Their Finest Hour -歴史・ミリタリー・ウォーゲーム/歴史ゲーム -

歴史、ミリタリー、ウォーゲーム/歴史ゲーム/ボードゲーム

「THEIR FINEST HOUR」(GDW)を対戦する(2)ルール・シナリオ・AAR

「THEIR FINEST HOUR」は第二次世界大戦中の欧州戦域のすべての戦闘を師団規模のユニットで表現するエウロパシリーズの中の1作で、1940年のドイツとイギリスの間で戦われたバトル・オブ・ブリテンと、その後のドイツによるイギリス本土への侵攻計画を扱っています。

 

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エウロパシリーズは、1970年代なかばにGDW社により販売が始まり、販売会社を変えながら、シリーズが継続しているゲームシリーズです。ルールや設定上どれほどの一貫性が保たれているかは不明ですが、その精神は続いているということなのでしょう。

日本ではホビージャパンが80年代なかばにライセンス販売し、大戦初期から中期を扱った6作をリリースしたところでウォーゲームブーム自体が下火*1になったことからかその後リリースは途絶えました。

国内でライセンス販売されたエウロパシリーズ作品

( )はオリジナル版のリリース年、国内リリース年は確認中

  • Narvik (1974、日本版1983?)  
    1940年のドイツのノルウェー侵攻
  • Their Finest Hour (1976、日本版1984)  
    1940年のバトル・オブ・ブリテンとドイツの侵攻計画
  • Fire in the East (1984)  
    1941年から1942年にわたるドイツによるソ連侵攻とソ連の反抗  
  • The Fall of France (1981)  
    1940年のドイツによるオランダ、ベルギー、フランスにおける西部戦線キャンペーン
  • Case White (1977)  
    1939年のポーランド侵攻
  • Western Desert (1982)  
    1940年から1942年の北アフリカ戦線

 

THEIR FINEST HOURについて

日本語ライセンス版は1984年の発売。
ルールやゲームのスケールはエウロパシリーズ共通になっています。

陸上部隊:基本は師団単位

航空部隊:40機

艦艇:大型艦1隻単位、小型艦複数隻

1ターン=2週間

1ヘックス=16マイル(約25キロ)

バトル・オブ・ブリテンから強襲上陸、イギリス本土での陸戦への展開を扱っています。キャンペーンシナリオは1940年8月前半~同年12月下旬の全10ターンです。ただし航空決戦に失敗すればその後の海上決戦や上陸作戦&降下作戦は発動しないことになります。

史実では1940年8月1日に空襲開始。
当初レーダー基地などの軍事施設を目標にしていたが、8月末よりロンドン空襲に目標を変更。その後、1940年9月19日に昼間爆撃が縮小され実質中止された。

フルサイズマップ2枚、ユニット総数1200枚のかなりのボリュームのゲームです。

 

シナリオ紹介

タクテクス17号(1984年9月号)に掲載された空戦シナリオを用いました。

キャンペーンゲームと同じく1940年8月上旬からスタートし、9月上旬までの全3ターンと、史実のバトル・オブ・ブリテンの期間に相当します。
両軍の戦闘序列もキャンペーンゲームに登場する航空部隊の序列にほぼ同一のため、このシナリオは「THEIR FINEST HOUR」の”バトル・オブ・ブリテン”シナリオと言ってよいでしょう。

勝利条件等

勝利条件はポイント制。
イギリス軍の得点事項は次のとおりです。

  • 残存する戦闘機ユニット
  • 機能しているレーダー
  • 機能している工場

ドイツ軍の得点事項は次の通りです。

  • イギリス軍のレーダー網の壊滅(5基のレーダーサイトのうち4個を破壊する)
  • 残存する航空機ユニット

また両軍とも次の事項も得点になります。

  • 航空機能を喪失した敵の飛行場、小都市、中都市、主要都市
  • 敵主要都市への1打撃につき

両軍の戦闘序列

数字はユニット数:1ユニット=40機相当
イギリス軍の序列にある+の後の数字は第3ターンの増援

ドイツ軍
イギリス軍

概してドイツ軍のほうが戦闘機等の数は優位にあります。
イギリス軍側に相当の爆撃機がありますが、これは大陸側を爆撃するためのものです(史実でも夜間爆撃を行っています)。
イギリス側は戦闘機の数など劣後していますが、飛行場・レーダー基地・都市などには固有の対空値があり、別に可動の対空砲ユニットの配置が可能となっています。

 

ルール紹介

前述のとおり1ターン=2週間で両軍プレイヤーは交互にプレイヤーターンをプレイします。各プレイヤーターンで、航空ユニットを扱う「航空フェイズ」が含まれます。

航空フェイズ  ・・・各プレイヤーターンに実施

(1) 非フェイズプレイヤー海上航空セグメント・・海上目標に対する攻撃(今回対象外)
(2) フェイズプレイヤー航空セグメント・・陸上目標に対する攻撃
  a. フェイズプレイヤー航空移動ステップ
  b. 非フェイズプレイヤー迎撃機移動ステップ
  c. 空戦解決ステップ
  d. 任務解決ステップ

 

航空ユニットの数値

  • 左上:航空攻撃力
  • 右上:航空防御力
  • 左下:爆撃力(数字がひとつの場合は戦術爆撃力、ふたつある場合はふたつ目は戦略爆撃力)
  • 右下:移動力(航続距離)

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スピットファイアMk.1
マリーンエンジンを搭載したスピットファイア最初の生産型。ドイツのフランス侵攻時は温存され、バトル・オブ・ブリテンで本格的に投入された。高速・高機動性・重武装で、Bf109に対抗した。Bf109ほどではないが、航続距離が短いのが玉にキズ。1人乗り、7.7ミリ機銃8丁。

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メッサーシュミットBf109 E型
名実ともにドイツ空軍の主力戦闘機。
高速による一撃離脱戦法を得意とする。多数の生産型があるが本機は名発動機”DB601”を搭載した本格生産型。航続距離(移動力)が短いのが致命的。1人乗り、20ミリ機銃☓2、7.92ミリ機銃☓2

爆撃などの攻撃実施までの手順

1. 爆撃を行う側の航空ユニットの移動

爆撃を行う航空ユニット、爆撃機を護衛する航空ユニットは、目標となるヘックスに移動します(目標となるヘックスは航空ユニットの航続距離内である必要があります。陸上ユニットのように、目標まで移動している途中という状態はありません。)

2. パトロール攻撃のチェック

航路の途中で敵戦闘機のAZOC(航空支配地域:航空ZOC:Air Zone of Control)を通過した場合は、「パトロール攻撃」のチェックを行います。チェックに失敗した航空ユニットは哨戒にあたったということで、強制的に帰還させられます。

3. 迎撃側の戦闘機ユニットの移動

相手側はその目標ヘックスに対して迎撃を行う場合は迎撃機を発進させます。

4. 空戦の解決

同一ヘックス内に敵味方の航空ユニットが存在した場合は空戦が発生します。
「空戦の解決」では、迎撃側は護衛の戦闘機へ攻撃を行うユニットと、爆撃機への攻撃を試みるユニットに分けて攻撃を行います。

5. 対空砲火の解決

目標ヘックス内の目標となった施設固有と同ヘックスに配置されている高射砲部隊の対空砲力の合計値を用いて対空砲火の解決を行います。

6. 任務の実施(爆撃の解決)

ここまでで強制的な帰還や損傷を受けていない爆撃機は、爆撃を行うことができます。


「パトロール攻撃のチェック」「空戦の解決」「対空砲火の解決」「爆撃の実施」のいずれも1ユニットずつチェックを行うことになりますので、相当回数ダイスを振ることになります。
またそれぞれ急降下爆撃機、戦闘機、爆撃機といった機種に応じてそれぞれの場面において各種のダイス修整があります。

夜間戦闘

1ターンが2週間というスケールですので、夜間ターン・昼間ターンがあるわけではありません。通常の移動や戦闘・爆撃などの行動の際に夜間航空行動であることを宣言することで対応できます。

  • 昼間爆撃機が夜間爆撃任務を行う場合は、目標の到着チェック、搭載爆弾量、爆撃結果判定、帰還時の着陸チェックなどにおいてペナルティを受けます(夜間爆撃機が夜間爆撃を行う場合は、爆撃結果判定時のものを除きペナルティは受けません)。
  • 夜間迎撃を行うことができる戦闘機は夜間戦闘機に限定されます。

レーダーサイトの効果 

レーダーサイトユニット5箇所配置されますが、個々の耐久力はチットによりランダムに決まり、最低0から8までとなっています。5個のサイトのうち4個を破壊されるとイギリス軍のAZOC(航空支配地域)のヘックス数は1ヘックスに限定されます(通常は、最大4ヘックス)
また受けた損害はターン毎に補充される「装備ポイント」を用いることにより修復ができます。

 

プレイ

ドイツ軍を当方が担当、Mさんがイギリス軍を担当しました。

初期配置

このゲームではドイツの戦闘機の航続距離の短さには改めて気付かされます。特に主力戦闘機であるメッサーシュミットBf109が致命的です。距離が遠い目標への護衛などについては、航続距離が長いBf110を使うという手もありますが、同機の戦闘力はスピットファイアはもとよりハリケーンにも劣ります。さらには、戦闘力には目をつむったとしても数が足りません。

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メッサーシュミットBf110C型
戦間期1930年代に各国で夢想され盛んに開発された双発戦闘機のドイツ版。ゲーリング元帥から「駆逐機」と命名されるが、バトル・オブ・ブリテンでは惨敗し、単発戦闘機に比べて大きく重い双発戦闘機は空中機動において単発機に抗し得ないことを証明した。が、その後は機体に余裕があったことから電探の搭載など様々な改造版がでてきたところは好き。

双発、2人乗り、20ミリ機銃☓2、7.92ミリ機銃☓4

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ハリケーンMk.1
スピットファイアと同時期に開発され同じマリーンエンジンを搭載しているにも関わらず性能はかなり劣後していた機体。それでもイギリスが本機を採用したのはバトル・オブ・ブリテンが迫っていたためと言われている。Bf109相手の空中戦はもっぱらスピットファイアに任せ、ハリケーン爆撃機邀撃を行った。
ユニットの数値としては戦闘力において、スピットファイアより1段階落ちている。ということはメッサーシュミットBf109相手では2段階落ちということでかなり分が悪い。

1人乗り、7.7ミリ機銃8丁。

 メッサーシュミットBf109の足では、コタンタン半島の北端などドーバー海峡沿いの都市や飛行場に配置しても、届くのはドーバー海峡沿いの飛行場、都市、レーダーサイト、またロンドンまで。最初のプレイということもあり、目標をとりあえず南岸に並ぶレーダーサイトに絞り配置しました。

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第1ターン

 ドイツ軍の最初の攻撃は南岸の3ヶ所のレーダーサイトとしました。

  • 迎撃による損害を抑えるためには、航空優勢をとらなければならない
  • ドイツ軍が移動した後でイギリス軍の迎撃機が移動するため、陽動が効かない

イギリス軍の迎撃が予想される以上、まして航空優勢をとることを考えると、攻撃ヶ所は減らして戦力を集中させる必要がある、という結論にいたり、ドイツ軍の最初の攻撃目標はドーバー海峡に面したレーダーサイト3ヶ所としました。
これがバトル・オブ・ブリテンか、と言われると自信はありませんが、システム上、やむを得ません。

戦闘がはじまるとイギリス軍の戦闘機部隊による哨戒活動(「パトロール攻撃」)により20%程度のユニットが帰還させられてしまいます。

その後、イギリス軍の迎撃はドイツが選んだ3ヶ所の爆撃目標のうち2ヶ所に対して行われました。両方ともドイツは護衛機の数で迎撃機の数を上回っていましたので、爆撃機隊はほとんど損害を受けることなく、爆撃目標上空へ侵攻することができました。

