくるというシーンがあった。その後、超至近距離にも関わらず射撃を外してしまうというオチまでついてくるが