ところがその後の対空砲火の解決において猛烈な攻撃を受けます。各レーダーサイトは対空部隊ユニットが配置され対空防御を強化されていたのです。
対空砲火は施設/ヘックスで合算され、その数値がそのヘックスを爆撃する全ての爆撃機攻撃機に一律に適用されて判定を行います。

イギリス軍もレーダーサイトという重要目標に対して対空ユニットを配置していたためドイツの爆撃機隊は猛烈な対空射撃を受けたのです。
結果、爆撃機隊は爆撃に参加したユニットのうち半分強から三分のニのユニットがなにかしらの損害を得て爆撃の実施ができなくなりました。

航空ユニットの損害は「空戦」「対空砲火」によって、次のようなものがあります。

撃墜・・ユニットは失われます。撃墜された場所が敵地か味方地かによって再編のしやすさが変わります

損傷・・ユニットは損害を受けたということで帰還します。飛行基地ではユニットは裏返され、増援フェイズで修理チェックを行い成功すればユニットは再び使うことができるようになります。

帰還・・ユニットは強制的に帰還させられます。次回以降の出撃は可能です。

損害なし

 対空砲火により「撃墜」される確率は高くありません。多くの航空ユニットは「帰還」か「損傷」の結果により、帰還することになりました。

ここまできて残った爆撃機隊が攻撃を実施します。
ここは、たまたま攻撃したレーダーサイトのひとつの耐久力が弱く、壊滅に成功します。

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ドイツ空軍は南西部と南部、また南東部(写真には写っていない)の合計3ヶ所のレーダーサイトを爆撃目標として殺到した。

 

第1ターンのイギリス軍はドイツ空軍の爆撃機隊の本拠地となっていたルールへ夜間爆撃を実施します。
イギリス軍の爆撃機の多くは夜間爆撃が可能であり、夜間戦闘機もそこそこにあります。いっぽうドイツ軍には夜間戦闘機は2ユニットしかなく、実質イギリス軍の夜間爆撃を防ぐ手立てを持っていません。
実際に受けた損害は微微たるものでしたが、ドイツ軍の防衛網の間隙を縫って行われたこの攻撃に衝撃を受けます。

 

(つづく)

 

 

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*1:ポーランド侵攻を扱ったCase Whiteがライセンス製品の最後の作品ですが、オークションでは6作の中でもとりわけ高値になります。この作品が発売された頃は、ウォーゲームブーム自体が下火になっていたため、流通量が少なかったというところでしょう。

「THEIR FINEST HOUR」(GDW)を対戦する(1)ーチャーチルの演説と本ブログのタイトル由来についてー

第2次世界大戦中のイギリスの首相ウィンストン・チャーチルは演説上手で、数々の名言で知られています。有名な演説のひとつとして、ダンケルクの撤退(1940年5月下旬)直後の1940年6月4日下院で行われたものがあります*1

・・we shall fight on the beaches, we shall fight on the landing grounds, we shall fight in the fields and in the streets, we shall fight in the hills; we shall never surrender・・

・・我々は海岸で戦う、我々は水際で戦う、我々は平原と市街で戦う、我々は丘で戦う。我々は決して降伏しない。・・

少々派手な演出が加えられていますが、肉声です。

www.youtube.com

大陸への派遣軍がドイツ軍によって叩き出され、残る同盟国であったフランスは抵抗する術を失いつつあり、頼みのアメリカも参戦していない無援状態になったイギリスです。*2
同じ演説の中でこうも言っています。

・・this Island or a large part of it were subjugated and starving, then our Empire beyond the seas, armed and guarded by the British Fleet, would carry on the struggle, until, in God's good time, the New World, with all its power and might, steps forth to the rescue and the liberation of the old.

たとえこの島やその大部分が征服され、飢えに苦しむとも、神の御加護のある時に、新世界がその全力をもって旧世界の救助と解放に向かうまで、海の向こうで英国艦隊が武装し保護する、我らが帝国は闘いを続けるだろう。

最悪のケースとしてイギリス本土を占拠されることすら覚悟していたことをうかがわせる内容です。

 

さて、チャーチルの演説を持ち出した目的はこちらではなく、1940年6月18日に行った演説の話です。

the Battle of France is over... the Battle of Britain is about to begin.
Upon this battle depends the survival of Christian civilisation. 
Upon it depends our own British life, and the long continuity of our institutions and our Empire. ・・
Hitler knows that he will have to break us in this island or lose the war.
If we can stand up to him, all Europe may be freed and the life of the world may move forward into broad, sunlit uplands.
But if we fail, then the whole world, including the United States, including all that we have known and cared for, will sink into the abyss of a new dark age made more sinister, and perhaps more protracted, by the lights of perverted science.
Let us therefore brace ourselves to our duties, and so bear ourselves, that if the British Empire and its Commonwealth[e] last for a thousand years, men will still say, "This was their finest hour."

フランスの戦いは終わった...イギリスの戦いが始まろうとしている。 ・・
この戦いの上にキリスト教文明の存続がかかっている。この戦いの上に、我々のイギリスの生活、そして我々の制度と帝国の長期的な継続性がかかっている。
ヒトラーはこの島の我々を破壊しなければならないことを知っている、さもなくば戦争に負けることを。
もし我々がヒトラーに立ち向かうことができれば、全ヨーロッパは解放され、世界の生活は太陽の光に照らされた高みへと前進することになるだろう。
しかし、もし我々が失敗すれば、米国を含む全世界が、我々が知り、大切にしてきたすべてのものを含めて、より不吉な新しい暗黒時代の奈落の底に沈むだろう。そして誤った科学によって、暗黒時代はより長く続くだろう。
(だからこそ)私たちは自分たち自身の責務を果たし、耐え抜こうではないか。そうすれば、大英帝国と英連邦が 1000年続いたとしても、人は「この時が彼らの最高の時だった」と言うだろう。

 この演説の2日前の6月16日、フランスはドイツに休戦を申し入れています。イギリスの同盟国のひとつが脱落しようとするときにこの演説がなされます。

Animated “This Was Their Finest Hour…” speech by Winston Churchill

 

上の引用では省略していますが、チャーチルヒトラーの侵略と戦うのは、英国民の生存と国益だけではなく、イギリスが戦う気高い理由(自由、キリスト教文明、小国の権利*3)ためだと言っています。
その上で、国民に対し、義務・責務を果たし、耐え抜こうと呼びかけます。そうすれば、1000年後にも、「(国民が一致団結して責務を果たそうとするこの時が)最良の時だった」と言われるだろう、というとてつもないレトリックを駆使しているのです。

最悪の時は、最高の時に変えることができる、という、あれ、これって人生訓か?

 

そしてようやく本題

ながながとチャーチルの演説の話をしたのはこの演説からとられた言葉を題名にしているゲームをすることになったためです。

2020年の対戦納めは「DUNE」のつもりだったのですが、ひょんなことから表題のゲームを対戦することになりました。

Copyright © Rodger B. MacGowan, Hobby Japan Ed.

ちはら会のMさんがソロをして対戦相手を求めるという書き込みをされているのを見て、ブログの題名にも使っているゲームをせねばなるまい、という変な義務感(もちろんこの機会を逃せば、ゲームの状況からして、5年10年単位で機会は巡ってこないであろうという判断から)より申し入れをさせていただいたものです。

 

エウロパシリーズ

本作は同一スケールで第二次世界大戦中の全戦域をゲーム化しようというゲームシリーズであったエウロパシリーズの中の1作です。
同一スケールというのは、ユニットは陸軍は1個師団単位(最小大隊単位もあり)、航空機は40機、艦船は大型艦は1隻、小型艦は数隻単位、1ヘックス=16マイル(約25キロ)。タイムスケールは1ターン2週間となっている(らしい)。

もともとアメリカのGDW社より1976年から発売が開始され、1980年代にはホビージャパンから数作が日本語版のライセンス販売されました。その後、日本での販売は80年代後半のウォーゲームの低迷もあってか、ぷつんと切れ、90年代にはいってGDW社自体も解散しました。
ところが米州では販売会社を変えながら、シリーズとしては継続していることになっているようです。

en.wikipedia.org

 

今更シリーズを追いかけるだけの気力も興味もありませんが、かつて心を踊らせたゲームとしては試してみたいということですね。

次回はゲームとルールの紹介をします。

(つづく)

 

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航空戦史 (航空戦から読み解く世界大戦史)

航空戦史 (航空戦から読み解く世界大戦史)

  • 作者:古峰 文三
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

*1:5/28 ベルギー降伏
6/14 ドイツ軍によるパリ無血入城
6/16 フランスがドイツに休戦を申し入れる
6/22 ドイツ・フランス間での休戦協定調印

*2:イギリスに対するアメリカからのレンドリースが始まるのは1941年3月になってから

*3:チェコポーランドノルウェー、オランダ、ベルギーの国名があげられている

「FALLING SKY」(GMT)対戦する(1):基本システムと登場する勢力の紹介

GMT GamesのCOINシリーズから「FALLING SKY」を対戦しました。

カエサルにより著された「ガリア戦記」の世界。
紀元前1世紀のガリア(現フランス)を舞台に、カエサル率いるローマ共和国、反ローマを標榜しガリア人を結集させたウェルキンゲトリクス率いるアルウェルニ(Arverni)、ガリア人の中でも親ローマ部族であるエドゥイ(Aedui)、ガリアの北方Belgic地方に住む獰猛なベルガエ(Belgic)。ここまでの4勢力がプレイヤーが担当する勢力で、これにノンプレイヤーの5番目の勢力としてゲルマン(German)が登場します。

COINシリーズのCOINとは対反乱作戦(counter-insurgency, COIN)の略称です。
体制側と反体制側との非対称戦争を描いたシリーズとして、基本システムを同じくした3人制または4人制ゲームとしてシリーズ化されています。現在11作目まで出版されており、本作は6作目にあたります。

今回のゲームでは、体制側がローマ共和国とエドゥイ、反体制側がアルウェルニベルガエとなるでしょう。ゲルマンも反体制側にあたるでしょう。

4つの勢力それぞれはその使うことができるコマンドや能力、軍事力や指導者の能力や数が異なります。また勝利条件も異なります。同じ体制側にあってもローマエドゥイの勝利条件は異なりますので、ローマにとって有利な事象は必ずしもエドゥイにとっても有利に働くとは限りません。
ローマを担当するプレイヤー向けのプレイエイドにも、「ハエドゥイは同盟部族ですが、必要に応じて鎮圧して、彼らが相手をしているのはローマであり、カエサルであることを知らしめてください」とあるくらいです。*1

また体制側のローマと、反体制側の筆頭格のアルウェルニの勝利条件が完全に表裏の対照関係にあるわけでもないです。
COINゲームではプレイヤーが担当する勢力に定められた様々な条件(勝利条件、ゲーム中に使うことができるコマンドや能力、影響するカード、地理、軍事力などの人的資源、その他の特別に設けられたルール(例:ローマの元老院))によって複雑に組み上げられています。

こうした複雑な要素の組み合わせがCOINゲームの魅力でしょう。そして勝ち筋を見極めるには、各勢力間の要素の組み合わせの理解が必要となります(まぁそこまでぎちぎち言う必要はないですが、メカニズムの理解があれば楽しみも増すというものです)。

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赤はローマ、水色はハエドゥイ、緑色はアルウェルニ、黄色はベルガエ、黒はゲルマンです。

 

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基本システム

COINシリーズの基本的なシステムの紹介はこちらの記事に書いています。

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本ゲーム特有の要素を紹介します。 

「冬」カードと「冬」ターン(決算期)

他のCOINシリーズのゲームでいうところの「決算」イベントがこのゲームでは「冬」として表現されています。
「冬」カードはカードの10~15枚毎に1枚発生するように混ぜられます。

ゲーム内では「冬」カードが姿を現すと*2、「霜(FROST)」の季節になり、「行軍」ができなくなります。

「冬」ターンになると通常の処理の代わりに「冬」ターン特有の処理になります。内容としては次のような処理が実施されます。

ゲルマン人の登場

ゲルマン人はノンプレイヤーではありますが5番目の勢力として登場します。通常はレヌス河(今のライン河)の東側にいるのですが、「冬」ターンの間のゲルマン人フェイズとまたはベルガエ族の特殊能力である「招集」が使用された際に、レヌス河を超えてガリアに侵入してくることがあります。いったん登場したゲルマン人のユニットは通常の勢力のユニットと同じで、戦闘などによって除去されない限り、その地にとどまり、そのエリアの支配状況のチェックの際などにも影響を与えるし、場合によれば戦闘を行います。

「冬」ターンのゲルマン人フェイズではレヌス河以東のエリアやガリア側でも既にゲルマン人ユニットいるエリアについて、ゲルマン人ユニットがランダムな数発生します。発生したゲルマン人は隣接したエリアに移動し、略奪を行い、相手のほうが劣勢の場合は戦闘をおこないます。

ベルガエ族はレヌス河の両側を勢力圏にしているということもあり、ゲルマン人とは近い関係にあります。ベルガエ族の特殊能力「招集」を使うと、ゲルマン人の軍勢を呼び寄せることができるのです。
ただしゲルマン人がベルガエ族の言うことを聞くのはここまでで、いったん盤面に登場したゲルマン人はそのエリアの支配状況の確認において影響を与えるし、他の勢力が弱い軍勢しか配置していない場合は、襲ってくることもあります。
中国の歴史でも中原の勢力が敵勢力に対抗するため、北方の異民族の軍隊を引き入れるといったことがあったように思いますが、ここではゲルマン人がそういう異民族としての立ち回りになっているということです。

元老院

ローマが帝国になったのはこの少し後の時代であるため、ゲームが取り扱っている時代はまだ共和国時代で、ローマの政治は元老院がしきっていました。
元老院カエサルという有能すぎる植民地総督に権限を託しつつも警戒していました。カエサルガリアの地で勝つと元老院からのカエサルに対する支持は増える一方で警戒されるかもしれません。逆に損害が嵩むと無能扱いされるかもしれません。
ローマの正規軍の動員・派遣は元老院の意志が働きます。一度除去されたローマ正規軍ユニットの再派遣や増援には元老院の状況が影響するのです。またカードのイベントでも元老院絡みのものは少なくありません。

元老院はCOINシリーズの他作品「FIRE IN THE LAKE」のアメリカ世論だったり、「DISTANT PLAIN」における国際世論と同じような役回りと言えるでしょう。

史実ではこのゲームで描かれた時代を経た後、カエサルはまさにルビコン河を渡るのですが、それもカエサル元老院の対立が表面化したことよって発生したのです。

勢力

ローマ

文明化され訓練が行き届いた正規兵であるローマ軍団(ただし絶対数は少ない)と従属国から徴兵した補助部隊からなる軍隊を抱える当時の超大国。さらに稀代の英雄カエサルガリア総督)に率いられ、植民地ガリアの平定を目指しています。

ローマの勝利条件は、服従させた部族、同盟した部族、または空白エリアの数になります。前2つはまさに征服によりローマの支配権を広げる指標としてぴったりです。3番めの”空白エリア”とは、勢力間の力関係が拮抗していてどの勢力の支配下とも言えないエリアを指します。これからわかるのは、ローマは決して全てのエリアを支配下におこうとしているのではなく、それは同盟部族の勢力範囲でも良いし、究極は、どこの勢力にも属さないという状態でもよいとしているのです。勢力関係が決まらないほうど乱れているエリアというのはつまりはローマに抵抗するだけの力がある勢力がないということですので、こうした状態はこれはこれでローマにとって意味があるということなのでしょう。

ローマが使うことができるコマンドや能力のうち面白いのを紹介すると、「収奪(Seize)」があります。指定されたエリアから強制的な徴税するというものです(通常、徴税は1年に1回、「冬」のターンのみ)。ただこのコマンドを使うペナルティとして原住民の反発が起き、周辺エリアでローマの支配に反発する軍勢が湧き上がります。

ローマの定石としては、「行軍」で侵攻し、「戦闘」で相手を撃滅する。その後、「建設」でそのエリアに「砦」を建築する。周辺の部族を服従させ、そのエリアの支配を堅固にする、といったところでしょうか。
カエサル率いる軍勢は3エリア移動できます(他に移動ボーナスが与えられているのはウェルキンゲトリクス率いる軍勢による2エリア)。実は3エリア移動できるとガリア中のかなりの部分に直接リーチできるようになります。
実際、「ガリア戦記」でもカエサル率いるローマ軍団が東奔西走していたことが書かれていましたのでそのあたりを再現するための移動ボーナスなのでしょう。

David Blixt: Roman Legions - Terms and Definitions

The Auxilia of the Roman Army – Digital Maps of the Ancient World

上が正規軍のローマ軍団(LEGION)、下は各国の兵士からなる補助部隊です。 

 

アルウェルニ

反ローマの筆頭です。史実ではガリアの大反乱を主導したウェルキンゲトリクスがリーダーとして登場します。
ウェルキンゲトリクスは自分の部族のためではなく、全ガリアのためにローマに対する戦争を開始した人物です*3

各勢力の中では最大の動員力を持っています。ただその戦闘力は(他のガリア部族も同じですが)ローマの正規軍(ローマ軍団)には敵いません。このため攻撃できる時には損害を厭わずに行う一方で、カエサルやローマ軍団が来た時には一目散に森の中に逃げろと記されています。

アルウェルニの勝利条件は、同盟部族+城塞都市の数と、除去したローマ軍団(正規軍)の数が一定数を超えることになります。上ではローマ軍団が来ると逃げろ、書いていますが、逃げてばかりもいられないというところです。ここがアルウェルニの最大のジレンマになるのではないでしょうか。

アルウェルニが使うことができるコマンドや能力の中で特徴的なものをあげるとすると「荒廃(Devastate)」があります。指定したエリアの軍を飢えさせ、多くのアクションの妨げになります。一度、「荒廃」させられたエリアは「冬」を経るまで回復しません。指定したエリア内にいる軍勢は勢力の3分の1を強制的に失います。ただこの「荒廃」はアルウェルニが支配しているエリアでのみ実施できます。飢えるのは他勢力の軍勢ばかりではなく、アルウェルニ自身の軍勢も損失を蒙ります(損害の比率は低い)。

アルウェルニの定石としては、「荒廃」と「嘆願」(ローマの補助兵力やガリアの他勢力の軍勢を味方に寝返らせる)を使い敵の数を減らし、潜伏させている軍勢の数が相手を上回った時には「不意打ち」を行います。回復力はあるので過度に損失を恐れる必要もありません。

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ウェルキンゲトリクスの騎馬像

 

 (つづく)

 

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ガリア戦記 (平凡社ライブラリー664)

ガリア戦記 (平凡社ライブラリー664)

 
ガリア戦記 (講談社学術文庫)

ガリア戦記 (講談社学術文庫)

  • 作者:カエサル
  • 発売日: 1994/04/28
  • メディア: 文庫
 
カエサル戦記集 ガリア戦記

カエサル戦記集 ガリア戦記

  • 作者:カエサル
  • 発売日: 2015/02/25
  • メディア: 単行本
 
ガリア戦記 (まんがで読破)

ガリア戦記 (まんがで読破)

  • 作者:カエサル
  • 発売日: 2010/12/01
  • メディア: 文庫
 

 

*1:逆にハエドゥイプレイヤーに対しては、「セルティカの覇権を握る時が来るまで、ローマの味方でいましょう。カエサルが必要とする地元の助けと資源を供給し、ハエドゥイを脅かす好戦的な敵対部族をローマに制圧してもらうのです。この点、カエサル元老院と、ハエドゥイとは利害関係を共有していると言って良いでしょう。」とあります。

*2:これもCOINシリーズの常として、カードは現在プレイしているカードの他、次にプレイするカードも表にされます

*3:最後はローマによって捕われ処刑されますが、この行動によりフランスの英雄とされているそうです。

「DUNE」(Gale Force Nine)を対戦する

ゲームの紹介

2020年最後の千葉会は「DUNE」(Gale Force Nine)の対戦となりました。
「DUNE」はアメリカの作家、フランク・ハーバート原作のSFシリーズ。
ウイキによる紹介文では次のように書かれています。

砂に覆われ、巨大な砂虫(サンドワーム)が支配する荒涼の惑星アラキス、通称デューンを舞台に、宇宙を支配する力を持つメランジと呼ばれるスパイスを巡る争いと、救世主一族の革命と世界の混沌を軸にした壮大なドラマが展開される・・。

元のゲームは1980年代にアバロンヒルから発売していた製品で、本作はその再販リメイク版ということになります。旧作とのルールの違いは大きな変更はない模様ですが、何点かは値や細かいルールの変更などはあるようです(旧作経験者談)。

 

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  • 舞台は遥か未来、宇宙は皇帝が治める”帝国”による封建社会支配下にあるものの、実際は「皇帝」と星々を統治する事業主一族である”大公家連合”、さらに宇宙旅行、星間輸送、国際間銀行業務を独占する「宇宙協会(ギルド)」の三勢力の均衡の上にあった。
    (このゲームには、大公家連合から、「アトレイデ家」と「ハルコンネン家」が登場)
  • メランジとはアラキスでのみ産出するスパイス(麻薬)で主要な作用は抗老化だが、ギルドが牛耳る航宙ナビゲート能力をはじめとして様々な超能力の引き金になる宇宙的に重要な産品となっている。
  • 砂虫(サンドワーム)は、アラキスの砂漠に生息する巨大な体節生物。振動を感知して現れる。メランジの生成に関わっている。

  

とここまでがゲーム設定上の背景知識です。

ゲーム内に登場するのは6勢力。最大6人プレイになります。

プレイヤーが操作する勢力

皇帝:

カードを競り落とすフェイズの際に他のプレイヤーが競り落としたカードの代金を全て自分の収入にできるというルールにより(税金のようなもの?)、ゲーム初期段階では裕福になります。一部戦闘力の高い部隊を有しています。
初期時点でアラキス地表には軍備を持たないため、全て衛星軌道上から降下してきます。この際、マップ上のどこにでも降下できるのですが、初期状態のままでは降下した後の移動力が弱いです(1エリアのみ)。

アトレイデ家:

大公家連合の中でアラキスにおけるメランジの採掘権をもっている、原作では主人公が属する一族です。限定的な予知能力を持っているということでカードのビットの際や戦闘時に相手が出すカードを直前に確認することができます。
援軍は他惑星からくるので衛星軌道上からマップ上のどこへども降下できます。また開始時点でオーニソプター(鳥型飛行機)を使うことができ、大気圏内での移動距離が長いです(3エリア)。
収入源が砂漠内で湧出したメランジだけなので、争奪戦になります。

ハルコンネン家:

大公家連合の中の一族で、裏切りを得意とします。このため裏切り者カードや手札を他のプレイヤーより多く持つことができるという手練手管に長じた勢力といえます。
援軍は他惑星からくるので衛星軌道上からマップ上のどこへども降下できます。また開始時点でオーニソプター(鳥型飛行機)を使うことができ、大気圏内での移動距離が長いです(3エリア)。
収入源が砂漠内で湧出したメランジだけなので、争奪戦になります。

フレーメン:

アラキンの原住民、砂漠の民です。砂漠の上を多く移動できる(2エリア)、砂嵐にあっても全滅しない、砂虫にも大丈夫といった特徴があります。また砂虫の出現位置を操作できるという話もあります。
一部の戦闘力が高いエリート部隊を擁しています。またゲームに登場する中で最も高い戦闘力をもったリーダーがいるのもフレーメンになります(戦闘力が高いと裏切りの際に狙われがちなので、注意が必要という一面もあります)。
収入源が砂漠内で湧出したメランジだけなので、争奪戦になります。

ギルド:

宇宙船の操作や星間航行を独占しているため、アラキスに援軍を送る勢力は必ずギルドに輸送料を支払う必要があります。このためゲーム中、常に収入の道があるため、裕福です。
援軍はマップ上のどこにでも降下できるのですが、初期状態のままでは降下した後の移動力が弱いです(1エリアのみ)。
他のどの勢力も勝利条件に到達しない場合は、ギルドの勝利となりますので、実はそれを狙って行動するのがよいかも・・。

ベネ・ゲセリット:

最もトリッキーな勢力です。
宇宙に勢力を伸ばす女子修道会ということで、マインドコントロールや予知能力を持ちます。各勢力に付き従う宗教家という一面もあるため、各勢力がアラキンに軍勢を送り込む際に、ベネ・ゲセリットもユニットを1個つけていくことが可能です。宗教家でいる間は他勢力より攻撃を受けません(代わりに、通常の部隊ユニットのような行動はできない)。ある時点で軍勢として姿を変えることができます。
収入源としては、他勢力と同様にメランジの湧出点を押さえて収穫するという手法はとれるのですが、いかんせん軍事力が弱いため難しいです。代わりに喜捨を得ているということか、最低限の収入はあります。その程度ですので、始終貧乏にならざるをえない印象です。
予知能力としては、ゲーム開始前にそのゲームの勝者と終了ターンを予想しておき、ゲーム終了時にその内容があたっていると勝者になるというルールがあります(若干、なんだ、それは?という感がなきにもしもあらずですが)。
宗教家としては、各勢力の指導者層の軍師か相談役といった地位にあるということで、プレイヤーに対して”ささやき”をすることで、使うカードや攻撃方法などを変えさせることができます。

 ゲームの進行は、一連の手順(フェイズ)を実施していき、1ターン終了というオーソドックスなものです。
全10ターン。ルール難易度は高くないので慣れるとスムーズに進行するでしょう。

勝利条件

ゲームの勝利条件は、アラキンのマップ上に全部で5ヶ所にある砦(砂嵐などの影響を受けない居住地のようなもの)のうち3個を占拠することになります。6人のプレイヤーがいて、マップ上に5ヶ所しかない砦のうち3箇所を占拠するというのはかなりハードルが高いなという印象です。ただこれは同盟を結べた場合は同盟を結んだ2つの勢力で4ヶ所の砦の占拠が勝利条件となります(よって各々が2つの砦を占拠すればよい)。
なお勢力の紹介に書いたとおり、誰も砦の占拠による勝利条件を満たせなかった場合はギルドの勝利になります。

コンポーネント

コンポーネントは美しいです。アラキンの北極から見た北半球を現したマップになっています。
アバロンヒル版に比べるとこのマップの色調は落ち着いたものになっています。ただカードや各種イラストなどは旧版に比べるとよくなっているように感じました。砂嵐と砂虫はプラスティック製の立体模型で表されます。
他にも各種カード類や手元を隠すスクリーン、戦闘解決時に使う”バトルホイール”というツールなどコンポーネントが最近のボードゲーム風に豪華です。

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アバロンヒルの旧版ではマップにも赤や緑などのカラーリングもあったので結構派手だったのですが、新版は茶色系のモノトーンで統一されています。高級感はあるのですが、ユニットもそれほどでしゃばりではないこともあって、写真を見ると結構地味に見えます。

戦闘時に使うバトルホイール。
小さなメンコのようなリーダーチップをはめこみ、損害許容値(その戦闘に投下した戦力を最大値として指定)を数字で指定するようになっています。リーダーの戦闘力+損害許容値が戦闘力となり、敗者は全滅、勝者側は指定した損害許容値分の戦力を失います。実際の戦闘解決にはこれに複数のカードを組み合わせて解決するため、単純な戦闘力比較だけでは終わりません。
”バトルホイール”自体は面白いアイテムですが、カードもあわせて、せいのドン、と提示することを考えるといまひとつ使い勝手が・・という印象でした。

 

裏切り

各勢力5人ずつリーダーが登場します。リーダーは戦闘の際の指揮ができ戦闘力修整ができるなど重要な役割があるのですが、この「デューン」の世界は裏切りが横行しているため(忠誠心とかそういうモラルが高くない社会ということなのでしょう)、ゲーム開始時に”裏切り者”を決めるという手順があります。裏切りを仕掛けられた側は戦闘が起こるまで誰が裏切るのかはわかりません。

 

プレイ!

インスト後、都合3回プレイしました(いずれも途中まででしたが)。
勢力の担当と席次はランダムに決定。

1回戦: 5人プレイ、皇帝を担当

カードのビット毎に各プレイヤーがビットした代金が皇帝の懐にはいってくるため、前半富裕です(後半になると各プレイヤーが手持ちカードがいっぱいになるため、ビット自体が発生しなくなり、皇帝のその分の収入もなくなっていくということです)。
この時点で裕福なのは、皇帝と、星間飛行の輸送費が収入になるギルドくらいのもの。
砂の民フレーメンは、メランジ(スパイス)が湧き出したエリアに出兵して懸命に収集します(このゲームではスパイスがそのままお金の役割を果たすのです)。
皇帝は、衛星軌道上から5ヶ所の砦のうち唯一空いている砦に部隊の半数近くを降下、占拠します。この時点で、各勢力が1ヶ所ずつ砦を占拠している状態。皇帝はオーニソプター(鳥型飛行機)などを有していないので、いったんアラキス上に降下してしまうと移動に困ります。砦の外に出ている時に砂嵐や砂虫に襲われると全滅してしまうので、下手に外にでていると損害を受ける懸念があるのです(砂嵐の場所は基本ランダムなのですが、「天候操作」というカードを用いることで、場所を変更させることができます。他プレイヤーに使われて砂嵐を導かれたときには、フレーメン以外の軍勢は全滅してしまいます)。

カードにより砂虫が発生。発生位置はいずれのプレイヤーからも離れた場所だったので影響はありませんが、砂虫が発生すると同盟を締結できることができるようになります。同盟は1対1の二人のプレイヤー間で締結され、砂虫が発生したタイミングで締結または破棄ができます。同盟締結のメリットは

  1. 勝利条件が1プレイヤー=砦3ヶ所の占拠から、1プレイヤー2ヶ所×2人の計4ヶ所になること
  2. お互いの特殊能力を相手が行う戦闘などで発揮できるようになることの2点でしょう。

ここで動きが・・。
なんと宿敵であるはずのアトレイデ家とハルコンネン家が同盟を締結します。
「根拠地が近すぎてお互い動けないので、”同盟”締結は妥当」とアトレイデ家担当T氏。
アトレイデ家、ハルコンネン家、またフレーメンの収入はスパイスの湧出地点を押さえてスパイスを収穫することに依存するため、その争奪が発生します。
フレーメンに対して、ハルコンネン家が軍勢を差し向けます。

ここで皇帝(自分)はスケベ心を出し、手薄となっていたアトレイデ家の本拠地である砦を急襲、衛星軌道上から軍勢を差し向けました。
こちらのリーダーは自陣営として最高の戦闘力6(最高の戦闘力を持つのはフレーメンに7というリーダーが一人いる)、防御カードもあるため防御も万全、差し向けたユニット数も相手を上回っているため、必勝を期した状態だったのです。
”せいのドン”で出したバトルホイールとカードの結果は、アトレイデ家が毒殺のカードを出して、皇帝軍の最優秀のリーダーはあっさり死亡、差し向けた部隊は全滅と相成ります。
えー、そもそも、そういうカードがあったのかよ、という唖然とした状態だったのですが、かすかに覚えている原作でも毒殺の話がでていたので、それかぁ、と。

次ターン、さすがの皇帝もさきほど全滅した部隊を全てをを復活させるだけの財力はありません。次ターン、”アトレイデーハルコンネン”同盟は「電撃作戦!」と言うなり、皇帝の砦エリアと、フレーメンの根拠地になっている砦エリアに軍勢を差し向けます。
両方のエリアでアトレイデーハルコンネン同盟側が勝利すると、占拠している砦が4ヶ所になり、そこで終了です。
このままでは同盟が勝利条件を満たしてしまうということで、ギルドがあわてて動きます。今度はハルコンネン家の本拠地にギルドの軍勢が降下したのです。

アトレイデ-ハルコンネン同盟は、順当に皇帝とフレーメンの砦を占拠。この時点で皇帝の部隊は軌道上のものを除き一掃され壊滅状態。ハルコンネン家の砦エリアでのギルド対ハルコンネン家の戦闘というところで時間切れ終了。

 

2回戦: 5人プレイ、ハルコンネン家を担当

2回戦は裏切りの代名詞で呼ばれているハルコンネン家です。ハルコンネン家は裏切り者カードやその他の手札を他のプレイヤーの倍を所有することができます。
さきほどの皇帝は資金の点で裕福だったのですが、ハルコンネン家のカードをたくさん持つことができるというのもなかなか魅力的です。
ところが問題は資金がないのです、初期費用はそこそこなのですが、その後の収入はスパイスの湧出点を押さえて、湧いてきたスパイスを収穫する必要があるのです。
当然、他プレイヤーもスパイスが湧いてくるところには軍勢を送り込んできますし、そもそも本拠地の砦を手薄にするとさきほどの皇帝よろしく、衛星軌道上からの降下作戦を仕掛けられる懸念もありますので、うかうか本拠地を空けるわけにもいきません、というジレンマを抱えています。

というところでゲームがスタート直後のタイミングで、6人目の候補者(プレイヤー)が登場したため、ゲームは仕切り直し。

 

3回戦: 6人プレイ、ベネ・ゲセリットを担当

6人プレイの場合に追加されるベネ・ゲセリットは上で紹介したようにトリッキーな勢力です。初期勢力・資金とも最低レベル。各ユニットは宗教家モードと通常モードがあり、宗教家モードの際にはどの勢力とも敵対できなくなります。それどころか、ある勢力がアラキス上に降下すると、ベネ・ゲセリットのユニット1個を資金の負担無しに帯同させることができるのです。
いやいや、そういう状態でどうなるの?という話ですが、小判サメのようについてまわって、ある時点で通常モードになって、空っぽになった砦を奪ったり、スパイスの湧出点を押さえるといったことかな。

少なくとも前半は能動的に動けるシーンはあまりなく、他プレイヤーの展開を見ているだけ状態。
途中、アトレイデ家と同盟関係にはなるものの、これも双方あまり旨味もないまま・・。
そうそう、皇帝とギルド間で同盟が結ばれていました。

そうこうするうちに時間切れで終了。

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感想戦

ここまで書いたようにいずれも途中までしかやっていない(終了に最も近かったのは1回戦目)のでわかったようなことは言えないのですが、いくつか。

  • ゲームシステムはオーソドックスなターン-フェイズシステムで安心感がある(進行上でのケレン味があるシステムではなかった)
  • ルールの難易度は高くないため、その場インストでも対応可能
  • 1プレイ3時間もあれば大丈夫か
  • 勝利条件になる砦が全5ヶ所しかなく、また勝利条件としては内3ヶ所の占拠ということなので、早々に詰まる。
    各勢力は能力的には特色はあるものの、動員できる兵力という点では最大値は同じなので、あちらを立てればこちらが立たずな状態になる、また圧倒的兵力差といった状況は打ち出しにくい。
    損害の回復個数が勢力によって異なるのと、資金が必要となることから、どちらかというと傷ついた勢力に追い打ちをかけるような情勢であれば差をつけやすいか。
    戦闘自体は飛び道具的なカードの利用で決まるのかもしれない(その点、戦闘時に相手カードを覗けるアトレイデ家の能力が生かされる)
  • 衛星軌道上から降下するということで部隊を展開できるため、部隊展開に前線や後方が存在しない(ZOCのような移動妨害をすることもない)。軍隊を移動・展開することを考えると結構面倒。ましてフレーメン以外は砂嵐や砂虫の心配もしないといけない、といった状況。
    いずれも打開のためには「同盟」を駆使することになるのだろう、というところまでは読めた。ということは勢力間でもっと活発な外交交渉が行われる(例えば、有償/賄賂が絡む対等ではない関係の同盟含む)ことになるのだろうな。 

 

来年、リメイクされた映画が公開されるということのようなので、またその頃にやりたくなるとチャレンジしてもよいかな、と思う。

 

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2020年はこんなゲームをした【2020年の振り返り】(2/2)【一部追加】

前記事の続きです。 (12/20 少し追加しました)

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■ 作戦級(続き)

バウツェンの戦い(アドテクノス)

ソロプレイです。

往年のシミュレーションゲーム雑誌「TACTICS」(ホビージャパン刊)は初期の号からナポレオンをテーマにした記事の連載やゲームの紹介を積極的に行っていました。付録ゲームでもナポレオンテーマはよくとりあげられていた印象で、隔月刊時代の比較的小さなゲームから、月刊誌時代のSPI社のクアドリゲーム「Napoleon at Waterloo」まで印象的なナポレオニックゲームがいくつもあります。

再アニメ化された「銀河英雄伝説」を見ていて、久々にナポレオニックをやりたいなということで引っ張り出してきたゲームですがこれです。

ルールは初級編と言ってよいレベルです。ケレン味のあるルールはありません。取り組みやすい、言い方を変えると地味とも感じられる手堅い作品です。

河を挟んで布陣する両軍、戦闘が始まると軍団単位に戦闘に投入されていく様子、分散して移動していたフランス軍が盤面に陸続と登場していく様子など、これこれ、こういうのやりたかったんだよ、と満足できました。

 

もともとの発端が軽いところから始まったプレイだったので会戦1日目がおわったところで止めましたが、機会があれば続きをやってみたいものです。
なおこのゲーム、間違えてオークションで2回買っているため2個持っていたりします。

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関ヶ原バンダイ

ソロプレイです。

バンダイのゲームの代名詞を言えば、ユニットを立てるための「駒台」とユニットを動かすための「参棒」と呼ばれる棒が付属していたところでしょう。当時はそのいかにも玩具メーカーらしい備品の存在もあり、バンダイ製ゲームは正直敬遠しがちでした。まともにプレイしたのは「宇宙戦艦ヤマト」くらいのものかもしれません(ちなみに「宇宙戦艦ヤマト」は傑作だったと思います。ただヤマトの頃にはもはや「駒台」も「参棒」も付属していませんでした)。

本作は「駒台」や「参棒」が付属していた頃のバンダイゲーム。
題材は関ヶ原盆地を中心に決戦当日の戦いを扱ったもので、両軍主力が並ぶ関ヶ原盆地から、西軍の日和見派が布陣した伊勢街道沿いのところまでカバーした、教科書的関ヶ原の戦いを範囲としており、そこに参加していた両軍の諸大名が登場します。
各ユニットが駒台に立てられて並ぶ姿は旗指し物を指した軍勢のようでかなり壮観です。

なぜこのゲームをソロプレイしたかというと、裏切り勢や日和見勢による戦闘参加はどのように処理されているのだろうという興味からでした。
小早川秀秋関ヶ原盆地を見下ろす山腹に陣取り、戦闘がはじまっても様子見を続け、裏切りを促す徳川家康の軍から鉄砲を撃ちかけられてようやく決心たと言われています。こうした裏切りはどのように再現されているのか・・。

結果はゲームデザイナーの苦悩が想像できそうな内容でした。
カードを使った独特の戦闘解決システム、両軍の勝利条件ルールも含め、裏切りを含む参戦ルールが考え出されたのではないか・・。全くの想像にすぎませんが、知名度からゲームのテーマは決められたものの、いざゲームデザインとして落とし込みをしようとする中では、これって・・と初めて気づいたパターンです。後戻りはできなかったのでしょう(具体的に何のことを言っているのかは記事のほうを見ていただければと思います。限定的にとらえれば決して悪いゲームではないとは思います)
その点、同じ関ヶ原をテーマにしたエポック社の「関ヶ原」は素晴らしい作品でした。ツクダにも関ヶ原テーマのゲームがあり、本作と同じ関が原盆地での決戦を扱っているようです。オークションでも高値がついており、未プレイなのですがいつか試してみたいものです。

 

さてバンダイゲーム、他にも「二百三高地」「風林火山」「日本海海戦」などありますのでいつかプレイしたいと思っています(他にもあるのですが、そっちはルールブックをみるだに、いやな予感しかないのでさらに気が向いたらです)。

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第三次ソロモン海戦 (MCあくしず)

ミリタリー界に”萌え”を持ち込んではや有余年のMCアクシズ誌付録のソロ専用ゲームです。ちなみにゲームには”萌え”要素はありません。

プレイヤーは日本軍の主に海軍側の立場でプレイします。

ガダルカナル島への補給物質の輸送やヘンダーソン飛行場への艦砲射撃を実現するために、日本軍は長大な航路をたどっていかなければなりません。その間、アメリカ軍の航空機や潜水艦による攻撃にさらされ、またスコールの到来で逃れ得たりとスリリングです。ようやく到着したガ島近海にはアメリカ軍艦隊が遊弋しており海戦に至ります。
狭い海峡内での戦闘では戦艦の長大な射程も活かせないまま、素手でなぐりあうかのような近距離での砲雷撃戦になります。砲弾による攻撃には強い戦艦も、魚雷には弱く、いとも簡単に沈んでしまいます。
それらをくぐり抜けてようやく物資の揚陸や艦砲射撃を実施できるのです。
ソリティアゲームですので基本、ダイスの目との勝負になる点、作戦の選択肢もほとんどない一本道の展開ではあるのですが、日本軍が抱えた難題を簡易に実感できるという点で優れたシミュレーションと言って良いのではないかと思います。

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Alesia: Last Stand of the Gauls(S&T誌)

ガリア戦記の最大の山場であるアレシアの戦いを描いたS&T誌付録ゲームです。コンパクトなゲームになっていますのでガリア軍の解囲軍だけでも20数万人と伝わっている大軍勢のスケール感はなかなか伝わってきませんが、取り組む機会は多くはない戦いの雰囲気を知るにはよいと思います。

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THEIR FINEST HOUR(GDW)  【追加分】

第2次世界大戦の戦闘を師団単位でゲーム化しようとするとエウロパシリーズから、バトル・オブ・ブリテンからドイツ軍によるイギリス本土上陸作戦に続く架空戦を扱ったゲームです。
キャンペーンゲームは容易に取り組むことが規模ではないので、そこから一部を切り出した、空戦シナリオ、海戦シナリオをプレイしました。予想外に楽しくキャンペーンゲーム実施への道が開けた?

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マルチプレイヤーゲーム 

振り返ってみるとマルチプレイヤーゲームを結構やってますね。
従来型のウォーゲームから離れて、ボードゲーム寄りのマルチプレイヤーゲームは1作1作システムが特異で、新鮮です。

 

DISTANT PLAIN(GMT

4人プレイ
COINシリーズ第3作です。アフガニスタン紛争を扱っています。有志連合/多国籍軍アフガニスタン政府、タリバン北部同盟軍閥)の4勢力が登場します。いま世界で起こっている、現在進行形の状況を扱ったゲームというのは魅力的です。単なるゲームという枠を離れても多数の気付きがあります。

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FALLING SKY (GMT)  【記事追加】

4人プレイ
COINシリーズ第6作です。「DISTANT PLAIN」から大きく異なり時代は紀元前1世紀、場所はガリアです。植民地としてガリアの平定を目指すローマ共和国に、ガリアに棲むアルウェルニ同盟、ハエドゥイ族、ベルガエ族までがプレイヤーが操作する勢力、ノンプレイヤー勢力としてゲルマン人が登場します。

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CHURCHILL (GMT)

3人プレイ
ブログを良く見ると2019年年末オフ会でのプレイした作品でしたが、せっかくですから紹介します。このゲームの主役は会議です。題材は第2次世界大戦中、連合国の首脳間で実施された複数回の会議、例えばカサブランカ会議、ヤルタ会談ポツダムなどなどを扱います。プレイヤーはアメリカ・イギリス・ソ連の強国を扱いこれらの会議・会談でいかに有利な結論をださせるのかを競い合うのです。
一連の会議のバックには、欧州戦域、太平洋戦域の両戦域での戦線の状況が抽象化されて表現されています。

会議自体を競い合う題材としゲームにまで昇華している点はすばらしかったです。また抽象化をすすめているにも関わらず、戦争の状況の表現も含め、ヒストリカルに近い展開をみせてくれる点にも感心しました。歴史をゲーム化するという点において着眼点やデザイン含めすばらしいゲームだと思います(面白さを感じるかどうかは好みの問題ですが)。*1

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7ages(Austrarian Design Group)

5人プレイ
紀元前4000年から未来にかけての人類の歴史をたどるという壮大なゲームです。プレイヤーは神の立場で、複数の文明を扱います。マップは世界全体を現し、いくつもの文明が興り、また滅亡していきます。
同時に複数の文明を担当することが多いのですが、あまり馴染みのない文明も多数登場します。

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CHINA -The Middle Kingdom (Decision Games)

4人プレイ
中国大陸を舞台に古代から現代に至る中国史をたどるというゲームです。プレイヤーの立場が神であるのは「7ages」と同じです。プレイヤーは複数の文明を担当します。

ただ「7ages」よりももっと恣意的な設定が施されており、各文明は勃興の条件とあわせて滅亡条件が明確に定められています。かなり史実に近い展開をみせながらも、ちょっと変わった中国史をたどることができるという知的好奇心を刺激させることができるゲームです。

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DUNE(Gale Force Nine)  【追加分】

かつてアバロンヒルから発売していたゲームのリメイクです。
6人までプレイできます。
登場する各勢力毎に特色のある能力が与えられているものの、最大動員能力はどこも同じで、また勝利条件が求めているエリアの数は限定されるため、単独でプレイしていても早々に詰む。となると積極的に「同盟」を駆使するプレイヤー間のやりとりが発生するのではないかという印象。そういう意味では面白さを引き出すにはハードに立ち回らなければならないのでしょう。

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■ その他のゲーム

あちこちのゲーム会などにお邪魔して他にもプレイさせていただいたゲームもあるのですが、語れるほどのノウハウもないので割愛します。

 

■ ゲーム以外のトピック

太平記

今年個人的なブームだったのが「太平記」。
その絡みでゲーム「太平記」の英語版を入手。中身は来年研究します。

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■ 来年の抱負

抱負たる抱負があるわけではないのですが、すでに対戦調整をしているのが対戦の声を挙げていただいている作品がいくつかあります。

FRONT TOWARD ENEMY(MMP)    1月予定

BRAZEN CHARIOTS(MMP)  BCSシリーズ

KOREA(MMP)          OCSシリーズ

PANZER COMMANDER (VG)

いよいよOCSシリーズに挑戦したいと思っています。

 

GULF STRIKE (VG)

日本語マニュアルやアップデート版(湾岸戦争版)などを入手したので挑戦したいゲームです

JOHN CARTER, WARLORD OF MARS  (SPI)

これは個人的に取り組みたいゲームですね。最終的にはソロでもいいのですが、まずはマニュアルを読みます。 

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*1:会議をゲームにまで落とし込むというのですぐに頭に浮かぶのが光栄の「維新の嵐」。PCゲームですが、ディベイトになるとひたすらボタン連打だったような・・。もちろん本ゲームはそのような脳筋ゲームではありません。

大河ドラマ「太平記」30話「悲劇の皇子」:誰が護良親王を殺させたのか?

 

前回のあらすじ

1334年秋、護良親王堤大二郎)と足利尊氏真田広之)との対立はエスカレートし、ついには両勢力とも京に軍を集め、一触即発状態に陥っていた。
厳戒状態の京にひょっこりと河内より上京してきた楠木正成武田鉄矢)の妻久子(藤真利子)、嫡子正行一行が道に迷った挙げ句、足利勢の警戒線に囚われた。思わぬ捕らわれ人に「良き人質になる」と、護良親王派と見られていた楠木正成に対する人質として囚えることを高師直柄本明)は進言するが、足利尊氏は自ら久子らを楠木正成邸へ連行することで、正成との会談を試み、成功する。
尊氏と正成の二人は、これ以上の事態の悪化は望まず、都を灰にしない、戦を再び起こさないということで合意した。

翌早朝、足利尊氏の非常呼集により京内の主だった武家六波羅奉行所に集められ、都の安寧を妨げるような行いは慎むよう告げられる。
もともと戦意が低かった各勢力は、楠木正成が率先して尊氏からの要請に同意したのを受け、次々と合意する。足利への対抗意識からわずかに抵抗した新田義貞根津甚八)・脇屋義助石原良純)兄弟も最後には尊氏の前に平伏する。

その日のうちに護良親王は参陣していた各武家が兵を撤収していくのを見つける。

ほどなく京に初雪が降り、古式に習い開催された初雪の宴のため内裏に参内した護良親王は、帝を命を受けた名和長年小松方正)に捕らわれる。護良親王は声の限り帝を呼ぶが、誰も応えるものはなかった・・。

護良親王の身柄は足利尊氏六波羅奉行所に預けられる。
暗い座敷の奥に軟禁された親王のもとを訪ねた尊氏に、親王は言う。
「・・(尊氏には武家を束ね幕府を開くだけの)器量がある。それ故、殺しておきたかった。望むと望まざると麿は帝の子。そちは武家の統領。それ故、相争うた。・・そして負けた。
翌朝、護良親王親王派による身柄の奪還等を防ぐため、尊氏の弟足利直義高嶋政伸)が治める鎌倉に送られた・・。

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帝暗殺計画から中先代の乱

1335年6月、皇太子とともに蛍狩りに北山に行幸する後醍醐帝を狙った暗殺計画が、北条家と近かった持明院統の公家、西園寺公宗長谷川初範)、日野資名(須永慶)、西園寺公重西園寺公宗の弟)らによって企てられていた。その謀議には、鎌倉で死んだ北条高時片岡鶴太郎)の実弟北条泰家(緑川誠)も加わっていた。

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西園寺公宗持明院統の公家。鎌倉幕府の北条家と近く、鎌倉幕府と朝廷との連絡窓口にあたる「関東申次」という役職にあった。当然、両方から甘い汁を吸っていたのは容易に想像できる。1331年、後醍醐帝が笠置山で捕らわれ皇位を廃され、光厳天皇が即位した際には我が世の春とばかりに、功労者であるはずの足利尊氏へ低レベルのイジメのような仕打ちをしてみせていた。

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ドラマ中ではよく描かれていなかったが、暗殺計画の露呈により捕らえられ刑死。

北条泰家北条高時片岡鶴太郎)の弟。

ja.wikipedia.org

企ては一色右馬介大地康雄)により捕らえた西園寺公重の口から露呈し、尊氏は武者所の司である新田義貞に伝えると、義貞は嘆息する。

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「・・謀叛が多すぎる。九州、紀伊、奥州・・。何故じゃ。それがしにはまつりごとのむきはようわからぬ。わからぬが、かかる折、帝は京に大内裏をお建てになると言う。平安京を偲ばせる壮麗な御所だと言う。そのために全国に税を課す。それがしの領地越後でも、その税の事でゴタゴタしておる。
「帝は”美しい都”をお作りになりたいのじゃ。帝の御威光も示さねばなるまい。御心はわからぬ、でもない。」
帝の事について珍しく、奥歯に衣着せたような言い方をする尊氏。
「よかろう。ワシは戦に勝てば良い。帝を護りたてまつればそれで良い。それが武家というものじゃ。のう、足利。・・今日の事、かたじけない。」
と言い残し席を立つ義貞。

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新田義貞の率いる兵が西園寺公宗邸に立ち入り、暗殺計画は挫折する。
公宗等は捕らえられたが、北条泰家は逃亡し、各地の北条残党に蜂起を呼びかけた。

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信濃には北条高時の遺児北条時行が潜伏しており、諏訪頼重が庇護していた。
彼らは鎌倉奪還を狙い乾坤一擲の兵を興す。
北条時行・諏訪義重の率いる北条軍は、信濃守護小笠原貞宗の軍を破り、女影ヶ原や小手指ヶ原で足利軍を破り鎌倉に迫った。

女影ヶ原の戦いでは、新田義貞方の武将として度々登場していた岩松経家が参陣し、討ち死にしている。

鎌倉の足利直義高嶋政伸)が井手の沢(町田市あたり)に迎撃に向かうというところで六波羅で軍議が開かれる。

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足利一族の根拠地のひとつである三河(愛知県)の兵を関東に送り増援にできないかという尊氏に対し、信濃(長野県)に北条軍の残余がいるため難しく、また鎌倉の千寿王が逃れてくることを考えれば動かせないと足利一族の宿老吉良貞義が否定する。
「ではワシが行く」と尊氏は言い出すが、京に残っている足利の軍は700、800程度に過ぎないとこれもまた退けられた。
ついには楠木、新田などの諸国の武家に兵の催促するするため帝に許しをもらう、と尊氏は言う。
「殿、武家全てを動かす許しとはいかなる許しでござります?」高師直が訊く。
征夷大将軍に任じていただく。それより他はあるまい。・・参代じゃ。内裏に参る。」立ち上がる尊氏。

「師直殿、今、殿は何と仰せられた?」立ち上がり去った尊氏を見送った後、吉良貞義が師直に訊くと
征夷大将軍を望むと。征夷大将軍、ようやく仰せられた。」と師直は顔をほころばせた。

 

参代

六波羅から宮中へ尊氏参代の使いが行く。

「足利が参代したい、と?」参代の旨は帝より先に阿野廉子の元に届けられる。
「はっ、六波羅からの使いにて急ぎ帝に拝謁したい、とか」
「大方、鎌倉へ馳せ下りたいと申すのじゃろ。都を離れるお許しが欲しいのじゃ。捨て置かれろ。

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先年、尊氏に護良親王討伐をもちかけた際に、相手にされなかった事を恨んでいるのか、阿野廉子は冷たい反応を見せる。

「一条殿、帝はお風邪じゃ、と申し、追い返してはどうじゃ?」と四条隆資(?)が言う。
「それならばまた参るやも」
「明日もまたお風邪じゃ」と四条隆資。彼もかつて護良親王についていて尊氏からの反撃にあい勢力を失った口。
「げにも、げにも。しかる間に鎌倉の足利は滅びてしまい、助けに行っても詮無き仕儀と相成りまするか。ほほほ・・」相槌をうつのは坊門清忠藤木孝)。
足利は大きくなりすぎた。叩いておくよい潮じゃ。」四条隆資。
「なら鎌倉におわす宮の行く末が?」と一条某。
「我が子義良は海から逃しておる。案ずることはない。」阿野廉子

阿野廉子の子のひとり義良親王は幼い身ながら、足利直義とともに鎌倉に下り、鎌倉将軍府の権威付けになっている事を指す。
ただ鎌倉にはもうひとり、護良親王も軟禁されていたが、護良親王とは政敵関係にあった阿野廉子はわざと無視している。

北条の残党ばらは足利と戦わせた後、新田や楠木に討たせれば良い。あまたの武家はそのために買うてある。」と嘲笑う坊門清忠

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「坊門殿、それは言い過ぎぞ。」
座に湧き上がる嘲笑。

阿野廉子は末座に控えていた勾当内侍宮崎萬純)に、多くの男を袖にしてきた様に、足利もすげなく断わり追い返すように、と命じた。

控えの間にて、帝への拝謁を頼み込む足利尊氏に対して、勾当内侍は頑なに、帝が風邪であると繰り返す。

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護良親王謀殺

鎌倉の足利邸には尊氏の妻登子(沢口靖子)や嫡子千寿王の他、武将らが詰めている。中には尊氏から言い含められて鎌倉入をしていた一色右馬介の姿も見える。
そこへ傷だらけ武者姿の細川兄弟が駆け込み、足利直義が率いた軍が関戸で北条軍に破れたと告げる。登子や千寿王もすぐに鎌倉から落ち、藤沢で合流して欲しいと。

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細川兄は右馬介に護良親王は連れ出さずに良い、直義の命により親王に刺客を向かわせたと言う。
「・・そのような事は殿から承ってはおらぬぞ!」右馬介。
「ご舎弟様の命じゃ。すでに淵辺が東光寺に向かっておる!」

 

護良親王が鎌倉の東、東光寺の小さな館に幽閉され8ヶ月。

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物音に最初、付きの女性かと声をかける護良親王は、足利直義が遣わした刺客に気づく。淵辺義博と名乗る刺客に驚くも悟った親王は言う。
「されば足利に伝えよ、すでに護良は都にて死せし者。足利は死せし者の影に怯え、死者をムチ打つか、と。」
親王の気迫に押され、淵辺はためらうも「御免」と叫ぶと振り上げた刀を親王の首筋に振り下ろす。

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暗い蟄居宅で写経をしていた護良親王は人の気配に気づき、「南か?」と呼びかける。この南というのは、鎌倉まで一人ついていくことを許された「南の方」という女性らしい。ドラマの中ではこのセリフ一言の中での登場にすぎないが、調べてみると様々な歴史的な事柄が出てくる。

ドラマの中でも、北畠親房護良親王の舅であることは言われている。
貴族の娘である正室を伴って蟄居させられるというのはどうだろうな、という印象もあるので、この「南の方」は側室だろうか。ウィキでも「南の方」は側室ということになっている。
伝説ではこの女性とは別に伝説では「雛鶴姫」という女性もいて「南の方」と同一人物という話もあるなど、皇子とはいえどもこのあたりは不明な点が多い模様。

 

新田義貞

鎌倉陥落の報は寝所にあった後醍醐帝の元にも届けられ、後醍醐帝は急遽、千種忠顕坊門清忠の腹心と、武家として新田義貞を招集する。

「ほどのう足利が参る。足利が参る。足利が思うておることはただひとつ。自ら軍を率いて関東に向かうということだろう。・・」後醍醐帝が先に招集した3人に訊ねる。

「足利は存外、戦が弱いござりまする。・・関東の名だたる武家を率いてこの始末。」
千種忠顕が答える。
「そもそも足利は帝の許しを得たるを幸いに、関東の議は己の腹ひとつで決め、我ら公家に一言の相談もござりませぬ。かくなる上は足利を廃し、他の武家をもって此度の乱にあたるべきかと・・坊門清忠も言う。

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「新田は此度のこといかに思うか?」後醍醐帝は次に新田義貞に訊ねる。
「そも関東は北条の根城、幕府が倒れても北条の縁者はそこかしこにおります。それらを治め関東を守るのは誰が行おうても難しき技にござりまする。寝返り者足利への怨念が、北条方を鬼神のごとく奮い立たせておるものと思われまする。足利の苦戦はそこにあるものと・・」

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「こたびの乱も足利に与えし北条の領地からあまた起きておる。故なしとはせぬ。」

後醍醐帝も応じる。
「させばこの戦は避け得ぬ戦にござりまする。それがしが足利なれば、すぐにも関東に駆けつけ決着をつけまする。力足らずば滅び、天の助けあれば勝つ。」
愚かな!足利に軍を与えて勝たせれば、勢いに乗じて関東に幕府を開きかねぬぞ。かかる甘さ故、新田はいつまでたっても足利に遅れをとるのじゃ。
貞義の何の得るところもない四角四面の答えを千種忠顕が遮る。
「万にひとつ、足利が破れ、北条が力を取り戻しても、天下は乱れる。ここは新田が必勝の心で北条を討ち滅ぼせば良い。帝はそう思し召されてそなたを召されたのじゃ。そのご叡慮がなぜわからぬ。坊門清忠が義貞を叱責する。
新田ならこの戦、勝てるのか勝てぬのか。それをご下問じゃ。
千種忠顕坊門清忠の二人して口々に義貞を罵りつつけしかける。

「行けとの大命なれば、新田はどこへでも行き、合戦仕りまする。北条如き、いつでも蹴散らしてご覧に入れまする。そのためにおそばに侍する新田にござりまする。さりながらそれがしは同じ関東もの故、足利と北条の考えし事が、いささかわかる節もござる故・・」律儀に応える義貞に、千種忠顕は追い打ちをかける。
関東ものの考えし事などとるに足らぬ。武家は戦に参って勝てば良い。それだけじゃ。

後醍醐帝は、口々に義貞を罵る公家二人と、義貞を下がらせ、侍していた阿野廉子に義貞の印象を訊く。
「気が利かぬものにござりまするが、心根は信ずるに足るかと・・。」

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「あれは頼りになる。古風な武者じゃ。あれで良い。」
阿野廉子の答えに自分の意の通りだと笑みを浮かべる後醍醐帝。

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場面代わって殿上から下がる新田義貞を案内する勾当内侍
「それがしは帝の御前で奇妙なことを申し上げたやもしれぬ。お笑いくだされ、帝に召される前は、いつもうまくお答えせねば、とあれこれ思いながら出るのだが、お公家の方々に囲まれると、とてもあのようには喋れぬと、臆してしまう・・。
ハハ・・・関東の田舎武士にござる。」

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義貞の自嘲混じりの思わぬ告白に、勾当内侍はじっと顔をみつめ応える。
「新田様の申された事、奇妙なことはなにひとつござりませぬ。お公家の方々がよほど奇妙でござりました。」

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二人のそばを召された足利尊氏が通りすぎる。黙礼する尊氏。

この翌年、尊氏と義貞は天下を二分して戦う事になる。その運命はこの夜、帝によってもたらされるのである。その事に尊氏も義貞もまだ気づいていない・・。」とナレーションが言う場面で終了。

 

 

感想

足利に代わって北条討伐に赴かせようとする公家連中の言い草がほとんど新田義貞の吊し上げのようになっていて酷かった。ここまで言われても四角四面の答えしかしない新田義貞はよほどの大人物なのか、鈍感なのか・・。
彼の律儀すぎる性格がこの後、自身の立場を追い詰めていくことになるのだろうが尊氏との対比として興味深い。

公家どもに散々いじめられたご褒美で勾当内侍と仲良くなれたのであれば、まぁよいか。

護良親王謀殺の指示は直義から出たということになっていたが、直義がそれをする場面は出てこない。かつて京において、護良親王の腹心だった”殿の法印”の部下が土蔵破りをしてという一連の事件などで直義はよほど護良親王を恨んでいたのか・・。とはいえ、ここまでは兄尊氏の意志に沿った行動を取る場面が目立っていた直義が、兄の意に背いた行動を取る描写ははじめてではないか?

 

 

歴史の回想・中先代の乱

歴史の回想・中先代の乱

 
義貞の旗

義貞の旗

 

 

2020年はこんなゲームをした【2020年の振り返り】(1/2)

コロナの年として歴史に残るであろう2020年は、会場として使っている市民センターの閉鎖などありながらも、千葉会を中心にゲーム会に参加し続けることができました。

在宅勤務により家に居ることが増え時間の余裕ができたことからソロプレイとしてゲームを広げる機会も少なくなく、積みゲー消化に努めることができたのもよかったです。平日昼間のゲームは良いものです。平日昼下がりのビールの罪悪感にも通じるところがあります。

PCの画面を眺める時間が伸びた分、ついつい購入ボタンを押してしまうことから、積みゲーの数が逆に(飛躍的に)増えてしまいました・・。何を買ってしまったのかは怖いので振り返らないことにしておきましょう。

年の後半からは、和訳ルールがない重めのゲームをいくつか対戦する機会があり、ルールブックの読み込み、試行と準備に時間を取られました。それぞれまさに数ヶ月越しで格闘しました。

恒例の春ゲムマは中止になり、秋ゲムマは開催されましたが感染対策を施された上で開催されたようです。ようです、というのは行くのは諦めたからです。ひとつにはゲームを買いすぎてその反省と、直近にルールと格闘中だった重量級ゲーム対戦があったため、誘惑を絶ち準備に時間を充てることにしました。

 

 

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■ 戦術級

スコードリーダー以来の戦術級ファンとして、今年も陸戦を題材にした戦術級を中心によくプレイしています。新しいゲームにも積極的に取り組んでみました。

OLD SCHOOL TACTICAL #2(Flyingpig Games)

2019年年末の千葉会恒例のオークション大会で譲ってもらったもので、特に今年の前半は連続してこのゲームの対戦を繰り返しました。
大柄のケースにマップやユニットも大きい豪華なコンポーネントのゲームです。
両プレイヤーは毎ターン、ダイスの目によりイニシアティブポイントを決め、そのポイントを使いアクションを行っていくというシステムで、ポイントの使い方で駆け引きが生まれます。全体の難易度は高くなくテンポ良くゲームは進行します。
シリーズ2作目は1944年6月ノルマンディー作戦以降のドイツ軍とアメリカ軍との戦いを扱っています。拡張モジュールもありますので、続きを再開したいところです。

  シナリオ1 Lost Boys
  シナリオ4 Night Raid
  シナリオ5 Patton's Ghost
  シナリオ8 Chaos
  シナリオ9 Abbey

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Advanced Squad Leader Starter Kit #1 (MMP)

戦術級は新作系のゲームばかりをやっていたため、ASL関係は少々おろそかになっていました。ただ買い物のほうは進んでおり、フランス軍モジュール「Croix de Guerre」と朝鮮戦争モジュール「Forgotten War」を購入、日本軍モジュール「Rising Sun」プレオーダー、イギリス軍モジュール「For King and Country」もオーダー中という状態です。スターターキット関係とか他にもシナリオ集などもかなり買ってしまったのです。2021年はもう少しASLもプレイしたいですね。
対戦したのはスターターキット関係で

  シナリオS01 RETAKING VIERVILLE
  シナリオS02 WAR OF THE RATS
  あといくつかプレイしているのですがシナリオ番号を未確認

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THE LAST HUNDRED YARDS #1 (GMT)

ルールと格闘したゲームのひとつです。システムが斬新だった分、読みこなすのに時間がかかりました。ルールの書き方も良くないよね、というのは対戦していただいたRさんとも意見が一致するところ。

イニシアティブを取れなかった側はイニシアティブ側のアクションに対応したリアクションとしてしか活動が行えないというゲームシステムで、シーケンスがプレイヤー間で非対称な点が特徴的です。とりあえず歩兵戦闘までは回るようになったので、次回は車両を登場するシナリオにも取り組みたいですね。ゲーム中、様々な場面でASL脳が邪魔してしまうのが難点です。
シリーズ1作目は1944年6月以降のドイツ軍とアメリカ軍の戦闘を扱っています。

  シナリオ1
  シナリオ4

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パットン (ツクダ)

ソロプレイです。

未だにオークション等で落札価格がけっこう高くなる人気シリーズのうち、第二次世界大戦後から1970年代までを(収録車両は、日本で言うと74式戦車アメリカだとM60あたりまで)扱った作品です。
1ターンの移動を細かく分解し、その細かく分解した単位毎に敵味方交互にプレイします。必要移動力が大きな地形への移動では未来のフェイズの移動力を前借りして移動を行うというシステムのため、移動力の消費状況を記録し続けなければならないというところでプレイアビリティが損なわれています。相手を発見してからの射撃戦は精緻なスペックカードもあいまって盛り上がるのですが、接敵するまでちまちまと移動するのが大変でした。
移動をしているだけの苦行のターンの間に、作戦や戦術なんてどうでもよい気分になってきます。ルールブックの誤植やルール記述の甘さも気になりました。

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PANZER #1 (GMT)

「PATTON」が前世紀の戦車戦ゲームだとすると、本作は新しい戦車戦ゲームです。

2020/12/05 補記
指摘をいただきました。
オリジナルゲームがあったようで旧ゲームは1979年の発表になっています。ツクダの「TIGERⅠ」(1982)「PANTHER」(1983)より旧いです。ツクダのシリーズが、1車両 1スペックカードを用意していたりするのもこちらから影響を受けたのかなという印象です。

boardgamegeek.com

戦車戦主体の戦術級ゲーム。インスト込でプレイしました。
また対戦をするだろうということで記事は起こしていなかったのですが、そのまま対戦の機会を逃しています。

シナリオ1個だけの印象ですが、各ターンの冒頭にダイスで決めるイニシアティブを取るか取らないかで有利不利の差が大きいように感じました。ターンの始めに行われるランダム要素が強い処理がゲームの状況に影響を与えるというのは、ここまでに登場している「OLD SCHOOL TACTICAL」「LAST HUNDRED YARDS」にも見られた傾向なので、戦いの勢いにランダム性を大きくいれ、ゲームの中に影響を与えるようなシステムとするところが近年の戦術級ゲームのシステムデザインの特徴なのかもしれません。

基本ルールよりも選択ルールのほうがボリュームが多いという話ですので、もしかすると選択ルールを付加するとバランスがよくなるのかもしれません。ぜひとも選択ルールまで読み込んで、2021年に取り組みたいゲームのひとつです。

 

ぱんつぁー・ふぉー! (国際通信社)

ガルパンテーマの戦車戦ゲーム。車両1両が1ユニットとなっているのは、ここまでの戦車戦テーマのゲームと同じです。
カードドリブンシステムになっており、カードがないと移動も戦闘もできないという制約がゲームを損なっているように感じていました。
ところがこのカードがないと何もできないという制約は、ウォーゲーム初心者へのインストという局面ではかえって良い方向に働きます。初心者からすると引いたカードの内容を中心に対応を考えればよく、選択肢が狭まるためわかりやすいようです。

アニメストーリーからのシナリオがほとんどなのですが基本的に大洗女子が弱すぎて、どうやったら勝てるのかというシナリオが多い中、このシナリオはカードによるイベントによって劇的にプレイバランス変わります。盛り上がりました。

  サンダース大学附属高戦

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戦車戦(HJ)

ソロプレイです。

ホビージャパン社がオリジナルゲームとしてウォーゲームブーム初期の頃に発売していたゲームです。初心者用をうたっているためルールはかなり割り切っています。
戦車戦を扱うゲームの多くは「命中判定」を行い、その後「命中箇所判定」だったり「破壊判定」を行うといったようにダイスを2回は振らせることが多いのですが、本ゲームの場合は「命中判定」の1回のみとなっています。射撃側車両の兵装、目標との距離により貫通力が決まっており、貫通力と目標の向きに応じた装甲値との比較で破壊判定を行うというシステムです。このため距離によって絶対に破壊できない相手が存在することになり、判定のダイスが六面ダイス1個振りによるシンプルな結果表もあいまって、非常にデジタルな印象を受けました。

ソロで取り上げたシナリオは実に両軍あわせて80両を超える車両が登場するもので、システムがシンプルな分、派手にやろうと選んだものです。
結果、数に任せた力押しを強行したソ連軍が死屍累々の損害を出したところです。

  シナリオ4 デブレツェン

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■ 作戦級

作戦級は基本ルールレベルではゲーム間の共通性が多く、ルールも類推できる要素が多いため、インストも行いやすいですね。

今回苦労したのは、BCS(Battalion Combat Series)。ゲームシステムも特異なら、使われている用語も特異ですんなり喉を通らない・・そんな作品でした。

 

幸村外伝 (ツクダ/ゲームジャーナル)

もう少し大味なゲームだと思っていたのですが存外楽しめました。プレイのほうは残念ながら事故により途中で中断してしまいました。

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耳川の戦い (コマンドマガジン)

対戦とソロとこのゲームが一番プレイ回数を重ねたゲームになりました。

ユニット数は少ないのですが、ひとひねりあるチットプルルールにより先が読めません。難を言えば、ユニット数が少ないため、ゲーム後半から終盤にかけては両軍とも動いているユニットが非常に少なくなり、寂しい気持ちになることでしょうか。

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BAPTISM BY FIRE (MMP)

ルールブックと格闘することになったゲーム2作目です。

BCS(Battalion Combat Series)という共通のゲームシステムの1作(2作目)になります。規模としては作戦級なのですが、戦闘ルールに部隊内容によって戦闘方法が複数種類用意されているといった戦術級的な要素があったり、なによりも補給段列や補給線、司令部の配置まで考慮した部隊展開が必要なルールなど、随所に目新しい概念が導入されています。
独特の概念の用語が頻発するルールは非常に読みにくく、ひととおりルールを読んだだけでは理解できずにプレイを兼ねたインストによりなんとか取っ掛かりができたという印象です。
ルールの難解さによる独特のプレイ感は満足度が高く、同じBCSシリーズとして他のゲームも取り組んでみたいと画策しているところです。
対戦を都合3回しています(あれ?対戦回数がでは「耳川の戦い」より多い?)

  シナリオ1
  シナリオ3 Mid Campaign

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次回予告

というところで字数も尽きてきたので今回はここまでです。
今回の続きは12月の対戦が一巡した12月下旬にアップしたいと思います。

「2020年はこんなゲームをした【2020年の振り返り】(2/2)」
登場するゲームは次のような感じだと思います。

■ 作戦級

Alesia: Last Stand of the Gauls (S&T誌)

バウツェンの戦い(アドテクノス)

関ヶ原バンダイ

第三次ソロモン海戦 (MCアクシズ誌)

 

■ 戦略級またはマルチプレイヤー

DISTANT PLAIN (GMT)

CHURCHILL (GMT)

CHINA -The Middle Kingdom (Decision Games)

7ages (Australian Design Group) 

FALLING SKY (GMT)【予定】

DUNE【予定】

 

■ その他のゲーム

■ 2021年の抱負 

2021年にやりたいゲーム

 

 

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「THE LAST HUNDRED YARDS」(GMT)を対戦する

GMT社の「THE LAST HUNDRED YARDS」(以降、「LHY」)をプレイしました。
小隊から中隊規模の小さな戦闘組織をシミュレートしており、ルールブックの冒頭に次のように謳っている作品です。

The game introduces new and innovative systems to model small unit behavior in combat.(このゲームは、戦闘における小規模な組織の行動をモデル化するため新しく革新的なシステムを導入しています)

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boardgamegeek.com

 

ゲームの概要

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第二次世界大戦時の1944年ノルマンディー作戦以降を舞台にドイツ軍とアメリカ軍による歩兵戦闘を中心とした小規模な戦闘を扱っています。*1

プレイヤーは中隊から大隊規模の部隊を指揮し、1ユニットは歩兵は分隊から班単位、指揮官ユニットは指揮官と伝令、通信兵などを含めた指揮チーム(4名程度と説明されている)、また車両は1両単位で登場します。
機関銃、携帯対戦車兵器、砲兵器などはその兵器と操作する要員(5人~10人前後)も含んだユニットになっています。

1ターンは2~5分、1ヘックスは50ヤード(約45メートル)というスケールです。

分隊単位の戦術級ゲームのスタンダードというべきMMP社「Advanced Squad Leader」シリーズ(以降、「ASL」)とほぼ同一です。また今年前半に盛んに対戦をしていました、Flyingpig Games社の「Old School Tactics」(以降、「OST」)ともスケール感はほぼ同一です。

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マップは「ASL」のように複数パターン用意されたマップをシナリオによって組み合わせて使います。ダイスは10面ダイスを使います。
カード類はありません。

 

ゲームシステム

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「THE LAST HUNDRED YARDS」のゲームシステム

リアクションシステム

 「ASL」のオーソドックスなターンシステム、「OST」のインパルスポイントシステムに対して、「LHY」のゲームシステムはアクション-リアクションシステムとしておきます。
作戦級のゲームで、プレイヤーターンの途中(例えば第1移動フェイズ、第2移動フェイズの合間など)に非プレイヤーターン側のプレイヤーがリアクション移動を行うことができるといったシステムに組み込んだものがありますが、イメージは近いかもしれません。

  1. イニシアティブを決める。
  2. イニシアティブを得たプレイヤーは小隊毎に活性化させ、アクション(移動・射撃・回復)を実施する
  3. 小隊のアクションが終了すると、相手にリアクションを求め、相手方はリアクションが可能なユニットについてリアクションを行う
  4. リアクションに対するリアクションも可能で、双方がリアクションを行わないと宣言すると、イニシアティブプレイヤーは、次の小隊の活性化を行う(2~4を繰り返す)
  5. イニシアティブプレイヤーが配下の全ての小隊の活性化を終了させるとターン終了

ここで言うリアクションが可能なユニットとは基本的には、

相手方のユニットが、自分のLOS内で移動、射撃、回復などのアクションを行ったユニット。言い換えると敵のアクションを視認できたユニット、がリアクションが可能なユニットとなります。

ただこれ条件だけだと前線にいないユニットは何の行動もできないことになりますので、敵アクションを視認していないユニットについては限定的ですが許容しているアクションもあります。例えば、指揮官ユニットとスタックしているか隣接しているユニット(ただし後者は制約あり)による移動・回復が該当します。

このゲームの特徴のひとつは次の点にあります。
活動プレイヤーによる一連のアクション、それに対するリアクションが終了すると、「ASL」であれば今度は攻守交代した上で、攻撃側のプレイヤーがたどった手順を相手方プレイヤーもたどる訳ですが、本ゲームの場合はここで次のターンに進みます。

そうです。
イニシアティブを取らなかったプレイヤー(非活動プレイヤー)はそのターンの間は、活動プレイヤーのアクションに対応したリアクションは行うことができますが、自らアクションを行うことはできないのです。
リアクションでは基本的にはアクションに反応したものになるため、自ら能動的な行動を起こすことが難しいことになります。

複数ターンに渡ってイニシアティブを取ることができなければ、その間、基本的には相手のアクションに応じたリアクションの範囲の中でのみ活動することになります。

プレイの手順

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簡単にプレイの手順を紹介します。

Ⅰ.イニシアティブフェイズ

イニシアティブを決めます

Ⅱ.活性化フェイズ

活動プレイヤーは小隊毎に活性化し、アクションを実施、それに対するリアクションの実施という流れを繰り返します。小隊の活性化とリアクションが完了すると終了。
上に書いたアクション-リアクションの流れはこのフェイズの中の手順になります。

Ⅲ.攻撃解決フェイズ

Ⅱ.の中で射撃は攻撃値の算定までを行います。実際にダイスを振って戦闘解決を行うのはこちらのフェイズでまとめて実施します。
発生した結果は同タイミングで適用されます。

Ⅳ.強襲解決フェイズ

白兵戦です。白兵戦への突入はⅡにおける移動やⅢの結果として発生するのですが、解決はこのフェイズで実施します。

Ⅴ.迫撃砲砲撃フェイズ

歩兵戦闘主体ということもありこのゲームでは盤外射撃扱いで迫撃砲による支援がけっこうフィーチャーされています。

Ⅵ.時間経過判定フェイズ

後述

Ⅶ.クリーンナップフェイズ

 

時間経過の判定

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終了するターン数が読めないという点では、サドンデスルールの変形とも言えますがユニークなので紹介します。

「LHY」では各ターンの終了時にそのターンでどのくらいの時間が経過したのかをダイスにより判定します。結果は2~5分になります。
シナリオによって異なりますがこの経過時間は勝利条件にもつながってきます。
シナリオによって定められた勝利条件を達成するために要した時間がそのままポイントになり、途中に生じた除去ユニット数やシナリオによって定められた条件によるポイントに加算されます。
(シナリオによって定められた)攻撃側は早く攻略する(勝利条件を満たす)ことが求められ、防御側は長く保持する、持久することが求められます。


AARは次回につづきます。
 

 

 

ご参考:「OLD SCHOOL TACTICAL」のシステム

2020年の前半集中的に同じ戦術級ゲームにあたる「OST」をプレイしていました。

OST」を特徴づけるシステムは「インパルスポイントシステム」ということになるでしょう。全体の難易度は「ASL」に比べると高くありません。

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インパルスポイントシステムの概要

インパルスポイントは各ゲームシナリオ毎、またそれぞれの軍ごとに定められたダイスにより決められます(3D6、2D+6など)。

ルールブックの説明を借りれば、「インパルスシステムは戦場における不確実性、例えば指揮命令の貧弱さ、弾薬の欠乏、戦火の元での怖れや勇気、その他多数の考慮事項を表したもの」とされています。

各ユニットは移動(Move)、突撃移動(Assult Move)、射撃(Fire)、回復、盤外射撃の誘導、退避(Take Cover)などを行うことで、ユニット毎にインパルスポイントを消費します。両軍がインパルスポイントを全て消費したところでそのターンは終了します。

イニシアティブポイントが多いほうのプレイヤーは、ポイントが相手方と同じになるまでの間、ポイントを消費する行動を行い続けることができます。いわゆる「俺のターン」が続くのです。
相手方はその間、相手の移動に即した「臨機射撃」を行う権利はありますが、それ以外は行動を行うことはできません。
両軍のポイントが同じになった以降は、交互に行動を行うことになります。

OSTのスケール

1ユニット:1個分隊(最小は班)、指揮官、狙撃兵は1人、
車両、砲兵器は1両・1門単位
1ヘックス=40メートル
1ターン=明記なし

 

OST」におけるインパルスポイントシステムの問題点(私見

ゲームのスケールとしては「ASL」と同スケールなのに対し、ゲームシナリオの展開としてはこじんまりとした展開になることが多いのが気になっていました。その原因について考察すると次のように考えています。

各ターンのインパルスポイントはダイスの目によって決まります。特徴はその振れ幅が大きいことです。例えば、インパルスポイントを決めるダイスの設定が”3D6”の場合は最大18となる一方最小値は3となります。”2D+6”の場合は、8~18となります。*2
例えば「ASL」の場合は攻守を野球のように交代しながら、基本登場しているユニットは全て移動でき射撃などの戦闘も可能です。特に全体の行動量について制約がかかることはないです。
「ASL」のゲーム展開の中では(シナリオの規模にもよりますが)、攻撃側の進撃ルートは1本ではなく、複数の攻撃軸をたてることが多いです。主攻・助攻といった複数の軸です。当然、防御側もそれを予想して防御を考慮します。

一方、「OST」の場合、各ターンの行動量はダイスの目によって決まりますので、かなり変動が大きいことになります。大きく多数のユニットに行動を行わせることができるターンがある一方で、ほとんど動けないターンも生じるのです。行動にムラがでてくるのです。

次に同じくらいのインパルスポイントが得ることができるかわからない、という状態になると、今のターンでのインパルスポイントの振り分けも、主攻軸に重点を置いた配分になり、助攻軸への振り分けは小さかったり、助攻軸自体はできないということにつながるのかと考えます。結果、攻撃も一本調子の単調なものになってしまう・・。
まぁ「OST」でももっと大掛かりなシナリオへ挑戦するなどすれば印象は変わるのかもしれません。

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*1:続編では空挺部隊、さらに現在太平洋戦域を舞台にした作品がラインナップに上がっています。

*2:インパルスポイントはゲーム進行の中で損害が累積すると一定割合でポイントがマイナスになるのですが、基本はダイスの目によって決まる割合が大きいです。